33 / 65
33.ポーションの納品とエイトの心
「うわぁ。これは。クルトは毎日これを浴びてるのか。なるほど・・・・・・」
えっ何が? なぜため息をつくのですか。
本当に自由ですねこの方。どうすればいいの。
対処に困るのでクルト様の後ろに隠れておこう。近付くと頭をポンポンしてくれる。困ったのを察してくれた。優しい。
「もういだろう。ポーションを納品させろ」
「はいはい。分かったよ。じゃあ現物を見せて貰えるかな」
「はい。これです」
インベントリから中級ポーションの入った木箱を一先ず100本入りを6箱、作業台に取り出した。取り出してみると結構な量だ。インベントリに入れてるとあまり感じなかったけれど。
魔導士長様は鑑定しているのか、ポーション瓶を一つ取り出しマジマジと観察している。
「素晴らしい。さすがリベルと言うべきか、それとも君が特別なのかな?」
「それはないと思いますよ。多分リベルなら変わらないかと」
知らないけどね。でもリベルの転生前の初期の身体なんて、種族特性みたいなのもないだろうし全員同じだと思う。
違うとすればプレイヤーの本来の性格とか、地頭の良さくらい? 細かい事を気にする性格なら薬師は向いてるだろうし、逆なら毎回良品にするのは難しそう。
だから細かい事が苦じゃない僕には、薬師は向いてるんじゃないかなとは我ながら思うけれど。とは言え逆に、運動は苦手なので戦闘系プレイヤーにはなれなさそうですが。悲しい事にね。
「リベルだからといって半月足らずでここまで出来る様になるのか」
「ユーリは勤勉だからな」
「それはあるかも知れないが、リベルは一定のラインまでは成長がとても早いのだろう? 話は聞いていたけれどこう言う事か。中々の即戦力じゃないか。この分ならエイトにも期待が出来そうだ」
ん? 今エイトて言った?
「エイトって、リベルのですか? 彼はここに来たばかりですけれど、もう知り合ったのですか?」
「おっと、余計な事を言ってしまったね。本人から話したいだろうから聞かなかった事にしておいておくれ」
「はは・・・・・・」
もう遅いです。察しましたよ。
エイトのやりたい事ってもしかして、魔導士? クロード様がいたし、希望を聞いて顔合わせをした可能性が高い。
まぁプレイヤーだから死んでも死に戻りがあるし、多少危険でも反対はしないけどさ。夕食時に聞いてみよう。楽しみだけど、思ったより早く手が離れるのは少し寂しいかも知れない。
「早速騎士団に持って行かせて貰うよ。次の討伐からこれは早々に活躍する事になるだろう。これ程の品なら一般市場ではそこそこ高額買取になるだろうから、会計所にはそこも考慮するように言っておくよ。またよろしくね」
「はい。ありがとうございます。レベルも上げたいので量産するつもりですから、ぜひ使ってください」
「それはそれは。薬師の姫に感謝を」
魔導士長は手の甲に軽く口付けると早々に去っていった。魔導士長もインベントリあったんですね。
「ユーリ」
呼ばれて振り向くと、クルト様に紙を渡される。
「納品証明だ。会計所に持っていけば騎士団からの代金と、市民に売れた場合の献金の一部が支払われるだろうから保管しておくように。時間がある時に案内しよう」
売れた場合って言っちゃてるし。買うだの売るだのの言葉を使わないようにしてるんだなって思ってたのに、あれは何だったの。
「はい。お願いします」
それに言うてお金そんな必要としてないけどね。ここでは一から十までお世話になってるし。食費も寮費も払ってない。
そもそもお務めで作った分だし報酬を貰うのも微妙な気持ち。
だって普通、会社で仕入れた物使って作製したものって売った儲けは会社の物じゃん? ・・・・・・あ、もしかしてこれが給料替わりって事? それなら、くれるって言うなら貰っとこうか。神殿の経営もお金に困ってそうではないし。
その後はクルト様も執務に戻り、僕もポーションの量産に励んだ。
ポーションを新たに60本作製した所で扉がノックされる。エイトだったらしく、リオルに招き入れてもらった。洗い物してるから手が離せないので。
「お邪魔します。ユーリ様」
「いらっしゃい。作業はもう終わったんだけど、片付けの洗い物してるから少し待っていてくれる?」
「はい」
ちょっと。はいって言いながら背後から抱きついて来るのはどうなの。お前は彼氏か。
もー甘えん坊だなぁ。こんなにくっ付いてきてても、エイトは異性愛者だって言ってたから僕に気があるわけじゃないし、若様の事があった反動なのかな。
抱き着いて動かなくなっちゃったし。・・・・・・もしかして誰かに何か言われた?
