22 / 65
22.リベルとの初めての対面
あれから数日。今日は件の引きこもりさんをお招きしている日だ。
食が進まないと書かれていた彼女の為に昨日、日本ならどこでも売っているような柔らかめのプリンを作ってみた。
こちらで出るものは結構硬めで、海外のプリンに似ているのでこういう違いもホームシック時には気になるだろうし。分量は普通に目分量だけど作り慣れているものだから問題なかった。
砂糖と卵の配合で硬さは結構調節できるのだ。完成品は冷やした後インベントリにしまってある。なんと駄目元で言ってみたらちゃんとバニラビーンズもあったので、卵臭さは消えています。
材料とカップとかだけリオルに用意して貰って調薬室にある道具で作ったんだけど、クルト様とリオルに微妙な顔された。それはそう。
だけど調理部門まで行って、忙しく仕事してる中僕の気まぐれの為にキッチン借りるとか、小心者の日本人には無理ですよ。
もちろん完成後はクルト様と味見済み。材料を調達して来てくれたリオルも。二人にもそこそこ好評でした。
まぁね、人間食べ慣れたものが美味しく感じる様になってるからね。決して失敗した言い訳とかじゃないよ! 本当に。日本人なら普通に美味しく食べられると思う。
午前中はいつも通り過ごした。彼女が来るのは昼食を済ませてお茶の時間くらいの予定なので、向こうが到着したらリオルが呼びに来てくれる手筈になっている。
昼食もしっかり食べ終わって、それまではと地道に中級ポーションを生産しています。結構作り溜めているポーションだけれど、遂に新しく選考された商会からポーション瓶が納品されました。
最初からちゃんとポーション瓶用の木箱に入れてあったので、早速ポーションを詰めていつでも持っていけるようにしてある。今作ってる分を換算せずに400本。
ぶっちゃけポーションを作る作業よりも、完成後に測りながらロートでポーション瓶に入れていくこの作業の方が面倒になってきている今日この頃。
まぁこういうのもおつとめの一貫なのだしやるしかないんだけど。と、いう事で地味に黙々とこなしています。
薬品を全て瓶に詰め終わり木箱にしまい、使った器具も洗って片付けまで終わったけれど、一向に呼ばれる気配がない。僕の気が急いているだけかしら。
呼ばれるまで読書でもしとこう。
「ユーリ様、お招きした方が到着されたそうです」
「ありがとう。じゃ、行こう」
「お待ちください。少しそのまま」
立ち上がろうとしたのをやめじっとしていると髪を一度とかれ、櫛ですかれてから丁寧に結い直してくれた。作業してたから乱れてたのかも。因みに僕の髪型はいつもハーフアップです。何か髪飾りを付けられた気がしたけど気の所為?
身だしなみもチェックして貰いOKが出たので向かうことにする。
調薬室から出ると、騎士様が五人も待ち構えていて少しビクッとしてしまった。同郷の人に会うだけなのにこの物々しさは一体・・・・・・。
先導されて辿り着いたのは、僕がまだ来た事がなかった一般市民が出入りする区画。正面入り口から入って一番手前の建物にある応接室のような所で。
僕達の棟から向かう通り道に、コンビニみたいな売店や、扉の無い控え室の様な部屋など気になるところがいっぱいあったけど我慢だ。人を待たせてるからね! クルト様にいつか案内して貰おう。多分勝手にうろうろしたら不味いだろうし。
扉を守る騎士へ、リオルが取り次いでくれて中に入る。
部屋の中にいたその人は、僕が部屋に入ると立ち上がって礼をしてくれた。お辞儀じゃなくてカーテシーだ。貴族のところで習ったのかな。グラつかず姿勢も綺麗に出来ていると思う。頑張ったんだね。どうやら真面目で礼儀正しい人みたい。
「お初にお目にかかります。宮原はるかと申します」
「ご丁寧に挨拶いただきましてありがとうございます。佐藤悠理です。よろしく」
僕もこちらに来てから習ったボウアンドスクレープに似た礼をとった。左手を胸に当て、右手は手を開いて背中に当てる形。
僕も何故かカーテシーも覚えさせられましたけどね。なんならそっちの方が細かく指導されたし。どうして。
まぁ、だから頑張りが分かったんだけど。
二人とも空気を読んで姿勢を戻すと、少し笑いあった。
ソファへ座るよう勧めて僕も座る。
「体調が優れないとの事でしたが大丈夫ですか?」
「はい、今はなんだか息がし易くて」
「それは良かった。それならプリンを作って来たので召し上がりませんか?」
「プリン・・・・・・」
ちょっと顔が強張っちゃった気がする。もしかして失敗したかなぁ。
「ええ、こちらのも美味しいのですけど、日本の柔らかめのが食べたくて作っちゃいました」
「あ、食べ、いえ、頂きたいです」
「ふふ。良かった」
プリンをそっと音を立てないようにテーブルに置く。プリンはカップから皿に開けて小さなクロッシュを被せた状態でインベントリに入れていたので、彼女の分もクロッシュを外してインベントリにサッとしまった。
彼女の前にプリンを移動させると、プリンがぷるんと震えた。それを見て涙ぐんだ気がしたけど大丈夫だよね? 嫌いとかじゃないよね?
