両片思いの拗らせ強がり冒険者

山吹花月

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両片思いの拗らせ強がり冒険者

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「絶対に俺だ!」
「いいや私よ!」
 テーブルを挟み、ふたりの男女が睨み合っている。
「また始まったよ……」
 呆れたような声が周囲から洩れる。
 睨み合うのはアンドリューとステラ。幼馴染でありふたりでパーティーを組んでいる冒険者だ。赤茶の短髪と吊りあがる目、頬に残る傷跡のせいでガラが悪く見えるアンドリューと、すらりとした体躯に白金の髪と瞳が映えるステラは容姿のアンバランスなパーティーとしてそこそこ知名度があった。
 依頼を終えいつもの食堂で食事と酒を楽しみ、いい具合に酔いが回り始めるといつもこのやり取りが始まる。周りの常連客も慣れたもので、呆れてため息をつく者やからかったり囃し立てる者、そもそも気にも留めない者など様々である。
 この論争が始まる頃にはすでに酔っているふたりは『自分の方がセックスが上手いと言い張る微笑ましい痴話喧嘩をするカップル(なおまだ付き合っていない)』という、ある意味この食堂の名物になりつつあることには全く気付いていない。
「絶っ対に俺の方が経験も豊富でテクがある!」
 アンドリューは吊りあがった目が据わるほどに酔っている。
「気遣いの『き』の字も知らないような男のお相手なんているわけないでしょうが!」
 ショートボブの毛先を弄びながら頬杖をつくステラも、手の支えなしでは頭がふらつく程度には仕上がっている。
「知らねえのかよ、俺がどれだけモテるのか!」
「そんなの一度も見たことないわよ!」
 セックスについて話している割にこれっぽっちも色気のある単語は出ない。それぞれ自分の方が上だと言い張るのみで具体的な内容はなく、当初はどんな過激な話なのか興味津々だった周りの客も猥談ではないことを早々に悟っていた。しかし当の本人たちはいたって真面目に討論しているつもりだ。
「「絶対に自分の方が上手い!」」
 ふたりの声が重なる。大体ここまでがワンセットである。一歩も引き下がらないふたりに、食堂の女将は大きなため息をついた。
「はいはい終わったかね。あんたらそろそろ部屋に戻りな」
 手慣れた様子で女将はふたりを二階のそれぞれの部屋の前まで押しやる。
「はいはいおやすみね」
 扉の前にふたりを残し、そのまま女将は一階へと降りて行った。
「……うーん、なんかまだ飲み足りないなあ」
 普段ならこのまま部屋に入って休むところだが、今日はまだ物足りない。ステラが呟くと隣のアンドリューも同じだったようだ。
「だな。よし、俺の部屋で飲み直そうぜ。とっておき秘蔵の酒を振舞ってやる」
「よしきた!」
 ふらつく足で浮かれながら、ふたりはアンドリューの部屋へ入っていった。

 再び乾杯をしてしばらくは依頼の話や街の景気など世間話をしていたが、やはりすぐに話題は戻り、テクニックがどうのと言い合いが始まった。どちらも譲らず今度は止めてくれる人もいないので平行線だ。
「なら俺がお前なんて数秒でイカせてやるよ!」
 痺れを切らしたアンドリューが大きく言い放つ。
「望むところよ! あんたこそ私の手でひいひい言わせてやる!」
 売り言葉に買い言葉で、自称高度なテクニックをそれぞれへ披露することとなった。

 ふたりとも風呂を終えベッドで向き合ったところで妙にたどたどしくなる。
 湯で幾分か酔いが醒め、ステラは冷静さを取り戻しつつあった。大口を叩いたはいいが、正直なにをどうしたらいいのかわからない。ステラはまだ処女だった。彼が経験豊富な女性が好みだと言っていたのを偶然聞いてしまい、処女のくせに強気な嘘をついてしまって引くに引けなくなって今に至る。
