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45.ステータスの開示
クルト様が口をパクパクさせているので、恐らく僕に何か問いかけているのだと思う。けれどこの目に見えない渦巻く力に弾かれているのか声は聞こえなかった。
それでもユグ様の力が体にジワジワと染み入るような感覚は心地良く、心は凪いでいてクルト様の声が聞こえない事に怯える事はない。むしろ全身はリラックスしている。
それよりも、発光して見えないとは言え体のラインは分かるので、筋肉のない貧相な体が少し恥ずかしい。
しかもここでは同性だからと安心は出来ないのだし。まぁ今回ははクルト様だったからいいけれど。地球の感覚のままじゃいけないよね。ちゃんと気を付けないと。
因みに今は、他の人が入っては来れないようにクルト様が扉に何か魔法をかけていたのは動いた魔力を感じて分かったので、そこは安心だ。
魔力感知も鋭敏になっているのか、人の内包する魔力も感知していて、半径50メートルくらいは何処に何人いるのか感知出来るようになったみたいだ。感知のスキルレベルが上がったのだろうか?
僕を取り巻く神力から感じる心地良い波動はクルト様はあまり好まないみたいで、ずっと苦虫を噛み潰したような顔をしている。あんなに顔を歪めていてもイケメンはイケメンらしい。美形って凄いな。
そんなこんなしている内にやっと変身が終わったみたいだ。固定されていた体の制御が僕に戻り中空から床にソッと立たせられる。丁寧さにユグ様らしさを感じて少し笑ってしまった。
最後に渦巻いていた神力が額の印に吸い込まれていき、一連の騒動は収束した。
「・・・・・・ユーリ?」
「はい、クルト様」
恐る恐る、みたいな感じでクルト様が呼びかけるのに返事を返すと、ホッとした様に彼の肩から力が抜けたようだった。
「今のは何だったのか聞いてもいいか?」
どうしたんだろう。クルト様らしからぬ他所他所しさだ。
「なんだか僕にも良く分からないんですけれど、多分進化? とやらをしたみたいです」
「進化・・・・・・」
「そういうシステムみたいな方面の事は何も知らされていないので、何がどうなったとかは僕には分からないんですけど」
せめてあれが使えればなぁ。ステータスオープンってやつ。
そう考えた途端、目の前に半透明のウィンドウが開いた。調薬スキルの時に開くものと似ている。
なんで急に? あれ程切望しても使えなかったのに?
ウィンドウにソッと指を這わすと触れる事が出来た。下の方で文字が途切れていたので試しに指を動かしてみるとちゃんとスクロール出来る。
色々試してみると、ウィンドウの大きさの変更も出来るし視線誘導でも動かせる事も分かった。
そこまで確かめてようやく、目を逸らしていた中身の確認をする事にした。
ユウリ・サトウ
〈神の慈悲〉Lv 1(3/10)
〈調薬師〉Lv 7
所属:神殿
体力:21
魔力:826
魔法:水・風・聖(光・闇)
スキル:調薬・錬金・治癒・審美眼・魔力操作
なるほど? あれ? 鑑定が無くなってる?
あと体力・・・・・・。これ、筋トレでもした方がいいんだろうか・・・・・・。てか僕、魔法の素養あったんだ? ユグ様はランダムって言ってたけど、なんか相性が良さそうなのばかりで良かった。
これ、チート主人公さまだったら全属性とかだったんだろうなー。三つって事は違うだろうし、これはこれで壮大な事とかに巻き込まれたりはしないで済みそう。そう考えたらこれで良かったかも。
ふーん、調薬はそのままだけど、錬金もやろうと思えば出来るって事なのか。普通に嬉しいやつだよね。
問題はこの治癒だ。クルト様に言えば騎士について外に出る事になるのかな? 僕一人が治癒に加わるのと高品質ポーションを量産するのと、どっちが良いんだろう。
それは兎も角、水魔法と聖魔法が使えるなら他の神官に頼むつもりだった事も自分でやれる。やったー。そうしたらもっと性能のいいポーションが作れる様になるだろうし、そうなったならレベルの低い治癒スキルより調薬優先かな? 外は怖いので僕的には引きこもり万歳なんだけど。
そうしていると、いつの間にかそばに来ていたクルト様にソッと頬に手を添えられ、顔を上げさせられた。
アッ、存在を忘れてしまってた。ごめんなさいクルト様。
「そこに何かあるのか? 何をそんなに熱心に見ている? 体は大丈夫なのか?」
「あ、ごめんなさい。夢中になってしまってました。体はなんともありません。むしろ今までより軽く感じるくらいで。これは、自分の能力値の様なものが見える様になっていたので、確認していました」
「能力値?」
「はい。これ見えますか?」
クルト様の方へ少しウィンドウ傾けると、クルト様がビクッと動いた。
「っなんだ? 突然、この板は・・・・・・ほぅ? 判別の魔道具と同じ仕組みか? だが細かな能力値は記載されないようだな」
スクロールする仕草も自然だ。言い方からして似た魔道具が存在するの?
「これと似た物があるのですか?」
「ああ、昔私とジュリアンで開発したんだ」
すごい。さすがだけど、チートが二人揃った時点でやれない事ないでしょ? 実際。
「素晴らしい魔力だな。進化とやらの効果か? 以前の三倍くらいか」
「そんなに増えたんですか? 自分ではあんまり分かってなくて。あと一般的な魔力量も分からないですし」
「そうだな・・・・・・、まぁ並みの、大部分の魔導士の魔力量は200から400といった所か。多くても500程度」
「へえええ。じゃあ僕結構多いですね?」
「そうだな。しかも今レベルは1だ。今の時点でこれだけあるのなら人並みのレベルまで上がれば、突出した奴等並に多くなると思うぞ」
「えー嬉しい。とは言っても、調薬くらいにしか使わないしなぁ」
「多い分には良いんじゃないか? いざ使いたいとなった時に無いよりは余程いい」
「それもそうですね! あ、治癒があるみたいなんですけど、僕も討伐に着いて行った方が良いのでしょうか?」
クルト様は、チラとこちらに視線をやったけれど、直ぐにウィンドウに戻した。
「何を馬鹿な事を。ユーリのポーションは、幾つもの隊の、かなりの助けになっている。治癒だと一つの隊にしか恩恵がない。私達からしたら民の為を思えば、ポーションを作ってもらう方が助かる。が、もっともユーリがどうしても討伐に着いて行きたいなら、訓練の時間をとる協力はするぞ」
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