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63.ログアウト解放
そんな母も今となってはあの狼狽え様は何だったのと思う程普通にそういう本の話を振ってくるようになったのだけど。
おそらくだけれど僕が情報を自分で取捨選択できる年齢だった事と、僕がそういう系の事に対して向ける感情のベクトルが、プラスにせよマイナスにせよ思ったより小さかったかったのを感じたからだと思う。確かに他の少年漫画や少女漫画に対してのものと対して変わらないくらいなので、性癖を捻じ曲げてしまったわけではないらしいと一応安心したんじゃないかな。
そんな状態である為もしも僕がユグ様と思いを交わした事が母に伝われば、やっぱり私が鍵をかけ忘れたから息子の性癖を捻じ曲げてしまったと、罪悪感を再燃しつつ息子が超絶美形の彼氏をゲットした事実に興奮して、倒れそうな気がしている。
僕としては最初から素直にあのストーリーを嫌悪なく受け入れてた事を考慮すれば、その事は僕という人格への影響は殆どないと思うのだけど。そもそも彼氏が出来たと言っても、性的対象は女性のままなのだし。ユグ様が特別なだけであって。ああでも、かっこいい男性を見ても嫉妬する事なく素直にイケメンだなーって思える様になったから、やっぱり少しは性格に影響してるのかも知れない。
つらつらと思考を馳せてしまっていたけれどそんな事はどうでも良くて。
今日から解放されたという事なのであれば、もしかしたらリベルの一部は一度ログアウトするかも知れない。宮原さんやエイトはどうするのかな。・・・・・・いや、二人とも今は謎にやる気に満ちてるから、しばらくログアウトはしないのかも。
宮原さんとは手紙のやり取りはしているのだけれど、あれ以来会えていないし元気にしているのだろうか? 手紙の文面からはなんとなく元気そうには見えるけれど。今度お茶でもしに来ませんかって書いてみようかしら。エイトも非番なら紹介したいし。
お知らせの続きに視線を戻す。どうやら専用のSNSと匿名掲示板が実装されたらしい。
まじか。メニュー・オンと発声するか思考する事でメニューウィンドウが開かれる? なるほど。
その通りに思考してみると、まるでチップのホログラムで表示されるホーム画面のように、アプリアイコンがずらっと僕の周囲を囲う様に現れた。
視界の左上にはあの時鑑定モドキで見た、自身の現在の能力値が職業レベルや称号と一緒に表示されている。このステータスとよんで良さそうな部分は、周囲のアイコンの方を動かしても固定されていてその位置に留め置かれている。ただ、一通り見ても前にクルト様との話に出てきた身体レベルみたいなものは記載がない。ということは僕たちリベルの体には、他のゲームにあるような基礎レベルのようなものが存在しないって事ではないのだろうか。それって、レベルが存在しないならレベルキャップも無いという事?
だってエイトのあのバキバキの体を見る限り、身体的な強化が出来ないわけじゃなさそうだし。
とはいえ他のゲームと共通する部分が全くないわけではない。身体能力の所には力とか敏捷、精神力など他にも幾つか項目があった。そちらの方にはレベルの記載がある。という事はこの世界でのレベル上げというのはこれを上げていくという事を示すことになるのかも。でもこれ、力とか体力なら兎も角、どうトレーニングすればいいのか分からないのも多い。精神力とか知力とか。あ、でも一応ゲームなのだし、瞑想みたいなのでもいいのかな?
・・・・・・というか何だか魔力と精神力のレベルがおかしな事になってるのだけれど、バグかな?
うーん、魔力は毎日大量に使ってるからかも知れないと何となく納得出来るけど、精神力の方がちょっと・・・・・・、あ!? もしかして毎日の禊ぎとお祈りとか関係あったりする? 一度そう考えてしまったらなんだかそんな気がしてきた。
そしてそれに比べて体力とか力がレベル1なのがシンプルにつらい。敏捷も低いし、ノロマって事ですか? ひどい。自身の運動音痴加減が赤裸々にされている。
経験値を得てレベルが上がる事によりシステムで勝手に能力値が上がっていったり、ポイントをプレイヤーが手動で振って上げていったりする一般的なシステムのゲームに比べたら、鍛えた能力だけが上がっていくのはより複雑で現実に近い作りかも知れないけれど、制御システムのデータ量がやばそうだ。これは確かに一気に何十万人もスタートさせるのは大変なのかも。やっぱり僕たち100人は正常に機能するかの慣らし運転のような扱いで、よくあるベータ版みたいな感じなのかも知れない。でもそれにしては人数が少な過ぎる気がするけれど・・・・・・。
答えの出ない疑問から目を逸らし、脱線しがちな思考をSNSと匿名掲示板に戻す。
葉っぱのアイコンがSNSで掲示板は木? どっちもアイコンをそれにした理由は謎だけど、あぁ、ユグ様の本性からきてるのかな? まぁそれはなんでもいいか。
早速SNSを開いてみると、直ぐに使い方のチュートリアルが始まる。どうせ普通のSNSと差して変わらないだろうと思うと面倒に感じてスキップボタンを探した。左下に発見しそそくさとタッチして次に開いた自身のプロフィールの公開設定の画面を確認すると、名前や職業、所属などを一つ一つ公開か非公開にするかを選べるようだ。一旦全部非公開にしておこう。SNSのトラブルは怖いですからね。
軽く触ってみた感じ、案の定使い方は現実にあるSNSとあまり変わりは無いみたい。同じ様に一度繋がってしまえば、これがあれば一々手紙をやり取りする必要もないしさっき考えたお茶の誘いとかも簡単になる。これならエイトや宮原さんとは早いとこ繋がるべきだね。
とは言え、宮原さんと手紙のやり取りをするのは情緒があって結構気に入ってたのだけれど。便箋を選ぶのも、香を焚き染めるのもとっても楽しい。
何より彼女の気分が乗った時に同封してくれる絵が凄く楽しみで。伯爵家の方々や、彼女の琴線に触れたらしき花や景色が温かみを感じる画風で描かれていて、とっても素敵なのだ。
あのやり取りがなくなるのは寂しい。
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