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第10話【封鎖されたヴェロッサ森】
しおりを挟む「ほんとだ!!受け付けのお姉さんが言ってた通り出入り禁止になってるねっ!!」
「今はワーウルフが出現している森、山菜を安全に採ることは出来ないでしょうし、当たり前ですよ。」
ワーウルフ討伐の緊急依頼を受けてから俺たちはすぐギルドからヴェロッサ森へ出発していた。
どうやら今回の様な緊急の依頼に初めての依頼(スライム討伐)の様な詳細が書かれた紙は無く、討伐が完了してからその状況によって報酬額が上下するのだとか。
今はもうヴェロッサ森に到着しており、俺たちはこの森の中へ続く唯一の砂利道(スライム討伐の時も通った道)の前に居た。しかし、道は前来た時と違い両側にある木に結んだロープでバリケードの様にして先に通る事が出来ない様になっており、真ん中には緊急で建てたであろう気の立て札に「冒険者以外立ち入り禁止」そう赤い文字で書かれている。
これが先程お姉さんの言っていた「冒険者以外の人間を立ち入り禁止」というやつだろう。
まぁ正直ワーウルフが森に出現しているという状態で入るやつなんてバカかよっぽどの命知らずだけだろうが。
「よっし!!今回のモンスターはスライムと違って強いよね!!緊張してきたよぉっ!!ハヤト!セリエラちゃん!頑張ろっ!」
「当然です」
「あ、あぁ」
――俺はお前とは違う理由で緊張しているぞ……
やはり未来を帰るのは簡単では無いという事だろう、俺はワーウルフ討伐の依頼を受ける事になってしまった。
だが、幸いにもヴェロッサ森に出現したワーウルフは1匹のみ。数匹だとキツいが、これならケティを守る事は出来る……っ!!
「……よし、じゃあ行くぞ。」
「行こうっ!」「はい」
「ふぅ……」俺は深い呼吸で気持ちを切り替えると、自らリーダーとして先陣を切り、3人でロープの向こうへ進んで行った。
♦♦♦♦♦
そしてそれから数分後、俺たちは砂利道通りにヴェロッサ森の中を歩いていると、案外標的はすぐ現れた。
「居たぞ、あれがワーウルフだ」
全身を覆った灰色の体毛、2メートル程の身長。手足には巨大な鋭い三本の爪、頭上に付いたふたつの大きな耳。
後ろを向いているからワーウルフ特有の赤黒い瞳を確認出来た訳では無いが、これらの条件が揃っている時点で目の前に居るモンスターはワーウルフ以外の何者でも無かった。
幸い、相手はまだこちらに気付いていない様で、数十メートル先で自ら殺したのであろうスライムのコアを食べている。
「ねぇ、私ワーウルフの事初めて見たんだけど、あんな風にモンスター同士でも殺し合ったり食べ合ったりするものなの……?」
一度砂利道を外れ、ワーウルフにバレないよう木陰に隠れてから、ケティがそう質問してくる。
「あぁ、俺も父から話で聞いたことがあるだけだが、あるらしいな。」
「基本的にモンスターというのは魔力をエネルギーとして生きています。そして、今食べられているスライムにも人間に比べれば遥かに魔力量は劣りますが、魔力自体はあります。ですから、あぁやってワーウルフはエネルギーを補給しているのでしょう。」
「もっとも、よっぽどエネルギーが不足していない限りはスライムなんて食べないと思いますが」俺のなんかより遥かに詳しく分かりやすい説明に、そう付け加えるセリエラ。
なるほど、さすが何百年も生きてるエルフだな。なんでも知ってるじゃないか。
という事はあのワーウルフは、あまりにもエネルギーが不足したものだから、仕方なくヴェロッサ森の浅い部分まで魔力を求めて降りてきた、という事なのだろうな。
――まぁそう考えるとそんなワーウルフを人間の都合で殺すというのは少々胸が痛むが、それでも色々な人間の都合を引き受けるのが冒険者の仕事だからな。遠慮なくいかせてもらおう。
「セリエラ、仕留められるか?」
ケティが怪我をする未来にならない様にする為にも、出来ればこの距離から仕留めたい。
そして、俺はもちろんケティも流石にまだあそこまでまっすぐ魔法を飛ばす実力は兼ね備えていない。
だからここは遠距離攻撃に向いており、尚且つ俺たちよりも戦闘経験も豊富なエルフのセリエラに頼む事にした。
「はい」
それに対して当然といった具合に返し、軽く数メートルジャンプするとセリエラは頭上の木の枝に飛び乗り、目標のワーウルフに向けて弓を引く。
――そして、ヒュンっ、という音と共にセリエラは矢を放つと、見事にそれは数十メートル先のワーウルフに直撃した。
「うぉぉぉぉぉぉぉんっっ!?!?」
突然の攻撃に悲鳴を上げるワーウルフ。
よしっ!!やったかっ!!
「……くそ、」
しかし、喜ぶ俺やケティとは対照的にセリエラは苦い表情でそう呟いた。
――するとその瞬間、
「うぉぉんッッ!!!」
「な……っ!?」
身体に矢が刺さったまま、俺たちの存在に気付いたワーウルフがこちらへ走ってきた。
どうやらセリエラの放った矢は頭では無く肩に刺さったらしく、致命傷を与える事は出来なかった様だ。
「えっ!?ワーウルフ走ってきたよ!?」
焦りを見せるケティ。
だが、俺は落ち着いて物事を考える。確かにあれで死んでいなくて走ってきているのには一瞬怖気付いたが……それでも所詮はワーウルフ1匹、俺が負ける様な相手じゃねぇ……ッ!!
「やってやるッ!!」
「ちょ、ちょっとハヤトっ!?」
そこで俺は覚悟を決めて砂利道に飛び出すと剣を構え、
「来やがれ毛むくじゃら野郎が……!、」
「うぉぉぉんッ!!」
お前にケティを傷付けさせはしねぇよ……ッ!!
「ここだぁぁぁぁッ!!!」
標的を完全に俺だけに絞り、ワーウルフが両腕を上げてその鋭い爪で切り裂かんとした瞬間に俺も前に出ると、腕が上がってがら空きになった上半身を横から一刀両断にした。
肉を断つ感覚と共に身体がふたつに分かれ、悲鳴をあげる間もなく地面に崩れ落ちると、蒸発していくワーウルフの身体。
「よし……!!やったぞ……ッ!!」
こうして俺は無事、ワーウルフを倒したのだ。
これでケティが怪我をするという未来は返――
「ケティさんッ!!うしろっ!?」
そう考えていた矢先、今まで感情を一切露わにしていなかったセリエラが叫んだ。
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