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コミックス発売記念SS
『あいこ先生の奮闘』
「さぁ、今日はおとうさんや、いつもお世話になっているひとに、ありがとうを伝える絵を描くよ~!」
父の日が近い。
愛子の受け持つ四歳児クラスでも、今日は父の日にプレゼントする絵を描く時間を設けている。以前は父親を園に招いて小さなイベントを行なっていたが、今は絵を描いてプレゼントするかたちになった。
二十四時間保育を行なっている『ほしぞら保育園』に限らず、片親であったり、複雑な事情を抱えた家庭は多い。『母の日』や『父の日』をどう扱うかについては、園内でもさまざまな議論が行われ、保護者の意見も取り入れつつ今の形となったのだ。
コの字型に並べた小さな机で、思い思いに絵を描く園児たちに声をかけつつ見回っているとき、愛子はふと耳にしてしまった。
空が累にこっそりと「だれをかけばいいのかなぁ……」と問いかけている。
あらかじめ『誰を描いてもいいからね』と伝えてあり、空もそれを理解している様子だったのだが、やはり何か思うところがあるのだろうか——……
「どうしたの、空くん?」
「そらのうち、にぃちゃんといっせー、ふたりいるでしょ? どっちがおとうさんなのかなぁ」
「ど、どっちが、お父さん?」
「うん。ははのひは、あいこせんせいのえをかいたけど、ちちのひはどっちをかいたらいいのかなぁって」
「ああ……」
そう、空は『母の日』とき、愛子の絵を描いたのだ。
今回と同様、『いつもお世話になっている人』というお題を提示したところ、迷うことなく愛子の顔をクレヨンで描いてくれた。
あまりの愛おしさと尊さに、空をぎゅうぎゅう抱きしめて頬をすりすりしながら咽び泣きたくなったけれど、愛子はプロの保育士だ。いくら嬉しいことがあったとしても、園児が怯えるような取り乱し方はしないのである。
「あああああ~~~~!! 空くんありがとう~~!! 可愛い!! ほんと可愛い!! 先生世界で一番幸せ者だよぉ~~~~!!」と、内心では大騒ぎをしつつも、保育士然とした優しい笑顔とともに空の頭を撫で、「ありがとう、空くん。先生すっごく嬉しい。大切にするね!」と絵を抱きしめたのだった。
「そっか、それでちょっと迷っちゃってるんだね」
「うん、どっちがおとうさんぽいのかなぁっておもったの」
「なるほどね。どっちがお父さんぽいか、か……」
愛子は腕組みをして目を閉じ、シンプルに彩人と壱成のどちらが”お父さん”ぽいのか考えた。
——わたしとしては、どちらかというと霜山さんのほうが母性に溢れているように感じるけど……。だって霜山さん、空くんを迎えにくる時の笑顔がまるで聖母だもの。後光とあたたかい光が溢れているもの。つまり、どちらかというと霜山さんが”お母さん”かな。つまり、霜山さんが受……
降って湧いてきたピンク色の妄想に、愛子はくわっと目を見開いた。
いけないいけないと自分を戒め、想像することを堅く禁じてきたとある妄想が、頭の中でブワッと花開いてしまったのだ。
——だっ……ダメよ愛子!! ダメダメダメダメ!! 早瀬さんと霜山さんでそんな妄想をするなんて言語道断不埒千万!! 失礼だしありえないでしょ!! けしからんわ人間として終わってるわ……ッッ!!
