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6.クルト様の仕事量は完全にブラックです
目が覚めると天蓋が目に入った。一昨日より、そして昨日より更に、一段とすっきりとした目覚めではあるけれど、天蓋から帳がおろされていて外の様子は分からない。声がかからないからきっとまだうす暗いのだろうけれど。早寝早起きにもやっと慣れて来たみたいだ。暫くしてかけられる声に返事を返すと、ベッドの帳が開かれる。ゲーム要素がどっかに行ってしまった異世界生活だけれど、とうとう今日から僕の薬師としての生活が始まるのだ。
朝の禊ぎを済ませ着替えを手伝ってもらい、長過ぎる髪を結ってもらったりと身支度を整えられた後、リオルに先導されて部屋に戻ると、小さなダイニングルーム(?)に既に用意されていた朝食をいただく。ラインナップはパン、サラダ、スープ、卵料理、チーズ、果物、となっている。味付けや具を変えて毎日同じ。数日に一度、ソーセージやハムが付くこともあった。
食肉が安定供給される世界では無いらしいのでそんなものなのだろう。お世話になる身として文句はありません。そこそこ美味しいし。美食国家である日本の食事程ではないけれどね。調味料がそこまで発展してない感じだからというのもある。あと出汁が微妙。コンソメスープが現代ほどまで昇華されてない感じと言えば分かるだろうか。まぁそこそこは美味しい。
この、世界観的に少々贅沢な生活(朝は兎も角、昼食も神職の割に品数が多く晩餐なんてコース料理だ。部屋もホテルのスイート仕様で私室、寝室、食事所、応接室、トイレ、浴室とパウダールームまで完備)に申し訳なく思って遠慮しようとしたけれど、100名のリベルの内の多くが他国の王城や各地の貴族、種族の長などの元で数名ずつ似たような生活をしているらしく、一人しかいない神殿所属の僕が断ってしまうと、対外的な面目が潰れてしまうらしかった。きちんと遇していますよって見せないと、他から勧誘の圧が増すとかなんとか。こちらへ来ませんかって誘われるらしい。僕が。なんで?? 100名弱しかいないリベルだからです。
で、相手が王族レベルだと角が立たない様に断るのも一苦労だそうで。最悪直接言われたら僕にはなす術がない。それはそう。ゲーム世界とは言え、ここではただの一般市民ですからね。
何と言うか、クルト様は僕を説得する為なら内情も見せる方針のようだ。僕としては分かりやすくて助かるからいいのだけど。
とは言え、この生活に対しては一言言わせて欲しい。
なんか、思ってたんと違う。
同じ様な境遇になっているらしい殆どのリベル仲間も同じ感想を抱いている筈。ゲーム要素どこいったの???
それにこんな贅沢させて貰うなら、対価を払わないとソワソワする。現実で贅沢するのは親が対価を払っているので罪悪感はないけれど、ここでは違う。早く高品質の薬品を作れる様になって、恩を返したい。心を軽くしたい。自由になんやかんやする為にも。
それが誰かしら(クルト様とか?)の目論みとかなのかも知れないけれど、日本人的感覚としてはしてもらってばかりと言うのはどうしても尻の座りが悪いのだ。してくれるって言うんだから享受しときゃいいじゃん、とか、向こうが勝手に忖度してるんだから、とか、過ぎらない訳でもないけれど、そう納得できる人は多分この100人に選ばれてない気がする。そう自分を宥めながらこの日を待っていた。
朝食後の食休みとお祈りの後、クルト様に医療物ドラマの総回診みたいに従者や護衛を引き連れて先導され、辿りついたのは、いつもお邪魔しているクルト様の執務室の隣の隣にある部屋だった。めちゃくちゃ目と鼻の先だ。ちなみにクルト様の私室は僕の部屋の隣に同じ様な作りのがある。むしろクルト様の隣に僕の部屋が改装された、が正しい。執務室と調薬室は私室の下の階だ。
誘導され扉をあけてまず目に入ったのは、入って来た扉の反対側にある大きなガラス扉だ。此処から中庭に降りられるみたい。その大きな窓のおかげか光が入って大変明るい。これなら貴重な魔道具の照明をあまり使わないで済みそう。魔力の扱いに慣れたら魔石への魔力注入をマスターすれば使い放題らしいんだけど。それまでは壊す可能性が高いので注入は禁止されている。因みに僕の魔力はリベル仕様のせいか一般人より多いとの事。訓練すれば増やせるそう。やったね! 因みにクルト様の魔力量は聞いたけど秘密だった。
