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 暖かで眩しい光が降り注ぐ。その光に導かれるように、私は瞼を持ち上げた。

 穏やかな寝息が、耳をくすぐる。見覚えのない真っ白な部屋。でも隣には見覚えのある従者がベット横で眠りこけていた。握られた掌に感じる心地よい人の体温に頰を緩めた。可愛い桃色の頰をつんつんとつつくと愛らく眠たげな声が聞こえて瞼を開いた。


「おはよう。シャフラ」

「んにゅ、ラゼーネしゃま…?」


 ぱちぱちと目を瞬かせて、私の顔を見る彼女の姿に思わず頭を撫でたくなって手を伸ばそうとしたら握り込まれてしまう。


「へへっ、ようやく目覚められたんですね。よかったぁ。少しお寝坊さんですよ、ラゼーネ様」

「そうなの?」

「はい、丸二日ほどぐっすりでした」


 抉られた横腹は全く痛まない。多分これは加護での治癒術だろう。一度だけ治癒をされたことがある。


「えっと、これ、お金だ、大丈夫かしら?」

「はいー。大丈夫です!ラゼーネ様を治療院に運んだ騎士様が代はこちらが払うから治させてほしいと」

「ええ?なんでかしら」

「うーん、なんでも騎士様の与えられた任務がラゼーネ様の受けたゴーレム討伐だったそうで、それにおいて討伐に貢献してくださったせめてもの謝礼にと」

「そう」


 騎士様。私を運んでくれた騎士があの人だったらいいのに、なんてありえないけれど、そう思った。もしそうだったら運命かもしれないと自惚れることが出来るのに。きっと何もかもが足りない自分に自信が持てるようになる。

 思わずつきそうになるため息を飲み込んで、頰を叩いた。
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