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14.上司(?)へ進歩報告
「コホン。では、次の議題に移らせていただきます」
「くっなんだそれは。強引すぎないか? かわい過ぎるだろう。ははっ。ああ、悪かった。そう睨まないでくれ。分かってる、もう言わない。ちゃんと聞くとも」
ジロと睨むと、なんとか笑いを収めて聞く体制に入ってくれた。確かに半分照れ隠しだったけど、突っ込まれたら台無しじゃん!
はっ。いけない、またクルト様のペースに持ってかれてる! 気を取り直して。
「コホン。お喜びください。なんと、早くも中級ヒールポーションの作成に成功しましたー、パチパチパチ」
驚きながらも小さく拍手してくれるの優し。
そんなクルト様の前に中級ポーションが入った大瓶をデン、と置く。
「これは、」
直ぐ様鑑定するクルト様。目を見開き過ぎてませんか? 瞬きして。ちゃんと。
「これなら上級騎士の方々のお役にも立てられますか?」
クルト様にしては珍しく、行儀悪くガタリと音を立てて椅子から立つと、一瞬で僕の横に現れぎゅっと抱きしめられる。覆い被されて少し苦しいけど。
力強く抱きしめられるのって気持ちいいんだな。お父さんに抱きしめられたのっていつが最後だったかな。なんか会いたくなって来た。ログアウトしたら頼んでみよう。
というかクルト様いい匂い。大人の男性の香水の匂いって感じ。
「ありがとう。本当に。これで光明が見えた。彼等の安全性もかなり高まる筈だ」
「それなら良かった! クルト様が騎士様達の事を話される時、いつも苦しそうな顔をしていたから、少しでも力になれたなら嬉しいです」
「ああもう、私の弟が可愛過ぎる」
えっ、早速弟扱い・・・・・・。いや、嫌じゃないけど。なんならこんな美麗な兄が出来て嬉しいけど。
しばらくぎゅっとされて満足したのかやっと離してくれた。
「結構話し込んじゃいましたよね。お仕事に戻られますか?」
「いや、今日するべき分は終わっているんだ。ユーリが良ければ一緒に騎士団へ訓練を覗きに行かないか」
「いいんですか? クルト様がご一緒なら問題ないでしょうし行きたいです」
「それはそれは、心して守らせていただきましよう」
おっと、この世界にもボウアンドスクレープに似た仕草が存在したんですね? 手の甲へのキスはさすがにキザ過ぎるけど、これだけ顔がいいと許される不思議。
しかもこれはあれだ。自分の顔面の威力を分かってるタイプの美形。なのに今まで見た感じだと見た目に拘ってる感じは一切ないから、素材が良過ぎて特に何もしなくても勝手にかっこよくなっちゃうタイプ! ずるい。
なんか開き直って、やりたい放題になってませんか??
只今騎士団詰め所に向かっています。すれ違う神官様達からの視線がとっても痛い。穴が開きそう。
ただ、僕の猫被りが活躍していて、大人しくエスコートされて静々とお上品に歩く僕に、クルト様も最初は少し笑っていた。
でもよく考えて欲しい。明け透けな態度をとっているのはクルト様相手の時だけなのだ。
リオルと補佐神官様達にはうっすらバレていそうだけれど、外面は完璧に繕っているため、他の皆様には、『異界の高貴な姫君(男)』と思われております。
戦犯はユグ様由来のこの髪と、リオルの選ぶ衣装です。
柔らかい布地で作られた、踵まであるくびれのないワンピースみたいな服に、青地に金と白のライン状に刺繍された足首上くらいまでの上着(これが多分共通の神官服。階級で色が違う。閉じるボタンが付いているのは上半身だけ)を着て、その上に丈の短いフード付きのケープマントみたいなのを着ているのだけど(ストラみたいなのも付けさせらています)、この下に着ているワンピースが曲者なのだ。
