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51.結局は個人の解釈の問題
「だって僕が提案した事って偽善みたいな事ですよね? 本当に善人だったらこんな事考えないはずですし」
「この世には偽善以外は殆ど存在しない。あくまで私の考えだが」
「え??」
「最も見返りを求めない善なる行いですら、自分がそうする事で心地良いからするんだ。という事は結局、自分の為だろう? それはユーリの言う事と何が違う?」
え? そう言われると反駁し難い・・・・・・。自分が気持ちいいから? クルト様、なんか善行に対して懐疑的じゃないですか?
「まぁ、結局は定義の問題だ。簡単に判別したいなら、相手に見返りを求めるか求めないか、という点じゃないか?」
「見返り・・・・・・」
「ユーリは施しに対しての見返りを民に求めるのか? 具体的には金銭や優遇、好意、もしくは感謝、とかな」
「いえ。別に。でも徳を積むのに利用しようとしています」
「それは結果の方だろう。自身を善だと思わせたいとか、感謝して欲しいだとかあるか?」
「ええっ、まさか」
「レシピ料を民への施しに使おうと思った理由は?」
「え、ですから、徳を積む為に」
「それでどうして民に使おうと思ったんだ?」
「だって、以前に、クルト様からの講義で現状のお話をしていただいた事がありましたでしょう?」
「ああ、あったな」
「あの時に、水さえ手に入れるのが大変な事に、何か出来る事があればと考えたのを覚えていて。それで、僕には必要ない大金が入ってくるのなら、と思ったので・・・・・・」
「それで? 自分で今話した内容を私が言っていたとして、それは偽善だと思うのか?」
「・・・・・・」
確かに、僕、人々の為にって思った部分は偽善じゃないのかも? わかんなくなってきた。でも言いくるめられてるような気もする・・・・・・。
「まぁ簡単に答えが出る問いではない。人それぞれの考え方次第だ。私達はユーリの言った事を邪だとは思わない。ただそれだけの事」
「そうだね。正義が人それぞれ違うように、善か偽善かなんて殆ど主観の話だから答えも人それぞれだ」
主観、か。
「まぁ、ユーリの希望は分かった。全額はきっと大きな金額になるりすぎるだろうから、三分の一程度から始めよう」
「分かりました。お願いします」
ふと視線をテーブルに流すと、あと二つあった事を思い出した。
「あ、この二種類はどうしましょう」
「これはユーリの『祈り』が篭っている。ユーリが渡したい者に優先していいぞ」
「そうだね。これを騎士団で支給品として扱うのは少し気が引けるよ」
「うーん、それならまずはこちらをお二人に」
癒しのスキル付きの方をお二人に渡そう。
・・・・・・人に贈るとなると急にシンプル過ぎて素っ気ない陶器の外見が、なんだか物足りなく感じてくる。鑑定でも散々言及されてたし。製作者の印か何か、もしくは名前とかが書けたらな、でもマッキーペンはここには無いし。あったとしてもマッキーペンはそもそもナシか。
そう思った途端、魔法の使い方が脳裏に閃いた。聖なる刻印? とかいうのが出来るの? 僕? 何それ?
えっと、胸元の印に手を当て指先に石から洩れ出る聖の魔力を掬い取って、対象に刻む?
一個試しにやってみよう。
一つ手のひらに乗せ、その通りにやってみる。目を閉じ胸元の印を意識すると、確かに洩れ出る、ユグ様の神力と混り合った僕の魔力を感じる。これを中指と人差し指で少し掬い取る。印から手を離しても保持するように念じてそのまま陶器の蓋へ。クルト様を護ってくれますように。
するとホワっと一瞬光り、胸元の三日月と桜の印と同じ図案が蒔絵のように、白い陶器の蓋に金で装飾された。器の側面には、二重線の上に所々花弁と葉が。
なんかちょっと恥ずかしいけど良い感じじゃない? 特別って感じで、これならクルト様に渡してもしょぼくはないかも。あれ? 鼻を近付けるとシトラスムスクのような香りがする・・・・・・。これには香料は入れていないのにどうして。・・・・・・魔法? 僕がクルト様をイメージしたから? まぁいいか。クルト様っぽい香りだし。
「こちらをクルト様に」
ラッピングとかしてないけど、一応贈り物になる? やっぱり最初に渡すのはクルト様だよね。
「い、いいのか」
「もちろん。最初にクルト様に渡さずして誰に渡すのです?」
「ありがとう。大事にする」
「どういたしまして」
ぎゅっと握り込み嬉しそうなクルト様を見てニコニコしていると、ふと視界に入ったジュリアン様が羨ましそうにクルト様の守り香を見ていたのに気がつく。
彼なら僕もそれが良いって素直に言ってきそうだけれどそうしないって事は、もしかして遠慮してる? なんかいじらし。
ふふ、それならジュリアン様にも刻印入りをあげちゃおうかな。
香りが付けられるなら、ジュリアンさまはなんだろう。さっきみたいに甘えてなければ、ちょっとミステリアスで大人な感じ?
この香がジュリアン様を護ってくれますように。
祈りに閉じた目を開くと、ジュリアン様が目を見開いてるのが見えた。何に驚いたの?
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