VR『異世界』より

キリコ

文字の大きさ
5 / 65

5.美形メガネクルト様



「はぁ、やっぱり旅立つのはやめにしませんか?」
「もう、だめですよ。次の方を案内しないといけないのですよね?」
「そうですが・・・・・・」

 神様なのにぐずるユグ様可愛い。このキュンはあれだ。クール系美女がスイーツ大好きなのが発覚した時のトキメキに似てる。バイト先の先輩の話だけど。いわゆるギャップ萌えってやつ。

 それは兎も角、鎖骨近くにおでこグリグリはやめて。くすぐったいです。にしてもユグ様の髪サラサラ~。撫でられるのも気持ち良かったけど、撫でるのも手触りがいいと止まらなくなるなんて初めて知った。水の中なのに濡れた触感ではない。謎。

「それに僕の住まいは神殿になるのですから。なるべく毎日お祈りしますよ」
「そう、ですね。・・・・・・なら、少し先に御告げをしておきましょう」
「え? そんな大袈裟な」
「いえ、少し受け入れ体制を整えてもらうだけですから。あなた達をこの世界に受け入れる事になった時なども告げたりしているので、そう珍しい事でもありませんし気になさらないでください」
「そ、そうでしょうか? 迷惑でないなら、いいのですけど」

 御告げってそんな気軽にする感じだっけ? わざわざ僕の事を御告げで伝えるなんて、申し訳なさすぎるんだけど。これからお世話になる神殿の方々に腫れ物扱いされたりしませんように。

「迷惑だなんて。・・・・・・、さ、これで良し。さて、それでは名残惜しいですが地上へ降り立ちましょうか」
「はいっ、よろしくお願いします」
「ふふ、はい。では跪いて、胸の前で手を組んでください」
「こうでしょうか」
「ええ、結構です。ではお祈りの時間を楽しみにしていますね。・・・・・・いってらっしゃい」

 あ、この頭撫でられるのも最後なんだな。そう考えるとちょっと寂しい。

「はい、行って参ります。色々とありがとうございました」
「ええ。では目を閉じて。ああ、せっかくなのでこうしておきましょう」

 ん? なんか髪に違和感。結われた? でも結える程の長さはない筈だけど。あれ、髪が肩にかかってるような、もしかして髪伸ばされた??

「ではまた。世界を楽しんでくださいね、ユーリ」
「っ! はい。ユグさ、は? えっ!? その髪」

 名前を不意打ちで呼ばれつい目を開けてしまった僕の目に映ったユグ様は、髪がショートになっていて。驚いている間に視界が暗転したのだった。





 少しの眩暈をやり過ごし目を開ける。先程まで水の中だった筈なのにどこも濡れていない。ユグ様が何かしてくれたのかな。不思議な事ばっかりです。

 そして目の前にはユグ様の石像が。ちゃんと似せてあるけれど、感想としては当たり前ながら実物の方がイケメンだったな、という感じだ。

「お待ちしておりました。リベル、ユーリ様」

 かけられた声に少し驚いて、跪いて手を組んだ体勢のまま上体を捻り振り返ると、一番手前に司祭の様な服装の方が僕と同じ様な体制で跪いていて、その背後には騎士の様な格好の三人が同じ様に跪いていた。騎士の方は左手を胸元に、剣を鞘ごと右手に持っている。え、騎士が両膝をつくのって神様とか王様相手だけじゃ?? あ、ああ、なんだそっか。ユグ様の像に跪いてるのね。へんな勘違いする所だった。ユグ様があんなに親しくしてくれたからって調子に乗らないようにしないと。

 てかこの体勢きつい。立たせてもらおう。ごめんなさい。

 僕が立ち上がったら四人も立ち上がってくれてホッとした。偉そうな役職の人を見下ろすとか胃が縮むし、立ってくださいって促すのもなんか偉そうな気がするものね。

「初めまして。リベルのユーリと申します」

 お辞儀しそうになったけれどなんか世界観に合わない気が。えーと、ビジネスマナーなら目をしっかり合わせてがっしり握手、だっけ? でも異世界なら関係ないのかな? 手は差し出されないから握手しなくてもマナー違反じゃない?

「初めまして。私はクルト・エプシュタイン。こちらで枢機卿の位をいただいております。私達は貴方を新たな友として歓迎します」

 えええ、枢機卿って教皇様のすぐしたのめちゃくちゃ高位の方では? ユグ様一体全体何言ったの???

「ご丁寧にありがとうございます。これからよろしくお願いします」

 


 お互い微笑んで挨拶を交わしたあれから一週間と少し。どうにかここでの生活の流れが掴めてきた。それもこれも教師役としてこの世界の事や物事の仕組み、世情の事など質問した端から色々教えてくださるクルト様と、お世話係としてついてくれたリオルのおかげだ。

 クルト様は薄い水色の髪のインテリ眼鏡な見た目の通りクールで、腹黒とは言わないけれど少々野心家っぽい雰囲気を感じる事がある、高身長に美形+知的眼鏡のモテの権化。但し人を寄せ付けない雰囲気があるのであまり人は近付いてこない。なのでいつも申し訳ないのだけれどクルト様の執務室へお邪魔していて(ずっと部屋にいるのは暇すぎた)、人避けにはとても助かっている。なんせクルト様が一喝するまで、色んな人に声をかけられ何かしらに誘われ、答えようにも息をつく間もなかったのだから。ユグ様効果おそろし。こんなに人が寄ってくるの、絶対この髪のせいだと思うんだよね。

