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55.騎士団へ
「騎士団に? もちろん構わないけれど・・・」
ジュリアン様がクルト様にちらと視線を投げると、クルト様が頷いた。なんですかそのやり取りは。
守り香をエイトと僕の専属騎士の皆にも渡しておきたい。他に渡したい人も居ないし。リオルやクラウス様は必要としないだろうしね。残りは騎士団長に渡していい様に使ってもらおう。大きめの討伐とかが発生した時に使えば、危険が減ると思うし。
『癒しの雨』は範囲回復だから、15分っていう長いクールタイムでも、練り香水の使用人数が15人いれば実質1分に一回癒しが使えるのと同じ事だ。そう考えればレイド戦のように多数で協調するならかなり使えると思う。
「いったい騎士団へ何をしに?」
「僕の騎士の皆とエイトへも渡そうかと思いまして。残りは騎士団長へお渡しして騎士団でいい様に使って貰えればと」
「ふむ、それならば私も同行しよう」
「えっ、それは流石に申し訳ないですよ。お忙しいのでしょう?」
前はすごく忙しそうだったよね? ご飯も疎かにする程。少しくらい側近の方々に仕事を振れるようになったからといってもやる事自体は多いだろうし。
「いや、部下のおかげで前程忙しくはないんだ。あいつらも自分で決済できるものが増えて作業量自体が結構減ったからな。全体的に少し仕事が楽になったよ。おかげで殆ど前倒しできているから今急ぎの仕事はないんだ。アイツらも偶には早めに余暇に入ってもいいだろう」
「それならお願いします。・・・・・・本当は帰りが少し不安だったので」
「騎士がいるのにか?」
「騎士はついてくれていても、やっぱりクルト様がいらっしゃると安心感が違うんですよ」
「そう言ってもらうのは私としては嬉しい限りだが」
頭を撫でてくれるのでつい笑顔になってしまった。
それから三人で連れ立って執務室を出た。もちろんジュリアン様のお顔も、クラウスさんが用意してくれた冷たいおしぼりのおかげで泣いた事なんて分からないようリセット済み。
右と左を麗しいお二人に挟まれ前方と背後には騎士様が付き、安全な神殿なのにめちゃくちゃ警戒してるみたいな布陣。騎士団に行くだけなのに・・・・・・。
ついて来てくださっている二人の騎士は何しに騎士団に行くのかまだ知らない。いつも部屋の外で扉を守って下さっていて、守り香の事はまだ伝えてないから。
他の騎士が今日何をしてるか分かるかと聞いたのだけれど、非番のギルベルト様は非番の日の午後はいつも自主鍛錬している(やっぱり真面目)からいつも通り騎士団にいるようで、他の方は一人は騎士団で鍛錬のシフト、あとの二人は一時間後に交代との事でもう少ししたらこちらに向かう頃合いだろうとの予想だった。
なら、タイミング的には良かったのかも? 全員に一緒に渡せそう。
いつにも増して視線を感じるのは二人が一緒だからかと思っていたけれど、違和感があったので視線をちゃんと気にしたら、みんな僕を見てる? そうだ、忘れてたけれど、神官服が改変されたんでした。それも全くの別物に・・・・・・。
え、ちょ、なんか遠くで跪いて手を組んでる神官がちらほら・・・・・・、目の前で祈らなきゃセーフってわけじゃないんですけど!?
うう、祈ってる人は兎も角、まともな感性の方々にあいついよいよ女装じゃんやべえとか思われてませんように。早く着替えたい。
あれ? そう言えばこの服って、脱いだら元の神官服に戻ったりするの? こうなってるのって今だけだったり? それだったら今日騎士団に行こうって言うんじゃなかった。今更だけど。
ようやく騎士団が見えて来たけれど、正面入り口に騎士様が数人いる。前来た時は一人だったのに。
「ようこそいらっしゃいました。異界の姫君」
礼をとり手にキスされる。ひええ。これ、いつまで経っても慣れる気がしない。毎回ひええってなってるよ。
「こんにちは。突然お邪魔してごめんなさい」
「いいえ。とんでもない。貴方様でしたらいつでもいらっしゃってくださって構いません。本日は見学でしょうか?」
「いえ、それも興味はあるのですけど、今日は僕の騎士に渡したい物がありまして。あとエイト、リベルの騎士にも」
そう答えると騒めきが大きくなった気が。よく見るとあちこちから沢山の騎士が見ている。みんな休憩中なの? 暇人か?
「畏まりました」
応対してくれた入り口を守る騎士が他の騎士を数名呼び、僕の専属騎士を訓練場へ呼び出しをかけてくれた。
ジュリアン様に先導され訓練場に行くと、如何にもたった今まで鍛錬していましたという風情の汗だくのギルベルト様とハインリヒ様が。
ああ、今になってようやく思い至る。鍛錬の邪魔をしてしまった。考えれば分かる事だったのに。ちゃんと予定を伝えてから一人一人渡せば良かったのに。甘やかされると僕ってこんなに簡単に傲慢になるんだな・・・・・・。
少し落ち込んでいると、騒がしい気配が近付いてくる。
「ユーリ様っ」
背後から声がかかり振り返ると、すっかり逞しくなったエイトが。え? 嘘でしょう? まだ一週間くらいしか経ってないよね??? 何その体。
「エイト?」
呼びながらクルト様達から少し離れエイトに近付くと、エイトも駆け寄ってきてガバリと抱き込まれる。
「はぁ。会いたかった。あー、すごい、ユーリ様、本物だ」
若干体をまさぐる様に抱き付きなおされ、首筋に顔を埋められる。
「ちょ、ちょっとエイトっ。皆様が見てますっ。もう、匂いかがないで」
猫吸いならぬユーリ吸いですかってくらい吸われる。恥ずかしいんだけど!
「はー、ユーリ様なんでこんないい匂いするの? 天国じゃんここ。もう、騎士団男臭くてさぁ。鍛錬よりそっちで死にそう。俺ここに住みたい」
騎士団ってそんなヤバいの? エイトがちょっとおかしくなっちゃう程? 敬語も外れてるし。
皆爽やかで清潔そうなのにすごいんだね・・・・・・。
「な、は? き、貴様っ」
声が聞こえて横目で周囲を伺うと、唯一反応できた真面目くんのギルベルト様以外みんな呆然としてる。もー、エイトの馬鹿。どうすんのこれ。
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