愛子は内心、自らの髪を掻き回し、頬を思い切り引っ叩いた。
彩人が壱成を麗しく抱きしめ、あたかもキスを迫っているかのような姿を想像しかけている自分を、全力で戒めねばならない。保護者をそんな目で見るなんて、あってはならないことだ。なぜなら愛子はプロなのだから。
激情を抑えるべく、片手で額を押さえて「すーーーーーはーーーーー!!」と激しく深呼吸していると……累と空が、怯えたような目で愛子を見上げていた。
愛子は瞬時にくるっと笑顔になり、「ごめんごめん、くしゃみ出そうになっちゃった」とごまかした。
すると累が透き通るような青い瞳で「あいこせんせい、かぜですか?」と心配そうに気遣ってくれるのだ。
いたたまれなすぎて、愛子は園庭の砂場に埋もれたくなった。
「え、ええとね! どっちがどっちでも……じゃなくて、お兄さんたちふたりを描いたらどうかな!?」
「ふたりとも?」
「そう。どちらかひとりなんて決められないよね! どちらのお兄様も、空くんのことが大好きで、空くんを大切にしていて、すっごく優しいご家族だものね」
愛子がにっこり微笑むと、空はぱぁっと明るい笑顔になった。
「うん、じゃあにぃちゃんといっせー、どっちもかくねぇ」
「うんうん、それがいいと思うなッ! お兄さんたち、絶対すっごく喜ぶよ~!」
空は大きく頷いて、真っ白な画用紙に迷うことなく雪だるまのような人物画を描きはじめた。
やがてそこには栗色の髪の毛が生まれ、ぱちっとした大きな目がぐりぐりとクレヨンで描き入れられてゆく。鋭角な襟元はスーツだろうか。腕には時計らしき丸いものをつけたりと、なかなかに描写が細かい。
「これはねぇ、にぃちゃん。つぎはいっせー」
「うんうん!」
空は彩人の隣に、少し小ぶりな雪だるまをひとつ描き、黒髪とスーツを迷いのない筆致で描いてゆく。ぷっくりとした小さな手にクレヨンをしっかりと握りしめ、口元に楽しそうな笑みを浮かべながら。
壱成の顔をニコちゃんマークのような笑顔で仕上げ、空は満足げに額の汗を拭った。その拍子にまっしろなおでこに、壱成のスーツを塗った青いクレヨンがついてしまった。
「そらくん、クレヨンついてるよ。ふいてあげるね」
すかさず、累が手近にあったウェットティッシュを素早く手に取り、空の世話を焼こうとしている。プロの保育士であるわたしをも凌駕する素晴らしい反応だわ……と、愛子は心底感心してしまった。
「こっちをむいて、ぼくをみて? ちょっとこするから、いたかったらいうんだよ?」
「うん」
小さな手を空のほっぺたにそっ……と添え、累は空の額を優しく拭いはじめた。
空はやや顎を上げて目を閉じ、累のされるがままになっている。
——あああ……天使の戯れ……
「はい! きれいになったよ!」
「わぁ、ありがとう、るい!」
にこにこと微笑みあっているちびっ子たちの姿はあまりにも可愛らしく、愛子は両手を合わせて拝みそうになった。愛らしいふたりの優しいやり取りに、日々の激務による疲労がきれいさっぱり洗い流されてゆく。
「? あいこせんせい、どうしたの? なんでおててをあわせてるの?」
天から降り注ぐ柔らかな光を振り仰いでいた愛子を見て、累が不思議そうに首を傾げている。……いけない、本当に合掌していたらしい。
「ううん! なんでもないよッ!! さ、累くんは誰の絵を描いたのかな!?」
パッと気を取り直して累の画用紙を見てみると……累の父親らしい男性が、コロンとした三頭身で描かれていた。とてもいい笑顔だが、九割が肌色で、黒いパンツがかろうじて穿かされているような状態だ。
「これ、パパ。おさけのむとわらいがとまらなくなって、ふくをぬいじゃうの」
「あ、へえ~そうなんだ……」
累の父親は官僚だ。いつも折り目正しく保育士に接しているパリッとした累の父親が、家ではパンツ一枚で酔いどれているという事実を知り……愛子は心の目を閉じ、何も聞かなかったことにしてにっこり笑った。
そう、子どもはとても素直なのだ。
「でーきた! みてー! あいこせんせい!」
そのとき、空が満足げな声を上げた。
画用紙の中で、彩人と壱成がしっかりと手を繋いでいる。
背景には、色とりどりに咲き乱れるたくさんの花。青空にはさんさんと明るい太陽が輝いている。
スーツ姿のふたりは、こちらまで微笑んでしまいたくなるような明るい笑顔だ。幸せオーラが溢れ出す一枚を前にして、愛子は思わず両手で口元を覆った。
「わぁ……! すっごく素敵だね! ああ……なにかしらこの多幸感……いつまでも拝んでいられる……」
「え? なんて?」
「んっ!? いやいやなんでもないよっ! お兄さんたち、きっとすごく喜ぶね!」
「うん!」
この絵を受け取った壱成と彩人がどのような反応を見せるのだろう。きっと、ものすごく喜んで、すぐに壁に貼ったりするのだろう。
そして空が寝静まったあと。
きっとふたりは肩を寄せ合い、その絵を幸せそうに眺めながら——……
——ああああ~~~~~!! ダメよ!! ダメダメダメダメ!! ダメっていってんのになんて妄想してるのよわたしのバカッ!! ほんっとどうかしてるわ人間としてどうかしてる!! 恥を知りなさいわたしッ……!!
