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止まった時計と悲しみの記憶
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俺は走っていた。雨の中ただひたすら走っていた。何故走っているのか、理由はただ1つこの手に握りしめている今は動かない懐中時計の為であるのは確かだった。これは大切な人から貰ったいわば形見のような物だった。息を切らせながら、あの日の事を今でも思い出す。
あれは2ヶ月前、多分これからも忘れることは無い、いや忘れることが出来ない記憶だ。
「はい!これあげる!!」そう言うと、俺の大切な人は手のひらに収まる程の箱をくれた。その日は、クリスマスでも誕生日でもなかった。訳が分からずつい聞き返してしまった。
「なんだこれ?今日は何か特別な日でもあったか?」そう言うと大切な人は頬を膨らませながら。焦らすようにヒントをくれた。
「あれ~?忘れちゃったの~?今日が何の日か忘れちゃったの~?ヒントは今日の日付!!」
「ごめん、マジでなんの日だっけ?」さっぱり分からなかった。
「しょうが無いな~答えは、私と貴方が付き合ってちょうど、1年でした!!」そう言えばそうだった、と今頃思い出したと、同時に彼女への贈り物を準備してない事を思い出した。
「やべえ、マジで忘れてた・・・」思わず口に出てしまった。
「もう、しょうが無いな~取り敢えずその箱開けてみて。」彼女に急かされながら箱を開けてみた。
「ん?これは時計?」
「ぶっぶー、正解は懐中時計でした!!しかも、私の手作り!!」
「マジか!てことは、S級のライセンス取れたのか!?」
「そう言うこと♡驚いたでしょ?」正直今は、ライセンスの事より世界で一つだけのプレゼントに驚きを隠せなかった。
「確かに・・・お前がS級になるとは思っても無かった・・・」
「何それ!それじゃ、私が馬鹿みたいな子みたいな言い方じゃん!」ぶぅーと頬を膨らませて怒ってますよアピールをして来た。
「事実だろ?だって学年でも、下から数えた方が早いって有名なお前がだぞ?S級て、言ったら有名な工房に呼ばれる位のレベルだぞ!?」
ここで少し、ライセンスについて話しておこう。ライセンスとは、俺達の住むこの国、クロックタウンで持つことが出来る唯一最高レベルの資格で低い順からF、E、D、C、B、A、S、S+、SS、SS+、Lの順番である。FからBまでは中学校に通ってさえいれば、卒業と同時に貰えるライセンスである。高校では選択授業で時計技師の授業がありそれを受講することでAのライセンスを取ることが出来る。A級であれば将来時計技師としては、就職に困らないと言われている。
SからSSまでは、時計技師専門学校に通わなくてはいけないSS+は国家試験以上のレベルを受けなくてはいけないので殆ど無理に等しい。ましてや、L級に関しは、取ることは不可能とまで言われている。理由は単純、条件が無理ゲーに近いのだ。まず両親がSS級以上である事、次に小中高一貫の時計技師専門学校に通っている事、最後に政府と国王の前で国王が欲しがる時計を作る事。と言った無理ゲーレベルの条件を満たさなくてはいけない。
「まぁ、私も本気出したらすごいんだよ~このまま、一気にL級まで行っちゃうんだから!」
「それは無理だな・・・L級は国家試験より難しいって言われてるからな・・・まだ13人しか居ないって聞くし・・・」
「だったら私は、14人目なる!貴方より先にね♡」
彼女はそう言うと少し間を置いてから「そしたら・・・結婚してくれますか・・・」と小声で呟いた
「まぁ、お前ならL級も受かるかもな・・・条件は、2つとも満たしてるわけだしって、え!?ごめん、なって言ったのか聞こえなかった。もう1回言って!!」
「うるさい!絶対に言わない!」
「なんで、逆切れ!?」そう言うと、彼女は黙り込んでしまった。
それから、彼女の機嫌を直すためにデートをした。彼女の好きなケーキを食べに行ったり、ずっと観たかった映画を見に行ったり、時計のパーツ屋を見に行ったりと2人の大切な記念日を満喫した。
「今日は、すごく楽しかった~もうクタクタだよ~」
「ホントだよ・・・まさかパーツ屋にあんなレアなギアが売ってるなんてしかもお前がどうしても欲しいって言うから、店長とガチの値引き交渉するとかマジで有り得ないだろ・・・」俺はボヤきながら歩いた。
