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第四話 その名は龍使い(ロンマスター)
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——なぜか今僕は、超級ヒーローであるライトニングレディと一緒に公園のベンチに座っている……。
「ほい、この時間だと喫茶店ってわけにいかないからね……缶コーヒーでごめんね」
「あ、ありがとうございます……あ、あの彼らは……」
「ん? ちゃんと仲間が確保してるよ、アタシも後で話聞かれると思うんだけどさ、君のことは説明しておくよ。後日呼び出すかもだけど」
公園のベンチに座っている僕にライトニングレディが缶コーヒーを手渡す……僕はそのコーヒーを受け取るがその冷たさになんとなく、助かったんだという気分になってほっと息を吐く。
アルバイト先でこんなことになるとは……それ以上に怖くて泣き出した自分が情けない……僕は下を向いたまま押し黙る……肩が震える……どうして僕は。
ライトニングレディがドカッ、と僕の横に座って軽く僕に向かってウインクをしてくる……さっきも思ったけど結構ガタイがいいなこの人、本当に先生なのか?
「アタシはヒーロー、ライトニングレディ……本名は水楢 千景、ピッチピチの三七歳……さっきも言ったけど今は本当に教師だよ、君は?」
「秋楡 千裕……高校生です」
「おー、千裕君って呼べば良いかな、危なかったねー」
黙って頷く僕を見て、水楢さんは少しだけ不思議そうな顔で僕を見た後自分の分の缶コーヒーのプルタブを開けて中身を飲み始める。
僕はおずおずとライトニングレディ……水楢さんの顔を見上げる……結構背が高い、身長一七〇センチ台の僕と同じくらいの背丈がある……横顔を見て気がついたが、ライトニングレディの頬や露出している腕、首のあたりに結構な大きさの傷跡が見える、やはり戦いでついた傷だろうか。
僕の視線に気がついたのか、ライトニングレディは僕に微笑む……ドキッとしてしまうな、恐ろしく美人だし、最近はヒーロー活動は控えているようだが、お茶の間でも人気のあったヒーローだからだ。
「千裕君、一つ聞いていいかな……キミ、なんで反撃しなかったんだ?」
「……え?」
「キミ……本当は反撃したかったんだろ? 割といい体つきしてるのに……なんで急にやめたんだ?」
その言葉に僕は俯く……確かに、確かに反撃しようと思っていた、でもやめた……僕にはなんの力もないってわかってたから……。
僕は缶をギュッと握る……僕は力がない、勇気もない、どうやっても反撃なんか考えられない……目に涙が浮かぶ。辛い、他人からそう指摘されて自分の本音、本当は反撃したかったという気持ちに改めて気が付かされてしまう……悔しい。
あの時僕は勇気を振り絞って、反撃したかった……なんの意味もない才能を持った僕でも、勇気だけは震えるって思ったから……でも諦めた、僕にはできないって。
「ぼ、僕は……そんな能力ないですから……意味のない才能ですから……」
「……それは才能が龍使いだから?」
「な、なんでそれを……ッ!」
笑われる……龍使いなんて、絶対に笑われる……僕は恐怖で身を硬くする。
だがライトニングレディは僕の頬にそっと手を添える……驚いて彼女の顔を見ると、ライトニングレディは真剣そのものの顔で、僕を見つめていた。
なんで笑っていないの? なんでこんな真剣な……じっと見つめられて僕は体の強張りが引いていく気がした。
「……君の生まれ持った才能は意味がないなんてことはない、この世界には必要のない才能なんてないんだよ」
「……う……う……うああああああっ!」
僕は溢れる涙を堪えることができない……本当にずっと言って欲しかった一言を目の前の銀髪の女性、ライトニングレディの口から告げられる。
父さんにも母さんにも……友達にも、先生にも、検査を担当してくれた先生にも、看護婦にも、誰もそう告げてくれなかった言葉、本当に、その言葉をかけて欲しかった……誰かに言って欲しかった言葉……その夜、僕は初めて本気で泣いた気がした。
「僕は……僕は悔しかったんです……どうしても……勇気がない自分が……ッ!」
「……落ち着いた?」
「ばひ……ずびばぜん……」
