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7.昼食の用意ができたみたいです
ようやく二冊共書写し終えた。とは言え二冊合わせてもレシピ数は九つ。低級ヒーリングポーション、中級ヒーリングポーション、低級マナポーション、低級毒消し薬、低級解除薬、頭痛薬、低級痛み止め薬、睡眠薬、関繋剤だ。
手順と材料を見て一番簡単そうなのは、・・・・・・低級ヒーリングポーションか。必要なのは乾燥薬草と、すり鉢、火種と水と小鍋。
全部作り付け収納にある物で事足りそう。念の為考察資料もタイトルだけ浚ってみると、一つだけ低級ヒーリングポーションに言及したものを見つけられた。電球がまた出たので確認すると、低級ヒーリングポーションのページに追記されたみたいだ。今度は書写していないのに。仕組みがよくわかんない。
一先ず収納の所へ向かい使いたい物を準備する事にする。インベントリが使えたらいいのに、などと考えながら手に取ろうとすると、新たなウィンドウが開いて、驚きにビクリと跳ねてしまった。声は出なかったからセーフ。
新しく表示されたウィンドウには、空白のアイコンがズラリと並んでいる。それこそこれ、インベントリなのでは?
物は試しに、と多量にある試験管を一つ触りインベントリへしまいたいと念じると、触れていた試験管が消え、ウィンドウに試験管のアイコンとそのアイコンの右下に1と記載された。今度は取り出したいと念じてみる。と、目の前の中空に空の試験管が現れた。手に取ると、試験管だからわずかだけれど、そのタイミングで物の重さが乗ったのだった。
一連の流れを踏まえて、何度も作業台と行き来するのは面倒なので、必要なものを次々とインベントリに入れていく。ついでにキッチンバサミの様な鋏とボウル、それから細かい目のザルも一緒に。そしてコンロ付きの作業台の上へ取り出した。
では早速、と、ポーションを作ってみる事にする。汚れると嫌だから本はインベントリにしまおう。
まずは一回分。乾燥薬草は1束。注ぎ口のついた深型のミルクパンみたいな小鍋へ、水を試験管六本分。レシピでは完成は五本になるらしいのだけど。蒸発分なのかな? まぁ違っても、質量保存の法則は魔法のある世界じゃ当てはまらないだろうし気にしない方が良さそうだ。
ボウルの上でキッチンバサミで薬草を細かく切っていく。量的には大葉五枚分くらいだから直ぐだ。それを摺鉢にうつしてゴリゴリ。待ってこれ、ひと擦りですぐ粉になっていくの気持ちいいんだけど。て言ってる間に全部粉になった。ま、まぁ、地球の素材じゃないしそういうこともあるよね。それともゲームシステム的な挙動?
そして考察資料にあった様にふるいにかけて、と。これをやると粉になりきれない筋が取り除かれて品質が上がるらしい。後はこれを水の入った小鍋に入れてから火をつけて、温めながら混ぜて溶かす。溶かすって、これ溶けるの? 粉緑茶みたいに粉が残ったりしないのかな?
おっと、沸騰しそうになったら火を消し色が黄色になるまで混ぜる、ね。おっけ。そろそろかな。そして火を消しても混ぜるのは止めない。
おお!!! なった! 黄色になったよ!
黄色になったら放置して粗熱をとり試験管へ注ぎ蓋をする。
待つの面倒。知らなかった。ゲームじゃきっととばせて分かんなかったやつですね。いや、これも一応ゲームの筈だけど。リアルを追求し過ぎた結果ですか?
あれ、でも、えーと、ポーション類は放熱力が高い為直ぐに粗熱はとれる、なるほど。じゃあ少しだけ待てばいいのかな。あ、僕って、鑑定スキルとか持ってないのかしら。暇つぶしって言ったら語弊があるけど、見れるなら直ぐ時間は経ちそうだし。
ゲームなら鑑定なくても知識にある素材名くらいは出るんじゃ? カーソル当てたら表示されたりするのあるよね?
カーソルを当てる代わりに注視で代用出来ないかと、残った薬草をジッと見つめる。・・・・・・お!
小さなウィンドウに薬草名がでた。薬草、とだけ。
でも説明はないみたいだから鑑定とはやっぱり違うっぽい? 鑑定使えるか試すだけ試してみる? 声に出さなければ恥ずかしくない。うん。誰も見てないから厨二病とか思われないし。よし。
鑑定
乾燥した薬草
ヒーリングポーションの原料になる。
で、出たーーーー! やった!! 鑑定使えるんじゃん僕! よしよし。なら、こっちの薬草は?
