29 / 65
29.イケメンは距離の詰め方がエグい
「いや、ユーリ様は今まで通りがいいと思いますよ」
そう考えていたのに、当の澤村くんから一緒にご飯食べよっていう提案を反対されるとは思ってなくて。
懐いてくれたと思っていたから余計にか、少しショックを受けると同時に、自分がそうだからって相手もそう思ってくれるとは限らないっていう当たり前の事を思い出させられた。
・・・・・・というか、ここに来てから周囲の好感度がやたら高いから傲慢になっていたかも知れない。もろにあの嘆願書のリベルと同じ事してる・・・・・・。
自分の状態に愕然として、少し血の気が引いた。あっぶな!
「そ、そっか。ごめんなさい。僕が一緒がいいからって、ちょっと傲慢になってたね」
「あ!? 違います! おれっ、私だって一緒にいられるのならそちらの方がいいに決まっています!」
言わせちゃってるし。せっかく若様から解放されたのにこれじゃ、意味ないじゃん!
「あー、ごめん、そんな事言わせるつもりじゃなくて。本当に気にしないで。と言うか話し方崩していいよ。さっき俺って言ってたじゃない」
「いや、公私は分け・・・・・・、そうだ。それなら一人称だけ。それで口調は二人きりの時だけ崩させてください」
さてはキミ、真面目くんだな?
「そう? 澤村くんがそれで疲れないならそれでいいけど」
「その、呼び方も、エイトってよんで貰えませんか? ユーリ様ともっと親しくなりたいです。他の方は名前で呼んでますよね」
僕は様付けなのに? それに、ご飯はダメで名前呼びはオッケーとかどう言う事なの。
ジッと見つめられると反論が出てこない。確かにクルト様もリオルもクロード様も、名前で呼んでるけど・・・・・・。
「・・・エイトくん?」
「呼び捨てで」
「え、エイト?」
「はい」
「なら僕もユーリで」
「すみません、ユーリ様はユーリ様なんで」
なんでだよ。粘ってみたけど無駄に意思が固くて諦めた。
もう一度名前を呼ぶと嬉しそうに返事するし。イケメンスマイルを間近で浴びせないで。心臓が酷使されます。
何これ。なんか恥ずかしいんだけど。エイトはやたらニコニコして嬉しそうだし。可愛いなこのヤロー。
「もー! 可愛いんだから。あざといぞエイト!」
「うわ、はは、くすぐったいですって」
そう言いながらもついつい頭をもしゃもしゃしちゃう。ツルツルサラサラの髪が触り心地いいんだよね。ショートだからもふもふし易いし。
こっちの人のカラフルな細い髪と違って、艶々と輝く黒髪で髪質も如何にも日本人、みたいな感じで張りがあるものだから、触るのもそうだけど、目に入るとどこかホッとする。
僕も思ってたより寂しかったのかな。
それにしてもでっかいワンコは癒し効果が大きい事がよく分かりますね。アニマルセラピーすごい。人間なのに失礼か。
乱してしまったエイトの髪を手櫛で整える。モシャモシャしてごめんね。
「コホン」
リオルの咳がやけに部屋に響いて、ハッと我に返った。
いつの間にか、立ったまま正面からエイトにもたれかかって頭を撫でていて、俯いたエイトの腕が僕の腰のあたりを抱きしめている。どう考えても今日初対面の距離感じゃない。顔も近いし体の前面は殆ど密着状態。は?
こんなのやばい奴じゃん、僕。距離ナシ野郎すぎる。
慌てて離れるとエイトがシュンとした顔をする。・・・・・・僕が距離ナシになっちゃうの絶対この子のせいなんだけど!
「コホン。それより、なんで僕はそのままなんて言うの? 一緒に食事したくないの」
・・・・・・なんか言い方間違ったかも。めんどくさい彼女みたいな事言ってしまった。
「まさか。俺も一緒に食事できたら嬉しいですよ。用事がなくても毎日顔を見れるって事ですし。でも、貴方が食堂に行くとなればパニックが起きる事くらい、来たばかりの俺でも想像がつきます」
「・・・・・・そんなに? いや、注目を浴びてるのは分かってるけど。と言うかそれならエイトもリベルなのだし同じじゃない」
「全然同じじゃないです。外国人観光客は存在を気にしなくても、他国のプリンセスが街中に突然現れたら大変な事になるのは分かりますよね。自覚した方がいいですよ」
例えがおかしいでしょ。モブ男を捕まえてプリンセスて。あと頬を撫でるな! なんでみんな彼氏ムーブするの!?
