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4.神殿所属の薬師
うっ。ゆぐどr・・・長いな。ユグ様でいっか、声に出さなければ。
というか無闇矢鱈に微笑まないでください。美形の微笑みは心臓に負担がかかるのです。まぶし。
「それなら私とお揃いにしてみませんか?」
「おそろ・・・・・・」
「嫌でしたか? 少しは仲良くなれたと思って、嬉しかったのですけれど。その証にと」
あー! そんな、しゅんとしないでください!
「違います! こんな気さくに接していただいて、僕こそ嬉しいに決まっています! プラチナブロンドの髪も薄紫の瞳も綺麗で神秘的ですし、なれたら嬉しいですけど。・・・・・・ただその、神様とお揃いなんて恐れ多いっていうか、現地の方達に何か言われたら、とか、考えてしまって」
絶対いちゃもん付けられると思うんだけど。あとなんか祭り上げられたりとかさぁ。
「それなら杞憂だと思いますよ。それこそ私と仲良しの方に意地悪する人なんていません」
「それもそれで贔屓が過ぎるような。神様と仲良し認定とか字面が強過ぎてわけが分からないですし」
「・・・・・・それでしたら、神殿所属になってみませんか? それなら私の贔屓も当然のことです。各地の神殿は言わば私の別荘ですからね。これではいさようなら、というのも寂しいですし。私はここにずっと一人なので・・・・・・」
あーーー、そっか、それで。
だからかぁ。やけにグイグイ来るなと思ったけどそういうことか・・・・・・。言われてみればそれはそうだよね。こんな何もないところに一人でずっと・・・・・・、寂しいに決まってる。
どうやるのか分かんないけど、ユグ様が寂しくならないように出来るなら、神殿所属とやらになってもいいかな。ただ、僕がやりたいのって、錬金術とか薬師とかの生産系なんだけど・・・・・・。神官になったら出来ないんじゃないかな。どうしよう。
取り敢えず、お揃いは目の色だけならいい事にしよう。流石に髪は目立ち過ぎる。
「あ、あの、それなら髪は目立ちすぎるので瞳をお揃いにしていただけたら嬉しいです」
「そうですか? ・・・・・・それなら、髪色は黒のままで、光が当たると淡く虹色に光る程度ならどうでしょう」
伺いを立てるように、いやどちらかと言うと懇願するかの様に聞かれ動揺する。神様なのに腰が低すぎなのでは。そんなに髪をおそろにしたいの? 鏡越しに上目遣いはおやめください! 寂しいからって僕の情緒をめちゃくちゃにしないでいただいてもろて。まぁ、イケメンなのにこんな事されたらそりゃ負けても仕方ないよね。うん。
「うーん、そうですね、まぁ、それなら。黒のままならあまり目立たないでしょうし、薬師や錬金術師といえばローブですから大丈夫でしょう。お揃い自体は嬉しいので。それでお願いします! それにユグ様が、あっ。すみませ」
ばかばか! 内心でだけ呼べば良いじゃん(ドヤ)とかしてるから! すみませんすみませんすみませ・・・・・・っあ、そんな、急なニコニコ笑顔は・・・・・・浄化されてしまいます・・・・・・。おやめください・・・・・・。
「いいえ! 謝らないで。いいですね、ユグ様・・・・・・。初めての愛称、ふふ、ではこれからぜひそう呼んでください」
「ひゃい。あの、それで、その、ゆ、ユグ様が寂しくならないのなら神殿所属? になってもいいのですけど、神官しながら薬師とか錬金術師とかって出来ますか?」
「ふむ、ああ、その職業に就きたいのでしたね。確か事前アンケートにも。・・・・・・なら、そうですね。神殿所属の薬師、という事でどうでしょう。錬金術師は副業になりますが。お祈りだけはして貰えたら私が喜びます」
「それはその時はもちろんさせてもらいますけれど、神殿所属の薬師? ですか?」
普通の薬師じゃないとできない事がある、とかじゃなければ全然なっていいんだけど。
「ええ。他の方がおつとめをする時間、薬師としておつとめするのです。神殿騎士は、私からのお告げや外部からの要請により魔物の討伐にも行きますから、治療薬の類いは当然必要としています。治癒師もいますが、いつもすぐに高額の報酬で他国に引き抜かれてしまって。圧倒的に数が足りていない為、現状でもポーション類は数多く買い入れているのです」
「なるほど、それを作る事を仕事にできると」
それは、とってもやり甲斐がありそう。自分でお店を持ったとして、買ってもらえるかはまた別の話だしね。昔遊んでいたMMOでは原価を割る程安くしていてもあんまり買ってもらえなくて。結局泣く泣く薬師プレイを断念した記憶がチラついた。神殿でなら使ってくれる先に困る事は無さそう。