鑑定
・・・・・・ん? 出ませんけど。え、これもしかしてあれか。知ってる物じゃないと表示されない系の、ハードモード鑑定スキル。あ、いや、もしかしてスキルレベルが低いから? そうであってほしい。どうか。
・・・・・・この完成したポーションの品質をゲームみたいに鑑定できたら、スキルレベルが低いせいって事にならない? だって素材も効能も知ってるけど品質は試してないから分からない筈だし。・・・・・・そうと決まれば試験管を試験管立てへセットして、わけ入れて、と。粗熱取れるの本当早いんだね。蓋をして、よし、これで。
鑑定
低級ヒーリングポーション(品質:良)
体組織を再生し傷を修復する効果がある
回復量:⭐︎⭐︎
やった。やっぱりスキルレベルが低いせいでしたね。いや、知識が無いのもダメだったのかな? どちらにしても兎にも角にもここにある図鑑と資料は読破しないと始まらないね。知識のない薬師とか地雷でしかない。とんでもないヤブが誕生してしまう。
と、その前に先に使った道具を洗っておこう。
よし、一先ず乾くまで読書です。
「ユーリ様、お食事を用意しましたよ」
リオルに声をかけられ、ハッと気が付いた。我ながらかなり集中してたらしい。そう言えばお腹減ってる。
「ありがとう。休憩室に?」
「はい。あの、申し訳ありません、侍従長から、ユーリ様から司教様を昼食に誘っていただけないかと伝言を受けたのですけど、宜しいでしょうか?」
「僕から? もちろん構わないけれど。・・・・・・ん? まさか、クルト様って昼食すら抜きがちだったりする?」
僕の質問に少し困った顔でリオルが教えてくれた。
「そうです。侍従長もどうにかして昼食を食べてもらおうと頑張っているようなんですけど、成果は芳しくないみたいで。あっ、他者に主人の事を話すのは良くない事ですけれど、これに関しては聞かれたら答えて良いと侍従長が仰っていたので。ユーリ様の生活事情を他者に話したりはしませんのでご安心くださいね」
そんな事心配した事ないです。むしろ現代人はSNSで発信したがると言うのに。
「う、うん。別に知られて困ることもないから、僕は気にしないけれど。でもそっか、お偉いさんになるとそんな事も気にしないといけないんだ。大変だねぇ」
「またそんな事仰って。ユーリ様こそ尊い御身ですのに。ふふふ」
楽しそうなリオルは可愛いけどさ。尊い御身とか背中もぞもぞしちゃうわ。どうせあれでしょ、ユグ様関連の何かしらのせいでしょ。僕ちゃんとわかってますのことよ。
「そんなわけ。薬師見習いの身でそんな事言われたら反応に困るよ~」
猫被り&謙遜なんてお手のもの。いや、ユグ様のせいって僕は知ってるだけに、謙遜じゃなくて事実なんだけど。ガチでただの人なんですすいません。切ない。
「そう言う態度もお可愛らしいですけど、本当のところはきちんと僕たちが把握していますからね。ご安心ください」
何を把握してるんだろう。何もご安心出来ませんが・・・・・・。
「おっといけない。昼食だったよね。ではクルト様を誘いに行こうか」
「はい」
リオルの先導で調薬室を出てクルト様の執務室へ。ノックに応えがあり、中からクラウスさんが扉を開けてくれたのでそそくさと入室させてもらう。
「お邪魔しますね。クルト様、お忙しいでしょうか? よければ昼食をご一緒出来ればと思ったのですけど」
「そうだな、・・・・・・少し待ってくれないか? その魅力的なお誘いには是非とものりたいんだが、これ迄は済ませないと。どんどん遅延してしまう案件があってな」
「もちろん構いませんよ。いつも通りこちらのソファで読書しておりますね」
「すまない。こちらも急ぐ事としよう」
「お気になさらず。急いては事を仕損ずる、ですから」
「ほお、格言か?」
「ええ」
格言じゃなくて諺だけど、話を続けるとそれこそクルト様の仕事にミスがってはいけないし、頷いておく。
部屋に帰ってから寝る前にでも読もうと、調薬室から持って来た本をインベントリから取り出し読み始めると、またもや集中してしまっていたらしい。
声をかけられ本をしまう。ぴこぴこする電球をタッチすると追記事項が三つほど増えたみたいだ。あ! と言うか薬師レベル、2に上がってるし! どのタイミングだったんだろ。ポーション作る錬金術師のゲームを参考にするなら、もしかしてポーション完成した時? ちゃんと色が変わって喜ぶのに忙しかったから気が付かなかったのかも。次からはちゃんと見とこ。
「もしかしてインベントリが使えるのか?」
「そうみたいです。道具を動かす時に、やってみたら出来たので」
話しながら流れる様に手を取られ、ソファから立ち上がるとそのままエスコートされる。
「それは素晴らしい。インベントリが使えると出来る事の幅が増えるからな。初日に言っていた薬草採取の希望もいくらか前倒し出来るかも知れない」
「本当ですか!? やったー、楽しみです」
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