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50.レシピ使用料
「なるほど。これなら」
「レシピの使用料を取る形にして公開すれば懸念事項は片付くな」
レシピの使用料とかあるんだ。えっどうしよう。散々ポーション作ってますけど。
「あの、レシピには使用料などと言う物があるのですか? 僕が作ったポーションについてはどうなっているのでしょう」
「あれはもう開発者が亡くなって何百年も経っているから使用料は発生しないんだ」
「そうか、姫は知らなかったのだね。これも登録すれば姫が亡くなって100年後まではレシピ使用料が発生するぞ」
「そうなのですね・・・・・・」
僕が死んだら、かぁ。
それってこっちでは本来の残りの寿命の三倍になるって事だ。え、もしかしてクルト様とかが死ぬの看取る事になるの?? いや、エルフって人間より寿命が長いっていうのがセオリーだからまだ全然生きるのかも。
・・・・・・そもそもそれ程サービスが続いてくれるのかな。ユグ様のせいでもうこの世界に骨を埋めたい気持ちなのに、現実的な事を思い出してしまい気が重くなった。
二人の視線が僕に向いているのに気付いて、今は未来のことはひとまず頭から消す。悲しい顔してたら心配かけちゃうし。
「えと、それならそのいただいたレシピ使用料は神殿に入れて貰いたいのですけど」
「神殿に? 何故」
「だってお世話になっていますし、これ程至れり尽くせりしていただいて何も返さないというのは申し訳ないです」
「だが恐らくかなりの財になるぞ」
「ではその余剰分、民への炊き出しや飲み水の配給などに遣って戴ければ」
これってナイスアイディアじゃない?『徳』を積むのに一役買ってくれるのでは?
僕自身は今の生活で十分満足してるし、欲しいものも特に無い。それにポーションを作れば作っただけ報酬は貰えるし。だからそんなのより今欲しいのは『徳』なんです! 使う目的のない僕が無闇に貯め込むより、その方が経済も回るよね。
ユグ様と心を通じ合わせてからまだ数日しか経ってないけれど、もうすでに会いたくてたまらくなっているのだもの。部屋に移動してもらったあのソファが目に入る度に、毎日寂しさが溢れる。だって、僕はもうあの人の体温を、キスを、僕を抱き締める強さを知ってしまったから。
だから邪まな目的だけれど、人々の役に立つならそれでいい。違う、それが良い。
「本当にそれでいいのか?」
「姫は欲しい物などはないのかい?」
二人は心配そうに覗き込んでくるけれど、人々への献身からそう言っていると思われているのだろう。僕が私欲でそう希望していると知られたら、軽蔑されるかも知れないと思うと怖くて本当の事なんて言えない・・・・・・。
「もちろん。今十分に遇して貰っていますし。恩も少しでも返したいですし」
ああ、誤魔化そうとしてしまって余計に善人ぶった事を言ってしまう。
「健気過ぎないか・・・・・・?」
「こんな君を、どうして僕はあんな色眼鏡で見る事が出来たんだろう・・・・・・」
うう、罪悪感が。・・・・・・もう無理。
「あの、ごめんなさい。嘘つきました。本当はそんな殊勝な理由じゃないんです」
「何がだ?」
「どういう事?」
不思議そうな顔をする二人に、罪悪感に駆られ、ついに洗いざらい話してしまう。
ユグ様に会いたくて毎日夜、とても寂しい事。会う事ができるようになる為には、位階を上げなくてはならないと言われた事。だから今の生活で充分よくして貰っていてお金は特に必要としていないし、人の為になることに遣ってもらえるのならそれが良いと打算的に考えてしまっていること。だから健気でも良い子でも何でもなくて、人々の為といいつつ、自分の邪まな考えで提案したこと。
僕が話し終えると、お二人は言葉が出ないようだった。
まぁ、そうだよね。さっき迄は良いこだと思ってた子の本心が、打算的で邪まな思いからだったと知ったのだし。
どんな目で見られてるかと想像してしまって顔が上げられなかった。
「「はあぁーーーーーーー」」
二人同時に思い切り長く吐かれた溜息に、びくりとしてしまう。ああ、やだな。クルト様に嫌な子だって思われるのは。でもあのまま賞賛されるのもそれはそれで良心が。
突然両側から抱きしめられ驚く。隣に座っていたジュリアン様は兎も角、クルト様なんで? わざわざこっち来たの?
「やっぱり健気な事には変わりはない。あのクソ神の為かと思えば気分は悪いが」
「待ってくれ、そもそもどの辺りが邪な考えなんだ???」
えええ?
「え? ですから、自分の私欲の為に人に優しくしようと思って寄付を提案したんです」
「うん、それで?」
「それで、とは?」
え? 急に話が通じなくなったんだけど。ジュリアン様も訳が分からないみたいな顔をしている。何で?
二人お互いに不思議そうにしていると、耳元でクルト様の笑い声が聞こえた。
「くっははっ、流石ユーリだ」
「どういう事だよ」
クルト様は僕を抱き締める腕を外すと、優しく頭を撫でてくれた。いや、取り敢えず軽蔑されてない事は分かったけど、なんで?
「そもそもの『邪な考え』の定義が違うんだろう」
ジュリアン様と僕はクルト様へ顔を向け、言葉の続きを待った。
「自分が聖樹様に会えるようになる為に、自身の幸せの為に人に施しをしようと考えたこと事態をユーリは悪だと思っている」
「はぁ?」
ジュリアン様に変な子を見る目で見られる。なんでよ。
「どうしてだい? 人に善くする理由が自身にある事なんて当たり前だろう? 何故それがいけないんだ???」
本気で分からないみたいな反応。逆になんで?
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