中央には実験室の作業台のようながっしりとした大きな机が二つと、湯煎や煮る為かアイランドキッチンの様な仕様の、魔道具のコンロとシンクが埋め込まれた作業台。そしてクルト様の執務室方面の壁には広めの本棚と書き物机、それに隣の部屋へ繋がる扉があって、隣の部屋で休憩や昼食を取れるよう整備されている。昼食は時間が合えば一緒に取れるようにと、クルト様の執務室の方にも扉が付けられたらしい。だから中で三部屋並んで繋がっているのだ。なんか、いいのかな? 改装にお金かけ過ぎな気がするけど。
まぁ気を取り直して。その休憩室側と反対の壁には作り付けの収納が壁一面に。しかも神殿騎士の魔導師長の手を借りて、時間停止機能が付けられてるらしい。なにそれ怖い。
どう考えても僕に手をかけ過ぎている。絶対に逃さない、みたいな執念を感じるのは気の所為だろうか? どっちにしろ少なくとも受けた恩を返すまでは一先ず頑張るつもりだけどさ。
優遇され過ぎていて少々ドン引きしながら一通り説明を聞き、何かあれば些細な事でも呼ぶように、と言い置いてクルト様は執務室へ戻られた。この優遇もそれだけ期待されていると思う事にする。でないと胃が痛くなるし。
それにしてもクラウスさん(リオルの上司で侍従神官、こっちで言うところの助際?の長。様を付けて呼んだら怒られたのでせめてものさん付け。僕ってどんな立ち位置なんだろう。怖い)から聞き出した話によると、枢機卿様は大変多忙の様だ。
なんでも、クルト様より階位が上のお偉方(今は20名ちょっとくらいで殆どは老齢で名誉職状態。部門も考慮すると厳密な上役は5名らしい)は元気な方はご老体に鞭打って神殿騎士団について治癒師として魔物討伐の補助に行っている事が殆どで、実際の所実務的には部下はいるとは言えクルト様が取り纏めているらしい。ここがユグ様の最高位の神殿ということは、傘下の各地、各国の地方神殿からも陳情があれば決裁するのは誰かと言うのは言わずもがな。ギルドや各国との折衷もあったり、どうやら想像してた神職とは一線を画す仕事量みたい。
確かに執務室机にはいつも書類はいっぱいだし、補佐神官さん達も何人もいて忙しそうにしてる。そして僕が行くと、クルト様に休憩を取らせろとみんなして目配せしてくるのだ。クルト様は誘えば大体受けてくれるので、なんか半分それが仕事みたいになってき始めた今日この頃。確かに普通に心配なのでクラウスさん率いる、なるべく何か食させるように頑張っているチームに当然の如く僕も参加しはじめたのだった。
しかも後から知ったのだけどこの国、小さいながら神聖ラシルシュタット教国といって、国のトップが教皇様だという国なのだから、クルト様の地位はファンタジー物で言う宰相みたいな感じだ。数日前に少しだけ時間をとってくださってご挨拶した教皇様は、お告げを受けたり毎日時間で決められてやる儀式があったり、こっちも大変そう。
やば過ぎ。過労で死んじゃうよ。補佐神官さん達もクマがあったりしてるし。仕事には口は出せないから、せめて疲労も癒せるポーションとかでも作れたらいいんだけど。栄養ドリンク的な。ポーションは疲労には効かないらしいのです。と言うか僕の事なら、部下に投げちゃっていいんですよ??? 手ずから案内してる場合か??
尚更薬師として真面目に力をつけないと。そうと決まれば早速レシピを覚えなくちゃね。
休憩室への扉の廊下側の端に設置された本棚に収めてある、クルト様が集めてくれた薬関係の本を漁る。まだ二段埋まるか埋まらないかしかない。そもそもの数が少ないながら、その内の殆どは図鑑や考察資料で、レシピ集は数ページしかない物が二つ。この大神殿内にある大図書館からですら、司書さんと手分けして急ぎではこれしか見つけられなかったとの事。お手を煩わせて本当申し訳ない。他に司書さんが見つけ次第追加していってくれるとの事。色んな人に手をかけさせてる~! つら!
