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フルーツタルト
しおりを挟む「フルーツタルトが食べたい」
縁側で日向ぼっこと言う日光浴をしながらそう思う。私の生きるこの平安時代にはあまりにもスイーツが少なすぎるのだ。デザートとして出てくるのは果物や芋ばかりで、それさえも毎日食べるなんてことはできない。そもそも砂糖が貴重なものである以上、甘味が少ないのは仕方がないが体はフルーツタルトを欲してならない。
いつの日か、私はとても不思議な格好をした人と出会った。その人は最初、言葉が通じなかったが私が数回言葉を投げかけると何かに納得したような表情をした後、私がわかる言葉を喋り始めた。その時は特に気にしなかったが、今思えば随分と変な人だったと思う。
そのままいくつか話をした。最近の市井の様子やどんな書物が好きか、果てには大きな声では言えない政の話まで。そのうちの一つに甘味に関する話がある。その人は今まで聞いたことのない食べ物の名前を挙げて、それぞれについて私に説明をしてくれた。モンブランと言う栗を使ったものや、スイートポテトと言う芋を使ったデザート。元にするのは私も食べているものなのに、何一つ知っているものがなかった。これら以外のものもいくつか教えてくれて、しかも実際に一つだけ作ってくれたのだ。それがフルーツタルトである。正直作っているところを見ても何をやっているのかよくわからなかったが、とてつもなく美味しかったのは覚えている。上にのる色とりどりの果物はもちろん、その下にあるクッキー生地もおいしい。私は何かを評価することが苦手なのでこれくらいしか言えないが、とにかく美味しかった。
あの人が旅立った後に、自分でもそれっぽい動きで作ってみたが全然ダメ。
素材が貴重なのは分かっていたことだから色々調べ上げて至る所からかき集めた。そしてどうにかこうにか作ってみたが、どう頑張ってもフルーツは甘くないし生地はべちゃべちゃで散々なことに。やはりあの人に作ってもらうしかないのだろうか。
ああ、
「フルーツタルトが食べたい」
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