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34.エイトのお世話係くん
「じゃあ、そんな事にはならないように、エイトの席は空けておこうか」
手を拭きながらそう何気なく溢すと、ぐるっと回転させられ向かい合う形で抱き止められた。腰ががっちりと捕まえられていて動けない。
なにこの体勢。エイトちょっとさあ、こんな事色んな人にしてたりしないよね? いや、若様との事は一切疑ってないよ。でもそれとは別に、男子寮に入るなら注意が必要じゃない?
「本当? 俺、期待していいの」
「そんな良い物でもないと思うけれど、エイトがそうしたいなら」
「なるっ! なりたいです! 俺がんばるから」
「分かった分かった。ふふ、じゃあ待ってるね」
にこにこ笑顔かわいい。もうエイトのイメージがワンコになっちゃったから、感想がかわいいしか出てこなくなってしまった。そしてつい撫でちゃう。
ぎゅっと抱きしめられたので苦しくて腕をタップすると、少ししてやっと離してくれた。首の近くに頭擦り付けてくるの何これ。完全にワンちゃんじゃん。
あ、そうだ注意しておかないと。
「エイト」
「何ですか」
「あのね、この世界は同性同士も普通に婚姻出来るらしいんだよ」
「知ってます。え、ユーリ様結婚したいの?」
「ばか、違う。僕も異性愛者だから大丈夫だけど、こういう事をこの世界でしたら男性同士でも勘違いされるから、気を付けなよって話」
「・・・・・・なんだ。それなら、貴方にしかくっ付きたいって思った事ないから問題ないです」
「ああもうっ、だから、そういうとこだよ!」
普通にそれ口説き文句だからね!? 僕が異性愛者だった事に感謝しなさいよね!
「ユーリ様、お茶の時間ですが、どうされますか?」
「あ、もうそんなだっけ。・・・・・・うーん、もう魔力も空だし夕食まで部屋で休もうかな。お茶も部屋にお願いできる?」
「司教様は、」
「エイトも居るし、今日はごめんなさいって言っておいてくれる?」
「畏まりました。先に伝えて来てよろしいでしょうか」
「うん。ありがとう、お願いね」
リオルが調薬室を出たのを見て、エイトが話しかけてくる。
「ユーリ様、俺の世話係も紹介したいです」
「あっそうだね。もしかして隣室で待機してるの?」
「はい。リオルさんが案内してくれて」
「そっか。呼びに行く? それとも僕の部屋に移ってからが良いかな」
「じゃあユーリ様の部屋で」
「分かった、部屋に戻ってからね。リオルが戻るまで少し待ってね。僕達が居なくなったら驚いちゃう」
「はい」
扉をノックされ応えを返すと、クルト様とリオルが入って来た。
「ユーリ、ここで休憩して行かないのか?」
「ええ。今日はちょっと。あ、紹介しますね。こちらはエイト。件の保護した子です」
「初めまして、エイト・サワムラと申します。今日からこちの神殿でお世話になる事になりました。よろしく」
「初めまして。私はクルト・エプシュタイン。ユーリの言わば保護者だ。よろしく」
んもー。なんかバチッて火花が散った気がしたんだけど。
二人とも恋愛じゃない意味で僕の事好き同士だから仕方ないのか・・・。
うわ。・・・・・・自分の思考が自己肯定感高過ぎでドン引きするんだけど。いやでも、これってこの二人のせいじゃんね?
だってこの僕の状況で、んな事ないとか思っていられる人がいたら、それはもう立派な鈍感主人公でしょう。
それか自分の市場価値をきちんと把握出来ない人? 大人になってもたまに居るよね。過小評価も過大評価も両方とも。
さて、部屋に戻ってまいりましたけれども。エイト君のご機嫌がよろしくありません。それもこれもクルト様が、いつもはしないようなスキンシップをしてくるから!
なんで抱きしめてこめかみにキスしてきた? 本当に恋愛感情ないんですよね??? というかわざとエイトを煽ったよね? 何がしたいのよー。もう。
部屋に入りソファに座った途端、膝にエイトの頭が乗せられたんですけど。撫でろと言わんばかりに僕の手を頭に自分で持っていくし。何なのこのワンコ。可愛過ぎるんですが。
エイトは僕をどうしたいの。
そんなエイトは一頻り撫でさせて満足したのか、やっと体を起こした。せっかくリオルが入れてくれたお茶が冷めちゃうよ。
壁際に立つリオルの横に、僕より少し背の高い少年が立っているのが目に入った。
青年、って程じゃないので多分まだ十代。彼がエイトのお世話係なのかな? 薄い茶色の髪に緑の目。整ってはいるけど美麗って言うほどでもなく、何処となくモブオーラを感じて親近感がわく。
「あ、紹介するんでしたね」
僕の視線の先に気付いたエイトが彼に声をかけ呼び寄せると、少し近くに寄って来た。
「彼はステファンです」
「ステファン・ロッシジャーニと申します。お目に掛かかる事ができ光栄に存じます」
礼を取られ丁寧に挨拶してくれる。君も真面目くんなのかな。ここってちゃんとしてそうな人が多いけど、やっぱり神殿だからなのかな? 変な人は居られないらしいし。
せっかく丁寧に挨拶してくれるなら僕も気持ちを返したい。立ち上がって彼に近付く。
「こちらこそ。僕はユーリ・サトウ。よろしくね。エイトの事で対処に困る事があったら相談してね。彼は寂しがりだからよろしく」
握手の代わりじゃないけれど、手を掬い上げてぎゅっと握ると、赤くなって動かなくなってしまった。
あ、ここの人達、男性でも恋愛対象なんだった。これ多分、そういう事だよね? ごめんなさい。鈍感主人公ちゃんじゃないのでこういうのを察してしまうモブっぷりよ。
「勝手に触ってごめんなさい」
「ちょっとちょっと。俺よりユーリ様の方がダメじゃん。俺に言う前に貴方も気を付けて下さいよ!」
「はい、もうしません」
ハンズアップして応えるとエイトにぎゅっと抱きしめられて解放された。今の、それがやりたかっただけだよね!?
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