VR『異世界』より

キリコ

文字の大きさ
61 / 65

61.肌着を人に見られたくないのは性別問わずだけど



「・・・・・・」

 顔を俯けてしまったハインリヒ様だけでなく、他の四人もなんだか其々思い思いの表情をしていて、どう声をかけていいか迷う。

「あまりここに長居をしてこれ以上騎士様方の鍛錬の邪魔をしてしまってはいけませんので、僕はこれで戻ります。ですが、何か僕に聞きたい事ですとか、逆に聞いて欲しい事だとかありましたら、いつでも訪ねて来てくださって構いません。・・・・・・其々思う所があったとしても貴方達も僕の騎士で、いつも僕を守ってくださっていて、僕がそれを頼りにしている事も確かなのですから」

 これは本当に本人の気持ちの部分の話なので僕としてはどうしようもない。というかむしろこの方達は、僕の大好きなユグ様を信仰しているのだから喜ばしいとすら思っているのだけど。

「では僕はこれで。クルト様、棟に戻りましょう?」
「・・・・・・ああ」





 交代の時間を過ぎていたらしく、護衛に交代したのはマティアス様とセドリック様。ジュリアン様に長いハグをされて騎士団を送り出され、帰り道へ足を進めた。

 クルト様が考え込んでいて無言な為、なんだか少し気不味く感じる。無言でも普段なら気にならないのだけれど。むしろ静かな空間に二人でいるのは好ましいくらいなのに。

 まぁクルト様だって考え事をすることくらいあるのだし仕方ないか。

 棟にたどり着いた頃にはもう夕食前の時間だった事もあり、直接部屋まで送ってもらった。クルト様は一度執務室に戻るらしい。役職があると大変ですね。





 部屋に入るとリオルが待ち構えていて、部屋着に着替えるのを手伝ってくれた。この変身した衣装はスキルの様なものらしく、脱ぎたいと思考すると装備に関するウィンドウが開かれた。

 この白い衣装はセット装備の様で一つのアイコンで表されている。ゲームなどではダブルクリックで解除されるシステムが多いので試しにタッチしてみると、解除しますか? と問われたのではいと思考で答えた途端、キラキラと小さな煌めく光の残滓を残して服が消え下着と肌着の方のワンピースのみの姿になってしまった。と言う事はあの神官服は変化してしまって戻る事はないのだろう。途中で試さずにいて本当に良かった・・・・・・!

 人前でこんな姿になったら羞恥で死ぬしかない。肉体美を持っていない事が知られるのももちろん悲しいのだけれど、それよりこの肌着姿を見られる事の方がダメージが大きい。

 だって、いくらシルクとはいえ肌が透けそうに生地が薄くて、見た目がちょっと卑猥だし。形もワンピースタイプだから女装っぽくもあるしでもう全てが最悪なので。着心地はめちゃくちゃいいんだけど。リオルは思春期なのに、変なもの見せてほんとごめん。・・・・・・いや、用意してるのもリオルなのだから自業自得なのでは? 見たくないならもっと普通の肌着をください。切実に。本人は気にしてなさそうなのがなんとも言いがたいのだけれども。

 いつもの部屋着になり、出されたお茶を飲んでようやくホッと息をついた。出しっぱなしにしていた先程の装備のウィンドウを眺めて触っていると、どうやらあの白い衣装の詳細が記載されているのを見つける。



 祈りの祭礼服(???)
創造主ユグドラシルが寵愛するリベルの為に創造した衣装のひとつ
装備時
祈りの効果増幅
光属性魔法・スキルの効果増幅
物理防御力・魔法防御力上昇


 やだ、寵愛ですってよ! きゃ! ・・・・・・と言うかもしかしてだけどあの祝福ってこれを着た状態で力の増幅がされてないと出来ないのでは? と言う事はまた出番があるかも知れないのか・・・・・・。微妙な気持ち、あ! 違う。ポーションや薬品に祈りをこめようと思ったら毎回着ないといけないんじゃ・・・?


「ユーリ様、お食事の用意が整いましたよ」

 リオルが呼びに来てくれたのでいったん考え事は中断だ。せっかく暖かいままを時止めのワゴンで持ってきてまで用意してくれたのだし、暖かいのを頂かなくては。

「ありがとう、今行きます」



 一人で食事を終えソファで食休みをしているのだけれど、いつもより眠気が来るのが早い。耐えているとリオルが戻ってきて、そのまま浴場へ連れ出され服を脱がされる。体を洗われて湯に浸かると、僕はそこで意識が途絶えたようだった。




 目を覚ますと、朝になっている。昨夜の事を一生懸命思い出すけれど、湯船に浸かった事までしか記憶がない。けれど体も髪も手入れがされていて。もしかしてリオルが運んでくれたの? そんなに力あったっけ?? 