「どうしたの、エイト」
「・・・・・・貴方のそばに居られる様になる為に、強くなろうと思ってたんです」
「ふふ、それはまた熱烈だね」
反動とは言えなつき具合が半端ないな。もしかして今まで親しい友人とか作るの難しかったんだろうか。
立ち姿や所作が綺麗だし、良いところの子だとしたら、お金持ちで顔も良くてって事ならあり得ないことでもなさそう。
「それで?」
「・・・だけど、先を見てしまって。道のりが長そうでちょっと打ちのめされました」
先って、ああもしかして魔導士長? 何か格の違い的なのを見せられちゃった?
「そっかぁ。ゆっくり少しずつコツコツと、じゃだめなの? 僕は、そんなに急いで強くなる必要はないと思うけれど。エイトはそれは嫌なんだ?」
「嫌です」
「それはまた、どうして?」
「だって半年後には、一万人がこの世界に入って来る。その時に貴方の近くに侍る権利を、強さの有無で奪われでもしたら悔やんでも悔やみきれない」
今、侍るって言いました? この子。僕の事なんだと思ってんの。ネトゲのキャラにのめり込んじゃうタイプかさては。
そもそもそんなのなりたがる人いないと思うんだけど。居たとしてもユグ様効果の効く原地民だけじゃない? エイトだってあんな事があったから懐いてるだけだし、何を心配してるのやら。
というかその一万人がログインして来た時、ロールプレイしてないのに姫様キャラになってるのってどう言い訳するべき?
「・・・・・・もしかして、僕の護衛騎士にでもなってくれるつもりなの?」
「いけませんか?」
這い上がってくるってそう言う事か。騎士団の幹部になるって事じゃなかったのね。なにそれ、僕の弟分いじらし過ぎない?
あなたにおすすめの小説
ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜
古森きり
BL
東雲学院芸能科に入学したミュージカル俳優志望の音無淳は、憧れの人がいた。
かつて東雲学院芸能科、星光騎士団第一騎士団というアイドルグループにいた神野栄治。
その人のようになりたいと高校も同じ場所を選び、今度歌の練習のために『ソング・バッファー・オンライン』を始めることにした。
ただし、どうせなら可愛い女の子のアバターがいいよね! と――。
BLoveさんに先行書き溜め。
なろう、アルファポリス、カクヨムにも掲載。
処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる
猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。
しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。
当然そんな未来は回避したい。
原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。
さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……?
平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。
ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)
異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます
ひと息
BL
突然の過労死。そして転生。
休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。
転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。
そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・
知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?
【完結】Restartー僕は異世界で人生をやり直すー
エウラ
BL
───僕の人生、最悪だった。
生まれた家は名家で資産家。でも跡取りが僕だけだったから厳しく育てられ、教育係という名の監視がついて一日中気が休まることはない。
それでも唯々諾々と家のために従った。
そんなある日、母が病気で亡くなって直ぐに父が後妻と子供を連れて来た。僕より一つ下の少年だった。
父はその子を跡取りに決め、僕は捨てられた。
ヤケになって家を飛び出した先に知らない森が見えて・・・。
僕はこの世界で人生を再始動(リスタート)する事にした。
不定期更新です。
以前少し投稿したものを設定変更しました。
ジャンルを恋愛からBLに変更しました。
また後で変更とかあるかも。
完結しました。
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
※第33話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
愛されたいだけなのに
まさお
BL
我儘令息だったノアは一回目の人生で最愛の人からの裏切りの末、殺される。
気がつくと人生が巻き戻っていて人生二週目が始まる。
しかしまた殺される。
何度も何度も繰り返した人生の中で自分が愛されることを諦めてしまう。
【完結】浮薄な文官は嘘をつく
七咲陸
BL
『薄幸文官志望は嘘をつく』 続編。
イヴ=スタームは王立騎士団の経理部の文官であった。
父に「スターム家再興のため、カシミール=グランティーノに近づき、篭絡し、金を引き出せ」と命令を受ける。
イヴはスターム家特有の治癒の力を使って、頭痛に悩んでいたカシミールに近づくことに成功してしまう。
カシミールに、「どうして俺の治癒をするのか教えてくれ」と言われ、焦ったイヴは『カシミールを好きだから』と嘘をついてしまった。
そう、これは───
浮薄で、浅はかな文官が、嘘をついたせいで全てを失った物語。
□『薄幸文官志望は嘘をつく』を読まなくても出来る限り大丈夫なようにしています。
□全17話