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しおりを挟む「本当に誰か来たらどうするんだよッ!」
ポカポカとルメアのうなじに当たる部分を叩きまくる南波斗。
『大丈夫だ。南波斗は俺に捕まっていればいい』
「それでも怖ぇよっ!!」
『大丈夫だ。……敵じゃない』
「今のちょっとの間はなんだ!?」
人間にとって限りなく不利なこの空中にて、襲われでもしたら、と南波斗は考えているのだろう。
だが、たとえルメアが襲われても南波斗は死守するつもりだ。
必ず南波斗を守る、って伝えたいけど今はそれ所じゃない。
『まぁこのまま突っ切るぞ』
そう言って、ルメアは空を駆けるスピードを早める。
大きく翼を広げて、羽ばたいた時の推進力を増幅させる。
「ぬわぁあああああああ!!!」
急なスピードで、南波斗がまた悲鳴を上げた。
『口閉じてろ。舌、噛み切るぞ』
静かな声で告げると、南波斗はハッとしたように、片手で口を抑えた。
——やはり……
予想した通り、ルメアたちの数十メートルほど離れた場所にいる奴も、同じように飛ぶスピードを早めた。
後ろにいる奴がどんな奴か、すごく気になるがそれよりも、早く自分の城に向かおうと決めた。
✩.*˚✩.*˚✩.*˚
「ルメア……ッ!」
『竜王城』の正門。
ルメアが今日帰ってくるのをあらかじめ分かっていたかのように、弟——ケルラがお出迎えしてくれていた。
『ふぅ…………」
一息吐きながら、ルメアは竜型から人型に戻る。
「おかえり、ルメア」
「…………あぁ……。ただいま」
ようやく直で会えたケルラと、キツい抱擁を交わすルメア。
「……連れてきたんだね、やっとー」
するとケルラは、意地の悪い笑みを浮かべながら、ルメアの背後を指さす。
「え?」
「——彼氏さん」
ぶわぁっ、と顔が赤くなるルメア。
こんな赤面したルメアを見るのは初めてだったケルラは、不覚にもドキッとしてしまった。
——あぁ~もぅ……
はぁぁ、と息を吐いて眉間を抑えるケルラ。
この想いは頑張って封じ込めたのだから、掘り起こさないでほしい。
まぁそう願っても、ルメアにはきっと通用しないのだろう。
「南波斗ー? もう着いたぞ?」
ルメアの背後に背中を丸めながら立っている南波斗に近付く。
「……南波斗?」
「ッ……ルメアぁああああ!!!」
ぐわぁっ、と少し前のめりになっているルメアに飛びつく南波斗。
「うわぁっ……!」
ルメアの首に手を回して、抱きつく南波斗。
「ど、どうした?」
南波斗が泣いているのか、ただ抱きついているのか分からない。
「とりあえず、ルメアの部屋に連れて行ってあげたら?」
ケルラにそう勧められて、ルメアは「あ、あぁ……」と頷いた。
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