 禊ぎを終え髪を乾かせてくれるリオルに問うと、少し悔しそうな顔で答えてくれた。

「いえ、侍従長へ蝶で連絡して手伝っていただきました」
「そうだったんだ!? ごめんね、僕が眠っちゃったばっかりに。気を遣ってくれたんだろうけれど次は遠慮なく起こしてね? クラウスさんにも申し訳ないし」
「まさか。ユーリ様が謝る必要などございません。自由にしていただけるのが僕は一番嬉しいので」
「それは、気持ちは有難いけれど、でもなぁ」
「それにクラウス様も本当はユーリ様のお世話ができるのは嬉しいみたいでしたし」
「ええ? 流石にそれは嘘だよ~」
「本当ですよ。ユーリ様の侍従に僕を抜擢してくださったのも、年齢と見た目を考慮されて仕方なくの事だったみたいですから」
「そうなの??? 年齢と見た目?」

 やっぱり顔選考があったの!? でもそんなの無くてもリオルは充分優秀だよね? 

「はい。本当はご自分が就きたかったそうです」

 クラウスさんが僕の侍従に? そんな馬鹿な。クルト様はどうするのさ。

「ただ、大人の男性に体の世話をされるのを恐ろしく思われて、侍従に世話をされるのをユーリ様に拒否されるかも知れないとお考えになったようで」

 見た目の選考ってそっち? と言うかそう言われると納得しかない。だって、今でこそクラウスさんにも慣れてリオルの休息日はお風呂も世話してもらってるけれど、来て最初の頃だった多分嫌がっていた気がする。



感想 3

あなたにおすすめの小説

ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜

古森きり
BL
東雲学院芸能科に入学したミュージカル俳優志望の音無淳は、憧れの人がいた。 かつて東雲学院芸能科、星光騎士団第一騎士団というアイドルグループにいた神野栄治。 その人のようになりたいと高校も同じ場所を選び、今度歌の練習のために『ソング・バッファー・オンライン』を始めることにした。 ただし、どうせなら可愛い女の子のアバターがいいよね! と――。 BLoveさんに先行書き溜め。 なろう、アルファポリス、カクヨムにも掲載。

処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる

猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。 しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。 当然そんな未来は回避したい。 原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。 さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……? 平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。 ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)

異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます

ひと息
BL
突然の過労死。そして転生。 休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。 転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。 そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・ 知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?

【完結】Restartー僕は異世界で人生をやり直すー

エウラ
BL
───僕の人生、最悪だった。 生まれた家は名家で資産家。でも跡取りが僕だけだったから厳しく育てられ、教育係という名の監視がついて一日中気が休まることはない。 それでも唯々諾々と家のために従った。 そんなある日、母が病気で亡くなって直ぐに父が後妻と子供を連れて来た。僕より一つ下の少年だった。 父はその子を跡取りに決め、僕は捨てられた。 ヤケになって家を飛び出した先に知らない森が見えて・・・。 僕はこの世界で人生を再始動(リスタート)する事にした。 不定期更新です。 以前少し投稿したものを設定変更しました。 ジャンルを恋愛からBLに変更しました。 また後で変更とかあるかも。 完結しました。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

愛されたいだけなのに

まさお
BL
我儘令息だったノアは一回目の人生で最愛の人からの裏切りの末、殺される。 気がつくと人生が巻き戻っていて人生二週目が始まる。 しかしまた殺される。 何度も何度も繰り返した人生の中で自分が愛されることを諦めてしまう。

【完結】浮薄な文官は嘘をつく

七咲陸
BL
『薄幸文官志望は嘘をつく』 続編。 イヴ=スタームは王立騎士団の経理部の文官であった。 父に「スターム家再興のため、カシミール=グランティーノに近づき、篭絡し、金を引き出せ」と命令を受ける。 イヴはスターム家特有の治癒の力を使って、頭痛に悩んでいたカシミールに近づくことに成功してしまう。 カシミールに、「どうして俺の治癒をするのか教えてくれ」と言われ、焦ったイヴは『カシミールを好きだから』と嘘をついてしまった。 そう、これは─── 浮薄で、浅はかな文官が、嘘をついたせいで全てを失った物語。 □『薄幸文官志望は嘘をつく』を読まなくても出来る限り大丈夫なようにしています。 □全17話