VR『異世界』より

キリコ

文字の大きさ
14 / 65

14.上司(?)へ進歩報告


「コホン。では、次の議題に移らせていただきます」
「くっなんだそれは。強引すぎないか?  かわい過ぎるだろう。ははっ。ああ、悪かった。そう睨まないでくれ。分かってる、もう言わない。ちゃんと聞くとも」

 ジロと睨むと、なんとか笑いを収めて聞く体制に入ってくれた。確かに半分照れ隠しだったけど、突っ込まれたら台無しじゃん!

 はっ。いけない、またクルト様のペースに持ってかれてる! 気を取り直して。

「コホン。お喜びください。なんと、早くも中級ヒールポーションの作成に成功しましたー、パチパチパチ」

 驚きながらも小さく拍手してくれるの優し。

 そんなクルト様の前に中級ポーションが入った大瓶をデン、と置く。

「これは、」

 直ぐ様鑑定するクルト様。目を見開き過ぎてませんか? 瞬きして。ちゃんと。

「これなら上級騎士の方々のお役にも立てられますか?」

 クルト様にしては珍しく、行儀悪くガタリと音を立てて椅子から立つと、一瞬で僕の横に現れぎゅっと抱きしめられる。覆い被されて少し苦しいけど。

 力強く抱きしめられるのって気持ちいいんだな。お父さんに抱きしめられたのっていつが最後だったかな。なんか会いたくなって来た。ログアウトしたら頼んでみよう。

 というかクルト様いい匂い。大人の男性の香水の匂いって感じ。

「ありがとう。本当に。これで光明が見えた。彼等の安全性もかなり高まる筈だ」
「それなら良かった! クルト様が騎士様達の事を話される時、いつも苦しそうな顔をしていたから、少しでも力になれたなら嬉しいです」
「ああもう、私の弟が可愛過ぎる」

 えっ、早速弟扱い・・・・・・。いや、嫌じゃないけど。なんならこんな美麗な兄が出来て嬉しいけど。

 しばらくぎゅっとされて満足したのかやっと離してくれた。

「結構話し込んじゃいましたよね。お仕事に戻られますか?」
「いや、今日するべき分は終わっているんだ。ユーリが良ければ一緒に騎士団へ訓練を覗きに行かないか」
「いいんですか? クルト様がご一緒なら問題ないでしょうし行きたいです」
「それはそれは、心して守らせていただきましよう」

 おっと、この世界にもボウアンドスクレープに似た仕草が存在したんですね? 手の甲へのキスはさすがにキザ過ぎるけど、これだけ顔がいいと許される不思議。 

 しかもこれはあれだ。自分の顔面の威力を分かってるタイプの美形。なのに今まで見た感じだと見た目に拘ってる感じは一切ないから、素材が良過ぎて特に何もしなくても勝手にかっこよくなっちゃうタイプ! ずるい。 

 なんか開き直って、やりたい放題になってませんか?? 





 只今騎士団詰め所に向かっています。すれ違う神官様達からの視線がとっても痛い。穴が開きそう。

 ただ、僕の猫被りが活躍していて、大人しくエスコートされて静々とお上品に歩く僕に、クルト様も最初は少し笑っていた。

 でもよく考えて欲しい。明け透けな態度をとっているのはクルト様相手の時だけなのだ。

 リオルと補佐神官様達にはうっすらバレていそうだけれど、外面は完璧に繕っているため、他の皆様には、『異界の高貴な姫君(男)』と思われております。

 戦犯はユグ様由来のこの髪と、リオルの選ぶ衣装です。

 柔らかい布地で作られた、踵まであるくびれのないワンピースみたいな服に、青地に金と白のライン状に刺繍された足首上くらいまでの上着(これが多分共通の神官服。階級で色が違う。閉じるボタンが付いているのは上半身だけ)を着て、その上に丈の短いフード付きのケープマントみたいなのを着ているのだけど(ストラみたいなのも付けさせらています)、この下に着ているワンピースが曲者なのだ。

 膝下で切り替えになっていて、やたらドレープがあってヒラヒラしている上に刺繍で美しく縁取られている。ただ、布地は薄く柔らかい繊細な物の為、ボリュームは出ていない。袖も指先まで隠れる程長くラッパ形に開く形(上着もこの形)で、こちらもまたヒラヒラがすごい。上着の袖から盛大にフリルが溢れてすごく邪魔。(薬師の作業中は上着と中の袖ごとまくってベルトみたいなのでリオルが止めてくれる)

 これで着ている僕の顔が、まぁ地味ではあるけど可愛い系の顔だから無理もない。悲しい事に男らしさという物があまりないもので。そらクルト様も弟じゃなくて妹扱いになるよ。こんな格好してたら。

 因みにクルト様は上着は同じだけれどマントはケープじゃなくて、なんか王子様みたいな白地に金刺繍の豪華な脹脛くらいまである長いもので、上着の中もワンピースじゃなくて詰襟の白シャツとスラックスなので、印象が全然違う。

 リオルに僕もそれがいいと頼んでみたけど、幾つもあるワンピースは僕が着ないなら捨てる事になると言われ渋々来てるうちに、悲しい事に慣れてしまっている。なんなら今ではこっちの方が楽になってしまったまである。




 というかクルト様がいつも隣にいるのも悪い。

 クルト様は護衛の騎士様方と張れる程には長身。それに対して僕は170未満。身長10センチ下さい。いえ、分かってますよ? そうするとデメリットがあるんですもんね。大丈夫ユグ様。ちゃんと覚えてます。言ってみただけ。