何らかのハラスメント行為に抵触してたらどうしよ。
一人焦っているとリオルがナプキンとスプーンをセットしてくれた。はい、スプーンの用意忘れてました。そんなやらかしもリオルが優秀なおかげで事なきをえました。何やってんの僕。
「先に口をつけますね。いただきます」
スプーンで掬い口に入れる。うん、我ながら美味しい。相手を見ると、丁度彼女も口に含んだところだった。喜んでくれるといいんだけど。
って、えええええ。嘘ー、何故に泣く。これ僕が泣かした事になる感じ?
「・・・・・・美味しいです。凄く」
あ、プリンは悪くなかったらしい。
「ごめんなさい、困りますよね。すぐ泣き止むんで」
「えっと、大丈夫ですよ。泣くとスッキリしますからね。泣く事自体は悪い事じゃないと思いますし」
「ありがとう・・・・・・」
なんか、大丈夫かな? 結構精神的にキテたりするのかな。
あなたにおすすめの小説
ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜
古森きり
BL
東雲学院芸能科に入学したミュージカル俳優志望の音無淳は、憧れの人がいた。
かつて東雲学院芸能科、星光騎士団第一騎士団というアイドルグループにいた神野栄治。
その人のようになりたいと高校も同じ場所を選び、今度歌の練習のために『ソング・バッファー・オンライン』を始めることにした。
ただし、どうせなら可愛い女の子のアバターがいいよね! と――。
BLoveさんに先行書き溜め。
なろう、アルファポリス、カクヨムにも掲載。
処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる
猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。
しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。
当然そんな未来は回避したい。
原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。
さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……?
平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。
ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)
異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます
ひと息
BL
突然の過労死。そして転生。
休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。
転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。
そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・
知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?
【完結】Restartー僕は異世界で人生をやり直すー
エウラ
BL
───僕の人生、最悪だった。
生まれた家は名家で資産家。でも跡取りが僕だけだったから厳しく育てられ、教育係という名の監視がついて一日中気が休まることはない。
それでも唯々諾々と家のために従った。
そんなある日、母が病気で亡くなって直ぐに父が後妻と子供を連れて来た。僕より一つ下の少年だった。
父はその子を跡取りに決め、僕は捨てられた。
ヤケになって家を飛び出した先に知らない森が見えて・・・。
僕はこの世界で人生を再始動(リスタート)する事にした。
不定期更新です。
以前少し投稿したものを設定変更しました。
ジャンルを恋愛からBLに変更しました。
また後で変更とかあるかも。
完結しました。
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
※第33話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
愛されたいだけなのに
まさお
BL
我儘令息だったノアは一回目の人生で最愛の人からの裏切りの末、殺される。
気がつくと人生が巻き戻っていて人生二週目が始まる。
しかしまた殺される。
何度も何度も繰り返した人生の中で自分が愛されることを諦めてしまう。
【完結】浮薄な文官は嘘をつく
七咲陸
BL
『薄幸文官志望は嘘をつく』 続編。
イヴ=スタームは王立騎士団の経理部の文官であった。
父に「スターム家再興のため、カシミール=グランティーノに近づき、篭絡し、金を引き出せ」と命令を受ける。
イヴはスターム家特有の治癒の力を使って、頭痛に悩んでいたカシミールに近づくことに成功してしまう。
カシミールに、「どうして俺の治癒をするのか教えてくれ」と言われ、焦ったイヴは『カシミールを好きだから』と嘘をついてしまった。
そう、これは───
浮薄で、浅はかな文官が、嘘をついたせいで全てを失った物語。
□『薄幸文官志望は嘘をつく』を読まなくても出来る限り大丈夫なようにしています。
□全17話