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27.若様とキャットファイト
合間に水分補給にお茶を飲ませつついつの間にか膝枕状態で頭を撫でていると、どうやら眠ってしまったらしい。よっぽど辛かったんだろう。
この顔なら日本でもかなりモテるだろうし、こう言う事にも多少は慣れていそうと思うのだけど、やっぱり周りに家族や友人といった味方がいないというのは、心身への負荷の大きさが違ったんだろう。
味方は少しいると書いてはあったけど、結局は若様の家の使用人だから心から安心する事は難しいだろうしね。
「リオル、澤村さんの部屋って用意出来てる?」
「はい。こちらに留まる事になったら案内する様にと、クラウス様から言われています」
「良かった。ちょっと返すのは無理だから。となると、さて、件の若様にはなんと言ってお引き取り願おうかしら」
そう、澤村さんは今日、使用人だけではなく若様も連れて来ている。そうでないと外出も出来ないらしい。
手紙によると四六時中ひっつかれているみたいだし、こんな事になった状態で束縛されて行動範囲を決められているなど、余計に精神に悪影響だ。
話していると、澤村さんが身じろぎするのが分かった。まぁ、膝枕してるからね。
体を起こすのに合わせて、リオルに持って来てもらってインベントリに入れていた、温かいおしぼりを取り出し渡す。
お礼を言って顔を拭く澤村さん。お耳が真っ赤です。まぁそりゃ、恥ずかしいに決まってるからもちろん指摘しません。
拭き終わったおしぼりを受け取りリオルに渡す。
「本当にみっともないところを見せた上、膝まで、申し訳ありません」
がばりと頭を下げられる。
「そんなに気になさらないで。年下なのですから、少しくらい甘えていいんですよ。お兄さんに任せなさい」
「えっ」
「?」
「すみません。そちらが年下だと思ってまして」
「・・・・・・まぁ、よく言われるので。平凡ながら童顔なので仕方ありません」
「は? 平凡て、違いますよ。あなたみたいな方は清楚って言うんです。お美しいですよ」
「いや、あの別に、男ですのでそんな褒めなくて大丈夫ですよ。それはいいので、これからの事を話しましょう」
話を無理やり変えると、少しム、とした顔をしたけれど頷いてくれた。
「お荷物はどうしてますか?」
「もしかしたら神殿に置いて貰えるかも知れないと思って、私物はインベントリに入れて持って来ています。とは言っても着替えなどは買い与えられたものばかりだったので、殆ど置いて来ましたが」
「それなら問題なさそうですね。件の若様には私から話しましょうか?」
「・・・・・・いえ、自分で言いたいと思います。が、その、出来れば、一緒について来ていただくことは、可能でしょうか・・・・・・」
段々と俯いていく顔と尻すぼみになっていく要望がかわいらしい。
「もちろん構いませんよ。心の準備が出来たら参りましょうか」
「いえ、ついて来て下さるなら大丈夫です。いつでも」
おっけー。なら、そうだ。・・・・・・挑発するつもりはないけれど、もう貴方の勝手に出来る方じゃないですからねって視覚から分からせる様に、エスコートでもして貰おうかな。・・・いや、でもなんだろう、この寝取る側みたいな心境は。正当性はこちらにあるはずなのに。
「分かりました、では」
ソファから立ち上がり、エスコートして、と手を浮かせると嬉々として手を取られ腕に案内される。・・・なんか嬉しそうですね? 澤村さんがおっきなワンコに見えてきた。何これ可愛い。これが年下マジック?
そしてクルト様には劣るけど十分スマートな動きです。男なのにエスコートの違いが分かるようになって来るとか、何してんだろ、僕。
騎士様とリオルに加え、何故か合流してきたクロード様を引き連れ、控え室へ向かいます。クロード様なんで??? ついてくるなって言うのもおかしいのでそのままにしてるけど。・・・・・・あれか。クルト様の差金かな。過保護気味だし。
控え室に着くと若様らしき、確かに可憐と言うのが相応しい美しい少年と、従者らしき方がいらっしゃった。
お互い挨拶して。澤村さんにエスコートされている僕を見て若様の頬が引き攣るのが見えたけれど、親しくするつもりはないのでさっさと本題に入る事にする。
澤村さんに目配せすると、頷いた。
「ロジェ様、今までお世話になりました」
「な、何。どう言うこと」
「こちらの方の元でお仕えできる機会に恵まれましたので、神殿に身を置こうと思います」
ん? そんな話だったっけ?? 隙を見せられないから顔には出さないけど。
「どうして! そんな勝手に、許すわけないでしょう! あなたは僕のものなのに」
うわぁ。やっぱりそういう感じか。
「会話に割り込んでごめんなさい。うちの子を、リベルを物扱いするのはやめてくださる?」
口を挟むとギッと睨まれる。それはそう。だけど、そうやって無理やり、彼の意思関係なく自分のものにしようとしたの?
隣で強張る澤村さんに、従兄弟やクルト様の姿が過った。
「あ、あなたが権力で彼を自分のものにしたんだろう! こんな、大して美しくもないくせにっ! 私の彼がこんな事を言うなんてあり得ない! 無理やり言わせるなんて汚らわしい・・・、こんな方がのうのうと神殿にいるなんて、聖樹様もとうとう狂ってしまわれたか堕落されたに違いない!」
は???
「お黙りなさい」
じっと見つめると若様はビクリと震えた。
今、ユグ様を侮辱したよね。
「私の事はどう言おうと構いません。ですが貴方は今、自分の行いを棚上げしたばかりか、聖樹様を侮辱しましたね」
「で、でも、本当の事でしょう! 彼は私の」
「黙れと言っているのが聞こえませんでしたか」
「っ、」
・・・・・・やっと口を噤んでくれた。
「あなたが私のものだと口にする度、彼の顔が、体が強張るのが分かりませんか?」
大丈夫だからね、と背を摩ってあげると、澤村さ、・・・もう澤村くんでいいか。澤村くんは一瞬震えて体の力を抜くと、過呼吸とは言わないまでも乱れた呼吸を整える様にしながら、僕の肩のあたりに頭を差し出して来たので、よしよしと撫でてあげる。
やっぱり対面するのは怖かったんだね。体格の良い男性がこんなになるほど何したわけ??
頭撫でるの、膝枕してるときずっと撫でてたから気に入ったの? 益々ワンコじゃん。かわい。これあれだ。デッカワってやつ。
「あなたはそもそも彼の心を貰えていなかったにも関わらず、地位を利用して周囲の圧力で彼というリベルを縛ろうとしましたね。到底許される事ではありません」
ユグ様に迷惑になるなら排除しますよ? それに、リベルにこういった事をして許されると思われるのも運営も困るだろうし。この髪とクルト様の権力を使うのは申し訳ないけどね。
「私から処罰を与えるつもりはありませんが、リベルが神殿に保護されたとなれば十分社会的な罰を受ける事になるでしょう。貴方が使おうとした、外聞によって」
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