「でも、プレゼント用意し忘れた貴方が悪いんだからね!次は、忘れないでよ!!」
「なんだ!ツンデレか!?」
「ちっがーう!もう!!」そんな会話をしながら夜の華やかな街を歩き、街の何処からでも見える大きな時計塔を見た。
「いつかは、あの時計塔の専属技師になれたらな~」
「大丈夫、貴方はもうSS+の天才さんでしょ?どこでも好きな工房に行けるんだから・・・って!!もうこんな時間!?」そう言われて時間を確認すると、夜の10時半を指していた。
「やっべ!終電間に合うかこれ?」
「とりあえず!!ダッシュ!!」
「マジか!?俺走るの苦手なんだよ!」
「日頃から運動しないのが悪いんだよ!」と叫びながら何とか駅に着いた。
「ふぅ、何とか間に合ったな。」俺は電車に間に合った事に安堵して、彼女の方を見た。しかし彼女は、少し悲しそうにこちらを見ながら、
「もう今日は、お別れか・・・何か寂しいね・・・でも明日も会えるから我慢する!」そう言って彼女は、改札を抜けた俺を見て最後に大きな声で言った。
「その時計、大事にしてよね!!未来の14人目のL級技師が作った懐中時計なんだから!!きっと博物館に飾られるレベルのお宝なんだからね!!」それが最後の言葉だった。
そして彼女はその後、事故に遭い死亡した・・・
原因は、トラックを運転していた男の脇見運転による信号無視だった。運悪く横断歩道を渡っていた彼女はトラックに激突、即死だった・・・
その知らせを聞いたのが、事故から一週間後だった。知らせを聞いたその日から、俺は無気力感に襲われ学校を休み彼女から貰った懐中時計をただ眺める日が続いた。そんなある日、彼女の葬儀に出席する事になった。葬儀が終わり、彼女の墓標を雨の中項垂れるように見ていた俺に彼女の両親は、声をかけてきた。
「あの・・・家の娘とお付き合いされていた方ですよね・・・」
「はい・・・」俺はただ、はいとしか言えなかった。怒られて当然だと思っていた殴られる覚悟も出来ていた。あの日デートの約束さえしなければこんな事になっていなかったから。しかし、予想をしていない言葉に俺は言葉を失った。
「君は、娘を愛していたのかい?」あまりに唐突な質問に言葉を詰まらせた。
「娘は、いつも嬉しそうに君の話をしていたよ。あの日の朝も、嬉しそうにオシャレをして、私にこう言ったんだ・・・『今日は、きっと、いや、絶対に幸せな日になる』ってな。娘は、君と会うのをとても楽しみにしていたよ。」
「そうですか・・・」
「あんなに、嬉しそうな顔をしたのは、久しぶりでね。つい、門限を無くしてね。だから私にも責任がある。君は何も背負う必要は無い。」その言葉を聞いた途端、俺は初めて涙を流した。
どれだけ泣いたか正確な時間は、分からない。俺が泣き止む頃には雨がやみ陽の光が射していた。それを待っていたかのように、彼女の父親が何かを差し出した。
「これを、君に渡しておこうと思う。娘が最後まで握りしめて離さなかったものだ。きっと君にとっても、大切な物なんだろう?」そう言って、差し出されたのは、あの日2人で無茶して買った、歯車だった。
「私も、一応SS級の時計技師だからこれで娘が何をしようとしたかは、分かる。でも、それは私では出来ない。けれど、君なら娘のやりたかった事が出来る筈だ。だから、これを君に・・・」
「えっと・・・その、ありがとうございます・・・きっと彼女がやりたかった事を、やって見せます・・・」
「そうか。君ならきっとやってくれると信じているよ。」父親が次の言葉を言おうとした瞬間彼女のあの言葉を思い出して、また泣いた。
「畜生・・・お前がL級になって、俺と結婚するんじゃなかったのかよ!この、懐中時計は博物館に飾られるレベルのお宝になるんじゃなかったのかよ!!なんでだよ・・・なんでお前が死ななきゃならないんだよ・・・畜生・・・畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生!!」
「君が、悪いんじゃない。悪いのは全てあの運転手だよ。」
「そんなの分かってますよ!!」
