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35.エイトの目指すもの
もう一度お世話係くんに謝り、エイトをくっ付けたままソファに戻る。
「本当に気を付けて下さいよ。男もいけると勘違いされたら、ユーリ様なんてあっという間に食べられちゃうんですからね」
エイトには一体僕はどう見えてるの? 謎過ぎる。それに同性が好きな男性が好むタイプって、ムキムキだって聞いた事がある。それを思えば僕とかその辺の小石だよ。顔が特別美しい訳でもないし。
「いや、よく見て? 何処にでもいるモブだか・・・・・・、いや、そうか。この髪と目があるならそう言う事もあるのかも。・・・・・・うん。ちゃんと気を付けるよ」
ユグ様の髪と目を持ってるのすぐ忘れちゃうね。僕にはこれがあるからあり得ないことでも無い。真面目に気にしないと。
「はぁ? そんなのなくても十分に可愛い顔だし、ユーリ様って一緒にいるの心地いいんですよね。それって俺的には相手に望む一番大事な事ですよ。そう思うのが俺だけな訳がない」
それはあんな事があったし寂しくてそう思っちゃうんじゃなくて? とも思わないでもないけれど、エイトがそう思うなら素直に受け取っておこう。だって相手の思いを勝手に否定するのは違うし。
ちょっと恥ずかしいけれど、一緒にいて心地いいと思って貰えるのは恋愛関係無く単純に嬉しい。
「ま、まぁ好みは千差万別だからね。そういう奇特な人もいない事もないかも知れないから、ちゃんと気を付けるよ」
大事にしてくれる人の思いを無碍にする気はございません。と言うか肩に回した腕を全然離してくれない。離せって言うべき? 感じ悪くない?
「はぁ。まぁ今はそれでいいですけど。あーあ、明日から離れ離れ寂しいなぁ」
肩口に額を乗せてグリグリしてくるワンコ。取り敢えず撫でとくか。
「え? もう所属する所決めたの?」
いや、一応察してるけど本当の所は知らないからね。本人の口から聞いておかないと。
「はい。騎士団に入ります」
「決断が早い」
「目標は定まってるので」
「そっかぁ。それなら、寂しいけど、頑張れ」
「はい。あんまり物事に本気になった事が無かったけど、ユーリ様と早く一緒にいられるようになる為ならやる気も保てると思うんで」
「ふふ、もぉ、何それ」
どんだけ懐き度が爆上がりしたらこうなるの? つい小さく笑ってしまう。
でも男性にここまで言われたら、普段ならドン引きしてる筈なのに、これを可愛いと思ってしまってる僕も謎だ。
「うわ、かわい・・・・・・。はぁーーーーー」
今可愛いって言った? 何が琴線に掠ったのか分かんないけど、溜め息長いって。
詳しく話を聞くと、今日の内に騎士団長と魔導士長に会って入団を決めたらしい。騎士の訓練を受けながら並行して魔法も習得するつもりのようだ。それってめちゃくちゃハードなのでは? 大丈夫なのだろうか。
部屋も騎士団の方に移り、下っ端からなので四人部屋スタートらしい。一月に一度ランキング戦があり、そこで席次が上がれば部屋も豪華になっていく仕組み。
強ければ強い程魔物の討伐の際には戦果を上げる事になるのが当たり前なので、それが反映される形なのだそうだ。
そして、僕がときめいていた聖騎士の条件だけれど、全員が聖騎士として認められる訳じゃないらしい。厳密には実力が上位の12人までが聖騎士と名乗れるみたい。魔導士も含めて。だから聖騎士って呼ばれる人はかなりの実力者という事になる。
話の流れでつい、聖騎士様ってだけでかっこいい気がするしやっぱり憧れるよねって言っちゃったばかりに、エイトに火を付けてしまったようだ。
夕食の準備ができたとリオルに呼ばれ、エイトにエスコートされ食堂に行き、楽しく食事をした。
エイトのマナーは完璧でナイフの扱いも手慣れている。ただ、食事スピードを合わせてくれてはいるみたいだけれど、エイトには量が足りてないのを察してしまった。何となくだけど。
リオルも察したのか、途中からあからさまにエイトの皿に盛られている量が増えている。ワゴンに用意してあったものをサーブされてるだけじゃなかったの? どう言う仕組み?
そして驚く事に、あの硬いパンの外側をエイトは普通に食べられているのだ。僕が食べられない事を行儀悪く感じて軽く謝ると、僕はお姫様だからそれでいいとか言って煙に巻かれた。何でも、地球でも貴族は外側は食べていなかったらしいとかなんとか。いや、貴族じゃありませんけど。
これ、お婆ちゃんにバレたら叱られるんだろうな。食べ物を粗末にしてって。それは本当に、ごめんなさい。
そしてエイトから、他の殆んどの日本人は多分食べられてないと思うよって慰められる始末。それに少しホッとしてしまって、赤信号を皆んなで渡れば怖くないみたいな集団極性化は恐ろしい事だと思っていたのに、こう言う事かと実感してしまった。
食事を終え、ソファでお茶を一服していると、ふと思った。こうやって毎回ここで食事すれば良かったのでは?
「ねえ、今思ったんだけど、毎日ここで一緒に食事するのはどう?」
「うーん。・・・・・・嬉しいお誘いではありますけど、やめておきます」
「どうして」
「毎日会えるのは嬉しいけど、俺絶対浮ついちゃうから。集中出来なくなりそうだし。あと強くならない内は他の騎士がうるさそう」
「そっか。いい案だと思ったんだけどな」
「なら、偶に呼んでもらえますか?」
僕が少ししゅんとしてしまったのを感じてかフォローさせてしまった。でも、だって、全然会わなくなるの寂しいじゃん! いつも夜は一人で食事してたから、誰かと食べるのやっぱりいいなって思ってしまったんだもの。
「うん! にしゅ、いや、一週間に一度くらいならどう?」
「それくらいなら喜んで。あーでも、最初の一月は多分そんな余裕ないだろうからその後からでお願いします。訓練を見て来た感じだと、食事とか多分爆速で食べて気絶するように寝る生活になると思うので」
「ひえ。そんなにキツそうなんだ?」
僕のためにそんな・・・・・・。あ、まってまって。これ自意識過剰じゃないよね? さっきそうだって言ってたもんね? 自意識過剰だったら大分イタい思考してる事になりますよ!
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