「きっ、キスは……するの?」
「っ……おう」
 苦し紛れに聞いた問いに肯定が返ってきて焦る。キスも初めてだ。
 照れと困惑で視線をさまよわせていると、アンドリューの手がステラの両肩に添えられた。がっしりとした手は大きく、ステラの肩を難なく覆ってしまう。掌には必死に鍛錬を積み戦い続けてきた証である剣だこから硬い感触が伝わってくる。
 真剣なアンドリューの瞳と視線がぶつかる。徐々に近付く彼の顔に戸惑いぎゅっと目を閉じると、唇に暖かな感触がした。掌と違い柔らかく弾力があることに少し驚く。
 うっすら瞳を開けると間近に彼の顔があった。心臓が強く高鳴り一気に体温が上がる。
 普段勝気な瞳は閉じられ、意外と睫毛が多いことに気付く。幼い頃から一緒に過ごしていたのに新たな発見があることが嬉しい。いつからかはもう覚えていないが、アンドリューと過ごすうちに、ステラは彼へ淡い恋心を寄せるようになっていた。しかし生来の強気な性格が災いし、彼の前ではまったく素直になれない。可愛げがないと自覚しながらも今更性格を変えることなど出来るわけもなく、恋人にはなれなくてもせめて隣に居たい、と冒険者になれるほど鍛錬を積んできたのだ。それがまさかアンドリューと触れ合うことが出来るとは夢にも思わなかった。
 彼の顔が少しずつ遠くなる。キスが終わってしまうのが名残惜しくて、彼の唇を視線で追った。
「顔、真っ赤だな」
 ふっと笑う気配がして、アンドリューがからかうようにステラの顔を覗き込んでいることに気付く。
「っ! 酒のせいよ!」
 悔しさと恥じらいを隠すように視線と顔を逸らすとさらにからかわれる。
「おいおい、テクうんぬん言っときながら、照れてお前からはなんもできないんじゃないのか?」
 睨みつけると勝ち誇ったような顔で見下される。
「そ、んなわけないでしょ!」
 強く打つ心臓を必死に抑え込み、アンドリューの両肩へ手をかけ力いっぱいベッドへ押し倒す。その勢いに任せて口付けたせいで少し歯が当たって痛い。それでも引くに引けず、ステラは彼の唇の隙間に舌を差し込んだ。
 抵抗されるかと思ったがすんなりと受け入れられた。しかし、ここからどうしたらいいのかステラには知識がほとんどなかった。舐めればいい、という雑な記憶を頼りに恐る恐る舌を動かしてみる。しばし空を切っていた舌先が濡れた肉にぶつかる。彼の舌だ。アンドリューの体が少し引く気配がした。さっきの仕返しとばかりに彼の舌へ自身のそれを擦り付けていく。防戦一方のアンドリューに内心ほくそ笑み、舌での拙い愛撫を繰り返す。夢中で動かしているとざらざら擦れ合う感触の中にわずかに甘いような気持ち良さをを感じた気がした。
 未知の感覚に心地よくなり夢中で舌を動かしていると、今まで固まっていたアンドリューの舌が突然絡みついてきた。驚きのあまりステラは顔を引こうとするが、後頭部に回された彼の手が退路を塞いでいる。ぐるりと体が反転させられ背がベッドへ沈む。肉厚な彼の舌がぐいぐいステラの口内に押し入ってくる。反抗も空しくあっさり押し負け、中はアンドリューの舌で満たされた。大きな肉が口内で暴れまわり少し苦しくなってくる。息を吸うタイミングを逃しアンドリューの背中を叩いて解放を求める。
 ようやく離され肩で息をする。酸素を取り込むことに必死になっていると服の上から胸に彼の手が這わされた。驚いてびくりと体が跳ねる。慌てたように彼の手が離れた。
「ぁ、痛かったか?」
 しょんぼりとした声が降ってくる。見上げた彼の表情は少し焦った様子でおろおろしていてなんだかおかしくなり少し肩の力が抜けた。
「……大丈夫」
 まだ残る緊張を悟られないように最大限落ち着いた声色で返す。
 再び彼の両手が双丘を包んだ。控えめな重量のステラの胸は彼の両手に収まってしまった。
「……柔らかい」