「なら、それでいいんだ。もう、前を向いておゆきなさい、娘もそう願っていることでしょう。それと、あの運転手は、死罪になったそうだよ。」その言葉に、俺は息を飲んだ。運転手が死罪?そんな事が許されるのか?あいつは、俺の大切な者を奪ったんだ。俺が、会いに行くまで、死ぬことを許されると思っているのか?それから、しばらく、懐中時計と墓標を交互に見つめ、気合を入れ直した。
「よし!俺はもう行くよ。いつまでも、後ろを見ていられない。お前の夢、俺が代わりに叶えてやるよ!それまでは、ここには来ない。それじぁ、夢が叶った時までサヨナラだ。最愛の恋人のグリムガル・ハルトマン!!」
「ずっと、待ってるからね。夢が叶うその時まで。」と、そんな声が聞こえた気がした。
そうして、2人分の夢を叶える為に歩き出した。そして、俺は勉強にさらに打ち込み、技術を磨き遂に、L級になる為の試験を受けられる直前までにたどり着いた。しかし、その時ふと懐中時計を見ると秒針が止まっていた。
「おい・・・嘘だろ?なんで止まってるんだよ!!」とりあえず、落ち着いて止まった原因を探る事にした。まずは、分解して、ギアの配列を確認、問題なし。次にギアオイルの確認、問題なし。それからも思いつく限りの問題点を洗いざらい試したものの全て問題なし。結局何も分からなかった、と言えば嘘になる。一つだけわかった事がある。
「あいつ・・・俺よりすごい技師じゃないかよ・・・何が下から数えた方が早いだよ・・・間違いなくL級だよ・・・」悔しかった。もう少し生きていれば、夢が2人とも叶っていたのに・・・俺が時計塔の専属技師に彼女が14人目のL級技師になれてたはずなのに・・・そして結婚して幸せな家庭を築けたのに・・・
だから俺は、大切な懐中時計を持って雨の中時計技師の工房が立ち並ぶクロックタウンの名所でもある文字盤街を走っていた。目に入るSS+級の技師の店を見つけては、修理を以来して見たが、どの技師も原因が分からないの一点張りだった。そうして、文字盤街の最後の店を見た瞬間俺は、確信した。
「ここなら、絶対に直せる!!」その店にはなんと、L級のライセンスが飾られていた。俺は大きく深呼吸をして店に入っていった。
「いらしゃいませ~」そんな心地の良い声を聞いてから俺は、真剣な顔で言った。
「修理をお願いしたいのですか・・・」
「はい。修理ですね。では奥へどうぞ~」そう言われながら、奥の工房に案内された。
「メチル~修理のお客様ですよ~」
「珍しいね。うちに修理の依頼なんて。」そう呟いた少女を見て俺は言葉を失った。
あれは2ヶ月前、多分これからも忘れることは無い、いや忘れることが出来ない記憶だ。
「はい!これあげる!!」そう言うと、俺の大切な人は手のひらに収まる程の箱をくれた。その日は、クリスマスでも誕生日でもなかった。訳が分からずつい聞き返してしまった。
「なんだこれ?今日は何か特別な日でもあったか?」そう言うと大切な人は頬を膨らませながら。焦らすようにヒントをくれた。
「あれ~?忘れちゃったの~?今日が何の日か忘れちゃったの~?ヒントは今日の日付!!」
「ごめん、マジでなんの日だっけ?」さっぱり分からなかった。
「しょうが無いな~答えは、私と貴方が付き合ってちょうど、1年でした!!」そう言えばそうだった、と今頃思い出したと、同時に彼女への贈り物を準備してない事を思い出した。
「やべえ、マジで忘れてた・・・」思わず口に出てしまった。
「もう、しょうが無いな~取り敢えずその箱開けてみて。」彼女に急かされながら箱を開けてみた。
「ん?これは時計?」
「ぶっぶー、正解は懐中時計でした!!しかも、私の手作り!!」
「マジか!てことは、S級のライセンス取れたのか!?」
「そう言うこと♡驚いたでしょ?」正直今は、ライセンスの事より世界で一つだけのプレゼントに驚きを隠せなかった。
「確かに・・・お前がS級になるとは思っても無かった・・・」
「何それ!それじゃ、私が馬鹿みたいな子みたいな言い方じゃん!」ぶぅーと頬を膨らませて怒ってますよアピールをして来た。
「事実だろ?だって学年でも、下から数えた方が早いって有名なお前がだぞ?S級て、言ったら有名な工房に呼ばれる位のレベルだぞ!?」
ここで少し、ライセンスについて話しておこう。ライセンスとは、俺達の住むこの国、クロックタウンで持つことが出来る唯一最高レベルの資格で低い順からF、E、D、C、B、A、S、S+、SS、SS+、Lの順番である。FからBまでは中学校に通ってさえいれば、卒業と同時に貰えるライセンスである。高校では選択授業で時計技師の授業がありそれを受講することでAのライセンスを取ることが出来る。A級であれば将来時計技師としては、就職に困らないと言われている。
