VR『異世界』より

キリコ

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3.距離感ゼロの神様

 というかなんかやけにスキルを推してくる、けど、あ、あー、そっか。ランダムだから魔法が使えない可能性もあるから。

 さっき魔法の話で僕すごく喜んじゃったから。そうなった時に落ち込まないでって事かな。優し。気を遣わせたのかも。

 スキルがあるなら当初の希望通り生産職に就くのには問題無さそう。そういう事なら魔法使えなくても落ち込みませんよ! 大丈夫。

「頑張りますね」

 見上げてそう答えると微笑みが返される。

 はぁ、まーじで、ため息が出ちゃう程イケメンだ。今まで見てきた男性の中で一番素敵かも知れない。異性愛者だから男性相手に好みのタイプとか考えた事は無かったけれど、もしかしたら僕の好みはこの方みたいな人なのかも。だってかっこよすぎるんだもの。なんでもいう事聞いちゃいそう。恋愛対象は女の子だけど美しいものは大体なんでも好きだからほんと眼福。今だけしか見られないしいっぱい観賞しておこう。うん。

「はぁ。いくら私の世界といえど、こんなに可愛らしくて大丈夫でしょうか」

 神様が僕を撫でながらため息をついてなんか変な事言い出した。そっちも何か僕で琴線に触れるものがあったんですか?? 地味可愛いとは言われてきたけれど、流石に神様が目に留めるようなものはないんですが。謎過ぎ。

 ちゃんと身の程は弁えてる系猫被りマンですのよー。こちとらもう成人して二年目ですし。そろそろナデナデはおやめになって? 

 これってあれでしょ。海外の人からは日本人は幼く見えるってやつ。とは言え身長も言うほど低くはないよ? あと1センチで平均になるくらいはありますのことよ? まあ日本人が国外に出る事が殆どなくなってから十年以上経つみたいだし、珍しいのは分かるけどさ。でもユグドラシル様の開発陣の中に日本人も何人か居たはずだけど?

「そんな事仰るのはユグドラシル様くらいですよ」
「そんな馬鹿な!? はあ、やっぱり人間ってよく分からないですねぇ。警戒心もありませんし。困りました」

 あっ!? ちょっと!?

 ため息をつくのはともかく、なんで! 膝に乗せるのはちょっと、どうなんですか!? 人の目はないからって、距離感バグりすぎてやしませんか??? 神様からしたら人間なんて子供みたいなもの、とかそういう感じのあれですか??

「あの、膝にのるのは、恐れ多いのですけど。降ろしてもらえたりとか?」
「・・・・・・ですが、このままなら容姿の変更も鏡を見て出来ますよ。ほら、あの鏡は私に触れていないと見えないので」

 そう仰った瞬間、正面に大きな鏡が出現した。豪奢な額縁の。とても大きい。空気椅子状態のユグドラシル様の膝に座らされた僕が映っている。

 ふーん、この服キトンみたいなやつだったんだ。やたら上等そうな布ですが。胸元や裾をよく見ると金糸の縁取りも繊細で、しかもこれ、機械じゃなくて人の手で刺繍されてるやつ。手練れの職人の手のものだよ。それにこの手触り正絹? あっ、下着は、・・・ちゃんと履いてるね。

 今のVRってこんな細かい事まで再現されるんだ。やば過ぎ。

 と言うか色々、なに、なんだこの状況?

「えーと、それならみんな自分がどうなってるのか見ずに見た目変更したんですか?」
「殆どの方はそもそも容姿の変更はしていませんね。している方も髪色と瞳の色くらいでしょうか」

 返答に驚いて思わず見上げる。だってアバター決めるのって大事なのでは? 

 あっ、不意打ち微笑みまぶし。

「身長を1、2センチ伸ばす程度や体重を少し減らす程度ならまだしも、あまり体格の変更をするとバランスが取れなくなったり歩き方がおかしくなったりしてしまうので推奨しません。降り立った時も、そしてこちらの体に慣れてから現実に戻った時も、その様になる可能性が高い。顔の造形も少し変えただけで大きくバランスが崩れたりするので、精々二重にするとか頬の膨らみ方を少しいじるとかその程度までですね。上手くいきすぎても現実の容姿を極端に悲観する事になってしまう可能性があるので。それに、あなた達の出現先は私の神殿の中でも一番格式の高い神殿の儀式の間です。何人もがそういった足元が覚束無いような、奇行するようなおかしな状態で降り立てば、現地民からどんな噂になるか分からないのです。ないとは思いますが、呪いか何かに疑われこれ以降のリベルの受け入れを拒否されでもしては困ります」

 そっか。『ゲーム』じゃなくて『異世界』だから。

 住民は一人一人根本のシステム以外は独立したAIにより『生きて』いるから。生きて来た環境によって思考もそれぞれなんだ。ユグドラシル様曰く、根幹システムと偶にお告げする以外、特に支配しているわけじゃないらしい。そして直接的にお告げが出来るのも直轄の大神殿だけだとか。

 あんまり介入するとそれに付随するバタフライエフェクトの修正演算が大変な事になるそうです。

 ユグドラシル様が仰るにはバグまたそれが産んだウイルス=瘴気という設定にしていて、瘴気に感染した生物=魔物らしく、めっちゃ大きなバグ=魔王を神の雷(と言う設定)でデリートした時はその後がとても大変だったらしくて、もう二度とやらないと決めたんですって。

 だから神殿騎士だけじゃ追いつかない魔物の討伐も、バグから何かしらドロップ品が出る設定だけ辛うじて出来たので、ハンター達にも討伐してもらえる仕組みにする様にお告げして、ハンターギルドも神殿が先導して作らせたとか。

 何か面白い。本神(?)にとっては大変なんだろうけどね。

 って言うか、さっきからこれ、裏話ばっかり教えて貰ってる気がするけど、いいの? 半アルバイトとは言え一般プレイヤーが知る事じゃないと思うんだけど。それとも一般公開する情報なのかな?


