VR『異世界』より

キリコ

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24.リベルが心配な伯爵


 私はパトリック・リーファース。伯爵家当主である。家格の位置付けとしては、伯爵の中では中の上と言ったところ。領地経営も我ながら堅実で上手くやっていると自負している。が、特筆するほど目立つ家ではない。

 そんな中、何故リベルの受け入れに手を上げたのかと言うと、寄親の侯爵家からの頼みだったのだ。

 他国程派閥争いは激しくはないが、我が国でも多少は無いわけでもない。

 閣下が受け入れるのが難しいとなれば、我らが派閥で次に名が上がるのは我が家になるというの自然の道理。派閥で誰一人手を上げないとなれば、受け入れに反対していると解釈されて当然だからだ。

 手を上げておけば、選ばれなかったとしてもそれは仕方の無い事だ、となるだけだ。まぁ、他の派閥に偏ってしまうとこれからやりにくくはなるとは思うが、それが聖樹様の思し召しであるなら納得するしかない。

 そうした中運良く受け入れ先として選ばれ、一人のリベルが我が家に来る事になった。

 リベルが召喚される当日、指定された時間に着くよう従者と護衛を引き連れ大神殿へ向かう。神殿の車寄せは意外と混雑しておらず、けれど後続がいないわけでもないのでさっさと降りると神殿騎士の案内で控え室まで移動した。

 控え室で待つ事暫し。騎士が呼びに来たので彼について私だけ儀式の間に向かう。




 儀式の間には錚々たる面子が揃っていた。口を開いてはならないとの事なので、王族への挨拶すら出来ないのはいたたまれないが・・・・・・。まぁ、そこかしこで挨拶合戦が始まってしまえば、召喚どころではなくなってしまうであろうから、きっとこれで正しいのだ。

 騎士の一人が何やら紙を確認し、大司教に全て集まったと報告しているのを見て直ぐ、何の前触れもなく視界が突然白んだ。瞼越しに強い光がやんだのが分かり目を開けると、聖樹様の像の前にまだ年若いであろう男女の一団が跪いていた。

 顔を見るとまだ十代の前半といった見目の者が多く、年嵩のものでも二十代の始め程だろう。

 (おそらく)名簿を持つ騎士がリベルと我等を引き合わせ、退出を促していく。

 王族のところや貴族家でも家格の高いところには数名のリベルが。私の様な位だと一人か二人の受け入れのようだ。

 なんだか受け入れ人数で格付けされてしまったような気がするが。まぁ、平民とはいえ全世界に根を広げる各ギルドの総長方とも同等とされた思えば、小国の木っ端の伯爵の身では畏れ多い気もする。


 私のところに受け入れるのは長い黒髪の少女だった。その場では微笑むだけに止め、控え室へ戻りそこで互いに名乗り合い、これから彼女の世話係になる従者達も紹介する。

 少女の名はハルカといい13、4にしか見えないが実年齢は驚くことに20才との事。

 あの少年少女達も皆おそらくそのくらいか少し上だという事だった。中には数名私たちと見目が近い者達もいたが、その者達はハルカ達からすると他国の者だそうで、ハルカの国の者は殆どが顔の彫りが浅く黒髪黒目だそうだ。

 転移陣の使用する番が近くなって来たとの事で騎士が呼びに来た。乗って来た魔道車は従者の一人が乗って帰り、私達は転移陣で領内の小神殿へ飛ぶ手筈になっていた。

 初めて入る神殿の地下は煌びやかな地上より暗く静かながら、厳かな雰囲気が漂っている。地下だというのに天井が高く、かなりの広い空間が続いていて、私達が降りている広い階段の両側は水でみたされ、如何にも物語に出て来そうな神秘的な情景だ。

 何処となく緊張し襟を正したくなる。暫く騎士の後をついて進むと、大きな広場があり中心には魔法陣が設置してあった。魔法陣の外側には紋様の彫られた石柱が八本、魔法陣を囲む様に立っている。




 あれが聖樹様から直接賜ったとされる、神殿独自の転移魔法陣。王城に設置されている魔導士達が開発した物より、魔力消費が大幅に少なく済むという噂だがはたして。

 魔法陣の周囲には2、3の集団がおり、彼等が転移してから私達に順番が回ってくるのだろう。

 見ていると、城の魔法陣のように魔導士が幾人もで魔力を注ぐような風ではなく、騎士が一人でサッと魔力を注いだだけで陣が発動している。

 これはちょっと、モノが違い過ぎる。神から賜ったと言われても納得だ。

 私達の番になり陣に入るとすぐに発動され、一瞬の浮遊感を得たあと直ぐに地に足が着いた。リベルも慣れてはいない様で、ハルカも従者の一人に抱き止められていた。

 着いた先は領内の小神殿なので治める司教は顔見知りだ。ハルカも慣れない事で疲れたであろうし、軽く挨拶だけして待機させていた魔道車で屋敷へ帰った。



 屋敷へ到着すると妻と幼い娘が待ち構えていた。帰ったぞと声を交わし、ハルカを紹介する。娘はハルカに興味深々のようだ。興奮しているのか顔を赤くしてハルカを見つめている。

「あ、は、ハルカしゃま」
「はい、何でしょう。エレオノーレ様」
「わたし、エリーよ。んっ」

 しゃがみ込み、エリーに顔の高さを合わせてくれるハルカはとても優しい子の様だ。そのハルカにエリーは両腕を伸ばしている。これは抱っこしろの合図だ。ハルカは微笑ましそうな顔で見ているが、妻はお客様に失礼な事を、と慌てている。ハルカが伺うようにこちらを見るので頷いた。

「エリー、愛称を許してくれてありがとう。仲良くしてね」

 さっとエリーを抱き上げ返事をするハルカに妻もホッとした様だ。

「うん! エリー、ハルカすき!」
「なんて可愛らしいの」

 ハルカも我が家の天使に早速魅了されてしまったらしい。エリーをぎゅっと抱きしめ、降ろさなくなってしまった。

 可愛い少女たちのやり取りに妻も嬉しそうにしていて、私達の初対面はどうやら上手くいったのだと感じられた。

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