その時は、図書館に自分で探しに行きますよ、と思ったけれど、すぐ撤回した。多分そうするとまた声をかけられて大変なことになる気がするから。そしてきっとそれを鎮めに来させてしまって結局手を掛けさせる羽目になる気がする。神官だけならまだしも、献金に来た貴族とかに鉢合わせたりなんかしたら目も当てられないし。何か献金に訪れる貴族が増えているらしい。まぁ目当てはそうだよね。あわよくば、みたいな感じなんだろうか。こちとら別に特別な力とかないただの一般人なんだけど。はぁ。
現状、若干軟禁されてる様な気がしないでもないけれど、あれを考えると仕方ないと思う。当然の措置。というか僕だって行きたくない。ここで自分の仕事と立場をしっかりと確立するまでは、この保護されてるみたいな現状に甘んじておくべきだろう。それくらいの分別はある。
なので忙しいだろうに探して来てくれた事には感謝しかない。
書き物机に陣取り、薄いレシピ集を見ながら「これに追加していって、ユーリだけのレシピ集を作ってみたらどうだろうか」とクルト様が贈ってくれた、青い布張りに白と金で刺繍された美しい装丁の白紙の本へ書写していく(因みにできたらでいいので敬語をやめて欲しいとお願いしてみたら了承して貰ったので今はクルト様はこの話し方になっている)。
最初のぺージの、基本の回復薬を最後まで書き写すと、ピロンと音が鳴った。視界の端に電球見たいなマークが出ていて、ここがゲームだった事を思い出しつつそれにタッチしてみる。
タッチするとホログラムの画面が開かれた。丁度パソコンのウィンドウみたいな。
薬師スキルのものらしく、右上に閉じる為だろう×マーク、左上には薬師レベルが記載されている。僕は今見習い薬師らしい。そしてその下には
レシピ(1)同期完了
低級ヒーリングポーション
と載っており、その下の画面で書写した内容がそのまま見れた。クルト様に貰った本とスキルが同期した? っぽい。なんで?? ・・・・・・訳わかんないけど、まぁ、便利そうだからいい事にしよう。ヒーリングポーションの文字はボタンになっていてタッチするとそのレシピが見られる仕様みたいなので、多分この横か下にどんどんレシピ名のボタンが追加されていくんだろう。
便利そうな機能がついた事は置いておいて、レシピ集を次々と書写していく。なんか要領のいい人なら読んだ時点で覚えて、書写しなくてもスキルにジャンジャン追加されていきそうだけど、そこは切なくなるので考えない事にする。
朝の禊ぎを済ませ着替えを手伝ってもらい、長過ぎる髪を結ってもらったりと身支度を整えられた後、リオルに先導されて部屋に戻ると、小さなダイニングルーム(?)に既に用意されていた朝食をいただく。ラインナップはパン、サラダ、スープ、卵料理、チーズ、果物、となっている。味付けや具を変えて毎日同じ。数日に一度、ソーセージやハムが付くこともあった。
食肉が安定供給される世界では無いらしいのでそんなものなのだろう。お世話になる身として文句はありません。そこそこ美味しいし。美食国家である日本の食事程ではないけれどね。調味料がそこまで発展してない感じだからというのもある。あと出汁が微妙。コンソメスープが現代ほどまで昇華されてない感じと言えば分かるだろうか。まぁそこそこは美味しい。
この、世界観的に少々贅沢な生活(朝は兎も角、昼食も神職の割に品数が多く晩餐なんてコース料理だ。部屋もホテルのスイート仕様で私室、寝室、食事所、応接室、トイレ、浴室とパウダールームまで完備)に申し訳なく思って遠慮しようとしたけれど、100名のリベルの内の多くが他国の王城や各地の貴族、種族の長などの元で数名ずつ似たような生活をしているらしく、一人しかいない神殿所属の僕が断ってしまうと、対外的な面目が潰れてしまうらしかった。きちんと遇していますよって見せないと、他から勧誘の圧が増すとかなんとか。こちらへ来ませんかって誘われるらしい。僕が。なんで?? 100名弱しかいないリベルだからです。
で、相手が王族レベルだと角が立たない様に断るのも一苦労だそうで。最悪直接言われたら僕にはなす術がない。それはそう。ゲーム世界とは言え、ここではただの一般市民ですからね。
何と言うか、クルト様は僕を説得する為なら内情も見せる方針のようだ。僕としては分かりやすくて助かるからいいのだけど。
とは言え、この生活に対しては一言言わせて欲しい。
なんか、思ってたんと違う。
同じ様な境遇になっているらしい殆どのリベル仲間も同じ感想を抱いている筈。ゲーム要素どこいったの???