そもそも男なんですが。日本人の彼までお姫様扱いしてくるとか、もしや、みんなして僕の性別があやふやになる魔法でもかけられてる?
「いや、正気に戻って欲しいんだけど、僕、普通のその辺りにいるモブ男子よ? プリンセスじゃない事は確かなのよ」
「本当に自分を分かってないですね」
そんなため息吐かなくてもいいじゃない。やれやれ系主人公かおのれは。イケメンだから、首が痛いポーズがこれまたさまになる事。
「兎に角、貴方は今まで通り生活して下さい。・・・・・・そんなに心配しなくても直ぐに這い上がって来るので。大人しく待ってて」
ん? 僕たちって付き合ってたっけ??? 何その恋人みたいな言い方。イケメンの無意識こっわ。知らん間に彼女にされるじゃん。
「・・・・・・よく分からないけれど、エイトがそう言うなら待ってる。けど、その代わり、なんかやな事があったら必ず言う事」
「はい、姫様の仰せのままに」
もお、手にキスはキザだってば!
「リオルもなんかあったら取り次ぎお願いできる?」
「お任せ下さい」
にっこり笑うリオル。こっちも可愛い。正統派エンジェルですね。すき。
あなたにおすすめの小説
ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜
古森きり
BL
東雲学院芸能科に入学したミュージカル俳優志望の音無淳は、憧れの人がいた。
かつて東雲学院芸能科、星光騎士団第一騎士団というアイドルグループにいた神野栄治。
その人のようになりたいと高校も同じ場所を選び、今度歌の練習のために『ソング・バッファー・オンライン』を始めることにした。
ただし、どうせなら可愛い女の子のアバターがいいよね! と――。
BLoveさんに先行書き溜め。
なろう、アルファポリス、カクヨムにも掲載。
処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる
猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。
しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。
当然そんな未来は回避したい。
原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。
さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……?
平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。
ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)
異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます
ひと息
BL
突然の過労死。そして転生。
休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。
転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。
そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・
知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?
【完結】Restartー僕は異世界で人生をやり直すー
エウラ
BL
───僕の人生、最悪だった。
生まれた家は名家で資産家。でも跡取りが僕だけだったから厳しく育てられ、教育係という名の監視がついて一日中気が休まることはない。
それでも唯々諾々と家のために従った。
そんなある日、母が病気で亡くなって直ぐに父が後妻と子供を連れて来た。僕より一つ下の少年だった。
父はその子を跡取りに決め、僕は捨てられた。
ヤケになって家を飛び出した先に知らない森が見えて・・・。
僕はこの世界で人生を再始動(リスタート)する事にした。
不定期更新です。
以前少し投稿したものを設定変更しました。
ジャンルを恋愛からBLに変更しました。
また後で変更とかあるかも。
完結しました。
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
※第33話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
愛されたいだけなのに
まさお
BL
我儘令息だったノアは一回目の人生で最愛の人からの裏切りの末、殺される。
気がつくと人生が巻き戻っていて人生二週目が始まる。
しかしまた殺される。
何度も何度も繰り返した人生の中で自分が愛されることを諦めてしまう。
【完結】浮薄な文官は嘘をつく
七咲陸
BL
『薄幸文官志望は嘘をつく』 続編。
イヴ=スタームは王立騎士団の経理部の文官であった。
父に「スターム家再興のため、カシミール=グランティーノに近づき、篭絡し、金を引き出せ」と命令を受ける。
イヴはスターム家特有の治癒の力を使って、頭痛に悩んでいたカシミールに近づくことに成功してしまう。
カシミールに、「どうして俺の治癒をするのか教えてくれ」と言われ、焦ったイヴは『カシミールを好きだから』と嘘をついてしまった。
そう、これは───
浮薄で、浅はかな文官が、嘘をついたせいで全てを失った物語。
□『薄幸文官志望は嘘をつく』を読まなくても出来る限り大丈夫なようにしています。
□全17話