SからSSまでは、時計技師専門学校に通わなくてはいけないSS+は国家試験以上のレベルを受けなくてはいけないので殆ど無理に等しい。ましてや、L級に関しは、取ることは不可能とまで言われている。理由は単純、条件が無理ゲーに近いのだ。まず両親がSS級以上である事、次に小中高一貫の時計技師専門学校に通っている事、最後に政府と国王の前で国王が欲しがる時計を作る事。と言った無理ゲーレベルの条件を満たさなくてはいけない。
「まぁ、私も本気出したらすごいんだよ~このまま、一気にL級まで行っちゃうんだから!」
「それは無理だな・・・L級は国家試験より難しいって言われてるからな・・・まだ13人しか居ないって聞くし・・・」
「だったら私は、14人目なる!貴方より先にね♡」
彼女はそう言うと少し間を置いてから「そしたら・・・結婚してくれますか・・・」と小声で呟いた
「まぁ、お前ならL級も受かるかもな・・・条件は、2つとも満たしてるわけだしって、え!?ごめん、なって言ったのか聞こえなかった。もう1回言って!!」
「うるさい!絶対に言わない!」
「なんで、逆切れ!?」そう言うと、彼女は黙り込んでしまった。
それから、彼女の機嫌を直すためにデートをした。彼女の好きなケーキを食べに行ったり、ずっと観たかった映画を見に行ったり、時計のパーツ屋を見に行ったりと2人の大切な記念日を満喫した。
「今日は、すごく楽しかった~もうクタクタだよ~」
「ホントだよ・・・まさかパーツ屋にあんなレアなギアが売ってるなんてしかもお前がどうしても欲しいって言うから、店長とガチの値引き交渉するとかマジで有り得ないだろ・・・」俺はボヤきながら歩いた。
「でも、プレゼント用意し忘れた貴方が悪いんだからね!次は、忘れないでよ!!」
「なんだ!ツンデレか!?」
「ちっがーう!もう!!」そんな会話をしながら夜の華やかな街を歩き、街の何処からでも見える大きな時計塔を見た。
「いつかは、あの時計塔の専属技師になれたらな~」
「大丈夫、貴方はもうSS+の天才さんでしょ?どこでも好きな工房に行けるんだから・・・って!!もうこんな時間!?」そう言われて時間を確認すると、夜の10時半を指していた。
「やっべ!終電間に合うかこれ?」
「とりあえず!!ダッシュ!!」
「マジか!?俺走るの苦手なんだよ!」
「日頃から運動しないのが悪いんだよ!」と叫びながら何とか駅に着いた。
「ふぅ、何とか間に合ったな。」俺は電車に間に合った事に安堵して、彼女の方を見た。しかし彼女は、少し悲しそうにこちらを見ながら、
「もう今日は、お別れか・・・何か寂しいね・・・でも明日も会えるから我慢する!」そう言って彼女は、改札を抜けた俺を見て最後に大きな声で言った。
「その時計、大事にしてよね!!未来の14人目のL級技師が作った懐中時計なんだから!!きっと博物館に飾られるレベルのお宝なんだからね!!」それが最後の言葉だった。
そして彼女はその後、事故に遭い死亡した・・・
原因は、トラックを運転していた男の脇見運転による信号無視だった。運悪く横断歩道を渡っていた彼女はトラックに激突、即死だった・・・
その知らせを聞いたのが、事故から一週間後だった。知らせを聞いたその日から、俺は無気力感に襲われ学校を休み彼女から貰った懐中時計をただ眺める日が続いた。そんなある日、彼女の葬儀に出席する事になった。葬儀が終わり、彼女の墓標を雨の中項垂れるように見ていた俺に彼女の両親は、声をかけてきた。
「あの・・・家の娘とお付き合いされていた方ですよね・・・」
「はい・・・」俺はただ、はいとしか言えなかった。怒られて当然だと思っていた殴られる覚悟も出来ていた。あの日デートの約束さえしなければこんな事になっていなかったから。しかし、予想をしていない言葉に俺は言葉を失った。
「君は、娘を愛していたのかい?」あまりに唐突な質問に言葉を詰まらせた。
「娘は、いつも嬉しそうに君の話をしていたよ。あの日の朝も、嬉しそうにオシャレをして、私にこう言ったんだ・・・『今日は、きっと、いや、絶対に幸せな日になる』ってな。娘は、君と会うのをとても楽しみにしていたよ。」
