42 / 45
第四二話 脅威と不安
しおりを挟む
「ココは……知らない、天井……僕は一体」
長い暗闇のトンネルを抜けて、眩しいくらいの白い光が視界へと入ってきて僕の意識が覚醒する。
ガンガンと痛む頭で一気に意識が覚醒し、慌てて目を開けるとそこは全く知らない天井が見えていて、僕はぼうっとする頭で周りを見回す……ふと先ほどまで誰かがいたのか、心地よいシャンプーの匂いがふわりと香るのを感じて、なんだろう? と少しだけ悩むが……突然バタン! と大きな音がして僕が寝かされている部屋の扉が乱暴に開け放たれる。
「お、おい千裕! 大丈夫か?」
「千景さん……とイグニスさん……」
扉から飛び込んできたのは千景さんとイグニスさん、二人ともかなり慌てた様子でベッドの上にいる僕へと走り寄ってくると、僕が呆然とした顔をしているのを見て、少しの間をおいてからはああっ! と安堵したかのように長い息を吐く。
そういえば僕はなぜこの場所に寝かされていて……とそこまで考えて、僕はポイズンクローとの戦闘で毒を注入されてそこから自分の意識がいまいちはっきりとしていなかった気がする。
「お、おい千裕私の顔わかるか!? 美人で素敵な千景お姉さんっていうんだ!」
「だ、大丈夫です……それと千景さんはいつでも素敵ですよ」
「なっ……! ば、馬鹿野郎、そういうのは彼女に言えよ!」
僕のお世辞に千景さんは顔を真っ赤にしながら驚いているが、そんな千景さんを見て思わず拭き出しているイグニスさんだったが、僕が彼女を見ていると表情をきちんと整えてから僕に向かって頭をさげる。
急に頭を下げられたことで僕も慌てて姿勢を正すが、頭を下げたままイグニスさんは謝罪の言葉を口にする。
「千裕くん、すまない……私が民間人の誘導で君のところまでいくことができなかった、監督者失格だ……」
「い、いえ……イグニスさんの到着を待たずに突っ走ったのは僕です、申し訳ありません」
「本来は、私に連絡が来なければいけなかった……さらに準四級扱いの君がヴィランとの戦闘状態に入った、それは事実だ」
「……はい……」
「協会からの呼び出しもある……と思う。ただ私は君の行動は嫌いじゃないよ、考える前に体が前に出る……それはヒーローにとって大事な資質だと思うからね」
イグニスさんは優しい笑顔を浮かべて僕の頭をそっと撫でる……その手つきはとても優しくほのかに温かいものだ。
横で千景さんも大きくため息をついてから、僕の肩にそっと手を乗せて微笑む……が突然、僕の顔をまじまじと見つめてから、何かに気がついたかのようにイタズラを思いついた子供のような笑顔を見せた。
「んー? んー、んふふ……千裕、お前割と同級生から好かれてんのな、いいねえ青春だねえ……」
「え? ……なんですか?」
千景さんは自分の頬を軽く指さして満足げな顔を浮かべているが、そんな彼女を見たイグニスさんが目を凝らして僕の顔を見た後、なぜか納得したかのように頷く。
なんなんだ? 僕は自分の頬にそっと指を当て確かめるが、指先に桜色の何かが付着したことで、はて? としばし指先を見て考え込む。
何か治療の際に着いたのだろうか? まだ風呂も入ってないし……そんな僕に千景さんがバシッ! と再び肩を叩いてから豪快に笑う。
「気にすんな、そのうち分かるって……もう少し休んで体力を回復させるんだぜ?」
——入院は一日だけで終わり翌日には僕は自宅へと一旦帰ることになった。
「……本当に大丈夫かい?」
親は本当に心配をしていたが、同席していたイグニスさんが丁寧に菓子折りまで持ってきていて……「ご子息を危険な目に遭わせてしまい申し訳ありません」と謝罪したこともあって、その場は一応収まったのだが。
夕食の時間になると流石に母さんは心配そうな顔で僕を見つめながら話しかけてきた。