そのとき、外遊びの時間を告げる軽やかなメロディが保育室の中に響き渡った。
ハッとした愛子は超速で保育士の顔に戻ったつもりだが、コの字型に並んだ机の中心で百面相を繰り広げていた愛子に注がれる園児たちの視線は、明らかに訝しげで……。
「はいっ! みんなとっても素敵な絵が描けたね! お迎えの時に渡せるように、あとでリボンをかけようね!」
裏返った声で元気いっぱいそう言うと、園児たちは揃って「はーい!」と手を上げてくれた。ぱたぱたと子どもたちが外へ遊びにいく後ろ姿を見送りながら、愛子はため息をついた。
「仕事中にあんな妄想……だめだわ、わたしはまだまだ修行が足りない」
愛子はそう独りごちて、園庭でころころと走り回っているちびっ子たちを見守った。
空と累は、今日は鬼ごっこに参加しているようだ。活発に走り回る空に引っ張られて、累も珍しくはしゃいだ笑顔を見せている。
——そうよ、萌え転がっている場合じゃない。わたしの使命は、子どもたちの笑顔を守ること……!
ぐっと拳を握り締め、決意を新たにする愛子である。
だが、ふとした拍子に目に入った空の絵を前にして……愛子はまた、人知れず合掌するのだった。
おしまい♡
父の日が近い。
愛子の受け持つ四歳児クラスでも、今日は父の日にプレゼントする絵を描く時間を設けている。以前は父親を園に招いて小さなイベントを行なっていたが、今は絵を描いてプレゼントするかたちになった。
二十四時間保育を行なっている『ほしぞら保育園』に限らず、片親であったり、複雑な事情を抱えた家庭は多い。『母の日』や『父の日』をどう扱うかについては、園内でもさまざまな議論が行われ、保護者の意見も取り入れつつ今の形となったのだ。
コの字型に並べた小さな机で、思い思いに絵を描く園児たちに声をかけつつ見回っているとき、愛子はふと耳にしてしまった。
空が累にこっそりと「だれをかけばいいのかなぁ……」と問いかけている。
あらかじめ『誰を描いてもいいからね』と伝えてあり、空もそれを理解している様子だったのだが、やはり何か思うところがあるのだろうか——……
「どうしたの、空くん?」
「そらのうち、にぃちゃんといっせー、ふたりいるでしょ? どっちがおとうさんなのかなぁ」
「ど、どっちが、お父さん?」
「うん。ははのひは、あいこせんせいのえをかいたけど、ちちのひはどっちをかいたらいいのかなぁって」
「ああ……」
そう、空は『母の日』とき、愛子の絵を描いたのだ。
今回と同様、『いつもお世話になっている人』というお題を提示したところ、迷うことなく愛子の顔をクレヨンで描いてくれた。
あまりの愛おしさと尊さに、空をぎゅうぎゅう抱きしめて頬をすりすりしながら咽び泣きたくなったけれど、愛子はプロの保育士だ。いくら嬉しいことがあったとしても、園児が怯えるような取り乱し方はしないのである。
「あああああ~~~~!! 空くんありがとう~~!! 可愛い!! ほんと可愛い!! 先生世界で一番幸せ者だよぉ~~~~!!」と、内心では大騒ぎをしつつも、保育士然とした優しい笑顔とともに空の頭を撫で、「ありがとう、空くん。先生すっごく嬉しい。大切にするね!」と絵を抱きしめたのだった。
「そっか、それでちょっと迷っちゃってるんだね」
「うん、どっちがおとうさんぽいのかなぁっておもったの」
「なるほどね。どっちがお父さんぽいか、か……」
愛子は腕組みをして目を閉じ、シンプルに彩人と壱成のどちらが”お父さん”ぽいのか考えた。
