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30.誑かしてなんていませんよ!
「ねぇリオル、普段は無理なのは分かったけど、せめて今夜だけでも僕の部屋で一緒に食べられないかな」
「そうですね、夜なら可能だと思います。昼はもう用意してあるので難しいでしょうが」
「エイト、大丈夫? 夜」
「もちろん。喜んで伺いますよ」
「よかった。ああそれと、ここでの過ごし方をエイトに案内してくれる方を付けていただけるのか、クルト様に確認して貰える?」
リオルへ大事なことを確認しておく。まぁ保護って銘打ってて放置はないとは思うけど一応ね。
「それでしたら、この後クロード様が一通り昼食も兼ねて説明した後に、世話係の紹介があるはずです」
「そっか。なら大丈夫だね。というかそれでクロード様が合流して来たわけね」
クルト様の過保護が原因じゃなかったらしい。自意識過剰でした。はっず。
「じゃあいつまでもいたらクロード様のお邪魔だろうし僕たちは戻りますか」
それこそもう直ぐお昼だもんね。多分エイトは、食堂の使い方とか案内がてらクロード様と食事に行くんだろうし。
「はい」
「じゃあエイト、また夜にね」
「はい夜に」
エイトに向き直るとギュッとハグされたので、僕も腕を回して背中をポンポンとたたいた。また後で、のハグかなと思ったんだけど、長い。長いってエイト。声をかけようとしたらやっと離された。
あーもう。顔を見ると、またしょんぼりワンコが降臨してるじゃん。撫で撫でしておこうね。
「暇なら、説明とかが粗方終わった後僕の調薬室まで来ていいからね。案内の人に連れて来て貰いなさい」
「! そうします!」
急にぱぁって笑顔になるの可愛い。寂しかったの? 図体はデカいのに可愛さが振り切ってるんだけど。
外に出ると、クロード様がノックしエイトの応えが聞こえ、僕たちと入れ替わりでクロード様は部屋へ入って行った。
若様から助けるだけのつもりだったのに、予想外に可愛い弟分ができました。
お昼は休憩室の方へ用意されているらしく、そちらへ向かうと入り口付近でクルト様がうろうろしていた。
「おかえり。迎えに行くか迷っていた所だった」
「只今戻りました。お待たせしてごめんなさい。先にお食事されてよろしゅうございましたのに」
「そんな冷たい事を言わないでくれ。一緒に食べたかったいじらしい私にもっと他に言う事があるだろう?」
確かにね。まだかなってしてたのはいじらしい。可愛いです。・・・・・・すかさず腰を抱いて流れるように休憩室へエスコートする技術は可愛くないけども。
「まぁ、ふふ。お待ちいただいてありがとう存じます。偶には可愛らしいクルト様もいいですね」
少し背伸びしてクルト様の頭を思わず撫でてしまってから、固まるクルト様に正気に帰らされた。エイトを散々撫でてきたからなんかバグっちゃった。
「ごめんなさい。リベルの子と間違えてしまって。許してくださる?」
「・・・・・・はぁ。また新しい子を誑かして来たのかい? うちのお姫様は悪い子だな」
人聞きが悪い事言わないで。誑かしなんて出来た事ありませんが? そんな事できてれば、彼女いない歴=年齢などと悲惨な事になってないのに!
と言うかエイトの事ならむしろこっちが誑かされたんですけど。ワンコ属性があんなに刺さるなんて知らなかった・・・・・・。
「人聞きの悪いこと仰らないでください。間違えたのは謝りますから」
「全く。私に違う人を重ねるなんて、ユーリが初めてだよ。ユーリは初めてをたくさんくれるね」
嫌味って言うほどじゃないけどいい意味で言ってないのは分かります。ごめんて! そんな拗ねなくてもいいじゃん。
それはともかく、今日の昼食も美味しそうです。いただきます!
「まぁ、意地悪ですね。そんな事仰るならもっと初めてを差し上げましょうか。アーンはして貰った事ないでしょう?」
「アーンとは?」
「僕が食べさせて差し上げます。一口だけね」
「は? はぁっ!?」
おお、クルト様が取り乱してる。椅子に座ったのに立ち上がってるし。めずらし。やっぱ初めてなんだ。
「もちろん嫌ならしませんよ」
「なっ、何も嫌とは言ってない」
「まぁでもお行儀が悪いですよね。また今度おやつの時にとかにしましょう。覚えてたら」
「は? ああ、いや、そうだな」
なんか動揺しすぎじゃない? 話しかけても生返事だし。こっちの世界ではそんなヤバい事なの?
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