それにこんな贅沢させて貰うなら、対価を払わないとソワソワする。現実で贅沢するのは親が対価を払っているので罪悪感はないけれど、ここでは違う。早く高品質の薬品を作れる様になって、恩を返したい。心を軽くしたい。自由になんやかんやする為にも。
それが誰かしら(クルト様とか?)の目論みとかなのかも知れないけれど、日本人的感覚としてはしてもらってばかりと言うのはどうしても尻の座りが悪いのだ。してくれるって言うんだから享受しときゃいいじゃん、とか、向こうが勝手に忖度してるんだから、とか、過ぎらない訳でもないけれど、そう納得できる人は多分この100人に選ばれてない気がする。そう自分を宥めながらこの日を待っていた。
朝食後の食休みとお祈りの後、クルト様に医療物ドラマの総回診みたいに従者や護衛を引き連れて先導され、辿りついたのは、いつもお邪魔しているクルト様の執務室の隣の隣にある部屋だった。めちゃくちゃ目と鼻の先だ。ちなみにクルト様の私室は僕の部屋の隣に同じ様な作りのがある。むしろクルト様の隣に僕の部屋が改装された、が正しい。執務室と調薬室は私室の下の階だ。
誘導され扉をあけてまず目に入ったのは、入って来た扉の反対側にある大きなガラス扉だ。此処から中庭に降りられるみたい。その大きな窓のおかげか光が入って大変明るい。これなら貴重な魔道具の照明をあまり使わないで済みそう。魔力の扱いに慣れたら魔石への魔力注入をマスターすれば使い放題らしいんだけど。それまでは壊す可能性が高いので注入は禁止されている。因みに僕の魔力はリベル仕様のせいか一般人より多いとの事。訓練すれば増やせるそう。やったね! 因みにクルト様の魔力量は聞いたけど秘密だった。
中央には実験室の作業台のようながっしりとした大きな机が二つと、湯煎や煮る為かアイランドキッチンの様な仕様の、魔道具のコンロとシンクが埋め込まれた作業台。そしてクルト様の執務室方面の壁には広めの本棚と書き物机、それに隣の部屋へ繋がる扉があって、隣の部屋で休憩や昼食を取れるよう整備されている。昼食は時間が合えば一緒に取れるようにと、クルト様の執務室の方にも扉が付けられたらしい。だから中で三部屋並んで繋がっているのだ。なんか、いいのかな? 改装にお金かけ過ぎな気がするけど。
まぁ気を取り直して。その休憩室側と反対の壁には作り付けの収納が壁一面に。しかも神殿騎士の魔導師長の手を借りて、時間停止機能が付けられてるらしい。なにそれ怖い。
どう考えても僕に手をかけ過ぎている。絶対に逃さない、みたいな執念を感じるのは気の所為だろうか? どっちにしろ少なくとも受けた恩を返すまでは一先ず頑張るつもりだけどさ。
優遇され過ぎていて少々ドン引きしながら一通り説明を聞き、何かあれば些細な事でも呼ぶように、と言い置いてクルト様は執務室へ戻られた。この優遇もそれだけ期待されていると思う事にする。でないと胃が痛くなるし。
それにしてもクラウスさん(リオルの上司で侍従神官、こっちで言うところの助際?の長。様を付けて呼んだら怒られたのでせめてものさん付け。僕ってどんな立ち位置なんだろう。怖い)から聞き出した話によると、枢機卿様は大変多忙の様だ。
なんでも、クルト様より階位が上のお偉方(今は20名ちょっとくらいで殆どは老齢で名誉職状態。部門も考慮すると厳密な上役は5名らしい)は元気な方はご老体に鞭打って神殿騎士団について治癒師として魔物討伐の補助に行っている事が殆どで、実際の所実務的には部下はいるとは言えクルト様が取り纏めているらしい。ここがユグ様の最高位の神殿ということは、傘下の各地、各国の地方神殿からも陳情があれば決裁するのは誰かと言うのは言わずもがな。ギルドや各国との折衷もあったり、どうやら想像してた神職とは一線を画す仕事量みたい。
