スパダリホストと溺愛子育て始めます 愛されリーマンの明るい家族計画

餡玉(あんたま)

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秋の番外編

ハロウィンナイトは砂糖菓子〈1〉

おはようございます、餡玉です。
ハロウィンネタをふわっと思いついたので書きました♡

全三話で、本日中には最後までアップさせていただきます。どうぞよろしくお願いします!




˚✧₊⁎⁎⁺˳✧༚✩⑅⋆˚˚✧₊⁎⁎⁺˳✧༚✩⑅⋆˚˚✧₊⁎⁎⁺˳✧༚✩⑅⋆˚



「うわ~! にいちゃん、おみみ! かわいいねぇ!」
「へへ、だろ~。結構似合うだろ? おまえも似合うじゃん、すげー可愛いじゃん」
「うん! ねこちゃんだねぇ」
「ねこちゃん……いや、ちげーって。これ猫じゃねーから。狼だよ狼」
「おおかみなの?」

 リビングから聞こえて来る早瀬兄弟の声に、壱成は思わず笑顔になる。洗面所の鏡に映るのは、前髪をオールバックにして襟の高い黒シャツを着込んだ自分の姿だ。これからヴァンパイアに扮する予定なのである。

 今日は夕方から、ほしぞら保育園のハロウィンイベントがある。自宅で少し早めの夕飯を食べた後に保育園に集合し、お菓子を交換し合いつつ交流を深める行事らしいが、彩人も実際参加するのは初めてらしい。
 空はかねてからハロウィンイベントに参加したがっていたらしいが、週一の休みはなるべく体力温存に使いたい彩人は、空を説き伏せて参加を見送ってきたという。だが、満を持して今日は初のイベント参加だ。空は朝から大はしゃぎである。

「いっせー! みてみてぇ!」

 とそこへ、たたたた! という可愛らしい足音と共に、小さなおおかみが駆けてきた。

「がおー、おおかみおとこだぞー!」

 得意満面の笑顔で両手を広げる空の仮装は、茶色い獣耳も愛らしい狼男である。このカチューシャ型のケモ耳と、ふさふさの尻尾のセットは、今日の昼間に三人で買いに行ったものだ。
 楽しそうにはしゃいでいる空の気分を示すかのように、髪の毛の色に馴染んだ茶色い耳はピンと元気に立ち上がっていて、今にもぴょこぴょこ動き出しそうだ。
 
 夜は冷え込むため、茶色いボア素材の上着を来ている空だが、そのモコモコ感が絶妙に子狼らしい丸っこさで、実に可愛い。天元突破した空のかわいらしさを目の当たりにして、壱成は「うっ」と呻いて胸を押さえた。

「う、うっ……かわいい……!」
「ええー、こわがってよぉ。おおかみおとこだもん」
「えっ!? あ、そっか……う、うわー、おおかみだぁ! 食べられるー!」
「たべちゃうぞー! まてーっ!」

 怖がるふりをしつつリビングに逃げ込むと……そこには、ぴんと尖った茶色いケモ耳を装着した彩人がいた。しかも、ビシッとしたツイードのスーツを身に纏い、ご丁寧にベルトに尻尾まで装備している。

 初めは「恥ずくね? 俺までコスプレする必要あんのかなぁ」とぼやいていた彩人だが、いざ空が衣装選びを始めると俄然やる気が湧いてきたのか、仮装セットを選びにも熱が入っていた。普段から外へ出て行く時の装いにはこだわる彩人だ、わざわざ自分の髪の毛の色に合わせたケモ耳を選んでいたものである。

 ショッピングセンターではハロウィングッズが特設されていて、子ども向け大人向けにと充実のラインナップが組まれていた。しかも、大人向けのものはお値段のわりに結構なハイクオリティで、衣装を見ているだけでも楽しいものだった。

 もっとも、初めは壱成がお手軽にケモ耳をつけて保育園に行く予定だった。
 だが、ショッピングモールで黒いケモ耳を試着して「はは、うける。見ろよこれー」と彩人に向き直った途端、彩人は大真面目な顔で「……うわ、エロっ! そんなのつけて外出るとか絶対ダメだし!」と言い、素早く壱成からケモ耳を取り去ってしまった。

 エロさの意味もよく分からないまま、結局、壱成は黒いマントで吸血鬼。彩人と空は狼男に扮することで落ち着いたのだった。
 壱成のマントもなかなかの本格仕様だ。後頭部あたりまで隠すほどの高さまで襟のあるマントの裏地は、血の色を彷彿とさせるワインレッド。しっとりとした生地には光沢があり、ドラキュラ感が溢れている。