「大丈夫、今回も怪我したわけじゃないし……強い疲労って説明されてるよ」
「そうじゃなくて、お前の性格でヒーローはやっぱり無理なんじゃ……」
「んぐっ……ゴホッ、ゴホッ!」
母さんの言葉にご飯を喉に詰まらせそうになって咳き込むが、まあ勇武入学前まではいじめにもあっていた僕なのだから、そりゃ親は心配するだろうな。
父さんも同じような顔で僕を見つめているけど……もう勇武に入ると決めた時から僕は今回は諦めないと決めている。
ふと寝ている時に誰かと似たような話をした気がして、不安な気持ちが胸に広がるけど……今の僕にはちゃんと目指すべき先があるから、それが見えるまでは諦めるわけにはいかないのだ。
「だ、大丈夫、せっかく勇武に入って友達もできたんだ。だからやめないよ」
「母さん、千裕がこう言っているんだ、親が口出しをする問題でもないだろう?」
「それにしたって心配ですよ、私は……」
ああ、そっか母さんにも色々心配かけてしまっているんだな……少しだけ胸が痛むけど、目の前にある生姜焼きの肉を箸で摘むとたっぷりの白米の上に乗せてから口へと運ぶ。
勇武の食堂で食べるものよりもなんだか美味しい気がして、頬が綻んでしまう。
こうやって美味しいと思えるのも、生きて帰ってきているからだ……父さんと母さんは僕のことで色々話し込み始めたが、それとは別に僕はあの夢のことを、そしてあの時のことを思い返してみる。
ポイズンクローの攻撃で僕は確実に絶命した、と思っていた。
だが実際には僕ではない別の人格が表に出て……それは龍使いとしての心構えを教えるかのように、僕の体を癒した後、動かしそしてヴィランを撃退していた。
千景さんが前に話していたように龍使いは傷すら癒せるって本当なんだな……と別の意味で感心してしまっているが。
もう一人、僕は夢現の中で別のヴィランを一人見ていた、ナイトマスターと名乗る中世に存在していたペスト医師のコスプレとしか思えない格好をした不気味な男。
『……では龍使い、次に会うときは殺し合いましょう……私一七年前より強くなっておりますので、楽しみです』
あの時の仮面の奥に光る不気味な赤い眼……それは無機質でありながら、深い憎しみのような色を湛えており、ゾッとするような雰囲気に包まれていた。
あの男は一七年前、という言葉を口にしていたがそれは千景さんもいたというヴィランの王との戦いのことだろうか? 勇武入学後図書室には訓練が忙しくてあまり近寄っていなかったけど、一度その辺りの歴史ももう一度調べる必要がある……それと七緒さんにも謝らなきゃいけないだろうな。
「千裕、どうしたんだ?」
「ん? ああ、ごめん考え事してた……同級生にも謝っておかないとって」
「ああ、イグニスさんも話してたね、ずいぶん可愛らしいお嬢さんだとか……」
そうだなあ……確かに七緒さんは大人しくしていると、伊万里さん、鬼灯さんに負けず劣らずの美少女だ。
というか勇武は別の選考基準があるんじゃないかって思うくらい、美少女揃いのようで、新入生も上級生もみんな美男美女が多いと有名になってるくらいだからな。
「そんな子が千裕のお嫁さんになってくれたらねえ……」
「ゲフッ!」
母さんが急にそんなことを言うものだから思わず口に含んでた味噌汁を吹き出しそうになる……ま、まだ高校生だぞ?! 彼女だっていたことないのに急にそんな過程をすっ飛ばされても困る。
僕は何度か咳き込んだ後に口元を拭ってから、きっぱりと否定しようと思って母さんに答えるが、それでも七緒さんが僕の隣で微笑む図を想像してみて……いやねえな、と自己否定する。
「七緒さんは同級生だよ、それにバイト仲間……向こうは僕のことなんかなんとも思ってないよ」
