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第1章 星渡りのステラ
第2話 地球は大きな着ぐるみでした。
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言い訳をするなら、この時のわたしは、冷静じゃなかった。
動揺して動転して、正に混乱の極みだった。
いや、だってだよ?
地面の裏側からファスナーをこじ開けるみたいに地面が割れてパクッとお口が開いたと思ったら、中には宇宙が入っていたんだよ?
それを、目の当たりにしちゃったんだよ?
それはもう、巨大ファスナーがジャジャッ!――――じゃ済まない大衝撃なんだよ。
地球は丸かったのだと初めて知った人たちは、きっとこんな気持ちだったに違いない、とまで思ったよ?
そのせいで、思考がかなり暴走したことは、私も認める。
認めます。
で。思考が暴走したわたしは、学者気分で新たなる仮説を打ち立てた。
後から思えば、これも一つの現実逃避ってヤツだったのかもしれない。
そういうことにしておこうと思う。
で、まず一つ目の仮説。『地球ファスナー説』
仮説といっても、地球にファスナーがついていることは、わたしのなかでは、もう確定している。
何のためのファスナーなのかっていうのは、サッパリなので放置。
わたしが問題にしたのは、そこじゃなかった。
一体誰が、ファスナーをこじ開けたのか?
そこに注目した。
ファスナーは地球の内側から開けられた。
わたしには、そんな風に感じられた。
そして、地球の中には宇宙があった。
ということは、つまり。
地球の中には宇宙人が住んでいて、宇宙人がファスナーを開けたということになる!
恐るべき、新事実が発覚してしまった。
そして、ここで。
さらなる仮説が生み出された。
それは、『地球は大きな着ぐるみ説』だ。
わたしたちは、地球という星の表面で暮らしているのだと思っていた。
けれど、ファスナーの開閉が向こう側からということは、つまり。
わたしたちは、地球の表面ではなくて、地球の中で暮らしているのではないか?
わたしたちは、地球という大きな着ぐるみの中身であり、地球人は、地球の中の人だったのだ…………!
その点においてだけは幸いなことに、混乱と動揺の極みが生み出したアホな仮説(いや、これを仮説と言っていいものかどうかは分かんないけど)は、誰かにご披露申し上げる前に完全凍結した。
幸いだったのは本当にその一点だけで、事態としては最悪だった。
地球のピンチ的な意味で、最悪の事態だった。
宇宙が膨張しそうな気配を感じたのだ。
宇宙が溢れてきそうな気配。
宇宙が溢れて、地球が吞み込まれちゃう幻想が、思い浮かんだ。
地球の中の宇宙も、無限だったりするんだろうか?
それが、無尽蔵に溢れ出てきちゃったら、地球はどうなるの?
海よりも宇宙の方が広いんだよね?
大洪水ならぬ大洪宇宙が引き起こされちゃうってことだよね?
ノ、ノアの箱舟…………!
いや、違う!
ノアの箱宇宙船が必要だ!
ああ、でもダメだ!
今から造るんじゃ間に合わない!
だって、今にも溢れてきそう。
政府が密かに準備とかしくれてなければ、絶対間に合わない!
してくれてても、どのみちわたしは手遅れっぽいけど!
どうしよう?
どうすれば?
珍仮説を打ち立てている場合じゃなかった!
いや、でも待てよ?
誰かがファスナーを開けたから、こうなってるんだよね?
ということは、つまり。
ファスナーを閉じれば万事解決ってことじゃない?
……………………いや、ダメだぁ!
ファスナーは内側から開けられたんだから、内側から閉めないとじゃない?
でもって、それって、つまり。
あの宇宙の中に飛び込まないといけないってことだよね?
いや、無理!
だって、宇宙だよ?
生身で宇宙遊泳とか、確実にアウト!
宇宙服もないのに飛び込んだりしたら、ファスナー閉めるどころじゃないよ!
地球が終わる前に、わたしが終わる。
わたしが着ているセーラー服には、宇宙服の機能とか、そういうの実装されていないから!