 アンドリューはうわ言のような声を漏らし揉み込んでいく。気持ちいいという感覚はまだわからないが、触れる手の無骨な男らしさに落ち着かないようなそわそわとした心持ちになる。
「なあ、脱がせていいか」
 突然の申し出に驚きの悲鳴を出しそうになるが、間一髪のところで押し留めた。正直恥ずかしいことこの上ないが、ここで拒否してはテクニックどころか経験すらない処女であることがばれてしまう。どうしようかと逡巡し、腹を括る。
「いいよ。でも、明かりは暗くしてよね」
 緊張を隠すため不敵に笑って見せる。彼が素直に明かりを調整し始めたところを見ると、なんとかばれずにすんだようだ。
 薄明りの室内で再びアンドリューが覆い被さってくる。ステラの服の裾が掴まれゆっくりと上へ捲られていく。肌が露わになり外気に触れた。思ったより寒くはない。
 露出されたふくらみを凝視したままアンドリューが動きを止めた。
「アンドリュー?」
 ステラの呼びかけに弾かれたように顔を上げた彼は、目が合ったのも束の間、慌てたようにまた視線を逸らした。
「っ、触るぞ」
 彼の節張る手が肌に触れる。熱くしっとり吸いつく感触が未知で不思議な感覚になった。
 しばらく埋めては戻しを繰り返していた彼の指が胸の頂を掠めた。ぴりりとした刺激が走り思わず息を飲む。なにが起こったか理解する間もなく、熱く濡れたなにかがまとわりついてきた。アンドリューが先端を頬張っている。想像したこともない絵面に一気に羞恥が増す。受け入れるには衝撃的すぎるし拒否するにもどうしていいかわからない。
 ステラがうろたえている間も、硬さを持ち始めた先端は彼の舌でこりこりと弄ばれている。熱の籠る口内に吸いあげられ先から快感が沸いた。
 感じたことのない刺激に体は緊張しているが、同時にじんじんと痺れるような気持ち良さが増してくる。逆の先端はアンドリューの指先に摘ままれ捏ねくり回されている。ふたつの違った感覚がうずうずと胸から全身へ悦を伝えていく。
 好いた人に触れられている喜びと気持ち良さに、ステラの意識はふわふわと夢心地になってくる。快さに流されかけたその時、当初の目的を思い出し慌てて意識を引き戻した。大口を叩いた手前、やられてばかりではいられない。アンドリューへ触れようと手を動かす。触り方などわからないが、男性は局部を撫でられると気持ちがいいと聞いたことがある。必死に手を伸ばすが、届かない。身長差に加え今はアンドリューの顔がステラの胸の位置にあり、彼の下半身は随分と遠くに行ってしまった。
 ふと覆い被さる彼の右足がステラの両足の間にあることに気付く。一か八かそっと膝を曲げ彼の局部のあたりを圧迫する。すると彼はびくりと肩を震わせた。痛かったのかも、と少し力を弱め揺するように刺激すると、彼から熱っぽい吐息が零れた。痛がってはいないことに安堵してほっと胸を撫で下ろしていると、勢いよく下半身の衣服が取り払われた。
「えっ、ちょ……!」
 状況がわからないまま腕で隠そうとするが、一糸まとわぬ姿を腕だけで隠すことはできなかった。
 混乱するステラをよそに、アンドリューが彼女の両足を掴み大きく開かせる。
「ぅあっ! なにして……」
「お前が煽ったんだろうが」
 アンドリューの飢えた野生動物のごとく滾る瞳に射られ、背筋が甘く疼く気配がした。
反論する間もなく彼はステラの秘処に吸いついた。
「っ! 待って!」
 予想だにしない体勢に、彼の手や頭をどかそうと試みるがびくともしない。
 唇に挟まれた秘裂の蕾がじゅるじゅる卑猥な音を立てて吸いあげられる。そこから鋭い快感が次々溢れてステラの全身を駆け抜けていく。舐めしゃぶられるほどに快感が下腹部に押し寄せた。
「っぁ! 待って、アンドリュー……待ってって!」