「話を戻しますけど、そう言う事なのであなた方は後から転生チケットでゆっくり変更できる様にしてあります。運営としては正式な公開の以降のプレイヤーの方々は最初にできる様に調整するつもりの様ですが。兎も角、あなた方の転生を希望する先の各種族専属の神殿でしか転生は出来ませんが、そこでなら見られるのは守秘契約を結んだ転生サポートの神官一人だけですからね。奇行も、正常に動けるようになるまである程度サポートしてくれます」

 何か膝においていた手を掬われて、恋人繋ぎにされたりしてるんですけど。つっこんだ方がいいのかな? 嫌な気はしないのは弩級のイケメンだから? 僕ってそんなに面食いだったっけ。こんな事して同性から嫌がられないなんて美形は特ですな。

「それは手厚いですね」
「でしょう? それに現地民には転生前の体は仮の姿で、転生後が本来の姿である、と伝えてあるので大きな問題はないはずです」
「それでしたら種族とか造形を大きく変更したい方も、整形したみたいな目で見られないだろうし安心ですね」
「あはは、整形、そうですね。その発想はありませんでしたが、確かに感覚としては似ていますね。ふ、ふふ、・・・・・・コホン。さて、ではあなたの容姿の変更をしましょうか。このままなら鏡を見ることが出来るのでここで済ませてしまえば転生チケットは必要ないでしょう? もちろんその代わりのものを差し上げますよ。その方がお得ではありませんか?」

 そんなのってアリなんでしょうか? 代わりのものはなんだろう。

「確かに! 何から何まで、ありがとうございます。でもなんだか申し訳ないです。というかこれ、ズルにはなりませんか?」
「これくらい、現地に降り立ちそこで現地の方と仲良くなれば、皆さんそれぞれの現地民から特別の方として遇される事でしょう。あなたはそれが私だっただけの事」
「な、なるほど? よくわからないけど、なら、いいんでしょうか」
「だめと言われたら私が悲しいですシクシク」

 えー! 泣きまねするの可愛い。

 なんか押しが強めな気がするけど、甘えちゃっていいかな。なんかもう膝に乗せられてるのも気にならなくなってきたし、撫でられるのは妙に気持ちいいし。いっか?

 にしても本当イケメン過ぎる。見飽きる事がない。

 これ、男神じゃなくて女神様だったら危なかった。ありがちな、優しくされたらすぐ好きになっちゃう体質だからね。男神様でよかった。危な。

「さて、まず容姿ですが、私は体格とお顔は変えない方が良いと思います。せっかくお可愛らしいのですから変更してはもったいないですし。まず、そうですね。このモチモチの頬が荒れたりしないようにしておきましょう。それにせっかく濃くて長いまつ毛をお持ちなのですから、少しだけカールさせて」

 頬をモチモチと感触を確かめるかの様に揉まれたと思ったら、目元を一撫でされた。その一撫ででまつ毛が柔らかくカールして、心なしか目がパッチリした気がする。これだけでこんな変わるならそりゃ女の子もやるわな。

「良いですね。そうだ! 唇も切れたりしたらいつでもキスできな、コホン。大変ですからね、常に潤いを保つようにしましょう」

 言いながらユグドラシル様が僕の唇を撫でると、少し血色が良くなった。撫でた人差し指と中指を目が追ってしまって、鏡越しに合ってしまった熱っぽい目で見つめられて動揺する。な、なんかすごく恥ずかしい事されてない? 僕。鏡に映った僕は真っ赤である。そりゃそう。童貞には刺激が強すぎます。あれ? まって、なんだか唇がふっくらプルプルになってないか? ただでさえ女顔って言われるのに・・・・・・。なんか色々と男にするケアではないのでは。て言うかさっきキスって言った? 気のせい? まぁ言ってたとしても童貞の僕には無縁の話なんだけど・・・・・・。恥ずかしさで思考がとっ散らかる。

「ああ可愛い。それと髪もこの美しさを失わないように、と。ムダ毛、はそもそもないみたいですね。よし。さ、後は髪色などは希望があれば変えられますよ」

 ムダ毛がないのはコンプレックスなんですけど! 二十歳超えたのに髭が生えてきてくれない悲しみ。と言うか、髪を撫でられながら指で解かされるのにやっと慣れたと思ったら、なんか今度は嘘みたいにめちゃくちゃ顔触ってきますね??? 

 びっくりして放心しちゃったんだけど!

 それに、何もそうだ、じゃないです。・・・・・・と言うか好き勝手やられてるのに嫌悪感が全然ないのはどうして? なんで頬撫でられるのこんな気持ちいいわけ!??? 神様パワー的なやつ?

「えっ。そうですか? 顔はまぁどうでもいいんですけど、身長・・・・・・、でも、デメリットがあるんですもんね・・・・・・。うーん、なら、せめて髪色と瞳の色は変えたいです」
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