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58.本当の騎士をゲットしてしまう僕
さてと、次はそこの迷子みたいな顔をしている真面目な騎士様の番かな。
他の騎士様方は、あくまでも職務の一貫といった感じで、それ程僕に思う事がある訳でも無さそうなのだけれど、この騎士様だけは忠犬と言わんばかりの態度なので僕もつい何かと頼ってしまいがちで。それならこの方にも希望だけは聞いておいた方がいい・・・・・・よね?
注ぐ魔力に僕の心が乗るのなら誰にでもは出来ないと先程は思っていたけれど、まぁ、彼なら問題はないでしょう。僕も彼には信を置いているし。・・・・・・後で拗らせたら大変そうだからとか思ってませんよ。ええ。
「ギルベルト様」
「は、ここに」
例の瞬間移動でパッと目の前にギルベルト様が現れた。何も言ってないのに跪いた状態で。こういうとこだよ。
「貴方にも祝福を贈りたく思いますがいかがでしょうか」
「わ、たしも、いただけるのでしたら、勿論喜んで拝領致したく存じます」
「では、我が一の騎士ギルベルト、に、祝福と感謝を」
勝手にと言ったらおかしいけれどそうとしか表現出来ない感覚で、思わずそう口にすると、足元に二人入って丁度くらいの金色の魔法陣が現れた。
驚いて言葉が途切れそうになるのをなんとか堪えて。
僕の髪飾りや髪結紐が謎の風によってするりと外れ、二人の髪や衣服が、僕から発生しているらしき魔力の風というか奔流によってバタバタとはためく。ギルベルト様も風に煽られる度、ラノベに出てくるクリーンの魔法をかけられたみたいに、汗や訓練着の土汚れが消えていく。何事?
僕の進化の時の様に魔法陣の内と外界とが隔てられているのを感じとった。なんだろうこれ。運営の差金?
だって、一の騎士とか勝手に口から出たけれど、本当なら僕の心の中でそう思っているだけに留めて他の騎士様と優劣を付けるつもりは無かったし。まぁ、一番と感じていたのは間違いではないけれども。
そういう色々を呑み込み、練り香の器に印を刻み蓋をスライドさせる。跪くギルベルト様がそれを見て、そっと目を閉じた。彼の額に香を塗ろうと掬い取ったところで、謎の予感を感じて手を止めてしまった。
また僕の予想外の事が起ころうとしている? なんなのさっきから。運営はどういうつもりなんだ。
だって、なんだかエイトの時とは違う感覚があって。何かが、僕とギルベルト様をもっと強く深く繋ごうとしている。・・・・・・ギルベルト様は、これ、いいの?
「ギルベルト様、これをしてしまえば僕がこの世界にいる限り、貴方を僕の騎士として縛る事になりそうです。それでも受けますか」
「無論です。騎士としてお仕えする事が約束されるのなら、私にとっては僥倖の極みでしかありません」
「・・・・・・ふふ、もう。間髪入れずにお答えになるなんて、まったく僕の騎士様は仕方のない人ですね」
祝福自体は軽い気持ちで提案した事だったけれど、そういう事であれば僕もいい加減覚悟を決めなければならない。
彼はもう、『クルト様に用意していただいた護衛』ではなくなるという事だ。そして僕は、『彼を選んだ、彼の主』になる事になる。
「我は主人に忠誠を捧げんとする者なり。主人の剣となり盾となり、欺く事なく、裏切る事なく命に従う事を誓う。我が誓いを受け取らんことを願う」
「誓いを受け取りましょう。貴方の主人として貴方を信頼し、誠実であるよう努めます」
朗々と響くギルベルト様の美声でなされる誓いを聞いていると、またもや勝手に自身の口からでた『セリフ』に、諦め半分の心地で留めていた手を動かして彼の額に守り香を塗った。そして自身の胸元の印から神力を掬い取り自分の唇に塗る。
「ギルベルト・フェルスタに祝福を」
ギルベルト様の額に口付けると、彼の体が浮き上がり体が発光し始めた。リラックスしたような手足を伸ばした体勢で留められ、衣服が溶け出していく。
何処かで見た光景に唖然とするも、彼が今進化しているという事は理解できた。
狭い魔法陣の中、間近で僕と全然違う男らしい体のラインを見てしまって飛び上がり目を逸らすと、周囲がようやく目に入った。
遠巻きながらかなり注目されていて、彼を周囲の目から隠した方がいいのではと思い至って魔法陣の外に出ようとするも、どうやら出られないようだ。
いたたまれなく思いながら彼に背を向ける形で待っていると、ようやく背後からの光がおさまり始めたので振り返る。
そこには銀で縁取られた白い鎧姿の精悍な一人の騎士がいた。彼の目も片方がエイトの様に僕と同じ色に染まってしまっている。そして額には金色のアラベスクが。
僕の衣装に刺繍されている図柄をダイヤ型に成形した感じ? 上手く言い表せない。一つ言えるのは、エイトのような彼の為の印ではなく、僕の騎士だと表すような印だった。
彼に祝福として与えられたのは、魔力と力の上昇。そして危険が迫った時には、上昇した魔力と力はさらに跳ね上がり、僕が彼を、彼が僕を、何処にいても感知できる、らしい。パスみたいなものを繋がれたからか、それが僕にも分かった。
「不肖このギルベルト、生涯をかけて姫様を御守り致します」
再度跪かれ、そっととられた手にキスをされるけれど、何故か何時ものように引け目や怯えを感じる事はなく。彼に敬愛を捧げられる事は当然の様に感じる。むしろ喜ばしいものとして受け入れていた。
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