「私の手が空き次第、ユーリの護衛騎士を選ぶ事になっていたんだが、希望が殺到して中々選考が難しくてな」

 うわぁ。なんでだよ。何を期待してるの? ただの一般人だってば。

「そうだったのですね? というか僕に護衛騎士は必要なのですか?」

 神殿へ入ったリベルは僕だけだから、まぁ分からなくもないけどさ。

「当たり前だ。この世界でも、共を付けずに一人で行動してはならないよ。ユーリは言わずとも分かってくれていたみたいだが。高貴な出身なのか? 守られる者の心得があるだろう?」

 鋭い。さすがですクルト様。心得っていうか、中等部で社会見学を兼ねて車通学をやめてもらってから大学までずっと、登下校時に過保護な友人達が護衛みたいな布陣で通学してたから、それに慣れてるからっていうのがおそらく原因か。校内も一人でうろうろするのは止められてたし。

 因みにその過保護な友人達は、幼稚園から大学まで一貫校だったから皆幼馴染だ。

 その時にあれはしないで欲しいとかこれは危ないとか言われてたのを参考に、自分が相手の立場でされたら困りそうな事は極力しないだけですけど。そもそもお世話になっている身で勝手にうろうろしませんよ。

「いいえ。ただ少し裕福だっただけです。血は少し古いですけれど、祖国で身分制度があったのは遠い昔なので」
「そうか・・・・・・。貴族や地方神殿から少しリベルの話は上がって来ているぞ」

 えー、何それ聞きたい! みんなどうしてるの? 楽しくやってるのかな?

「そうなのですね、とても興味があります」
「ふは、急に目が輝きだしたな。やはり同胞は気になるか。おすましユーリはもう終わりか?」

 いたずらっ子みたいな顔で覗き込んでくるのはおやめください。美形のそれは殺傷能力が高いのです。

「もう、意地悪仰らないで。ここはクルト様だけじゃないのですから。話は聞こえないでしょうけど、注目を浴びているのは分かっているので、おすましは休憩室に戻るまでは続きますよ!」
「そうか・・・・・・。おすましじゃないユーリを知るのはこの兄である私だけか」

 いや、そうだけど、意味深な言い方しないで! そして兄弟設定気に入ってるし。もー。

「ああ、赤くなってしまった、すまない。わざとじゃないんだ。ユーリがあまりに可愛いものだから」
「クルト様!」
「分かってる。これ以上、言わない」

 クルト様が両手を肩程まで上げ、こちらに掌を向けた体勢で謝ってくる。本当にわざとじゃないっぽいのは分かるけど! だからって許される訳じゃないんですからね! というかこの世界にもハンズアップの仕草通じるの? 


感想 3

あなたにおすすめの小説

ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜

古森きり
BL
東雲学院芸能科に入学したミュージカル俳優志望の音無淳は、憧れの人がいた。 かつて東雲学院芸能科、星光騎士団第一騎士団というアイドルグループにいた神野栄治。 その人のようになりたいと高校も同じ場所を選び、今度歌の練習のために『ソング・バッファー・オンライン』を始めることにした。 ただし、どうせなら可愛い女の子のアバターがいいよね! と――。 BLoveさんに先行書き溜め。 なろう、アルファポリス、カクヨムにも掲載。

処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる

猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。 しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。 当然そんな未来は回避したい。 原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。 さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……? 平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。 ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)

異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます

ひと息
BL
突然の過労死。そして転生。 休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。 転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。 そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・ 知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?

【完結】Restartー僕は異世界で人生をやり直すー

エウラ
BL
───僕の人生、最悪だった。 生まれた家は名家で資産家。でも跡取りが僕だけだったから厳しく育てられ、教育係という名の監視がついて一日中気が休まることはない。 それでも唯々諾々と家のために従った。 そんなある日、母が病気で亡くなって直ぐに父が後妻と子供を連れて来た。僕より一つ下の少年だった。 父はその子を跡取りに決め、僕は捨てられた。 ヤケになって家を飛び出した先に知らない森が見えて・・・。 僕はこの世界で人生を再始動(リスタート)する事にした。 不定期更新です。 以前少し投稿したものを設定変更しました。 ジャンルを恋愛からBLに変更しました。 また後で変更とかあるかも。 完結しました。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

愛されたいだけなのに

まさお
BL
我儘令息だったノアは一回目の人生で最愛の人からの裏切りの末、殺される。 気がつくと人生が巻き戻っていて人生二週目が始まる。 しかしまた殺される。 何度も何度も繰り返した人生の中で自分が愛されることを諦めてしまう。

【完結】浮薄な文官は嘘をつく

七咲陸
BL
『薄幸文官志望は嘘をつく』 続編。 イヴ=スタームは王立騎士団の経理部の文官であった。 父に「スターム家再興のため、カシミール=グランティーノに近づき、篭絡し、金を引き出せ」と命令を受ける。 イヴはスターム家特有の治癒の力を使って、頭痛に悩んでいたカシミールに近づくことに成功してしまう。 カシミールに、「どうして俺の治癒をするのか教えてくれ」と言われ、焦ったイヴは『カシミールを好きだから』と嘘をついてしまった。 そう、これは─── 浮薄で、浅はかな文官が、嘘をついたせいで全てを失った物語。 □『薄幸文官志望は嘘をつく』を読まなくても出来る限り大丈夫なようにしています。 □全17話