VR『異世界』より

キリコ

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42.祝福と加護



 ユグ様がコホン、と咳払いをして、僕のシャツのボタンを外し始めた。

「えっえっ、何して、もうあと15分くらいしかないですよ??」
「ふふ、違いますよ。ココに加護を咲かせるので少し襟を開いただけです」

 鎖骨の中心の少し下を、トントンと人差し指でノックされる。

 あ、そういう? 額みたいに吸い付くの? 直ぐにエッチなことするのかと思った僕って・・・。しょうがないだろ年頃なんだからっ。しかも時間があるならいいみたいにとれる言い方しちゃったし! 恥ずか死しそう。と、思いきや、

「えっちな事はもっとユーリの位階が上がらないと難しいですね、残念ですが」

 ユグ様があからさまにがっかりしていて、羞恥心は薄れた。逆にちょっと笑っちゃいそう。ふーん、ユグ様もしたいんだ? なら、照れるけど、恥ずかしくはない。

 一人内心でワタワタしてる間に、胸元を開き終えたユグ様にちゅっと吸い付かれた。な、なんかその付近に顔があるの卑猥じゃない? 僕が童貞だからそう思うだけ?? 

 

 暫くしてユグ様が顔を離し虚無タイムが終わり、頑張って下を向いて確認すると鎖骨の下の辺りに、三日月の中に桜が三つ重なるような図案のタトゥが見えた。いや、加護とやらだからタトゥじゃないんだけど。

 なんか、これって、大丈夫ですか? 金色で光ってますけど・・・・・・。

「ふむ、月に花、ですか。月花・・・・・・ああ、私にとってのユーリという事か。なんだか皮肉を言われているようだ」

 独り言ちるユグ様の声が聞こえ、ですます調じゃない話し方にドキっとしてしまう。もしかして本来はこうなの? というかユグ様にとっての僕?

 えーと確か、月花で『寵愛』とかだったっけ? 一人っ子だから月花と可愛がって~みたいな感じの。あとは僕には勿体無いけど『風雅な物事』とか。てか寵愛ってあなた、ひええ。恥ずかしいけどユグ様はそれに納得してるってことは・・・・・・。きゃー!

 ・・・でもなんでそれが皮肉になるんだろ。そもそもユグ様が決めた図案じゃないの? どゆこと?

 あと桜の花言葉は『精神の美』とか『純潔』だよね。『優美な女性』は流石に当てはまらない。こんな扱いだけど男だし! 精神の美は僕には勿体無いし、もしかして純潔のほう!? 童貞だからですか?? 切ない。

 ・・・・・・男なのに花言葉に詳しいのは、母の教育の賜物です。いや、今時『男なのに』はなんかハラスメントに抵触する? って誰に言い訳してるんだ、・・・・・・こう言うとこが童貞メンタルなんだよな。


「まぁこれで、魅了魔法をかけられる事はありません。あとデバフ系は全部弾くので安心してくださいね」

 満足気に僕の頬にちゅっとキスする、謎に嬉しそうなユグ様に、返事をしてお礼を言うとギュッと抱きしめられる。暖かくてウッディないい香りがして、気持ちいい。大きな体に抱きしめられるのって安心感が半端ない。ユグ様からアルファ波的なの出てない? 温泉に浸かってるみたいな気持ちよさがあるよこれ。なんだろ、はふ、って声が出そう。

 それにこの香りって、ユグ様の正体は木だから、え、もしかしてこれが体臭って事?? いい匂い過ぎるんだけど、ヤバ。

「はぁもうあと5分ですか。名残惜しいですね。ああそうだ、このソファはユーリの部屋に運んで貰って是非使ってください」
「ありがとうございます。でも、毎日ユグ様を思い出して寂しくなっちゃうかも」
「ああ、もう。そんな可愛い事言わないで、もう時間もないのに」

 そう言いながら深いキスしてくるし。ユグ様のえっち! 離してもらえて息を整えるけど、なんだか唇が腫れてる気がする。あーもうまた。

 ・・・・・・キスしてたのばれたら恥ずかし過ぎるんだけど。でも僕もキスが好きになっちゃって、だめって言えない。これっていわゆる堕落って言うんじゃ?

「あの、そう言えば、ユグ様に会うにはどうしたらいいんですか?」
「・・・・・・残念ながら、現状ではユーリに位階を上げてもらうしかありません。位階を上げるには徳を得る、簡単に言うと人の為に何かをする事です。ユーリの場合は調薬で貢献していく事で大丈夫。あと、緊急クエストが出たら積極的に受けてください」
「分かりました! 僕頑張りますね」
「でもユーリ、忘れないで。私は何があっても、どんなユーリでも愛してる」
「あ、ぼ、僕も! 僕もユグ様をあ、愛してますっ」

 ユグ様が微笑みを返してくれて口を開こうとしたところでふっと居なくなった。ソファの上には僕一人。まだユグ様の体温も残ってるのに。

 少し呆然としたあと、ふとユグ様の像があった場所に目をやると、ユグ様がいる間は消えていた像がそこに戻っていて、まるで夢を見ていたかのように感じて寂しさに涙が滲んだ。

 けれど、ユグ様の像の髪がショートヘアに変わっている。それが夢じゃない何よりの証拠だった。




 暫くソファの上で心を落ち着け、身嗜みを整えると、ドアを開けた。

 そこにはクルト様と騎士が。殿下は帰られたっぽい? クルト様と直ぐに目が合うと、ギョッとした顔をされる。え、もしかして泣いたのバレた?

 上着を脱いだと思ったら頭から羽織らされて、混乱する。何事? そんなヤバい顔してる?

「お待たせしました?」
「それどころじゃないだろう、その顔はどうした!? 何をされた」

 唇を親指でソッとなぞられ、キスで唇が腫れていた事を思い出した。

「あっ!? これは、その」
「こんなに腫れる程キスを!? あんのクソ神、やってくれる」
「ク!? ちが、あの、これは、ご、合意ですので、」

 クルト様がそんな口悪いこというなんて何ごと!? なんでそんな怒る?

 合意って言った瞬間、クルト様の目が吊り上がった気がした。

「合意、だと? それはおかしいな。ユーリは異性愛者だったはずだが」
「いや、僕がその、自分で分かってなかったっていうか」

 なんか、なんでこんな浮気した恋人みたいな感じになってるの? 弟への束縛は如何なものですか、クルトさんや。

「ほう、そうだったか。よく分かった」

 クルト様の目がギラっと光って見える。えーん、なんか知らないけど怖いよー。人外彼氏ができちゃったとか言えるノリじゃない。たすけてユグ様。



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