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62.お母様は貴腐人らしい
とは言え、あのスーパー執事のクラウスさんが僕の侍従にというのはあまり想像できない。本来の意味での役不足にしか思えないし。
「唯でさえリオルの休息日に代わりに来てくれるのですら申し訳ないのに、僕の世話がメインになるなんていくらなんでも勿体無さすぎる。本当はリオルも優秀だと分かるから僕の侍従なんて勿体無いと思ってるのに、その長なんてもっと無理だよ」
「・・・・・僕はそうは思いませんけれど。ユーリ様の侍従に抜擢されて直ぐは兎も角、ここで貴方の事が知れ渡る様になってからは皆には只管羨ましがられてますから尚更」
「え、ええ?」
ユグ様の髪の効果エグ。・・・・・・像が作られた事といい、ガチで魅了みたいな効果とか付いてないよね? 怖くなってきたんだけど。確認しておけばよかった。というか今更だけどそんな事になってるならリオルって妬みとかの対象なのでは。いじめみたいな事になってないといいんだけど・・・・・・。あ、でもそういう人は神官でいられないんだし其処は大丈夫? かな?
「とは言えこの役目は誰にも譲るつもりはないのでご安心ください」
まぁ、リオルの立場がおかしな事にならないならもうなんでもいいか・・・・・・。なんだかはぐらかされた気がしないでもないけれど。
時間がきたらしくやんわりリオルに促されそういう思考する諸々を一旦頭の隅に追いやると、身嗜みを整えて朝食をとった。食休みにソファでお茶で一服してから祈りの間へ。
今日も今日とてポーションの量産に励む。ジュリアン様が最初に回収に来られてから、もう既に数度は納品している。
クルト様に聞いたところによると初めの納品の翌日から使用が始まっており、ポーション不足と治癒師不足で難しかった大物の討伐も安全マージンを大きくとって行えたそう。そういった急いだ方がいい案件を優先的に進めた結果一時期は結構な量が消費されていたみたいだけれど、安定してしまえばそう毎日大量に使用する物でもないらしい。そういう事でこの所は騎士団にもそこそこストックが出来てきたみたいだ。
今日も大瓶三つの量を作成完了。さあこれから詰め替えという地道な作業を、と思ったところで右上にエクスクラメーションが点滅しているのに気が付いた。
タッチしてみるとお知らせのウィンドウが開かれる。
内容を確認すると、今日でようやく現実世界で一週間が経ったよという運営からの通達だった。今日からログアウトが可能になるそうだ。え、まだ一週間? 嘘でしょという気持ちでいっぱいだ。ここでは時間は三倍になるとは言っても、それでも精々三週間。そんな馬鹿な。三週間にしてはいろんな事が起こり過ぎだ。
色んな気持ちを飲み込みつつ気を取り直して続きを見る。
あ、遂に手紙の送受信も始まったんだ。
お手紙アプリの立ち上げを思考すれば、そこから専用のチュートリアルが始まって詳しく教えてくれる流れとの事。家族に手紙を書くのはもうちょっとしてからでいいかな。あんまり早いと、母がやっぱり寂しかったんでしょって言って辞めさせようとして来そうだし。
・・・・・・彼氏が出来た事を知らせたら逆になりそうだけど。いや、興奮で倒れちゃうかも知れないからやめておくのが賢明か。
そう、僕が腐男子でこそないけれどある程度同性同士の恋愛に寛容だったのは、幾らかは母の隠し書庫の蔵書のせいでもあるのだ。何時もは鍵がかかっているその部屋が偶然開いてるのを見つけた時に好奇心から入ってしまったのが運の尽き。ただの漫画部屋だと思って試しに読んだ本が、怪談と推理物を混ぜ合わせたような本筋に、少女漫画のような雰囲気で男性同士の恋愛を匂わせる程度のものだったせいかすんなり読めてしまった。
その本が面白かったので他のを手に取るとまさかのR指定のもので度肝を抜かれたけれど、普通の書庫も父の書斎の隣に結構大きなものがあるのにわざわざ分けているのはそう言うことかと納得した。
このご時世に態々本の形で所持しているのは利便性は悪いけれど、デジタルリスクを考えれば当然だ。デジタルの情報を入手する事なんてどれ程ネットセキュリティに力を注ごうとも、その筋の達者な者からしたら本当に簡単な事だから。父の書庫だって同じような理由で所持していると幼い頃に教えてもらった。(なんだかんだ、セキュリティにお金をかけるならアナログの方が効果的のようだ)
そんな事があった頃には僕ももう大学に進学していて。講義への出席も殆どの人はバーチャル空間で行っていて、一部の僕みたいな物好きだけが現実の方に通っていた。とは言っても大学は高等部の隣の敷地だから今までどおり通えるところを、一人暮らしがしてみたいと我儘を言って近いのにマンションを買って貰いそちらに住んでいたので、多分母も油断していたんだろう。その節は連絡せずに帰ってごめんなさい。
そういう事があって親の性癖を知るという少々ショッキングな出来事があったけれど、最初に読んだものがストーリーが練られていて面白かったので、度々こっそり忍び込んで読んでいた。
その後あらかた読んでしまった頃、何気なく母に問うと顔を最初は青くしてダラダラと脂汗を流しながらしらばっくれていたけれど、あの初めに読んだ面白かったもののタイトルと感想を伝えると涙を流して謝られてちょっと引いた。僕の情操教育にあまり良くないかも知れないという事で鍵をかけておくのを徹底していたつもりだったらしい。
なんかごめん。
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