「ええ。治療薬ではない細かな薬品の類いも、薬師が十分でない街へ神殿所有の転移陣経由で地方神殿で売り、コホン。薬をお配りして薬毎に定額の献金をもらったり出来る様にしているので、薬師の仕事は幾らでもありますよ。あなたが作れない物は今まで通り買い入れる様にすれば問題ありませんし」
確かに最初の内は作れる物も少ないだろうしね。それなら迷惑はかけないで済みそう。
あの、たいして長くない僕の髪を勝手に耳にかけるのやめてもらっていいですか!? 完全にカップル仕草なんですけど! 僕もなんで嫌悪感ないのよ。これほど自分の面食い具合に呆れる事があろうとは。
「献金から材料費を引いた金額の内一割は神殿に入れないといけませんが、残りは個人のものですし、自分で材料から用意する場合は丸々個人のものです。厳しい戒律みたいなものも特にありませんし。それに神殿内に個人の部屋と個人的な調薬室が貰えるので、宿賃や家賃もかかりませんよ? 食事も三食でますし。何より採取に出かける際には神殿騎士を護衛につけられるので安全に作業出来ます」
すっごい好待遇なんだけど!? なるしかないじゃんこんなの。他の人に言われたら好待遇過ぎて怪しくて不安になるレベル。でも進めてるのはユグ様だからね。裏とかないだろうし。
「めっちゃお得ですね! なります! 神殿所属の薬師!」
「ふふ、良かった。ありがとうございます。あなたが成長すれば、神殿騎士も魔物に殺される事も少なくなるでしょう。出回っている治療薬、ポーションはそれ程質は良くないので、私としても有難い事なのです」
ユグ様の美しい紫の瞳が、騎士達を思ってか憂う様に伏せられて。それを見たらきゅっと胸が絞られた心地がして、ユグ様の大切な人々を僕も守ってみたいって思ってしまった。
「そうなのですね、魔物に・・・・・・。なら、僕頑張って早く性能のいいポーションを作れるようにならないといけませんね」
「違いますっ! いけません。私としたことが余計な事を言ってしまいました。あまり気負わないで。神殿騎士はとても強いので儚くなってしまうのは本当にごく少数です。今の神殿を纏めている者もきちんと配慮できる者のようですし。それを気にして、あなたの暮らしが楽しくなくなってしまっては元も子もないのですから」
うーん、まぁわかるけど。大袈裟な気がする。まぁね、タスクに追い詰められてゲームを楽しめなくなったら困るもんね。僕みたいな小心者には尚更。
ユグ様からならストレス値とか見えそうだもんな。ポッド内の体のバイタルチェックもユグ様が確か関わってるんだっけ? あ、もしかしてそういう外側用があの説明会のユグドラシル様なのかな。
「・・・・・・分かりました。気負わないように楽しく、ですね。でも目標は大事ですから」
だってユグ様の役に立ちたいって思っちゃったんだもん。だからやめないよ。ユグ様が優しくしてくれる分だけでも返したいもの。
「目標、そうですね。・・・・・・はぁ。あなたの真面目さと思いやりの心は分かっていたのに。やはり私は未熟です。いつになれば成長するのか。いつも余計な事を言ってしまう」
神様が落ち込むなんて、不思議。だけど完璧な神様像なんて人間の妄想なのかも知れない。ギリシャでも日本でも、神話の神様達はやたら人間くさいのがデフォだし、もしかしてそう言うものなのかしら。
落ち込んでいるのか、背後から肩口におでこをグリグリと擦りつけられる。何これかわいいんだけど。おっきなワンちゃんに見えて来た。髪がくすぐったいです。
後ろから抱えられる形で膝に乗せられていた体制を、自主的に横乗りに変える。ユグ様の頬に両手を添えて少し顔を上げさせて貰って。失礼かなと思ったけど、ユグ様スキンシップ過多だからいいでしょ? 寂しがりみたいだし。
彫りの深い、僕より少し年上の二十代後半くらいのちゃんと大人の男性の顔なのに、きょとんとした表情は可愛いかった。
「そんな風には思えませんけれど、ユグ様がそうお思いになるのなら、僕と一緒に成長するというのはどうでしょう。僕も薬師として頑張るので!」
「一緒に・・・・・・」
「はい。一緒に!」
泣きそうな顔をしないで。あなたにはさっきまでみたいに楽しそうにしていて欲しい。
会ったばかりなのに、こんな風に思わせるなんてすごい人だな。人っていうか神様だけど。不思議。これも神様の力なのかしら。
そう疑っても、そうだとしても別に嫌だと思わないのが益々不思議だ。やば、典型的な宗教にハマる人になってない? 大丈夫? 僕。
とは言っても、どっちにしろ兼業とは言え神官になるならこの人のものになるのだし。神の嫁? は女性か。なら神の僕? 的なやつ。
なんて、僕が多分面食いなだけなのに神の力のせいとか多分濡れ衣だろうし、変な事考えてすみません、ユグ様。
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