長い暗闇のトンネルを抜けて、眩しいくらいの白い光が視界へと入ってきて僕の意識が覚醒する。
ガンガンと痛む頭で一気に意識が覚醒し、慌てて目を開けるとそこは全く知らない天井が見えていて、僕はぼうっとする頭で周りを見回す……ふと先ほどまで誰かがいたのか、心地よいシャンプーの匂いがふわりと香るのを感じて、なんだろう? と少しだけ悩むが……突然バタン! と大きな音がして僕が寝かされている部屋の扉が乱暴に開け放たれる。
「お、おい千裕! 大丈夫か?」
「千景さん……とイグニスさん……」
扉から飛び込んできたのは千景さんとイグニスさん、二人ともかなり慌てた様子でベッドの上にいる僕へと走り寄ってくると、僕が呆然とした顔をしているのを見て、少しの間をおいてからはああっ! と安堵したかのように長い息を吐く。
そういえば僕はなぜこの場所に寝かされていて……とそこまで考えて、僕はポイズンクローとの戦闘で毒を注入されてそこから自分の意識がいまいちはっきりとしていなかった気がする。
「お、おい千裕私の顔わかるか!? 美人で素敵な千景お姉さんっていうんだ!」
「だ、大丈夫です……それと千景さんはいつでも素敵ですよ」
「なっ……! ば、馬鹿野郎、そういうのは彼女に言えよ!」
僕のお世辞に千景さんは顔を真っ赤にしながら驚いているが、そんな千景さんを見て思わず拭き出しているイグニスさんだったが、僕が彼女を見ていると表情をきちんと整えてから僕に向かって頭をさげる。
急に頭を下げられたことで僕も慌てて姿勢を正すが、頭を下げたままイグニスさんは謝罪の言葉を口にする。
「千裕くん、すまない……私が民間人の誘導で君のところまでいくことができなかった、監督者失格だ……」
「い、いえ……イグニスさんの到着を待たずに突っ走ったのは僕です、申し訳ありません」
「本来は、私に連絡が来なければいけなかった……さらに準四級扱いの君がヴィランとの戦闘状態に入った、それは事実だ」
「……はい……」
「協会からの呼び出しもある……と思う。ただ私は君の行動は嫌いじゃないよ、考える前に体が前に出る……それはヒーローにとって大事な資質だと思うからね」
イグニスさんは優しい笑顔を浮かべて僕の頭をそっと撫でる……その手つきはとても優しくほのかに温かいものだ。
横で千景さんも大きくため息をついてから、僕の肩にそっと手を乗せて微笑む……が突然、僕の顔をまじまじと見つめてから、何かに気がついたかのようにイタズラを思いついた子供のような笑顔を見せた。
「んー? んー、んふふ……千裕、お前割と同級生から好かれてんのな、いいねえ青春だねえ……」
「え? ……なんですか?」
千景さんは自分の頬を軽く指さして満足げな顔を浮かべているが、そんな彼女を見たイグニスさんが目を凝らして僕の顔を見た後、なぜか納得したかのように頷く。
なんなんだ? 僕は自分の頬にそっと指を当て確かめるが、指先に桜色の何かが付着したことで、はて? としばし指先を見て考え込む。
何か治療の際に着いたのだろうか? まだ風呂も入ってないし……そんな僕に千景さんがバシッ! と再び肩を叩いてから豪快に笑う。
「気にすんな、そのうち分かるって……もう少し休んで体力を回復させるんだぜ?」
——入院は一日だけで終わり翌日には僕は自宅へと一旦帰ることになった。
「……本当に大丈夫かい?」
親は本当に心配をしていたが、同席していたイグニスさんが丁寧に菓子折りまで持ってきていて……「ご子息を危険な目に遭わせてしまい申し訳ありません」と謝罪したこともあって、その場は一応収まったのだが。
夕食の時間になると流石に母さんは心配そうな顔で僕を見つめながら話しかけてきた。
「大丈夫、今回も怪我したわけじゃないし……強い疲労って説明されてるよ」
