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49.知らない間にジュリアン様を攻略してたっぽい。何故?
「ジュリアンいい加減にしろ、それ以上続けるなら叩き出すぞ」
いつもより更に低ーいクルト様の声が聞こえる。胸元からチッと舌打ちが聞こえ、魔導士長、いや、ジュリアン様は体を起こした。
「ちょっとくらいいいじゃないか。ケチ。どうせクルトはいつもこうしてユーリにヨシヨシして貰ってるんだろう」
「何のことか分からないな」
素知らぬ顔でお茶を口にするクルト様。その対外的なクールな雰囲気、僕にはいつも甘々だから新鮮。この刺々しい雰囲気はジュリアン様の初対面の時の空気感に似ている。やっぱり幼馴染なんだなー。ちょっと微笑ましい。
「こら、僕がこうしてクルトにいじめられているのに、姫ちゃんはどうしてニコニコしているのさ。傷ついたから撫でて」
姫ちゃんって僕!?
頭を下げて僕の手を自分の頭に持っていくジュリアン様に、仕方ないなぁともう片手も使って撫で、少し乱れた髪を手櫛ですきながら整えてあげる。なんか、多分僕を少し内側に受け入れてくれたんだと思うんだけれど、ミステリアスだった天才魔法使いの急なキャラ変に心が落ち着かない。だってこんなの、もう幼女じゃん! クフクフ笑うジュリアン様は可愛い。突き刺さるクルト様の視線が痛いけども。
それにしてもこの世界にきてから、やたら人の頭を撫でている気がしてつい遠い目に・・・・・・。現実ではそんな事する機会なんて全くないのになんでだ。
「はぁ。まぁいい。今日はもうここでお茶をするか?」
「僕は構いませんが、皆さんが集中出来ないのでは?」
補佐官さん達へ視線を投げるとクルト様も彼らをチラと一瞥したけれど、問題ないと判断したらしい。
クルト様が僕にそう返事すると直ぐにクラウスさんがお茶を出してくれる。速さからしてここでお茶を出すか移動するのか迷っていたんだろう。なんかわちゃわちゃしてごめんなさい。いや、わちゃわちゃしてたのはジュリアン様! 僕悪く無い。うん。
そのままジュリアン様をくっ付けたままお茶をしていて、はっと練り香水の事を思い出した。もし使える物なら早めに活用してもらったほうが騎士様達の安全に繋がるはず。
「そうだ、休憩なのに仕事を持ち込んで申し訳ないのですけど、こちらを見て戴けません?」
先程作った三種類の練り香水を出してローテーブルに並べる。と、僕の膝でまったりしていたジュリアン様がガバリと起き上がり、練り香水に顔を近付けた。
「な、な、なにこれ・・・・・・。聖属性の魔力が・・・・・・」
ゴクリと息を呑んだジュリアン様が最初に作った物を手に取り開けて匂いを嗅いだり、多分鑑定したりする。クルト様は、と彼にも目を向けるとコチラも口を半分開き絶句していた。え、何その二人の反応。なんか怖いんですけど。これ、やっぱあの伝説のセリフ言っといた方がいい?
「えっと、前にクルト様に相談した物が出来たので持って来てみたのですけど、使えそうです?」
そう問いかけると、グリンっと音がしそうな勢いで二人がコチラを見た。こわっ。瞳孔開いてるって。
「馬鹿な、これが使えるか、だと? これは世に出せば多くの者の命を救い姫の位階は簡単に上がるだろう、だが・・・」
え、ジュリアン様が偉大な魔法使いに戻っちゃった。
「一級品の方は神殿内で秘薬として扱うしかないな」
「それがいいだろう。いや、そもそも使わなければ、」
「それこそ馬鹿な話だ。これに込められたユーリの祈りを感じないのか? 使わず騎士が万一命を落とせばユーリの心はどうなる」
「そうだな・・・・・・。なら、むしろ神殿内でも誓約の強い騎士と魔導士だけの話に止めた方がいい」
「・・・・・・まぁな。神官自身が清廉潔白だとしても親族がそうとは限らない」
「ああ。姫は警戒心というものがないし、誘拐されでもしたら目も当てられないぞ」
ええ? 騎士様がいるのにそんな事できる? というか一体どんな物騒な事態を想定してるの? そんなヤバい?
「でも、僕には騎士様がついて下さってるのに?」
「ではリオルが人質に取られたら? リベルの誰かは? 一人で来ないと人質を殺すと言われても絶対に行かないと断言できるか?」
そう言われて言葉に詰まった。そんな大事になるのは想像が出来ないのだけど。でも絶対にしないと断言出来るかと問われると・・・・・・。
でもなんでそこまでコレを欲しがる? 普通に売ればいいんじゃないの。
「あの、何故それ程危険な状態を想定するのですか? 使うのは騎士とハンターくらいなのでは」
「それらの金を持つ連中が定期的に購入するとして、だが。どのくらいの財になるか分かるか? もちろん私達はコレを安価で渡すつもりはない」
「・・・・・・なるほど」
じゃあそもそもの、新しいハンターが魔物討伐に参入しないかなっていうのは難しいって事かぁ。コストが合わなきゃハンターだって手を出さないだろうしね。
「姫が賢くて助かるよ」
ジュリアン様、結局姫呼びで定着しちゃってるじゃん。あの名前を呼ぶだの何だのの攻防は何だったの。
「それなら、こちらは? 僕が作らずとも同じものが作れるのでは」
二番目に作った、サクロの実を使用した物とそれをレシピ本に書き出しておいたページを開き二人に見せる。こちらはそれ程いい性能ではないけれど。
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