 その髪のお手入れをしてくれる、お世話係としてついてくれたリオルだけれど、もちろん最初は、単なる一般市民に従者なんて申し訳ないのでと断った。しかも14才なんてまだ子供を、と。件のユグ様効果に疲れきらされる前だったので。

 けれど従者を付けるのもユグ様の言いつけらしく、断って万が一リオルに罰が下ったら、とクルト様に助言され受け入れる事になったのだ。断ったのも嫌悪からでは無く申し訳なさからだったので、そう言う事ならとすぐ了承した。今となってはその助言に感謝しかない。罰なんて、ユグ様はそんな事しなさそうだけれど、可能性を無くすに越したことはない。それに、合間合間に少しずつリオルと話をしてみると結構気が合って、弟が出来たみたいでとてもかわいいのだ。まぁ、僕よりよっぽどしっかりしているのをまざまざと感じさせられるのだけど。どっちかと言うとこっちが弟みたいとか、そんな事は、断じてない。うん。

 そして君付けもさん付けもむず痒いと即拒否されたので呼び捨てに落ち着いた。

 とは言えお世話係と言っても、金髪碧眼の美少年に体を洗われるのだけは未だ慣れない。母が貸切にしてまで付き合わされていたエステと一緒と思い込もうとしたけれど(カーテン越しに延々と話しかけてくるの、ほんとどうかと思う)、エステでも全てをつまびらかにしたことはなかったのでやっぱり恥ずかしい。今思えばあの頼りない紙パンツも大事だったんだな。

 まぁそういう感じで落ち着かないのだけれど、髪が膝近くまで伸びてしまっているので、頼らざるを得ないのだ。だって多分この、毛先の方へ向かってグラデーションでユグ様と同じ色になっている髪の毛、どうやったのか分からないけれど移植されてる気がして。毛先から30センチくらいは完全にユグ様と同じ色だ。僕の髪が伸びたと同時にユグ様がショートになっていた事を鑑みれば間違いないだろう。わざわざそんな事をした理由は未だ分からないけれど、そうであれば尚更お手入れをしないわけにはいかない。それなのに手入れの要領が悪くおぼつかない僕を見かねて、浴場でのお世話をする事について頷かされたのだった。





感想 3

あなたにおすすめの小説

ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜

古森きり
BL
東雲学院芸能科に入学したミュージカル俳優志望の音無淳は、憧れの人がいた。 かつて東雲学院芸能科、星光騎士団第一騎士団というアイドルグループにいた神野栄治。 その人のようになりたいと高校も同じ場所を選び、今度歌の練習のために『ソング・バッファー・オンライン』を始めることにした。 ただし、どうせなら可愛い女の子のアバターがいいよね! と――。 BLoveさんに先行書き溜め。 なろう、アルファポリス、カクヨムにも掲載。

処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる

猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。 しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。 当然そんな未来は回避したい。 原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。 さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……? 平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。 ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)

異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます

ひと息
BL
突然の過労死。そして転生。 休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。 転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。 そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・ 知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?

【完結】Restartー僕は異世界で人生をやり直すー

エウラ
BL
───僕の人生、最悪だった。 生まれた家は名家で資産家。でも跡取りが僕だけだったから厳しく育てられ、教育係という名の監視がついて一日中気が休まることはない。 それでも唯々諾々と家のために従った。 そんなある日、母が病気で亡くなって直ぐに父が後妻と子供を連れて来た。僕より一つ下の少年だった。 父はその子を跡取りに決め、僕は捨てられた。 ヤケになって家を飛び出した先に知らない森が見えて・・・。 僕はこの世界で人生を再始動(リスタート)する事にした。 不定期更新です。 以前少し投稿したものを設定変更しました。 ジャンルを恋愛からBLに変更しました。 また後で変更とかあるかも。 完結しました。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

愛されたいだけなのに

まさお
BL
我儘令息だったノアは一回目の人生で最愛の人からの裏切りの末、殺される。 気がつくと人生が巻き戻っていて人生二週目が始まる。 しかしまた殺される。 何度も何度も繰り返した人生の中で自分が愛されることを諦めてしまう。

【完結】浮薄な文官は嘘をつく

七咲陸
BL
『薄幸文官志望は嘘をつく』 続編。 イヴ=スタームは王立騎士団の経理部の文官であった。 父に「スターム家再興のため、カシミール=グランティーノに近づき、篭絡し、金を引き出せ」と命令を受ける。 イヴはスターム家特有の治癒の力を使って、頭痛に悩んでいたカシミールに近づくことに成功してしまう。 カシミールに、「どうして俺の治癒をするのか教えてくれ」と言われ、焦ったイヴは『カシミールを好きだから』と嘘をついてしまった。 そう、これは─── 浮薄で、浅はかな文官が、嘘をついたせいで全てを失った物語。 □『薄幸文官志望は嘘をつく』を読まなくても出来る限り大丈夫なようにしています。 □全17話