ヤバい! マズい!
地球もわたしも、大ピンチ!
助けて! 助けて! 助けて! 助けて!
動揺して、動転して、藁にも縋りたいわたしは、ハッと閃いた。
そうだ! お地蔵さんにお願いしよう!
だって、もう。
こうなったら、神頼むしかない!
地球が宇宙で溺れるなんて神話レベルの大災害だよ?
人類がどうこうよりも、まず!
一介の女子高生がどうにか出来る問題じゃない!
わたしは、失礼を承知で、お地蔵さんにお尻を向けたまま、パンと手を合わせた。
目は閉じない。
今にも何かが起こりそうな地面の裂け目から「こんにちは」している宇宙から目を離したくない!
見えちゃうのも怖いけど、見えてない間に何かが起っちゃうのも怖いんだよ!
わたしは、こういう時はこの目で確認したい派なんだ!
だから、許して欲しい!
非常事態だから、許して欲しい!
「お地蔵様! 地球の平和をお守りください!」
もう一度。
さっきと同じ願いを。祈りを。
今度は、はっきりと声に出した。
ざっくりした願いなのは、自分でも分かっている。
でも、自分の考えで下手に具体的なお願いをして、その解決策が間違っていたら目も当てられない。
だから、方法はお地蔵様に丸投げすることにした。
英断だと思っている。
わたしごときが「たぶん、こうすれば地球は助かるんじゃないかな?」って勝手に判断した具体的な願い事をするよりも、方法も含めてお地蔵様にお任せしたほうが、上手くいくに違いないのだ。
結果的には、この行動が。
この行動こそが。
わたしの運命を変えたんじゃないかと思う。
それを知ったのは、ずっとずっとずっと後になってからのことだけど。
わたしは、この時。
自ら運命を引き寄せた。
お地蔵様は、願いを叶えてくれた。
地球の平和は守られた。
少なくとも、今目の前にある危機からは、守られた。
地球が丸ごと宇宙に溺れて滅びちゃう危機からは、とりあえず守られた。
地球の女子高生、御渡星灯愛の存在と引き換えに――――。
動揺して動転して、正に混乱の極みだった。
いや、だってだよ?
地面の裏側からファスナーをこじ開けるみたいに地面が割れてパクッとお口が開いたと思ったら、中には宇宙が入っていたんだよ?
それを、目の当たりにしちゃったんだよ?
それはもう、巨大ファスナーがジャジャッ!――――じゃ済まない大衝撃なんだよ。
地球は丸かったのだと初めて知った人たちは、きっとこんな気持ちだったに違いない、とまで思ったよ?
そのせいで、思考がかなり暴走したことは、私も認める。
認めます。
で。思考が暴走したわたしは、学者気分で新たなる仮説を打ち立てた。
後から思えば、これも一つの現実逃避ってヤツだったのかもしれない。
そういうことにしておこうと思う。
で、まず一つ目の仮説。『地球ファスナー説』
仮説といっても、地球にファスナーがついていることは、わたしのなかでは、もう確定している。
何のためのファスナーなのかっていうのは、サッパリなので放置。
わたしが問題にしたのは、そこじゃなかった。
一体誰が、ファスナーをこじ開けたのか?
そこに注目した。
ファスナーは地球の内側から開けられた。
わたしには、そんな風に感じられた。
そして、地球の中には宇宙があった。
ということは、つまり。
地球の中には宇宙人が住んでいて、宇宙人がファスナーを開けたということになる!
恐るべき、新事実が発覚してしまった。
そして、ここで。
さらなる仮説が生み出された。
それは、『地球は大きな着ぐるみ説』だ。
わたしたちは、地球という星の表面で暮らしているのだと思っていた。
けれど、ファスナーの開閉が向こう側からということは、つまり。
わたしたちは、地球の表面ではなくて、地球の中で暮らしているのではないか?
わたしたちは、地球という大きな着ぐるみの中身であり、地球人は、地球の中の人だったのだ…………!
その点においてだけは幸いなことに、混乱と動揺の極みが生み出したアホな仮説(いや、これを仮説と言っていいものかどうかは分かんないけど)は、誰かにご披露申し上げる前に完全凍結した。
幸いだったのは本当にその一点だけで、事態としては最悪だった。
地球のピンチ的な意味で、最悪の事態だった。
宇宙が膨張しそうな気配を感じたのだ。
宇宙が溢れてきそうな気配。
宇宙が溢れて、地球が吞み込まれちゃう幻想が、思い浮かんだ。
地球の中の宇宙も、無限だったりするんだろうか?
それが、無尽蔵に溢れ出てきちゃったら、地球はどうなるの?
海よりも宇宙の方が広いんだよね?
大洪水ならぬ大洪宇宙が引き起こされちゃうってことだよね?
ノ、ノアの箱舟…………!
いや、違う!
ノアの箱宇宙船が必要だ!
ああ、でもダメだ!
今から造るんじゃ間に合わない!
だって、今にも溢れてきそう。
政府が密かに準備とかしくれてなければ、絶対間に合わない!
してくれてても、どのみちわたしは手遅れっぽいけど!
どうしよう?
どうすれば?
珍仮説を打ち立てている場合じゃなかった!
いや、でも待てよ?
誰かがファスナーを開けたから、こうなってるんだよね?
ということは、つまり。
ファスナーを閉じれば万事解決ってことじゃない?
……………………いや、ダメだぁ!
ファスナーは内側から開けられたんだから、内側から閉めないとじゃない?
でもって、それって、つまり。
あの宇宙の中に飛び込まないといけないってことだよね?
いや、無理!
だって、宇宙だよ?
生身で宇宙遊泳とか、確実にアウト!
宇宙服もないのに飛び込んだりしたら、ファスナー閉めるどころじゃないよ!
地球が終わる前に、わたしが終わる。
わたしが着ているセーラー服には、宇宙服の機能とか、そういうの実装されていないから!
ヤバい! マズい!
地球もわたしも、大ピンチ!
助けて! 助けて! 助けて! 助けて!
動揺して、動転して、藁にも縋りたいわたしは、ハッと閃いた。
そうだ! お地蔵さんにお願いしよう!
だって、もう。
こうなったら、神頼むしかない!
地球が宇宙で溺れるなんて神話レベルの大災害だよ?
人類がどうこうよりも、まず!
一介の女子高生がどうにか出来る問題じゃない!
わたしは、失礼を承知で、お地蔵さんにお尻を向けたまま、パンと手を合わせた。
目は閉じない。
今にも何かが起こりそうな地面の裂け目から「こんにちは」している宇宙から目を離したくない!
見えちゃうのも怖いけど、見えてない間に何かが起っちゃうのも怖いんだよ!
わたしは、こういう時はこの目で確認したい派なんだ!
だから、許して欲しい!
非常事態だから、許して欲しい!
「お地蔵様! 地球の平和をお守りください!」
もう一度。
さっきと同じ願いを。祈りを。
今度は、はっきりと声に出した。
ざっくりした願いなのは、自分でも分かっている。
でも、自分の考えで下手に具体的なお願いをして、その解決策が間違っていたら目も当てられない。
だから、方法はお地蔵様に丸投げすることにした。
英断だと思っている。
わたしごときが「たぶん、こうすれば地球は助かるんじゃないかな?」って勝手に判断した具体的な願い事をするよりも、方法も含めてお地蔵様にお任せしたほうが、上手くいくに違いないのだ。
結果的には、この行動が。
この行動こそが。
わたしの運命を変えたんじゃないかと思う。
それを知ったのは、ずっとずっとずっと後になってからのことだけど。
わたしは、この時。
自ら運命を引き寄せた。
お地蔵様は、願いを叶えてくれた。
地球の平和は守られた。
少なくとも、今目の前にある危機からは、守られた。
地球が丸ごと宇宙に溺れて滅びちゃう危機からは、とりあえず守られた。
地球の女子高生、御渡星灯愛の存在と引き換えに――――。
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