確かに執務室机にはいつも書類はいっぱいだし、補佐神官さん達も何人もいて忙しそうにしてる。そして僕が行くと、クルト様に休憩を取らせろとみんなして目配せしてくるのだ。クルト様は誘えば大体受けてくれるので、なんか半分それが仕事みたいになってき始めた今日この頃。確かに普通に心配なのでクラウスさん率いる、なるべく何か食させるように頑張っているチームに当然の如く僕も参加しはじめたのだった。
しかも後から知ったのだけどこの国、小さいながら神聖ラシルシュタット教国といって、国のトップが教皇様だという国なのだから、クルト様の地位はファンタジー物で言う宰相みたいな感じだ。数日前に少しだけ時間をとってくださってご挨拶した教皇様は、お告げを受けたり毎日時間で決められてやる儀式があったり、こっちも大変そう。
やば過ぎ。過労で死んじゃうよ。補佐神官さん達もクマがあったりしてるし。仕事には口は出せないから、せめて疲労も癒せるポーションとかでも作れたらいいんだけど。栄養ドリンク的な。ポーションは疲労には効かないらしいのです。と言うか僕の事なら、部下に投げちゃっていいんですよ??? 手ずから案内してる場合か??
尚更薬師として真面目に力をつけないと。そうと決まれば早速レシピを覚えなくちゃね。
休憩室への扉の廊下側の端に設置された本棚に収めてある、クルト様が集めてくれた薬関係の本を漁る。まだ二段埋まるか埋まらないかしかない。そもそもの数が少ないながら、その内の殆どは図鑑や考察資料で、レシピ集は数ページしかない物が二つ。この大神殿内にある大図書館からですら、司書さんと手分けして急ぎではこれしか見つけられなかったとの事。お手を煩わせて本当申し訳ない。他に司書さんが見つけ次第追加していってくれるとの事。色んな人に手をかけさせてる~! つら!
その時は、図書館に自分で探しに行きますよ、と思ったけれど、すぐ撤回した。多分そうするとまた声をかけられて大変なことになる気がするから。そしてきっとそれを鎮めに来させてしまって結局手を掛けさせる羽目になる気がする。神官だけならまだしも、献金に来た貴族とかに鉢合わせたりなんかしたら目も当てられないし。何か献金に訪れる貴族が増えているらしい。まぁ目当てはそうだよね。あわよくば、みたいな感じなんだろうか。こちとら別に特別な力とかないただの一般人なんだけど。はぁ。
現状、若干軟禁されてる様な気がしないでもないけれど、あれを考えると仕方ないと思う。当然の措置。というか僕だって行きたくない。ここで自分の仕事と立場をしっかりと確立するまでは、この保護されてるみたいな現状に甘んじておくべきだろう。それくらいの分別はある。
なので忙しいだろうに探して来てくれた事には感謝しかない。
書き物机に陣取り、薄いレシピ集を見ながら「これに追加していって、ユーリだけのレシピ集を作ってみたらどうだろうか」とクルト様が贈ってくれた、青い布張りに白と金で刺繍された美しい装丁の白紙の本へ書写していく(因みにできたらでいいので敬語をやめて欲しいとお願いしてみたら了承して貰ったので今はクルト様はこの話し方になっている)。
最初のぺージの、基本の回復薬を最後まで書き写すと、ピロンと音が鳴った。視界の端に電球見たいなマークが出ていて、ここがゲームだった事を思い出しつつそれにタッチしてみる。
タッチするとホログラムの画面が開かれた。丁度パソコンのウィンドウみたいな。
薬師スキルのものらしく、右上に閉じる為だろう×マーク、左上には薬師レベルが記載されている。僕は今見習い薬師らしい。そしてその下には
レシピ(1)同期完了
低級ヒーリングポーション
と載っており、その下の画面で書写した内容がそのまま見れた。クルト様に貰った本とスキルが同期した? っぽい。なんで?? ・・・・・・訳わかんないけど、まぁ、便利そうだからいい事にしよう。ヒーリングポーションの文字はボタンになっていてタッチするとそのレシピが見られる仕様みたいなので、多分この横か下にどんどんレシピ名のボタンが追加されていくんだろう。
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