——わたしとしては、どちらかというと霜山さんのほうが母性に溢れているように感じるけど……。だって霜山さん、空くんを迎えにくる時の笑顔がまるで聖母だもの。後光とあたたかい光が溢れているもの。つまり、どちらかというと霜山さんが”お母さん”かな。つまり、霜山さんが受……
降って湧いてきたピンク色の妄想に、愛子はくわっと目を見開いた。
いけないいけないと自分を戒め、想像することを堅く禁じてきたとある妄想が、頭の中でブワッと花開いてしまったのだ。
——だっ……ダメよ愛子!! ダメダメダメダメ!! 早瀬さんと霜山さんでそんな妄想をするなんて言語道断不埒千万!! 失礼だしありえないでしょ!! けしからんわ人間として終わってるわ……ッッ!!
愛子は内心、自らの髪を掻き回し、頬を思い切り引っ叩いた。
彩人が壱成を麗しく抱きしめ、あたかもキスを迫っているかのような姿を想像しかけている自分を、全力で戒めねばならない。保護者をそんな目で見るなんて、あってはならないことだ。なぜなら愛子はプロなのだから。
激情を抑えるべく、片手で額を押さえて「すーーーーーはーーーーー!!」と激しく深呼吸していると……累と空が、怯えたような目で愛子を見上げていた。
愛子は瞬時にくるっと笑顔になり、「ごめんごめん、くしゃみ出そうになっちゃった」とごまかした。
すると累が透き通るような青い瞳で「あいこせんせい、かぜですか?」と心配そうに気遣ってくれるのだ。
いたたまれなすぎて、愛子は園庭の砂場に埋もれたくなった。
「え、ええとね! どっちがどっちでも……じゃなくて、お兄さんたちふたりを描いたらどうかな!?」
「ふたりとも?」
「そう。どちらかひとりなんて決められないよね! どちらのお兄様も、空くんのことが大好きで、空くんを大切にしていて、すっごく優しいご家族だものね」
愛子がにっこり微笑むと、空はぱぁっと明るい笑顔になった。
「うん、じゃあにぃちゃんといっせー、どっちもかくねぇ」
「うんうん、それがいいと思うなッ! お兄さんたち、絶対すっごく喜ぶよ~!」
空は大きく頷いて、真っ白な画用紙に迷うことなく雪だるまのような人物画を描きはじめた。
やがてそこには栗色の髪の毛が生まれ、ぱちっとした大きな目がぐりぐりとクレヨンで描き入れられてゆく。鋭角な襟元はスーツだろうか。腕には時計らしき丸いものをつけたりと、なかなかに描写が細かい。
「これはねぇ、にぃちゃん。つぎはいっせー」
「うんうん!」
空は彩人の隣に、少し小ぶりな雪だるまをひとつ描き、黒髪とスーツを迷いのない筆致で描いてゆく。ぷっくりとした小さな手にクレヨンをしっかりと握りしめ、口元に楽しそうな笑みを浮かべながら。
壱成の顔をニコちゃんマークのような笑顔で仕上げ、空は満足げに額の汗を拭った。その拍子にまっしろなおでこに、壱成のスーツを塗った青いクレヨンがついてしまった。
「そらくん、クレヨンついてるよ。ふいてあげるね」
すかさず、累が手近にあったウェットティッシュを素早く手に取り、空の世話を焼こうとしている。プロの保育士であるわたしをも凌駕する素晴らしい反応だわ……と、愛子は心底感心してしまった。
「こっちをむいて、ぼくをみて? ちょっとこするから、いたかったらいうんだよ?」
「うん」
小さな手を空のほっぺたにそっ……と添え、累は空の額を優しく拭いはじめた。
空はやや顎を上げて目を閉じ、累のされるがままになっている。
——あああ……天使の戯れ……
「はい! きれいになったよ!」
「わぁ、ありがとう、るい!」
にこにこと微笑みあっているちびっ子たちの姿はあまりにも可愛らしく、愛子は両手を合わせて拝みそうになった。愛らしいふたりの優しいやり取りに、日々の激務による疲労がきれいさっぱり洗い流されてゆく。