 コスプレは未経験だし、普段とは異なる夜のイベントだ。緊張もあるが、はしゃぐ空を見ていると嬉しいし、三人揃ってほしぞらへ行くことも稀なので、少なからずわくわくしている。

 ——しかし……カッコいいな。ケモ耳まで似合うのかよ彩人のやつ……。

 ケモ耳がついているというのに、普段使い用の時計を手首に巻いているだけの姿さえ、べらぼうに格好がいい。壱成はしばし呆然と、彩人の狼男……もとい、オオカミ紳士の仮装に見惚れてしまった。

 すると、彩人がふと壱成に気づき、ぱぁぁと満面の笑顔を見せた。

「うわ、壱成かっけーじゃん! オールバックすげぇイイよ!」
「えっ……あ、そ、そう?」
「黒シャツとか新鮮だし、すげぇカッコいい。惚れる」
「……ほ、惚れるって、おい! 空くんの前で……っ!!」

 ニコニコしながらさらりとそんなことを口にする彩人を黙らせようとしたけれど、空はとっくに、カボチャ型のバケツに入ったおやつを数えることに夢中になっている。気が抜けた。

「ま、まぁ……うん、ありがと。てか彩人、すげぇ完璧じゃん。気合い入ってんな」
「へへ、せっかくだしちゃんとしてみよっかなーと思って」
「そっか……まぁ、ショッピングモールのケモ耳とは思えないくらいキマってる」
「へへ、ほんと? サンキュ」
「だいたい空くんとセットとかさ、もうどんだけ可愛いんだよって感じだし。ケモ耳まで似合うとかほんっとお前はなんなんだよ」
「ははっ、何キレてんの」

 に、と彩人が嬉しそうに声を立てて笑うと、耳たぶで小粒な金色のピアスがきらりと光った。何から何まで眩しいほどにかっこいい上、今日はケモ耳がついているせいか、妙なかわいらしさがある。撫でくりまわしたい気分を抑えきれず、壱成は手を伸ばして彩人の頭を控えめに撫でてみた。
 すると彩人は壱成に向き直り、誘うような目つきで小首を傾げた。

「なになに? 俺、そんなに可愛い?」
「いや……なんとなく。ムツゴロウさん的な気持ちで」
「あはっ、なんだよそれー。それならもっと大胆に撫で回してくれていーんだぜ?」
「だ、大胆にって……」

 もわもわと壱成の脳裏に浮かぶのは、ケモ耳姿の彩人が獣じみた雄々しい表情で迫ってくる妄想である。クンクンと匂いを嗅がれたり、ぺろぺろとあちこち敏感なところを舐められたり、鋭い牙を立てられながら激しく求められるといったピンク色のイメージに……気づけば顔が熱くなっている。

「……壱成、今エロいこと考えたろ」
「は……はっ!? いやいやそんなことないし。俺、ムツゴロウさんのこと考えてただけだし」
「嘘つけ♡ 俺さ、最近お前の考えてることなんとなく分かるんだからな」
「えっ…………」
「ほら図星じゃん!! そうか……壱成はコスプレエッ……」
「……はっ。や、やめろ! それ以上言うな!!」

 ふと気づくと、空が不思議そうな顔で兄二人を見上げているのだ。くもりのない空の眼差しを前にしてしまうと、ふしだらな妄想に脳みそをピンク色に染めていることが恥ずかしくなる。

「いっせー、おれのあたまもなでなでしてよぉ。にーちゃんばっかずるいでしょー」
「だ、だよな~~!」

 壱成は空の前にしゃがみ込み、なでなでわしわしと空を撫でたあと、もこもこのボアに包まれたあったかい身体をぎゅっと抱きしめた。すると空はきゃっきゃと楽しげな笑い声をあげ、「おおかみおとこのちがすわれるー!」と大はしゃぎだ。

 その様子を微笑みながら見守っていた彩人がふと時計を見上げ、ふたりに向かってこう言った。

「お、そろそろ出ねーとだな。空、トイレ行っとけよ」
「さっきいったもーん」
「さっきっていつだ? もう一回行っとけ」
「えーっ」

 我ながら恥ずかしい想像をしてしまったもんだと己に呆れつつも、トイレに駆けてゆく空を見送って、壱成もまたヴァンパイアになりきるべく、光沢のある黒いマントをさっと羽織った。
 
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