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1章 学園

 -1話

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「レイド君、すまぬが首席の挨拶は皇子に譲ってもいいかの」
「ええ、構いませんよ。ですが、無償で譲るというのは私の性分には合いません。
もしそのようなことがあれば、試験結果を持って王族の方に直接問いたださなければいけなくなりそうですし…」

レイドはそう言いながら、学園長の方を見ると、学園長はそれを見て苦笑いしていた。

「何が望みじゃ?」
「いえいえ、望みなどはありません。
私はただ、ハイヒューマンともあろう学園長ととなれる機会があればと思っただけですので…ええ、望みは一切ありません」
「まるで商人じゃな。国王に加え騎士団長、そして儂まで人脈を欲しがるとは」
「ハイヒューマンは我々ヒューマンのいわば信仰対象…それほどのお方とのご縁があれば、何かと有用かと思ったまでです」
「よかろう、
「ええ、ありがとうございます。
時に学園長、ハイヒューマンのお知り合いの方との約束で、誰かと縁を持った時、証をその者に与えると聞いておりますが…」
「…どこまでも食えぬ者じゃ。そこまで知っているとはの。
どれ、友人として秘密を教えてはくれぬか?」
「ふふ、証が先です。それと、これからも友人としてよろしくお願いいたしますね、学園長」
「ふぉっふおっ、化けの皮が剥がれる日が来るのを待ちわびようぞ。
証は今は手元にないのでな、すまぬが学園が始まってからになる」
「そうですね。証を作る方法は、ここでは見せられぬものですから」
「っ…そ、そうじゃな」

証の作り方、それは現代の説明で言えば、ハイヒューマンとしてのDNAを使ったものだ。
 そしてそれは、体液、血液、精液の順でより強力なものとなる。
それ相応の対価…学園長ならば、どれを選んでくれるかは明白だ。

「それでは、また学園生活が始まってから…いえ、それでは少し遅いですか。
まぁ、出して作るだけですものね…明日か明後日か…いつくらいならば空いておりますか?」
「むぅ…事情を分かっていてそう急かすか。年老いた儂でも些か心の準備が必要なのじゃが…」
「おや、それではまるで…最上級のものを用意してくださる言い方ですね」
「っ…そ、それほどまでに欲しいものかのぅ…?」
「ええ」

実はその証、血液で作られた証が勇者パーティの全員に配られた後、アーティファクトとしての効果を発揮したのだ。
効果は生命力上昇…死ににくくなる効果に加え、防御力の上昇もある。
 そして次に回復力上昇…体力、魔力、精神力等…消耗した力の回復速度に加え、傷の治療速度も上昇する。
 そして最後に、威力上昇…物理スキル、魔法スキル関係せず、スキルの効果を上昇させる効果に加え、ステータスの上昇もあるという、ぶっ壊れだが、魔王討伐には必要なAFだったのだ。

「それでは、期待しておりますので、3日までにはまた来させていただきます」

さてと…じゃ、魔力隠蔽を付けた状態で結界を学園長に付けておいて…その行為を見せてもらうとするかぁ…
いやはや、俺のことながら守備範囲が広くて困る。
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