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46.果たしてこれは女装に該当するか否か?
「そんな、いえいえ、大丈夫です」
ゲームらしからぬ現状とはいえ、全然行きたくないです。騎士様達には申し訳ないとは思うけどさ。それにどうせ僕じゃ行軍に着いていけないですよ。だって訓練が必要ってそういう事だよね?
あと僕が外に出たいのはピクニック的な意味であって、バトルではないので!
「そうか? ユーリは体力も低いようだし、少し訓練だけでもしておいた方がいいんじゃないか?」
「えーと、まぁ、ええ。その内、善処しますね・・・・・・」
「ク、はは、分かった、その内、いつか、な」
呆れたような、それでいて慈愛のこもった目でみないで! 運動系については駄目な子でいいもん! 無理するくらいなら喜んでプライドを捨てますが何か?
「それにしても、その衣装、その、少し扇情的じゃないか?」
「っもう! なんで言っちゃうんですか! 頑張って気を逸らしてたのにっ」
「だがその胸元、」
「僕だって恥ずかしいんですから言わないでください!」
うう、思わず胸元を隠したけれど、こういう行動こそが恥ずかしさを助長させてしまっているんだろうけれど。陽キャなら笑い飛ばせるの? もしそうならメンタル強すぎでしょ。隠キャにはむりです。
変換されてしまった衣装は全て白と金で出来ていて。神聖さはあるよ、確かに。でもさぁ・・・・・・。
詰め襟で足の爪先まで隠す程長く、下の方へいくにつれて少し膨らんだ形の白いカソック(?)に、繊細なレースのかなり大きいフードとドレープでやたらヒラヒラしたマント。フードは被れば鼻の辺りまで隠れるんじゃなかろうか。けれどレースで出来ている為か、見た目は重苦しくはない。
本棚の日焼け防止の為の黒いガラス扉に映る自分を見ても、肩に下ろしているだけでレースが華やかだ。
あらゆる所が金糸で刺繍されていて、神聖でありながら豪華さもある衣装に、完全に着られている。
刺繍はカソックの裾は言わずもがな、裾を地に見立てそこから美しいデザインの金色の蔓が上に向かって伸び、腰はカマーバンドの様なもので絞られ、それもまた豪華に金糸で刺繍されている。マントもカソックの裾と同じデザインで刺繍された布がティアード状に3段重ねられていてヒラヒラがすごい。
カソックは詰め襟で露出が殆どないデザインなのに、件の問題の箇所だけ菱形にくり抜かれていて、くり抜いた縁も金色の布で縁取られやたら目立つ。
袖はやっとラッパ形を卒業出来たと思ったら、肩から先がレースな上に手の甲まで覆い中指で留める形で、もうこれ女性用としか思えないんだけど。
着てるのが女の子ならテンション上がるかもしれないけど、何度も言うけど僕だよ! まじでふざけてる。
本当、何を思ってこんなデザインにしたの。多分これも、ユグ様の考案じゃないんでしょ? という事は戦犯は運営? クレーム送っていいですか。
いや、ちゃんと分かってるよ? 多分だけど胸の御印を隠さない為でしょ・・・・・・。でもそうだとしても、こういうのって男が着るやつじゃないよね!? もっとかっこいい感じの無かったですか・・・・・・?
この衣装の唯一良いところは、ユグ様の香水? みたいな良い匂いがするって事。多分作られたのがユグ様の神力からだから?
すっごく落ち着く香りで、元々ウッディな香りは好きだから余計に気に入った。
「だが、そこに目を瞑れば恐ろしく似合っているぞ。美しくも儚い、それでいて清楚。御印の神聖性も相まって、少しユーリが遠い存在になったように感じてしまうな・・・・・・」
衣装に向けていた意識をクルト様に戻すとまた迷子みたいな顔をしている。その顔やめて、母性が溢れちゃうんだってば!
思わず両手でクルト様の手を救い、胸元でぎゅっと握ると息を呑む気配がした。
「そんな事言わないで。弟にしてくれるって言ったのはクルト様ですよ。もう忘れたの? お兄様」
「あ、ああっ、そうだった、な。いや、忘れてない。そうだ、何があっても私はずっとユーリのお兄様だ」
元気でましたか? 覗き込むと、少し涙の滲んだお顔すら美しいお兄様。そもそもこの世界でユグ様の次に親しいのはクルト様なのに、いったい何を寂しがるっていうの。
喜んでくれたらしくぎゅうぎゅうと抱きしめられて苦しい。
ユグ様にされた時の様な少し恥ずかしくてドキドキするのに、気持ちよくて息が漏れるような感じは無くて。でもその遠慮の無さが逆に子供の頃夢に思い描いていた兄弟みたいで、なんだか嬉しい。
「こんなに美しい弟をもてるなんて私は幸せ者だな」
「さすがにそれは言い過ぎですよ! 親バカならぬ兄バカになっちゃってます。クルト様の方がよっぽど美しいのに」
「・・・・・・なぁ、ユーリ」
「はい?」
「兄弟なら、そうやって丁寧に話すのは違うんじゃないか? いや、そういう家庭もあるだろうが、私は砕けた口調で話して欲しい」
えー、いいのかな? でもこれを断るのはクルト様の心を捨てるのと同じな気がする。僕が嫌だとは思ってないから尚更。なら、いっか。
「もう、仕方ないお兄様だこと」
「ありがとう、可愛いユーリ。・・・・・・兄だと思ってくれるのなら、もっとわがままを言ってくれ。ユーリは頑張ってくれているが、もっと甘えていいんだ」
「だめ。甘やかされると際限なくなるでしょ。クルト様無しじゃ駄目になってから手を離されたら再起不能になるもの」
「こら、クルト様、じゃないだろう」
「ごめんなさい、お兄様・・・・・・。あーもう何これ! 恥ずかしい!」
「はは! 私はとても楽しいが」
機嫌良さそうにニコニコしてるのがちょっと憎らしいんだけど。僕を抱き締める逞しい腕からもぞもぞと自分の腕を救出し、できたばかりの兄の頬をむにっと摘んでみるのに、ちっとも堪えていないみたい。
「言っとくけど、二人の時しか言葉は崩さないからね!」
「すまない、怒ったのか? 許してくれ。そうだ、お茶にしよう。丁度今日の茶請けはユーリが食べたがっていたバターたっぷりのクッキーだぞ」
「っもう、・・・・・・ふふっ、仕方ないから許してあげる」
僕が怒ったと思ったのか、焦るように言葉を重ねたクルト様に抱き上げられ休憩室へ運ばれる。あからさまなご機嫌取りに思わず笑ってしまった。それにしてもこのお兄様、弟にメロメロ過ぎない?
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