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57.エイトへの祝福
「・・・・・・いいのか悪いのかは、僕には答えられない」
エイトが顔を上げて、じっと見つめてくる。僕の自惚れじゃなければ、僕の声を聞き漏らしたくない、みたいに。
「けれどそれなら、これを僕が、ずっとエイトを待ってるっていう証にするのはどうかな」
「証・・・・・・」
「僕は今でも急ぐ必要はないと思っているけれど、エイトの気持ちは嬉しい。やりたい事が変わったとかでないのなら、諦めてほしくない。待っていたいと思うから、その証に」
多分エイトは、今まで要領良く生きてきていて、挫折とまでは言わないけれど簡単に熟せない壁にぶつかった事がないんだと思う。何かに本気で取り組んだ事がないって言っていたし。
そのせいで、努力を続けた先で願いが叶えられるのか不安になるんじゃないかな。
・・・・・そうだ! それなら、僕が待ってるって証をいつでも鏡を見れば見られるようにしたらどうだろうか。タトゥじゃないから、なりたい気持ちがなくなって終えば印は勝手に消えるし。よし、そうしよう。
「エイト、君が僕の騎士になりたいと思う気持ちがなくならない限り消えない、僕が君を待ってるって印、欲しくない?」
香の蓋を回す様にスライドして開けながら額を見せる様に言うと、エイトは思わずといった風に片膝を地に突いた。エイトは背が高いから、跪いても高さがある。羨ましい。ってそうじゃなくて。
僕を見上げるエイトを少し撫でた後、前髪をよけ微笑むと、彼は少し涙ぐんだ。
もう、泣き虫なんだから。
「それって、俺が、いつかはユーリ様のものになれるって、約束の印って事? ですか」
「そうだよ」
エイトは滲む涙を払おうとしてか、長いまつげを振るわせパチパチと瞬きをする。そしてしっかり僕の目をみると、一度強く目を閉じ息をはくと、そっと目をあけた。
「・・・・・・欲しい。俺、ユーリ様のものになりたい」
「分かった。それなら、少しそのままで。大丈夫、痛くはないからね」
そう言って額を撫ぜると、エイトは何をされるのかよく分かってない筈なのに素直にこくんと頷いた。
「いいこ」
今からするのはユグ様の見様見真似。少し恥ずかしいけれど。
僕だけの魔力じゃ力が足りないのがなんとなく分かるので、周囲の魔素の助けを借りる為エイトの香を額に塗る。そして胸元の刻印から魔力を掬い自身の唇に塗って準備はできた。
これは口に入れるものじゃないから舐めないようにしないと。
・・・・・・それにしても、どうやればいいのか、どうして分かるんだろう。知らない事なのに知っている。不思議だ。
唇に魔力をのせたまま、ユグ様の真似をしてエイトの額に祈りを込めて口付けた。エイトに僕の魔力が流れるのを感じて目を開けると、魔力が金色の蔓紋様となってエイトの体を這っていくのが見える。
そんな状況なのにエイトはリラックスした顔をしている。僕がユグ様の神力に温泉みたいな気持ち良さを感じるのと似た事になっているのかも知れない。
エイトの体が少し光って、それがおさまるとエイトの額には金色のノーティカルスターが。
これは海図で北を指すマーク。アクセサリとかだと意味は、無事の帰郷を祝うだとか意義を見出すとかだったかな。
日本では星は魔除けだし、願いを掴むっていう意味もある。僕が決めた図案ではないけれど、エイトに贈る祝福としてピッタリなのでは。運営さんいい仕事しますね。僕の時と違って普通にかっこいいんだけどなんなの。
淡い輝きが止んで、エイトが敬虔な信者の様に閉じていた目を開くと、片目だけが僕と同じ、ユグ様の色に染まっていた。それは予想外です。
「なんだこれ、すっげ・・・・・・」
ああ、もしかしてエイトも魔力感知みたいなのが解放されたのかな。僕も今は慣れたけれど、直後は驚いたし。
これ、ユグ様の力がエイトにも入ってしまっているみたいだ。ほんの少しだけれど。
「俺ってユーリ様に愛されてる~」
「なぁに、急に」
急に自信満々になったエイトにクスクス笑ってしまう。
「いや、だってユーリ様の魔力が入って来たからさ。可愛いは許せるけどワンコってのはどうなの。俺、そんなに犬っぽいかなぁ」
「え?? なにそれ」
え? ワンコって思ってたのは口に出した事なかったよね?
「ユーリ様の魔力が流れてるのと同時に、俺への気持ちっていうかユーリ様の心みたいなのがブワーッて流れ込んできてさ。うん、俺今ならなんでも出来そう」
何それ? 知らない事ばっか追加されてるんだけど。
確かにスッと立ち上がったエイトから、なんだか漲る力みたいなものを感じる。なんかよくわかんないけどオプションが付いた感じ?
というか対象に感じてる事が流れ込むなら、これって他の人には出来ないね・・・・・・。最初にやったのがエイトで良かったよ。
「なんか分かんないけど、エイトの不安が消えてやる気が出たならよかったよ」
「やる気は元々無くなってないですよ! 諦めるつもりはないって言ったでしょ。無くなってたのは今思えば自信、ですかね。まぁ、それもユーリ様が俺の事大好きなのが分かったから、もうどうでもいいんだけど」
うーん。エイトが僕を大好き過ぎないかこれ。執着というかなんと言うか。
最初の若様の事があったとは言え、どうしてこんなに好かれたのか未だに不思議。けれど、僕の好意くらいで元気になるなら良かった、って事でいいのかな。
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