VR『異世界』より

キリコ

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36.王子様を緊急回避する僕



 でもそっか。一月はいつも通り一人で食事か。まぁ仕方ない。いいもの食べさせてもらってるんだろうし、贅沢言っちゃ駄目よね。

「エイトが頑張るなら、僕ももっと薬師レベルを上げるの頑張んないとね」
「もう頑張ってるでしょ」
「もっとだよ。良質のポーションが安定的に騎士団で使えるようになって貰わないと、エイトも危ないじゃない」
「ああ、貴方って人はもう、ほんとに」

 苦しいって。ギブギブ。腕をタップすると、渋々と言わんばかりだけれど何とか緩めてくれた。

「俺絶対に強くなるから待っててくださいね」
「ふふ、うん」
「絶対ですからね」

 最後までそう言い残しながらエイトは帰っていった。

 いつもより時間がおしてるけれど、僕もさっさとお風呂に入って寝なくちゃね。明日からも頑張ろう。



 エイトとの邂逅から数日後。問題を起こしたリベルに会って話を聞く日が明日に迫って来ました。リベルとの面会は3回目だけれど、なんと今回もわざわざ王子自ら連れて来てくださるとの事。

 王族相手なのにこっちから出向かなくていいの? っていう疑問は、クルト様の問題ないっていう一言で沈められました。

 別に神殿の方が権力があるとか無いとかそう言った話ではなく、向こうが相談を持ちかける側だから当然との事。でもそれって、相手との関係が対等かそれ以上だからこそですよね? 

 前に聞いた話だと、地球の西欧諸国みたいに、神殿が戴冠とかを担ってる訳でも無いらしいのになんでそんなに立場強いの? そう素直に質問すると、ちゃんと答えが貰えた。理由は魔物の討伐にあるとの事。

 魔物の討伐自体はハンター達も、各国でも行なっている。ただ、狩る量が全然違うらしい。神殿騎士は聖別された武具を使っているので攻撃も通りやすく、それで狩る量が違ってくるのでレベルも上がって、その分騎士の強さも比例していくっていうことみたい。え、て言うかこの世界、身体においてのレベルとかいう概念あったの? 職業技能だけじゃなかったの?? という疑問は置いておいて。

 神殿騎士が3分の1もいれば一国落とす程度なら造作も無いらしい。個人技だけじゃなく連携とか組織立った戦闘も練度が高いとか。更に加えて、聖騎士っていう突出した強さの人達もいるから尚のこと。

 それヤバすぎない?

 神殿は基本中立なんだけど、民に重税を課しすぎたり虐殺するとか理不尽な事が行われれば粛清に出る事もあるとか。それには何十にも承認が必要になって来るから、錚々起る事でも無いらしいけれど。

 それと戦争についても、それ自体は放置だけど、征服した側がされた側の人民を理不尽に滅ぼし尽くそうとすれば、神殿が出る事もあるみたい。ちゃんと治めろって事? 駄目な基準が分からん。戦争は須く駄目よ、じゃいけないの? って思ってしまうのは庶民の考えなのだろうか。

 まぁ現代の地球でも経済戦争は頻繁に行われているし、僕みたいな帝王学も受けてない一般人には計り知れない事があるのかな? 


 兎も角、今日来訪する王子様は、王政だけれど堅実な国家運営が続いていて、民も裕福で幸福度も高い国のお方だとの事。当然国力も高いので権威もそれなりにあるそう。

 は? まじでふざけてる。そんな所で何してくれちゃってるのかな? というかそんな国ならリベルも数人預けられてる筈なんだけど、その子をどうにかしようとする人はいなかったんだろうか。

 別に僕はリベルの責任者でも何でもないけど、ユグ様の邪魔になるなら何とかしないと。これ以上リベルに対しての好感度下げられたらまずい。

 そう一人意気込む僕に、クルト様から注告が。殿下と会う時に、必要以上に遜るなとの事。リベルはこの世界の人民に対して、上にも下にも存在しないから。だって。

 その集団に所属すればこそそれ相応の礼儀を払う事はいいことだけれど、外部の存在なのにあまり遜った態度をとってしまうと、リベルの位置付けが決定しまうみたい。しかも成り行きとは言えただでさえ僕はここでお姫様扱いされているから(この髪のせい)、僕が下についたと思われてしまうとリベル自体も扱いが変わってくるとか。

 嘘でしょといいたい。ただのモブには荷が重いよー。主人公ちゃんどこにいるの? 早く助けに来て。お姫様役交代しよ?

 一気に位のある人に会うのが憂鬱になってしまって、鬱々としながら王子には挨拶せずに乗り切れないかクルト様に相談してみると、僕の心境を汲み取ってか、出来ない事もないとの返答が貰えた。

 それならぜひお願いしたいと懇願すると、僕はリベルにだけ会って、王子の相手はクルト様がしてくれるって! 神様仏様クルト様!! 救いはここにあった。

 さすクル。ぎゅっと抱き付いていっぱいありがとうしておいた。持つべきものはやっぱデキる上司だよね。

 あげられる物も特に持ってないから、お膝にのってアーンでもしてあげようか? だって嬉しいでしょ? クルト様は僕がかわいいから。弟的な意味で。


 
 という調子に乗り過ぎの思考は置いておいて。

 リベルに会うなら、その顔で姫様扱いはイタいって言われないように、男性の格好がしたいです。だって自分が、図らずとは言えネカマプレイみたいな事してるのに、相手に乙女ゲー主人公気取りはイタいですよって言えないし。

 と、クルト様に力説しつつ強請ってみると、一理あると思ってくれたのか、クルト様スタイルのものを揃えて貰えた。急ぎだったのでサイズは近い物の有り合わせとの事だけれど、着てみた感じは問題無さそう。ここにくる前は普通に着てた筈なのに、ワンピースに慣れ過ぎたのか何だか息苦しく感じてしまっている事に愕然とする。これってやばい?
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