追放された私はどうやら魔王だったらしいのだが、せっかくなので前々からなりたかった勇者を目指すことにしました

ihana

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【第二章】 学園での日々

鬼神

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 おそらくは今のはグレドさんの爆発魔法の音だ。
 通路を進んでいくと、大広間のようなところに出たところで、二人の人物を発見した。
 一人は負傷して頭部から血を流すグレドさんと、もう一人は見たこともない衣類をまとう長身短髪の女性であった。
 腰には鞘に収まった剣を携えていて、こちらを警戒気味に睨みつけている。

「グレドさん!」
「来る、な。こいつは、強い……っ!」

 そんなことを言われてしまうも、気にせず彼の傍へと駆け寄る。
 すると、立っているのもやっとだった彼はその場に崩れ落ちてしまうのだった。

「大丈夫ですか!? グレドさん!」
「にげ、ろ……」

 そのまま彼は気を失ってしまった。
 回復魔法だけを施して、彼が戦っていたと思われる女性の方を見る。

「あなた……何者ですか」
「てめぇらこそここで何してやがる? どうやって中に入った?」
「……私たちは冒険者です。人に使役されたグラッセルの群れに襲われたので、その犯人を捜していました。山小屋を調べていたところ、そこがこの迷宮につながっていたってだけです」
「山小屋……? 妙な話だな。で? 角無し魔族のてめぇがなんで人族なんかとつるんでやがる?」

 なっ!
 私が魔族だってバレてる!?

「……どうして私が魔族だとわかったんですか?」
「さあな、てめぇで考えな、ただ一つ言えることは――」

 女性が剣の柄に手をかける。
 次の瞬間には――

 ガキィィィン!

 私へと斬りかかっており、常時展開していたシールドが一発で破壊されてしまう。
 剣が頬を掠めながら、体を捻って何とか回避を。

「ぁぅっ!?」
「はんっ、防ぐか!」
「【フォトンセイバー】、【アトミックシールド】!」

 より強固なシールドを張りながら光剣にて応戦する。
 だが、剣の腕前は私を遥かに凌ぐものようで、簡単にいなされてしまった。

「っ! その剣、魔法剣ですねっ!?」

 通常の金属剣であれば、光剣で簡単に溶融切断できるはず。

「フォトンセイバーなんて珍しいの使ってんな。けど、そんなひ弱な太刀筋じゃ宝の持ち腐れだぜ!」

 女性が戦そのものを楽しんでいるかのように笑いながらこちらへと激しく斬りかかって来る。
 こちらも魔法を組み合わせた迎撃を行っているというのに、まるで歯が立たない。
少なくとも言えることは、今まで戦ってきた誰よりも強い!

「くぅ、【サンダーエクスプロージョン】!」
「【火影不知火ほかげしらぬい】」

 詠唱したと思ったら、彼女太刀によって魔法がかき消されてしまった。

「魔法消去!?」

 初めて見た。
 存在は知っていたが、実際にこの目にするのは初めてだ。

「今の技……【スキル】という奴ですね?」
「スキルも知らねぇのかよ。てめぇは魔法威力が段違いなのに、つえぇんだかよえぇんだかよくわかんねぇ野郎だな」
「どうして戦わなければならないかくらい教えてくれませんか? 私としてはグラッセルの群れの原因があなたでないのなら、あなたと事を荒立てたくないです」

 チラとグレドさんの方に視線をやる。
 最低限の回復魔法こそ施したが、出血量から考えて危険な状態にあるのは明白だ。
 本来であれば、戦闘なんてしている場合じゃない。

「この場にお前らがいた。これがあーしと戦う理由だ。入って来れねぇ場所にてめぇが入って来れている段階で殺すに十分な理由がある」
「待って下さい。勝手に入ったことは謝ります。ですが、殺すまでしなくともいいじゃないですか」
「それで殺すに十分なんだよ。夢幻郷に人がいるなんて怪しさ満点だろうが」
「夢幻郷……? あなた夢幻郷のことを知っているんですか、そしたら、全魔船とかも知っているんじゃないんですか?」

 そう述べた瞬間、彼女の目つきが変わった。
 急に口を閉ざして殺人鬼のような目となり、こちらをねっとりとねめつけてくる。
 なにか、おぞましいものを感じる。
 つついてはならないやぶをつついて、蛇どころか竜が出て来てしまったような感覚だ。

「ちょ、ちょっと待って下さい! 私は――」

 女性が剣を鞘に納めて抜刀構えを取る。
 問答無用!?

「【マイティシールド】!」
「【百花繚乱】」

 ガラスが割れて飛び散るような甲高い音が響いた。
 魔法片が残光となって飛び散り、展開していたすべての魔法が解除されてしまう。

 なにこのスキル!?
 すべての魔法の強制解除!?
 はやく対s――

 なんて思っているのも束の間、彼女の姿が消えたと思ったらもう背後にいて、首を恐ろしい腕力で絞められていた。
 視界が白くなっていって、意識が遠のく。

「ぁぐぅぅがぁ、あがぁっ!」
「全魔船まで知ってるたぁ、ただじゃおけねぇな」

 締めの訓練もビーザルさんとは幾度もやった。
 なのに、背後にいる彼女へいくらひじや蹴りを入れても相手のひるむ気配がない。

 感覚がなくなる。
 ダメ……。
 死ぬ。

「うおおおおお!!」

 雄叫びと衝撃があって、私の拘束が解かれる。
 激しく咳き込み涙目になりながら状況に目をやると、グレドさんと女性が斬り合っていた。
 たぶん突進で彼女の拘束を解いたのであろう。

 未だ苦しさはあるものの、頭の中で魔法構築を開始する。
 この人は手加減なんてできるレベルの相手じゃない。

 突進をまともに受けたはずなのに一切ダメージがないかのように振る舞う彼女はグレドさんを蹴り飛ばす。
 それだけで彼の体は宙を大きく舞い吹っ飛ばされてしまうのだった。

「がはっ!」
「グレドさんっ!」
「くそっ……。お、い、早く、逃げろ」
「嫌です! 絶対に置いて行ったりしません」
「だが――」
「いいから黙っていてください!」

 空間魔法で杖を取り出して彼の元へ。

「空間魔法?!」

 はじめて女性が驚きの表情を浮かべた。
 空間魔法は珍しいものと見えるらしい。
 その隙に魔力をかき集めて魔法陣を展開。
 この人は黙って待ってくれるほど甘い人ではない。

「死んだらごめんなさい! でもあなたは手加減できないっ!」

 魔力光が舞い散った。
 瞬時に魔力が収束し、魔法が顕現する。

「獄火爆炎魔法【ヘルズ・ノヴァ】」

 猛り狂う気化したマグマが彼女を襲う。
 太陽をも焼き尽くす高温が周辺のすべてを包んでいった。
 グレドさんを耐熱魔法でくるんで肩を貸しながら急いで逃げる。

 この魔法を前に立っていられる生物なんているはずがない。
 なのに頭の片隅では、それでも彼女が平気な顔でこちらへと向かって来る姿を想像していた。
 だからとにかく足を動かして、自分たちが来た方へと逃げて逃げてとにかく逃げる。

 そして、気が付いたときには山小屋にまで逃げ延びているのだった。
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