VR『異世界』より

キリコ

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47.聖属性の魔力の使い途



 バター多めのサクほろのクッキーをお茶請けに談笑していると、思っていたより進化に時間をとられていたらしく直ぐに昼食の時間になった。


 昼食を終え調薬室に戻り、そそくさと道具を準備し始める。先程の進化の際に見る事ができたステータスに記載されていた聖魔法でやってみたい事があったのだ。

 元々は聖魔法が使える神官の誰かに実験に付き合ってくれないか頼むつもりだったのだけれど、折角自身が使える様になったのならば試さない手はない。



 以前クルト様に聞いた話だと、魔物の討伐にはポーションもだけれど聖水も欠かせないとの事だった。

 なんでも、魔物を倒すと少しづつ瘴気が体内に取り込まれていってしまうらしい。それを浄化しないでいると、段々と体が上手く動かせなくなり、気性が荒く暴力的になって最終的には魔物化してしまう。

 そうなってしまってから浄化したところで一度変容してしまった見目が戻る事はなく、正気に戻れたとしても悲観して死を求めるようになってしまうそうだ。


 と、言う事は、だ。聖水は飲むのではなく体にかけて使うとの事なので、その状態を維持する事によって一時的にでも聖属性を付与出来れば、その戦闘の間だけでも聖水を使うターンを省略できるのではないかと思ったのだ。

 クルト様に相談してみると、そんな物があれば戦闘はかなり楽になる筈で、作る事が出来たならどれ程素晴らしいか、との事。

 ハンターも一々神殿へ聖水を貰いに来たり浄化に来たりする手間が少しでも減れば、小さな討伐程度ならもっと多くのハンターが行えるようになる。そうすれば魔物にやや押され気味の現状も簡単に覆るかも知れない、と。

 僕がそんな物を思い付いたヒントは身近にあった。僕には毎日リオルが練り香を付けてくれる。これが、香りの代わりに聖属性の魔力を閉じ込められたら? これ迄に色々な図鑑を見ていたので、材料の目星は付いている。そしてその素材もハンターギルドに依頼を出して貰い既に昨日納品してもらった。さすがハンターギルドと言うべきか、これ程早い納品なのに品質は高い。改めてプロは凄いとしみじみ思う。





 試したい事というのは、その為に聖属性の魔力を使って作ってみる事だった。

 で、まずその方法だけれど単純に僕の魔力で一度作ってみる事から始めようと思う。もしも聖属性があの進化によってもたらされたものならば、それだけでも属性が付く可能性もある。元々聖属性を持っていたのなら、ポーションに属性は付いていない事を鑑みれば別の方法を考えなければならないだろうけれど。

 ものは試し、と言うやつだ。早速取り掛かる。レシピは基本的に、地球での練り香水の作り方と同じだ。

 
 ボウルに蜜蝋とホホバオイルをいれて湯煎で溶かす。そう、この世界にもホホバはあって、オイルも化粧品に使われているらしいものを調達して貰ったのだ。

 そして、どうせ初めて作った物が戦闘で使えるはずも無いので、せめて無駄にならない様普段使いできればとベルガモットの精油を少し垂らしておく。

 例の撹拌棒で混ぜながら、聖属性の魔力が流れるように意識して。

 これを使う騎士様達に危険が及びませんように。少しでも怪我をしませんように。良くないものに侵される事がありませんように。どうか。

 混ぜていると段々と蜜蝋が溶けて黄色っぽい透明になっていく。続けていると、魔力が飽和状態になった所でパッと色が変わった。

 先程まで黄色だったのが、今は白っぽく濁っていて、その中に入れてもない金粉が混ざっている。なんで? 金粉どっから来た。

 おっといけない。固まる前に容器に移さなければ。

 練り香水の器はとても小さいので、実験の為と少量作ったつもりだったけれど思いの外数があった。全部で10個分。

 早速かんて、い、のスキルはもうないんだった。どうしよう。これの情報が見たいんだけどな。

 そう思考した瞬間ウィンドウが開く。あれ、鑑定は使えない筈なのに。


守護の香(一級品)
創造主の愛し子たる異界の姫の聖なる魔力を潤沢に使用した最上の逸品。
但し飾り気のない陶器の器は質は良いが量産品の域を出ない。

使用効果継続時間:5時間
瘴気・呪い無効・反射
魔法防御力物理防御力上昇
幸運+10


 ・・・・・・なんか一発目から、・・・・・・んーと、これ、あの伝説のセリフ言っちゃっていいやつじゃない? この程度じゃだめ? もっとハイパーチートな事しないとダメか。いや、言いたいわけじゃないけどさ。

 書き方的に、魔力でゴリ押ししたからこそ出来た感じですかね。他の人も試しに作ってみて欲しいんだけど。使えるならこの世界がもっと安全になって安定するだろうし。

 予想外の出来の良さに、スタンバってたサクロの実が心なしかしょんぼりして見える気が。・・・・・・折角だし、今度はベルガモットのエッセンシャルオイルを入れずにサクロを潰して入れてみようかな。

 先程と同じ様に新しくボウルを準備して、材料を入れ、サクロの実も入れて棒で軽く潰す。今回は先程より溶け合うのが早い。湯煎から外し、練り香水用の容器に小分けしていった。

 今回はさっきより材料を少なめにしたので容器七つ分だった。さて、こちらも情報を見せてくれる?

守りの香(良品)
サクロの実の聖属性の魔力が込められた品。
使用効果継続時間:3時間
瘴気・呪い無効


 あれ、なんでこっちの方が性能落ちてんの・・・・・・? 実がダメだった。いや、でもあれ良品だよ。さっきと違う事と言えば、あ! 祈ってない、から? え、でも祈ったくらいでそんな性能上がってたら世話ないよね。

 ・・・・・・まぁ、あれだ。分からないからサクロの実を入れてもう一度作るかな。今度は祈りを忘れずに。
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