「そうじゃなくて、お前の性格でヒーローはやっぱり無理なんじゃ……」
「んぐっ……ゴホッ、ゴホッ!」
母さんの言葉にご飯を喉に詰まらせそうになって咳き込むが、まあ勇武入学前まではいじめにもあっていた僕なのだから、そりゃ親は心配するだろうな。
父さんも同じような顔で僕を見つめているけど……もう勇武に入ると決めた時から僕は今回は諦めないと決めている。
ふと寝ている時に誰かと似たような話をした気がして、不安な気持ちが胸に広がるけど……今の僕にはちゃんと目指すべき先があるから、それが見えるまでは諦めるわけにはいかないのだ。
「だ、大丈夫、せっかく勇武に入って友達もできたんだ。だからやめないよ」
「母さん、千裕がこう言っているんだ、親が口出しをする問題でもないだろう?」
「それにしたって心配ですよ、私は……」
ああ、そっか母さんにも色々心配かけてしまっているんだな……少しだけ胸が痛むけど、目の前にある生姜焼きの肉を箸で摘むとたっぷりの白米の上に乗せてから口へと運ぶ。
勇武の食堂で食べるものよりもなんだか美味しい気がして、頬が綻んでしまう。
こうやって美味しいと思えるのも、生きて帰ってきているからだ……父さんと母さんは僕のことで色々話し込み始めたが、それとは別に僕はあの夢のことを、そしてあの時のことを思い返してみる。
ポイズンクローの攻撃で僕は確実に絶命した、と思っていた。
だが実際には僕ではない別の人格が表に出て……それは龍使いとしての心構えを教えるかのように、僕の体を癒した後、動かしそしてヴィランを撃退していた。
千景さんが前に話していたように龍使いは傷すら癒せるって本当なんだな……と別の意味で感心してしまっているが。
もう一人、僕は夢現の中で別のヴィランを一人見ていた、ナイトマスターと名乗る中世に存在していたペスト医師のコスプレとしか思えない格好をした不気味な男。
『……では龍使い、次に会うときは殺し合いましょう……私一七年前より強くなっておりますので、楽しみです』
あの時の仮面の奥に光る不気味な赤い眼……それは無機質でありながら、深い憎しみのような色を湛えており、ゾッとするような雰囲気に包まれていた。
あの男は一七年前、という言葉を口にしていたがそれは千景さんもいたというヴィランの王との戦いのことだろうか? 勇武入学後図書室には訓練が忙しくてあまり近寄っていなかったけど、一度その辺りの歴史ももう一度調べる必要がある……それと七緒さんにも謝らなきゃいけないだろうな。
「千裕、どうしたんだ?」
「ん? ああ、ごめん考え事してた……同級生にも謝っておかないとって」
「ああ、イグニスさんも話してたね、ずいぶん可愛らしいお嬢さんだとか……」
そうだなあ……確かに七緒さんは大人しくしていると、伊万里さん、鬼灯さんに負けず劣らずの美少女だ。
というか勇武は別の選考基準があるんじゃないかって思うくらい、美少女揃いのようで、新入生も上級生もみんな美男美女が多いと有名になってるくらいだからな。
「そんな子が千裕のお嫁さんになってくれたらねえ……」
「ゲフッ!」
母さんが急にそんなことを言うものだから思わず口に含んでた味噌汁を吹き出しそうになる……ま、まだ高校生だぞ?! 彼女だっていたことないのに急にそんな過程をすっ飛ばされても困る。
僕は何度か咳き込んだ後に口元を拭ってから、きっぱりと否定しようと思って母さんに答えるが、それでも七緒さんが僕の隣で微笑む図を想像してみて……いやねえな、と自己否定する。
「七緒さんは同級生だよ、それにバイト仲間……向こうは僕のことなんかなんとも思ってないよ」
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる