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第1章 星渡りのステラ
第7話 星間プロポーズ
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自分は、恋愛至上主義の恋愛脳タイプじゃないんだって、そのことをちょっぴり残念に思いつつもホッとしたのは、ほんのついさっきのことだ。
だけど。
タイプとかそういう問題じゃないんだって、わたしは身をもって知った。
分からされた。
恋とは、病なのだ。
罹患したら、脳を冒される。
タイプとかじゃない。
症状なのだ。
そういうものなのだ。
とにもかくにも。
この時のわたしは、間違いなく。
異星(世)界恋愛ファンタジーのヒロインだった。
狭い絨毯の上で、わたしとレイジンは向き合って座っていた。
レイジンの右手は、私の肩にあり。
左手は、わたしの腰に回されていた。
見つめ合う二人。
二人だけの世界で星界。
わたしを見つめるレイジンの瞳に熱が集まっているのが分かる。
これから、わたしは。
大事な話をされるのだ。
星界にとって、そして、わたしたちにとって。
「異なる星界と星界を繋いだままにしておくことは、どちらの星界にとっても危険だ。星界の崩壊が進んでしまう。だから、揺らぎは閉じなくてはならない。そして、揺らぎが完全に閉じてしまったら、君は二度と元の星界……チキュウへは戻れなくなるだろう。だが、それでも…………」
レイジンは、まず星界にとっての大事な話をもう一度した。
わたしにとっても、大事な話だ。
わたしにとっての、よくない話でもある。
あ。好き。――――ってなった。
甘い言葉だけで誤魔化そうとせず、わたしにとって不利益になる情報もちゃんと教えてくれるところに誠実さを感じた。
わたしは、レイジンから目を逸らさず「それでも」の続きを待つ。
期待と共に。
「それでも、君を元の星界へ帰すことは出来ない。君の生活は保障する。この星界で、一緒に生きて欲しい」
「…………………………! は、はい!」
わたしは、半分声を裏返らせながら、申し出を受け入れた。
目は潤んでいた。
たぶん、顔は真っ赤だ。
だって、これって。
星間プロポーズってことだよね?
彼とわたしは、もしかして、もしかしなくても。
前世の星界で結ばれなかった恋人同士だったのかもしれない…………!
今生でこそ結ばれるべく、彼はわたしを探し出して、星界崩壊という大きな危険を冒してでも、わたしを迎えに来てくれたんだ!
そんなのもう、「はい」しかない!
「はい」しかないでしょう?
封印したはずの拗らせた暗黒が、今。
派手なファンファーレと共に息を吹き返した。
肩にのっていた手が、スルリと腕を伝い下りて行った。
そのまま、恋人繋ぎ。
腰の手は、そのまま。
絨毯が少し回転した。
繋いだ手が、上がる。
繋いだ手と手が、真っすぐ巨地蔵さんに向けられる。
「君の力が必要だ。ステラ、力を貸してくれ」
「は、はい!」
完全にヒロイン気分だった。
わたしのために星界は危険にさらされているんだから、わたしたちで星界をなんとかしなきゃって、そう思った。
そして、同時に。
ケーキ入刀みたいだな――――って。
不謹慎にもちょっぴりときめいていた。
だって、こんなの。
まんま、二人の初めての共同作業ってヤツじゃない?
「大丈夫だ。君には、鍵の力が宿っている。鍵の力は、星を守るための力だ」
「星を守る……」
「そうだ。俺は、この星を守るために全力を注ぐ。君は、君が元いた星界を守るんだ」
「え? で、でも、どうやって?」
鍵の力が宿っているって言われても、何をどうすればいいの?
これまで、一回も使ったことないんですが!?
使い方が分からないよ!?
「いいや、君はもう知っているはずだ。既にその力を使っている」
「へ?」
あ、変な声出た。
いや、だって!
い、いつ?
記憶にないんだけど!?
「君たちの星界の神……オジゾウサマに祈りを届けるんだ。チキュウのヘイワを祈るんだ。それが、オジゾウサマの力となる」
「あ…………」
わたしは、宇宙の海の中の空き地スペースの真上で揺らいでいる巨地蔵さんホログラムを見上げた。
必死の形相で、奮闘している巨地蔵さん。
地球を守るための防壁となり、地球崩壊の危機と闘っている巨地蔵さん。
わたしの神頼みが、巨地蔵さんの力になるってこと?
「さあ、やるぞ!」
「は、はい!」
レイジンが、繋いだ手の指にグッと力を込めた。
迷っている暇はなかった。
半信半疑だけど、やるしかない。
難しいこと、意味不明なことを言われたわけじゃない。
それが本当に力になるのか、ちょっぴり不安ではあるけれど。
でも、わたしにも、出来ることだ。
なら、やるしかない。
「青の鍵よ、顕現せよ。揺らぎを塞ぐ楔となりて星へ還れ」
「お地蔵様! 地球の平和をお守りください!」
(それと、厚かましいかもだけど、わたしの家族の平和もお守りください!)
静かだけれど力強い彼の声に、わたしも続いた。
指に力を込め返して、お腹の底から声を張る。
同時に、声には出さずに、もう一つの願いを胸の中で唱えた。
せめて、わたしは彼と結ばれて幸せに暮らしているって、夢で伝えてくれたらって、思った。
わたしが、前世を夢でみたように、わたしのこれからの幸せを、地球の家族に夢で伝えてくれたら、少しでも慰めになるんじゃないかって、そう思って。
だって、わたしは。
地球からは先立っちゃったけど、不幸じゃない。
そう。先立ってるけど、不幸じゃないのだ。
彼と結ばれて、これから幸せになるのだ。
胸に秘めた願い事がどうなるのかは、もう、わたしには確かめようがない。
でも、声に出した方の願いは、ちゃんと叶えられた。
ホロホロしていた巨地蔵さんが、合掌していた手を解いた。
その手が、空き地ホロの端に伸びていく。
いつの間にか、空き地ホロの端には、巨大なチャック……の持ち手が生まれていた。
なんか、突然生えてきたみたいに、チャックの持ち手みたいなのが出来ていた。
持ち手は、青く不思議に光る不思議金属っぽかった。
巨地蔵さんが、屈んで青い不思議金属を掴む。
ホロホロした石っぽい手が、ハッキリくっきりそこにある青い不思議金属っぽい持ち手をガッシと掴む。
そして、ホロホロしたその手は。
幽霊が物理しているみたいに、掴んだ青をジャジャッと横に動かして。
宇宙を閉じていく。
宇宙柄のドレスのファスナーを閉めるみたいに、宇宙を閉じていく。
実際には、持ち手だけで、ファスナーっていうかチャックの歯みたいなものは、見当たらない。
お地蔵さんが手を動かすと空き地が閉じていって、空き地ホロだった場所に宇宙の波が押し寄せていく。
そうして、完全に空き地が見えなくなって、海が全部宇宙で満たされると、青い持ち手もユラっと揺らいで消えていった。
巨地蔵さんは、役目を終えてもまだ残っていた。
ホロホロユラユラしながらも、まだそこにいた。
巨地蔵さんは、なぜかわたしに微笑みかけた。
いかにも御神仏って感じの、慈悲深い笑みだった。
そのまま、さあっと映像が崩れ――――。
崩れた粒子は川のように、わたしの中に流れ込んできた。
胸の中に、ぽぅっと暖かいものが灯った気がした。
…………え? なに? 何が起こったの?
わたし、お地蔵様と合体しちゃった――――?
だけど。
タイプとかそういう問題じゃないんだって、わたしは身をもって知った。
分からされた。
恋とは、病なのだ。
罹患したら、脳を冒される。
タイプとかじゃない。
症状なのだ。
そういうものなのだ。
とにもかくにも。
この時のわたしは、間違いなく。
異星(世)界恋愛ファンタジーのヒロインだった。
狭い絨毯の上で、わたしとレイジンは向き合って座っていた。
レイジンの右手は、私の肩にあり。
左手は、わたしの腰に回されていた。
見つめ合う二人。
二人だけの世界で星界。
わたしを見つめるレイジンの瞳に熱が集まっているのが分かる。
これから、わたしは。
大事な話をされるのだ。
星界にとって、そして、わたしたちにとって。
「異なる星界と星界を繋いだままにしておくことは、どちらの星界にとっても危険だ。星界の崩壊が進んでしまう。だから、揺らぎは閉じなくてはならない。そして、揺らぎが完全に閉じてしまったら、君は二度と元の星界……チキュウへは戻れなくなるだろう。だが、それでも…………」
レイジンは、まず星界にとっての大事な話をもう一度した。
わたしにとっても、大事な話だ。
わたしにとっての、よくない話でもある。
あ。好き。――――ってなった。
甘い言葉だけで誤魔化そうとせず、わたしにとって不利益になる情報もちゃんと教えてくれるところに誠実さを感じた。
わたしは、レイジンから目を逸らさず「それでも」の続きを待つ。
期待と共に。
「それでも、君を元の星界へ帰すことは出来ない。君の生活は保障する。この星界で、一緒に生きて欲しい」
「…………………………! は、はい!」
わたしは、半分声を裏返らせながら、申し出を受け入れた。
目は潤んでいた。
たぶん、顔は真っ赤だ。
だって、これって。
星間プロポーズってことだよね?
彼とわたしは、もしかして、もしかしなくても。
前世の星界で結ばれなかった恋人同士だったのかもしれない…………!
今生でこそ結ばれるべく、彼はわたしを探し出して、星界崩壊という大きな危険を冒してでも、わたしを迎えに来てくれたんだ!
そんなのもう、「はい」しかない!
「はい」しかないでしょう?