涙と鼻水でグシャグシャになっている僕を見て心配そうな顔で苦笑いを浮かべているライトニングレディ……ここまで大泣きするとは思っていなかったんだろう。
恥ずかしい……初対面の年上女性、しかも有名なヒーローの前で大泣きしてしまった……恥ずかしいよ……赤面しながら下を向いている僕の肩をライトニングレディが優しく叩く。
「まー、若者は悩みが多いってね……クハハッ! アタシ今めっちゃ先生してるな~」
「……笑わないんですか? 僕はこの才能が発覚してからずっと笑われてきました……意味がない、使えないって……ずっと」
「笑わないよ、さっきも言ったけど意味のない才能なんて存在しない……ってまた泣くなよ……もう……泣き虫だなキミは……」
ライトニングレディの言葉に僕の涙腺が緩みかけるが、彼女は慌てて子供をあやすかのように慌て始める……なんだか少しだけ安心した気分になる。
僕は彼女にお礼を言いたい気持ちになって、姿勢を正すと深くお辞儀をする……優しい人だ、そして恐ろしく強い、教師って言ってたけどそれ以上に、優しい人なんだって思った。
「ありがとうございます……水楢さんだけです、そんな優しい言葉かけてくれたの……」
「そっか……実はさ、お茶に誘った……いや話をしたかったのは理由があるんだよ、千裕君」
僕が頭を上げると、目の前にいたライトニングレディは急に真剣そのもので僕を見つめていた……その表情は凄まじく凛とした、美しくも鋭い、そして歴戦の戦士のような……まあ、映画とかでしかそんな表情を見たことないけど、まさにそんな張り詰めたような表情で僕を見つめていた。
「……え?」
「キミ、うちの学校に転校しないかい?」
ライトニングレディは懐から少し端が折れた名刺を取り出すと、慌てて軽く直して僕へと差し出す……そこには『国立勇武高等学園 臨時教員 水楢 千景』と書かれている。
その名前を見て僕は少し驚いた……勇武高等学園……特に危険度の高い攻撃性や、戦闘などに有効な才能を持つ若者が集められ、ヒーローとして対ヴィラン専門教育を受けるための専門的な学校。
この学校の卒業生は対ヴィランの最前線に投入され、超戦闘能力を発揮する民間・公的防衛機関両方で引っ張り凧になると言われてるくらいの名門高校だ……設立から一〇年程度らしいが、それでもヒーローを志す超エリートだけが通える学校となっている。
「……勇武……って、対ヴィラン専門教育をしている学校ですよね? なんで僕が……」
「千裕君……その才能、本当に意味がないと思ってる? 知らないだろうけど、それは超超チョースーパーウルトラベリーベリーレアなんだ……なんせアタシのお師匠様の所持していた才能だからね」
「……え? お師匠様……? レ、レア……え? 龍使い……が?」
「おう! 本当に……お師匠様と同じ才能を見つけられるとは思ってなかったんだよ! さあ転校しよう、そうしようっ! ……って、おい! 死ぬな! 戻ってこい!」
ライトニングレディは頷くと、僕の両肩をガシッと掴んで全力で揺らし始める……凄まじい馬鹿力だ、僕は思い切り脳を揺らされて目の前が真っ暗になっていくのを感じる。
白目をむいて気絶しかける僕に気がついたライトニングレディは、慌てて別の方向へと僕を揺らしていく……なんとか意識を保った僕を見て、ほっと息を吐いたライトニングレディはニカっと爽やかな笑顔を浮かべて笑う。
「ちょっと鍛えないと転入試験落ちちゃいそうだけど……大丈夫、アタシが鍛えてやるよ……お師匠様と同じ才能を持つ、秋楡 千裕君……次世代の『龍使い』のためにね!」
「ほい、この時間だと喫茶店ってわけにいかないからね……缶コーヒーでごめんね」
「あ、ありがとうございます……あ、あの彼らは……」
「ん? ちゃんと仲間が確保してるよ、アタシも後で話聞かれると思うんだけどさ、君のことは説明しておくよ。後日呼び出すかもだけど」
公園のベンチに座っている僕にライトニングレディが缶コーヒーを手渡す……僕はそのコーヒーを受け取るがその冷たさになんとなく、助かったんだという気分になってほっと息を吐く。
アルバイト先でこんなことになるとは……それ以上に怖くて泣き出した自分が情けない……僕は下を向いたまま押し黙る……肩が震える……どうして僕は。
ライトニングレディがドカッ、と僕の横に座って軽く僕に向かってウインクをしてくる……さっきも思ったけど結構ガタイがいいなこの人、本当に先生なのか?
「アタシはヒーロー、ライトニングレディ……本名は水楢 千景、ピッチピチの三七歳……さっきも言ったけど今は本当に教師だよ、君は?」
「秋楡 千裕……高校生です」
「おー、千裕君って呼べば良いかな、危なかったねー」
黙って頷く僕を見て、水楢さんは少しだけ不思議そうな顔で僕を見た後自分の分の缶コーヒーのプルタブを開けて中身を飲み始める。
僕はおずおずとライトニングレディ……水楢さんの顔を見上げる……結構背が高い、身長一七〇センチ台の僕と同じくらいの背丈がある……横顔を見て気がついたが、ライトニングレディの頬や露出している腕、首のあたりに結構な大きさの傷跡が見える、やはり戦いでついた傷だろうか。
僕の視線に気がついたのか、ライトニングレディは僕に微笑む……ドキッとしてしまうな、恐ろしく美人だし、最近はヒーロー活動は控えているようだが、お茶の間でも人気のあったヒーローだからだ。
「千裕君、一つ聞いていいかな……キミ、なんで反撃しなかったんだ?」
「……え?」
「キミ……本当は反撃したかったんだろ? 割といい体つきしてるのに……なんで急にやめたんだ?」
その言葉に僕は俯く……確かに、確かに反撃しようと思っていた、でもやめた……僕にはなんの力もないってわかってたから……。
僕は缶をギュッと握る……僕は力がない、勇気もない、どうやっても反撃なんか考えられない……目に涙が浮かぶ。辛い、他人からそう指摘されて自分の本音、本当は反撃したかったという気持ちに改めて気が付かされてしまう……悔しい。
あの時僕は勇気を振り絞って、反撃したかった……なんの意味もない才能を持った僕でも、勇気だけは震えるって思ったから……でも諦めた、僕にはできないって。
「ぼ、僕は……そんな能力ないですから……意味のない才能ですから……」
「……それは才能が龍使いだから?」
「な、なんでそれを……ッ!」
笑われる……龍使いなんて、絶対に笑われる……僕は恐怖で身を硬くする。
だがライトニングレディは僕の頬にそっと手を添える……驚いて彼女の顔を見ると、ライトニングレディは真剣そのものの顔で、僕を見つめていた。
なんで笑っていないの? なんでこんな真剣な……じっと見つめられて僕は体の強張りが引いていく気がした。
「……君の生まれ持った才能は意味がないなんてことはない、この世界には必要のない才能なんてないんだよ」
「……う……う……うああああああっ!」
僕は溢れる涙を堪えることができない……本当にずっと言って欲しかった一言を目の前の銀髪の女性、ライトニングレディの口から告げられる。
父さんにも母さんにも……友達にも、先生にも、検査を担当してくれた先生にも、看護婦にも、誰もそう告げてくれなかった言葉、本当に、その言葉をかけて欲しかった……誰かに言って欲しかった言葉……その夜、僕は初めて本気で泣いた気がした。
「僕は……僕は悔しかったんです……どうしても……勇気がない自分が……ッ!」
「……落ち着いた?」
「ばひ……ずびばぜん……」
涙と鼻水でグシャグシャになっている僕を見て心配そうな顔で苦笑いを浮かべているライトニングレディ……ここまで大泣きするとは思っていなかったんだろう。
恥ずかしい……初対面の年上女性、しかも有名なヒーローの前で大泣きしてしまった……恥ずかしいよ……赤面しながら下を向いている僕の肩をライトニングレディが優しく叩く。
「まー、若者は悩みが多いってね……クハハッ! アタシ今めっちゃ先生してるな~」
「……笑わないんですか? 僕はこの才能が発覚してからずっと笑われてきました……意味がない、使えないって……ずっと」
「笑わないよ、さっきも言ったけど意味のない才能なんて存在しない……ってまた泣くなよ……もう……泣き虫だなキミは……」
ライトニングレディの言葉に僕の涙腺が緩みかけるが、彼女は慌てて子供をあやすかのように慌て始める……なんだか少しだけ安心した気分になる。
僕は彼女にお礼を言いたい気持ちになって、姿勢を正すと深くお辞儀をする……優しい人だ、そして恐ろしく強い、教師って言ってたけどそれ以上に、優しい人なんだって思った。
「ありがとうございます……水楢さんだけです、そんな優しい言葉かけてくれたの……」
「そっか……実はさ、お茶に誘った……いや話をしたかったのは理由があるんだよ、千裕君」
僕が頭を上げると、目の前にいたライトニングレディは急に真剣そのもので僕を見つめていた……その表情は凄まじく凛とした、美しくも鋭い、そして歴戦の戦士のような……まあ、映画とかでしかそんな表情を見たことないけど、まさにそんな張り詰めたような表情で僕を見つめていた。
「……え?」
「キミ、うちの学校に転校しないかい?」
ライトニングレディは懐から少し端が折れた名刺を取り出すと、慌てて軽く直して僕へと差し出す……そこには『国立勇武高等学園 臨時教員 水楢 千景』と書かれている。
その名前を見て僕は少し驚いた……勇武高等学園……特に危険度の高い攻撃性や、戦闘などに有効な才能を持つ若者が集められ、ヒーローとして対ヴィラン専門教育を受けるための専門的な学校。
この学校の卒業生は対ヴィランの最前線に投入され、超戦闘能力を発揮する民間・公的防衛機関両方で引っ張り凧になると言われてるくらいの名門高校だ……設立から一〇年程度らしいが、それでもヒーローを志す超エリートだけが通える学校となっている。
「……勇武……って、対ヴィラン専門教育をしている学校ですよね? なんで僕が……」
「千裕君……その才能、本当に意味がないと思ってる? 知らないだろうけど、それは超超チョースーパーウルトラベリーベリーレアなんだ……なんせアタシのお師匠様の所持していた才能だからね」
「……え? お師匠様……? レ、レア……え? 龍使い……が?」
「おう! 本当に……お師匠様と同じ才能を見つけられるとは思ってなかったんだよ! さあ転校しよう、そうしようっ! ……って、おい! 死ぬな! 戻ってこい!」
ライトニングレディは頷くと、僕の両肩をガシッと掴んで全力で揺らし始める……凄まじい馬鹿力だ、僕は思い切り脳を揺らされて目の前が真っ暗になっていくのを感じる。
白目をむいて気絶しかける僕に気がついたライトニングレディは、慌てて別の方向へと僕を揺らしていく……なんとか意識を保った僕を見て、ほっと息を吐いたライトニングレディはニカっと爽やかな笑顔を浮かべて笑う。
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