 なにかが零れそうになる感覚に慌てて抗議をするが、アンドリューには聞こえていないようだった。弛むことのない刺激に強制的に追い立てられた熱は、頂点に達し弾け飛ぶように四肢に散った。ステラの体がびくびくと痙攣する。初めての絶頂を思考が理解することが出来ない。戸惑う理性とは裏腹に、体は愉悦の余韻に小さく震え続けている。力が抜け言うことを聞かない体に混乱が限界を迎え、ステラの瞳から大粒の涙が零れた。
「ぁ、え? ステラ!」
 ようやくステラの異変に気付いたアンドリューは慌てて親指で涙を拭う。少し力が強くて擦られた頬がひりひりする。
「ごめん、嫌だったか? 悪い、俺突っ走って……」
「はじ……め、て……なのにッ……」
 思わず口をついて出ていた。
「…………はじ、……え?」
 理解できていないであろうとぼけた答えが返ってくる。
「初めてだって、言ってるでしょ!」
 止まらない涙でぐちゃぐちゃになった顔のままアンドリューを睨む。彼は呆気にとられたまま放心し、なにも反応が返ってこない。かと思えばみるみる顔を赤らめ動揺し瞳が揺れ始める。
「は、初めて? えっお前、ほんとに?」
「そうよ! テクがあるとか経験豊富とか、全部……嘘、だし」
「お前、なんでそんな嘘……」
「だってアンドリューが……処女は嫌だって言ってたんじゃん。自分と同じく経験豊富なテクニックのある女じゃないとって……だから私……」
 偶然聞いてしまった彼の言葉に、思わず経験豊富を装ったのだった。
「はあ? 俺がいつそんなこと……」
「男同士で飲んでる時、酒場で言ってるの聞こえた」
 その日は早めに部屋に引き上げたステラだったが小腹が空いて女将にスープを貰いに行った時だった。アンドリューが顔馴染みの冒険者と喋っているのが聞こえたのだ。状況を伝えると合点がいったように彼は手で額を覆った。
「あー……あれか……よりによってなんでそこを、くそっ」
 アンドリューは忌々し気に膝を叩く。
「あれは、あー、その……言葉の綾というか、売り言葉に買い言葉というか……」
 合点がいかずステラは首を傾げる。
「ああもう! 経験なんてねえよ! 見栄張って大きいこと言っちまったんだよ! そもそも物心ついてからほとんどお前と一緒なのにどうやって豊富な経験積めるっていうんだよ!」
 強い語気とは裏腹に、逸らされた顔は真っ赤で耳まで染まっている。
「なんでそんなこと……」
「お前が経験豊富な男が好きって言ったんだろうが!」
「はあ!? 言った覚えないけど!」
「食堂の女将が言ってたんだよ。ステラの好みは経験豊富な男だってな」
アンドリューは拗ねたように唇を尖らせてしまった。
「経験豊富って……それは冒険者としてってことよ! 確かに女将と好みの男性の話をしたけど、あくまで剣術や狩りでの経験豊富って意味だから。夜の経験とか関係ないし」
「……なんだよそれ。お互い勘違いしてたってことかよ」
「かん、ちがい……」
 互いにどっと肩の力が抜け長いため息を吐いた。
「…………」
「…………」
 気まずいようなむず痒いような空気に耐えきれず目線だけでアンドリューを見ると、同じく視線だけ動かした彼と目が合う。恥ずかしさは消えないが、なんだかおかしくなってどちらからともなく笑い出した。
「っはは、滑稽だな俺ら」
「ふふっ、ほんとバカみたい」
 ひとしきり笑い終え、アンドリューがステラの指先へ自身のそれを重ねた。
「で? どうする?」
「なにが?」
「するの? しねえの?」
 隠しきれない情欲を宿した瞳に射抜かれる。小さく頷き微笑めばにっと彼も笑った。唇が重なりベッドへと沈み込む。触れるだけの優しいキスが降った。
「できるだけ優しくするけど、痛いときはちゃんと言えよ」
 蜜口に彼の指が押し入ってくる。感じたことのない異物感に身が強張る。
 ぎゅっと目を閉じ緊張するステラに気付き、アンドリューが音を立てて額に口付けてきた。
「……痛いか?」
 彼の声に少し目を開けると、見たことがないほど柔らかく微笑むアンドリューの顔が映った。ゆるく横に首を振ると今度は瞼に唇が触れた。