膝下で切り替えになっていて、やたらドレープがあってヒラヒラしている上に刺繍で美しく縁取られている。ただ、布地は薄く柔らかい繊細な物の為、ボリュームは出ていない。袖も指先まで隠れる程長くラッパ形に開く形(上着もこの形)で、こちらもまたヒラヒラがすごい。上着の袖から盛大にフリルが溢れてすごく邪魔。(薬師の作業中は上着と中の袖ごとまくってベルトみたいなのでリオルが止めてくれる)
これで着ている僕の顔が、まぁ地味ではあるけど可愛い系の顔だから無理もない。悲しい事に男らしさという物があまりないもので。そらクルト様も弟じゃなくて妹扱いになるよ。こんな格好してたら。
因みにクルト様は上着は同じだけれどマントはケープじゃなくて、なんか王子様みたいな白地に金刺繍の豪華な脹脛くらいまである長いもので、上着の中もワンピースじゃなくて詰襟の白シャツとスラックスなので、印象が全然違う。
リオルに僕もそれがいいと頼んでみたけど、幾つもあるワンピースは僕が着ないなら捨てる事になると言われ渋々来てるうちに、悲しい事に慣れてしまっている。なんなら今ではこっちの方が楽になってしまったまである。
というかクルト様がいつも隣にいるのも悪い。
クルト様は護衛の騎士様方と張れる程には長身。それに対して僕は170未満。身長10センチ下さい。いえ、分かってますよ? そうするとデメリットがあるんですもんね。大丈夫ユグ様。ちゃんと覚えてます。言ってみただけ。
「私の手が空き次第、ユーリの護衛騎士を選ぶ事になっていたんだが、希望が殺到して中々選考が難しくてな」
うわぁ。なんでだよ。何を期待してるの? ただの一般人だってば。
「そうだったのですね? というか僕に護衛騎士は必要なのですか?」
神殿へ入ったリベルは僕だけだから、まぁ分からなくもないけどさ。
「当たり前だ。この世界でも、共を付けずに一人で行動してはならないよ。ユーリは言わずとも分かってくれていたみたいだが。高貴な出身なのか? 守られる者の心得があるだろう?」
鋭い。さすがですクルト様。心得っていうか、中等部で社会見学を兼ねて車通学をやめてもらってから大学までずっと、登下校時に過保護な友人達が護衛みたいな布陣で通学してたから、それに慣れてるからっていうのがおそらく原因か。校内も一人でうろうろするのは止められてたし。
因みにその過保護な友人達は、幼稚園から大学まで一貫校だったから皆幼馴染だ。
その時にあれはしないで欲しいとかこれは危ないとか言われてたのを参考に、自分が相手の立場でされたら困りそうな事は極力しないだけですけど。そもそもお世話になっている身で勝手にうろうろしませんよ。
「いいえ。ただ少し裕福だっただけです。血は少し古いですけれど、祖国で身分制度があったのは遠い昔なので」
「そうか・・・・・・。貴族や地方神殿から少しリベルの話は上がって来ているぞ」
えー、何それ聞きたい! みんなどうしてるの? 楽しくやってるのかな?
「そうなのですね、とても興味があります」
「ふは、急に目が輝きだしたな。やはり同胞は気になるか。おすましユーリはもう終わりか?」
いたずらっ子みたいな顔で覗き込んでくるのはおやめください。美形のそれは殺傷能力が高いのです。
「もう、意地悪仰らないで。ここはクルト様だけじゃないのですから。話は聞こえないでしょうけど、注目を浴びているのは分かっているので、おすましは休憩室に戻るまでは続きますよ!」
「そうか・・・・・・。おすましじゃないユーリを知るのはこの兄である私だけか」
いや、そうだけど、意味深な言い方しないで! そして兄弟設定気に入ってるし。もー。
「ああ、赤くなってしまった、すまない。わざとじゃないんだ。ユーリがあまりに可愛いものだから」
「クルト様!」
「分かってる。これ以上、言わない」
クルト様が両手を肩程まで上げ、こちらに掌を向けた体勢で謝ってくる。本当にわざとじゃないっぽいのは分かるけど! だからって許される訳じゃないんですからね! というかこの世界にもハンズアップの仕草通じるの?
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