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39.王子様の乱入
パンパンと拍手の音が聞こえ振り向くと、金髪碧眼の煌びやかな容姿の男性とクルト様が、連れ立って部屋へ入ってくるところだった。
うわー、クルト様なんで連れて来たの!
苦虫を噛み潰したような顔のクルト様を他所に、推定王子様の前に少し近付き礼をとる。そうしてから、クルト様が下手に出過ぎるのはまずいとか言っていたのを思い出し冷や汗をかいた。
いやでも、この場合はリベルの側に引け目があるのだし謝罪の意も込めてという事なら大丈夫じゃない?
「おや、貴方様がその様な事なさる必要はありません。頭をお上げください」
姿勢を戻すと目を合わせられ微笑まれる。また新たな美形出現ですか。目の保養ではあるけれど。
如何にもというか絵に描いたような、ザ・王子様な見た目で、上品な空気感と爽やかさが凄い。逆に威厳とか威圧みたいなものはあまり感じないけれど。
それはそうと、漫画の描写の、イケメンにだけ流れる風みたいなのが吹いてるように感じる。王子様オーラがすごい。キラキラしてる。
「お初にお目に掛かります。私はユーリ・サトウと申します。この度は貴国にはご迷惑をお掛けする事になり、誠に申し訳ございません。この様に対応に時間がかかってしまった事も含めて謝罪申し上げます」
「謝罪は受け取りましょう。私はフェリックス・ルーチェフィウメ。私の方のスケジュールの都合もありましたし、あまり思い詰めないで。罪を犯したのは彼女であって、貴方ではないのですから」
罪を個人のものとして分けて考えてくれるって事?
「寛大なお言葉に感謝致します」
ふんわり微笑まれホッとするのと、イケメンフェイスに当てられちょっと顔が赤くなってしまった。破壊力えぐ。まぶしっ。・・・・・・なんか殿下の目に熱を感じるけど気のせいだよね?
「彼女の行いが神々の知る所となりまして、儀式の間に連行するよう指示がございました。このままこちらで彼女の身柄を引き取ってもよろしいでしょうか?」
「ええ。構いませんよ」
「慌ただしくて申し訳ありませんが、急ぎますのでこれで失礼させていただきます」
「お待ちを。私も同行することは可能ですか? 出来るなら結果を見届けられればと」
まぁ確かに、自国でやらかした人物の処遇だから分からなくもないけど。殿下からすれば、無罪放免にされたりでもしたらたまったものじゃないものね?
でも儀式の間って、神官以外は入っちゃダメなんじゃ? クルト様へ顔を向けると、渋々といった風に頷いた。
いいんだ? 僕は別にいいけど。ただ連れてくだけだし。
「クルト様が良いと仰るなら僕は構いませんが」
「まぁ、今回は無関係という訳ではないからな。私が着いて行くならば問題はないだろう」
「ありがとう、クルト」
え、そこお知り合いでしたか。名前で呼ぶ感じの? クルト様の交友関係ヤバそ。チートなコネいっぱい持ってそうじゃない?
「ああそうだ、こちらを、彼女付きだった侍女殿へお返し願えますか?」
「ああ、これが。確かに承りました」
「よろしくお願い致します。では、参りましょうか」
ハンカチに包んだ例のイヤリングを渡すとみんなで部屋を出る。彼女は騎士様が連れて来てくれていた。それにいつの間にか先に部屋を出た二名が人払いをしてくれたらしく、通り道に人はいない。僕の騎士様たち有能すぎませんか。
彼女はずっと視線を送っていたのに殿下に一瞥もされなかったのが堪えたか、意気消沈していて言葉もないみたい。目上の方には声をかけられるまで話しちゃいけないみたいなマナー、知ってたの? 絶対殿下にワアワア話しかけてややこしくなると思ったんだけど。意外だ。
暫くゾロゾロと歩き儀式の間にたどり着く。騎士が一人先に中に入り、安全を確かめてから私達も入った。
ユグ様の像の前に彼女を座らせ、他のみんなには後ろに下がってもらう。運営は多分彼女を退去させるんだろうし。何か転移陣みたいなのが出るとしたら、他の人が巻き込まれるのまずいからね。
みんなが下がったのを確認して僕も跪く。手を組み、ユグ様に挨拶すると像が光りだした。あまりにも眩くて目が開けていられない。
少しして光が止み目を開けると、目の前のユグ様の像の足元がある筈の場所に、生身の、美しいサンダルを履いた足が。うそ。
まさか、と、逸る期待を抑えて、恐る恐る視線を上げていく。
するとそこには、ずっと、ずっと会いたかったユグ様が。ああ、やっぱり髪が短い。目が合うと柔らかく微笑んでくれた。
「っ!」
ユグ様が微笑み腕を広げるのを見て、思わず立ち上がり胸に飛び込む。
「ユグ様っ、ユグ様ぁ。うぅ、僕っ、ぐす、ずっとお会いしたかった」
「ああ、私のかわいいユーリ。泣かないで。目が腫れてしまう」
そう言われ目の下を袖で拭われると、自分が涙を流している事に気が付いた。
毎日欠かさずお祈りの時間にユグ様の像に話かけに行っていたのも、せめて像でもいいから会いたかったからだ。でも像相手なのはやっぱりどこか寂しくて。
あの時、ユグ様は『また』とは仰っていたけれど、あれは社交辞令的なもので、こうして会う事が出来るなんて半ば絶望的だと思っていた。
抱き上げて貰ったのが嬉しくて、そして暖かさを感じられる事に実体があると実感して、嬉しさが溢れて首にギュッと抱き付く。あの短時間の邂逅でこれ程会いたいと思ってしまっていた程、この人にのめり込んでいるとは自分でも思っていなかった。
「ユグ様、本物ですか? 僕の幻覚じゃない?」
「ふふ、本物ですよ。もう、相変わらず可愛いですねユーリは。こんなに可愛いくて、どうしてくれましょうか」
暖かい体にぎゅうぎゅうと抱きしめられて、ここにユグ様がいる事をしみじみと実感する。ひたすら嬉しい気持ちでいっぱいだ。少ししてユグ様の顔が見たくなり、心の昂りが少しだけ収まったのを待ち腕を少し緩め、抱き上げられたまま少しからだを離す。
間近で微笑む顔に、キュッと胸が絞られる心地がしているとキスの雨が降り注いだ。ユグ様も僕に会いたいと思ってくれていたの? そうだったら嬉しすぎる。
唇にジッと視線を注がれ、顔に熱が集まってくる。でも、そう。ユグ様とならしてみたい、かも。
「コホン」
クルト様の咳払いに、自分達の状況を思い出し恥ずかしさに顔から火が出た。
「あの、ユグ様、下ろして貰っていいですか?」
「どうして? このままでも話は出来ますよ」
「もうっ。真面目な話をするのにこのままでは礼を欠く事になるでしょ」
「ふふ、ユーリはお利口さんですねぇ。ですがユーリは私の唯一無二なのですから、これで礼を欠く事にはなりません」
「もー、ダメですよ。手は繋いでおきますから。ね?」
「・・・・・・仕方ありませんね」
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