封印したはずの拗らせた暗黒が、今。
派手なファンファーレと共に息を吹き返した。
肩にのっていた手が、スルリと腕を伝い下りて行った。
そのまま、恋人繋ぎ。
腰の手は、そのまま。
絨毯が少し回転した。
繋いだ手が、上がる。
繋いだ手と手が、真っすぐ巨地蔵さんに向けられる。
「君の力が必要だ。ステラ、力を貸してくれ」
「は、はい!」
完全にヒロイン気分だった。
わたしのために星界は危険にさらされているんだから、わたしたちで星界をなんとかしなきゃって、そう思った。
そして、同時に。
ケーキ入刀みたいだな――――って。
不謹慎にもちょっぴりときめいていた。
だって、こんなの。
まんま、二人の初めての共同作業ってヤツじゃない?
「大丈夫だ。君には、鍵の力が宿っている。鍵の力は、星を守るための力だ」
「星を守る……」
「そうだ。俺は、この星を守るために全力を注ぐ。君は、君が元いた星界を守るんだ」
「え? で、でも、どうやって?」
鍵の力が宿っているって言われても、何をどうすればいいの?
これまで、一回も使ったことないんですが!?
使い方が分からないよ!?
「いいや、君はもう知っているはずだ。既にその力を使っている」
「へ?」
あ、変な声出た。
いや、だって!
い、いつ?
記憶にないんだけど!?
「君たちの星界の神……オジゾウサマに祈りを届けるんだ。チキュウのヘイワを祈るんだ。それが、オジゾウサマの力となる」
「あ…………」
わたしは、宇宙の海の中の空き地スペースの真上で揺らいでいる巨地蔵さんホログラムを見上げた。
必死の形相で、奮闘している巨地蔵さん。
地球を守るための防壁となり、地球崩壊の危機と闘っている巨地蔵さん。
わたしの神頼みが、巨地蔵さんの力になるってこと?
「さあ、やるぞ!」
「は、はい!」
レイジンが、繋いだ手の指にグッと力を込めた。
迷っている暇はなかった。
半信半疑だけど、やるしかない。
難しいこと、意味不明なことを言われたわけじゃない。
それが本当に力になるのか、ちょっぴり不安ではあるけれど。
でも、わたしにも、出来ることだ。
なら、やるしかない。
「青の鍵よ、顕現せよ。揺らぎを塞ぐ楔となりて星へ還れ」
「お地蔵様! 地球の平和をお守りください!」
(それと、厚かましいかもだけど、わたしの家族の平和もお守りください!)
静かだけれど力強い彼の声に、わたしも続いた。
指に力を込め返して、お腹の底から声を張る。
同時に、声には出さずに、もう一つの願いを胸の中で唱えた。
せめて、わたしは彼と結ばれて幸せに暮らしているって、夢で伝えてくれたらって、思った。
わたしが、前世を夢でみたように、わたしのこれからの幸せを、地球の家族に夢で伝えてくれたら、少しでも慰めになるんじゃないかって、そう思って。
だって、わたしは。
地球からは先立っちゃったけど、不幸じゃない。
そう。先立ってるけど、不幸じゃないのだ。
彼と結ばれて、これから幸せになるのだ。
胸に秘めた願い事がどうなるのかは、もう、わたしには確かめようがない。
でも、声に出した方の願いは、ちゃんと叶えられた。
ホロホロしていた巨地蔵さんが、合掌していた手を解いた。
その手が、空き地ホロの端に伸びていく。
いつの間にか、空き地ホロの端には、巨大なチャック……の持ち手が生まれていた。
なんか、突然生えてきたみたいに、チャックの持ち手みたいなのが出来ていた。
持ち手は、青く不思議に光る不思議金属っぽかった。
巨地蔵さんが、屈んで青い不思議金属を掴む。
ホロホロした石っぽい手が、ハッキリくっきりそこにある青い不思議金属っぽい持ち手をガッシと掴む。
そして、ホロホロしたその手は。
幽霊が物理しているみたいに、掴んだ青をジャジャッと横に動かして。
宇宙を閉じていく。
宇宙柄のドレスのファスナーを閉めるみたいに、宇宙を閉じていく。
実際には、持ち手だけで、ファスナーっていうかチャックの歯みたいなものは、見当たらない。
お地蔵さんが手を動かすと空き地が閉じていって、空き地ホロだった場所に宇宙の波が押し寄せていく。
そうして、完全に空き地が見えなくなって、海が全部宇宙で満たされると、青い持ち手もユラっと揺らいで消えていった。
巨地蔵さんは、役目を終えてもまだ残っていた。
ホロホロユラユラしながらも、まだそこにいた。
巨地蔵さんは、なぜかわたしに微笑みかけた。
いかにも御神仏って感じの、慈悲深い笑みだった。
そのまま、さあっと映像が崩れ――――。
崩れた粒子は川のように、わたしの中に流れ込んできた。
胸の中に、ぽぅっと暖かいものが灯った気がした。
…………え? なに? 何が起こったの?
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