 じっくりと時間をかけて指が侵入してくる。浅いところで少しだけ動かされ、次第に違和感以外の感覚が湧いてくる。
「ん、なんか、へんなかんじ……」
「……このへん?」
 くっと中の指が曲げられ腹側に圧がかかった。思わず中がきゅっと締まってしまい彼の指を圧迫する。
「そこ……へん……」
「嫌じゃねえか?」
 頷くとその一点を目掛け何度も彼の指先が押し入ってきた。少しずつむず痒いようなもどかしい感覚が湧きあがって、反射的に腰が揺れる。
 ステラの足の間に移動したアンドリューは空いている手の指を舐め自身の唾液をつけ、それを秘裂の先で充血している蕾に宛がいゆっくりと撫で始めた。
「っんぁあ!」
 明確な快感が下腹部を貫く。捏ねられるたびに肉粒から痺れるような悦楽がまき散らされていく。一度極めた体は快楽を拾いやすくなっていて、陰核を刺激されるたびに呼応するよう内襞がアンドリューの指に絡みつく。
 突如指が引き抜かれ大きな喪失感を覚えた。ステラの蜜でてらてら光る彼の指は2本で、いつのまにか本数が増えていたことに気付く。
「悪い、もう入れたい……」
 余裕のないアンドリューの言葉に籠る熱がステラの背筋を甘く震わせた。忙しなく衣服を脱ぎ捨て露わになった彼の肉茎は、張り詰め腹につきそうなほど反り返っていた。
「ゆっくり入れるから……」
 余裕のない興奮しきった顔をしながらもステラへの気遣いを見せるアンドリューに愛おしさが込み上げた。頷き彼の首に手を添え肯定を伝える。秘口に張り出しが密着する。上下に擦られ蜜が塗り広げられていく。ちゅっと馴染んだところで熱杭が押し入ってきた。指とは比べ物にならない圧迫感にステラは息を詰める。
「っ、力抜けって」
 思わず彼の肩に爪を立ててしまう。慌てて力を抜こうとするが上手くいかない。
 強張るステラの手にアンドリューの汗ばんだ掌が重なる。握られゆっくりと剥がされた指に何度も吸いつくようにキスが落とされた。唇の感触にわずかながら緊張が解ける。
 弛んだ隙に怒張がゆっくりと沈められていく。ひりつきに力みそうになるのを堪え、息を吐き締めつけないよう気を付ける。
「っ……入っ、た」
 アンドリューは苦しげに眉を寄せている。奥まで辿り着いた彼の熱でステラの中はいっぱいに満たされた。
「痛い?」
 悩ましげな彼の表情に心配になり聞くと、わずかに彼の頬が染まった。
「ばっか、気持ちいいに決まってんだろ」
 苦悶ではなく快楽の表情だと知り、ステラの顔も一気に紅潮する。
「動くぞ、いいな?」
 しばらくじっとしてからアンドリューが言う。頷くとゆっくりと中の熱が動いた。
「っ……!」
 引きずられる感覚に息を詰めるが、あやすような彼のキスに強張りが徐々に和らいでいく。ステラ自身まだ快感はわからなかったが、悦に表情を歪めるアンドリューを見ると心が満たされた。
 じわじわと動かれるうちに、違和感しかなかった中に別の気配が生まれる。指で解された時のようにもどかしい疼きが下腹部に沸く。
「んぁッ」
 一か所を突かれ、意図せずあられもない声が出る。
「っ、ここか?」
 アンドリューは何度もそこを目指し腰を打ちつけてくる。擦られるたびにもどかしさから気持ちいい感覚に変わって嬌声が零れる。
 次々に沸く快感に飲まれてしまいそうで、怖くて必死にアンドリューの首にしがみつく。腰の動きが早められ肌が打ちつけられる乾いた音が響く。一層奥へ押し入られ、きゅんと疼く感覚に無意識に肉襞が屹立にまとわり締めつける。密着することで拾う快楽が増し、ステラはどんどん追い立てられていく。昇り詰める感覚の後、器いっぱいに満たされた愉悦が勢いよく零れだすように全身へ広がっていく。蜜壺がぎゅっと締まり彼が引き抜かれた。アンドリューは熱っぽい吐息を洩らし、背を震わせそのまま精を吐き出した。
 隣に彼が倒れ込んでくる。とろんとした瞳が今にも眠ってしまいそうだ。
「ステラ……」