「? あいこせんせい、どうしたの? なんでおててをあわせてるの?」
天から降り注ぐ柔らかな光を振り仰いでいた愛子を見て、累が不思議そうに首を傾げている。……いけない、本当に合掌していたらしい。
「ううん! なんでもないよッ!! さ、累くんは誰の絵を描いたのかな!?」
パッと気を取り直して累の画用紙を見てみると……累の父親らしい男性が、コロンとした三頭身で描かれていた。とてもいい笑顔だが、九割が肌色で、黒いパンツがかろうじて穿かされているような状態だ。
「これ、パパ。おさけのむとわらいがとまらなくなって、ふくをぬいじゃうの」
「あ、へえ~そうなんだ……」
累の父親は官僚だ。いつも折り目正しく保育士に接しているパリッとした累の父親が、家ではパンツ一枚で酔いどれているという事実を知り……愛子は心の目を閉じ、何も聞かなかったことにしてにっこり笑った。
そう、子どもはとても素直なのだ。
「でーきた! みてー! あいこせんせい!」
そのとき、空が満足げな声を上げた。
画用紙の中で、彩人と壱成がしっかりと手を繋いでいる。
背景には、色とりどりに咲き乱れるたくさんの花。青空にはさんさんと明るい太陽が輝いている。
スーツ姿のふたりは、こちらまで微笑んでしまいたくなるような明るい笑顔だ。幸せオーラが溢れ出す一枚を前にして、愛子は思わず両手で口元を覆った。
「わぁ……! すっごく素敵だね! ああ……なにかしらこの多幸感……いつまでも拝んでいられる……」
「え? なんて?」
「んっ!? いやいやなんでもないよっ! お兄さんたち、きっとすごく喜ぶね!」
「うん!」
この絵を受け取った壱成と彩人がどのような反応を見せるのだろう。きっと、ものすごく喜んで、すぐに壁に貼ったりするのだろう。
そして空が寝静まったあと。
きっとふたりは肩を寄せ合い、その絵を幸せそうに眺めながら——……
——ああああ~~~~~!! ダメよ!! ダメダメダメダメ!! ダメっていってんのになんて妄想してるのよわたしのバカッ!! ほんっとどうかしてるわ人間としてどうかしてる!! 恥を知りなさいわたしッ……!!
そのとき、外遊びの時間を告げる軽やかなメロディが保育室の中に響き渡った。
ハッとした愛子は超速で保育士の顔に戻ったつもりだが、コの字型に並んだ机の中心で百面相を繰り広げていた愛子に注がれる園児たちの視線は、明らかに訝しげで……。
「はいっ! みんなとっても素敵な絵が描けたね! お迎えの時に渡せるように、あとでリボンをかけようね!」
裏返った声で元気いっぱいそう言うと、園児たちは揃って「はーい!」と手を上げてくれた。ぱたぱたと子どもたちが外へ遊びにいく後ろ姿を見送りながら、愛子はため息をついた。
「仕事中にあんな妄想……だめだわ、わたしはまだまだ修行が足りない」
愛子はそう独りごちて、園庭でころころと走り回っているちびっ子たちを見守った。
空と累は、今日は鬼ごっこに参加しているようだ。活発に走り回る空に引っ張られて、累も珍しくはしゃいだ笑顔を見せている。
——そうよ、萌え転がっている場合じゃない。わたしの使命は、子どもたちの笑顔を守ること……!
ぐっと拳を握り締め、決意を新たにする愛子である。
だが、ふとした拍子に目に入った空の絵を前にして……愛子はまた、人知れず合掌するのだった。
おしまい♡
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