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61.肌着を人に見られたくないのは性別問わずだけど
「・・・・・・」
顔を俯けてしまったハインリヒ様だけでなく、他の四人もなんだか其々思い思いの表情をしていて、どう声をかけていいか迷う。
「あまりここに長居をしてこれ以上騎士様方の鍛錬の邪魔をしてしまってはいけませんので、僕はこれで戻ります。ですが、何か僕に聞きたい事ですとか、逆に聞いて欲しい事だとかありましたら、いつでも訪ねて来てくださって構いません。・・・・・・其々思う所があったとしても貴方達も僕の騎士で、いつも僕を守ってくださっていて、僕がそれを頼りにしている事も確かなのですから」
これは本当に本人の気持ちの部分の話なので僕としてはどうしようもない。というかむしろこの方達は、僕の大好きなユグ様を信仰しているのだから喜ばしいとすら思っているのだけど。
「では僕はこれで。クルト様、棟に戻りましょう?」
「・・・・・・ああ」
交代の時間を過ぎていたらしく、護衛に交代したのはマティアス様とセドリック様。ジュリアン様に長いハグをされて騎士団を送り出され、帰り道へ足を進めた。
クルト様が考え込んでいて無言な為、なんだか少し気不味く感じる。無言でも普段なら気にならないのだけれど。むしろ静かな空間に二人でいるのは好ましいくらいなのに。
まぁクルト様だって考え事をすることくらいあるのだし仕方ないか。
棟にたどり着いた頃にはもう夕食前の時間だった事もあり、直接部屋まで送ってもらった。クルト様は一度執務室に戻るらしい。役職があると大変ですね。
部屋に入るとリオルが待ち構えていて、部屋着に着替えるのを手伝ってくれた。この変身した衣装はスキルの様なものらしく、脱ぎたいと思考すると装備に関するウィンドウが開かれた。
この白い衣装はセット装備の様で一つのアイコンで表されている。ゲームなどではダブルクリックで解除されるシステムが多いので試しにタッチしてみると、解除しますか? と問われたのではいと思考で答えた途端、キラキラと小さな煌めく光の残滓を残して服が消え下着と肌着の方のワンピースのみの姿になってしまった。と言う事はあの神官服は変化してしまって戻る事はないのだろう。途中で試さずにいて本当に良かった・・・・・・!
人前でこんな姿になったら羞恥で死ぬしかない。肉体美を持っていない事が知られるのももちろん悲しいのだけれど、それよりこの肌着姿を見られる事の方がダメージが大きい。
だって、いくらシルクとはいえ肌が透けそうに生地が薄くて、見た目がちょっと卑猥だし。形もワンピースタイプだから女装っぽくもあるしでもう全てが最悪なので。着心地はめちゃくちゃいいんだけど。リオルは思春期なのに、変なもの見せてほんとごめん。・・・・・・いや、用意してるのもリオルなのだから自業自得なのでは? 見たくないならもっと普通の肌着をください。切実に。本人は気にしてなさそうなのがなんとも言いがたいのだけれども。
いつもの部屋着になり、出されたお茶を飲んでようやくホッと息をついた。出しっぱなしにしていた先程の装備のウィンドウを眺めて触っていると、どうやらあの白い衣装の詳細が記載されているのを見つける。
祈りの祭礼服(???)
創造主ユグドラシルが寵愛するリベルの為に創造した衣装のひとつ
装備時
祈りの効果増幅
光属性魔法・スキルの効果増幅
物理防御力・魔法防御力上昇
やだ、寵愛ですってよ! きゃ! ・・・・・・と言うかもしかしてだけどあの祝福ってこれを着た状態で力の増幅がされてないと出来ないのでは? と言う事はまた出番があるかも知れないのか・・・・・・。微妙な気持ち、あ! 違う。ポーションや薬品に祈りをこめようと思ったら毎回着ないといけないんじゃ・・・?
「ユーリ様、お食事の用意が整いましたよ」
リオルが呼びに来てくれたのでいったん考え事は中断だ。せっかく暖かいままを時止めのワゴンで持ってきてまで用意してくれたのだし、暖かいのを頂かなくては。
「ありがとう、今行きます」
一人で食事を終えソファで食休みをしているのだけれど、いつもより眠気が来るのが早い。耐えているとリオルが戻ってきて、そのまま浴場へ連れ出され服を脱がされる。体を洗われて湯に浸かると、僕はそこで意識が途絶えたようだった。
目を覚ますと、朝になっている。昨夜の事を一生懸命思い出すけれど、湯船に浸かった事までしか記憶がない。けれど体も髪も手入れがされていて。もしかしてリオルが運んでくれたの? そんなに力あったっけ??
禊ぎを終え髪を乾かせてくれるリオルに問うと、少し悔しそうな顔で答えてくれた。
「いえ、侍従長へ蝶で連絡して手伝っていただきました」
「そうだったんだ!? ごめんね、僕が眠っちゃったばっかりに。気を遣ってくれたんだろうけれど次は遠慮なく起こしてね? クラウスさんにも申し訳ないし」
「まさか。ユーリ様が謝る必要などございません。自由にしていただけるのが僕は一番嬉しいので」
「それは、気持ちは有難いけれど、でもなぁ」
「それにクラウス様も本当はユーリ様のお世話ができるのは嬉しいみたいでしたし」
「ええ? 流石にそれは嘘だよ~」
「本当ですよ。ユーリ様の侍従に僕を抜擢してくださったのも、年齢と見た目を考慮されて仕方なくの事だったみたいですから」
「そうなの??? 年齢と見た目?」
やっぱり顔選考があったの!? でもそんなの無くてもリオルは充分優秀だよね?
「はい。本当はご自分が就きたかったそうです」
クラウスさんが僕の侍従に? そんな馬鹿な。クルト様はどうするのさ。
「ただ、大人の男性に体の世話をされるのを恐ろしく思われて、侍従に世話をされるのをユーリ様に拒否されるかも知れないとお考えになったようで」
見た目の選考ってそっち? と言うかそう言われると納得しかない。だって、今でこそクラウスさんにも慣れてリオルの休息日はお風呂も世話してもらってるけれど、来て最初の頃だった多分嫌がっていた気がする。
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