 愛おしそうにステラの名を呼ぶアンドリューの声が心地よくて、襲い来る睡魔に抗えずそのまま瞳を閉じた。

 瞼を照らす光に徐々に意識が覚醒していく。ゆっくり目を開けると間近で微笑むアンドリューの顔があった。
「おはよ……」
「っ、うん……」
 想定外の視界にうまく返事が出来なかった。こんなにも甘いアンドリューの笑顔をステラは知らない。
 彼の指が頬を撫でてくる。指の背でそっと輪郭をなぞり、辿り着いた顎は指先でこしょこしょとくすぐられた。
「あはっ、なによ」
 くすぐったくて思わず笑い、彼の手を握って止める。
「いや、その……」
 急にしどろもどろになり、アンドリューの視線が泳ぎ始める。
「お前、さ。どう思ってんの」
「なにが?」
「その、こういうことになって」
「どうって……」
 質問が抽象的過ぎて答えに困りステラは沈黙する。
「いっ嫌だったのか!?」
 いきなり焦ったアンドリューが覆い被さってくる。
「いやいやそういうわけじゃ!」
 勢いよく首と手を振り否定する。
「……そっか。よかった」
 大きく安堵の息を吐いた彼の声は語尾にいくにつれ小さくなっていく。
 いきなり背中に腕が回され、首筋にアンドリューの顔が埋められる。
「…………好きだ」
 かろうじて聞き取れた言葉に、ステラの頬は瞬く間に上気する。突然の告白に思考が停止して頭が真っ白になった。
「……」
「……」
「……おい、なんとか言えよ」
 痺れを切らしたアンドリューが顔を上げて覗き込んでくる。まだ熱の引かない顔を隠そうと両手で覆う。
「真っ赤」
 遅かったようだ。顔を覆う手の甲に柔らかい感触がする。キスだとわかっていながらも手がどけられない。ステラが困惑しているうちに何度もキスが降り甘く吸いつかれていく。
「どけろよ。……唇にしたい」
 拗ねたような照れたような、甘さを含んだ声色に鼓動が少し高鳴る。おずおずと手をどけると、ステラと同じく顔を赤く染めたアンドリューが目に映った。
 吸い寄せられるように唇が合わさる。触れるだけで離れ、もう一度視線が合わさる。
「……で、お前は?」
「っ、えっと…………す、き……」
 恥ずかしさで声が小さくなる。注がれる熱視線に耐えかね顔を逸らそうとした瞬間、唇が重ねられ退路を奪われた。
「聞こえねえよ」
「…………私も、好き」
 ステラの言葉を聞いた途端、見たこともない満開の笑顔が視界いっぱいに広がり心臓が早鐘を打つ。今まで抑圧していたアンドリューへの愛おしさが溢れ、堪えきれず彼の頬に口付ける。
 すぐに離れたがなかなか彼の顔を直視できない。しばし逡巡し窺い見ると、アンドリューは少し驚いたような顔をしていたがすぐに笑みが返ってきた。
「こっちは?」
 アンドリューはこれ見よがしに唇を突き出してくる。ステラは少しだけ自身の唇を尖らせ先を触れ合わせてみる。途端彼の唇が押し付けられ擦り合わされる。少し驚いたが、甘やかなキスが心地よくて身を任せる。何度も角度を変えて食み味わい合った後、名残惜しげに離れていった。
 視線を合わせると、にっと嬉しそうに笑う彼が見えた。また唇が触れ、離れ、それを何度も繰り返しついばまれた。キスの合間に盗み見た彼の顔はやっぱり嬉しそうに目を細めている。見たことのない甘ったるい表情にどうしていいかわからず彼の胸を押しやる。
「……なんだよ」
 いきなり拒否をされアンドリューは不満そうに唇を尖らせている。可愛いなとうっかりときめいてしまった。
「なんか、見たことないアンドリューで、恥ずかしい……」
「……それはこっちの台詞だ」
 また触れるだけのキスをされる。
 間近で柔らかく微笑まれ心臓が高鳴る。これまでの切ない痛みではない、きゅんと胸を締めつけられる苦しいようなこの甘さに、しばらくは苛まれるだろうことを覚悟した。
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