「そうですか・・・」
「あんなに、嬉しそうな顔をしたのは、久しぶりでね。つい、門限を無くしてね。だから私にも責任がある。君は何も背負う必要は無い。」その言葉を聞いた途端、俺は初めて涙を流した。
どれだけ泣いたか正確な時間は、分からない。俺が泣き止む頃には雨がやみ陽の光が射していた。それを待っていたかのように、彼女の父親が何かを差し出した。
「これを、君に渡しておこうと思う。娘が最後まで握りしめて離さなかったものだ。きっと君にとっても、大切な物なんだろう?」そう言って、差し出されたのは、あの日2人で無茶して買った、歯車だった。
「私も、一応SS級の時計技師だからこれで娘が何をしようとしたかは、分かる。でも、それは私では出来ない。けれど、君なら娘のやりたかった事が出来る筈だ。だから、これを君に・・・」
「えっと・・・その、ありがとうございます・・・きっと彼女がやりたかった事を、やって見せます・・・」
「そうか。君ならきっとやってくれると信じているよ。」父親が次の言葉を言おうとした瞬間彼女のあの言葉を思い出して、また泣いた。
「畜生・・・お前がL級になって、俺と結婚するんじゃなかったのかよ!この、懐中時計は博物館に飾られるレベルのお宝になるんじゃなかったのかよ!!なんでだよ・・・なんでお前が死ななきゃならないんだよ・・・畜生・・・畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生!!」
「君が、悪いんじゃない。悪いのは全てあの運転手だよ。」
「そんなの分かってますよ!!」
「なら、それでいいんだ。もう、前を向いておゆきなさい、娘もそう願っていることでしょう。それと、あの運転手は、死罪になったそうだよ。」その言葉に、俺は息を飲んだ。運転手が死罪?そんな事が許されるのか?あいつは、俺の大切な者を奪ったんだ。俺が、会いに行くまで、死ぬことを許されると思っているのか?それから、しばらく、懐中時計と墓標を交互に見つめ、気合を入れ直した。
「よし!俺はもう行くよ。いつまでも、後ろを見ていられない。お前の夢、俺が代わりに叶えてやるよ!それまでは、ここには来ない。それじぁ、夢が叶った時までサヨナラだ。最愛の恋人のグリムガル・ハルトマン!!」
「ずっと、待ってるからね。夢が叶うその時まで。」と、そんな声が聞こえた気がした。
そうして、2人分の夢を叶える為に歩き出した。そして、俺は勉強にさらに打ち込み、技術を磨き遂に、L級になる為の試験を受けられる直前までにたどり着いた。しかし、その時ふと懐中時計を見ると秒針が止まっていた。
「おい・・・嘘だろ?なんで止まってるんだよ!!」とりあえず、落ち着いて止まった原因を探る事にした。まずは、分解して、ギアの配列を確認、問題なし。次にギアオイルの確認、問題なし。それからも思いつく限りの問題点を洗いざらい試したものの全て問題なし。結局何も分からなかった、と言えば嘘になる。一つだけわかった事がある。
「あいつ・・・俺よりすごい技師じゃないかよ・・・何が下から数えた方が早いだよ・・・間違いなくL級だよ・・・」悔しかった。もう少し生きていれば、夢が2人とも叶っていたのに・・・俺が時計塔の専属技師に彼女が14人目のL級技師になれてたはずなのに・・・そして結婚して幸せな家庭を築けたのに・・・
だから俺は、大切な懐中時計を持って雨の中時計技師の工房が立ち並ぶクロックタウンの名所でもある文字盤街を走っていた。目に入るSS+級の技師の店を見つけては、修理を以来して見たが、どの技師も原因が分からないの一点張りだった。そうして、文字盤街の最後の店を見た瞬間俺は、確信した。
「ここなら、絶対に直せる!!」その店にはなんと、L級のライセンスが飾られていた。俺は大きく深呼吸をして店に入っていった。
「いらしゃいませ~」そんな心地の良い声を聞いてから俺は、真剣な顔で言った。
「修理をお願いしたいのですか・・・」
「はい。修理ですね。では奥へどうぞ~」そう言われながら、奥の工房に案内された。
「メチル~修理のお客様ですよ~」
「珍しいね。うちに修理の依頼なんて。」そう呟いた少女を見て俺は言葉を失った。
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