5 / 101
光と影は一緒になれるけど
しおりを挟む
初めて眩しいと思ったのは、陽の光ではなくある女性の笑顔だった。
明るく笑う彼女の笑顔は眩しくて、いつも離れた場所から眺めていることしかできない。
こんなに明るい人に近づいたら自分は消えてしまいそうで、こうしてこの家の前を通ると立ち止まり瞳に映すのだ。
大きな家の広い庭で犬と遊ぶ、名前も知らない彼女の姿を。
でも、それだけで幸せなんだ。
ただその笑顔が見られるだけで。
そして翌日もその家の前で立ち止まると、一瞬だったが目が合い、鼓動が跳ね上がる。
でも彼女は直ぐに犬へと視線を戻すと、何故か家の中へ犬と一緒に入ってしまう。
「仕方ないよね。光は僕の存在に気づかないんだから」
彼女が光なら自分は影。
光が眩しくて、影の存在には気づけないんだ。
そしてその次の日も、また次の日も、彼女という光を見つけてから毎日その家に訪れた。
でもそんなある日、彼女が庭に出てこなくなった。
それから数日後、彼女は庭で泣いていた。
いつも側にいた犬の姿はなく、どうやら亡くなってしまったようだ。
彼女の光は1つ消えてしまったようだが、自分にはまだ光がある。
そんなことを考えていると、また彼女と目が合った。
だが、彼女は涙を流しながら家へと駆け込んでしまう。
「泣いてる姿なんて、見られたくないよね。僕も、キミが泣いてる姿は見たくないよ」
その次の日、初めて彼女に声をかけることを決意した。
何時も家で一人だった彼女の大切な光が消えてしまったのだ。
きっと喜んでくれるだろうと、プレゼントを手に彼女に声をかけた。
「キミに渡したいものがあるんだ」
初めて踏み込む庭。
そして、間近で見る彼女の姿。
背に隠していた贈り物を彼女の前に差し出すと、彼女は喜んでくれた。
「泣くほど嬉しいんだね。よかった」
ようやく彼女に自分の存在を知ってもらえたことに笑みを浮かべる。
でも彼女は、そのまま泣き崩れてしまう。
「いやああッ!!」
「ほら立って。そんなところに座ってたら洋服が汚れちゃうよ」
「イヤッ、近寄らないで……」
何故か嫌がる彼女に首を傾げる。
すると彼女は、プレゼントを奪うとこちらを睨んだ。
「この、人殺しッ!!」
そう叫ぶ彼女には、もう光はなかった。
光がなくなって、自分と同じになったのだ。
でも、彼女は影じゃない。
何故なら、彼女は影よりも暗い闇になってしまったのだから。
「はぁ……。やっぱり彼女も違った。次の光を見つけなきゃ」
折角消してあげた彼女の両親。
でも、彼女は影にはならなかった。
それどころか眩しい光をまた輝かせたのだ。
でも、最後の光の犬が死んでしまった。
それでも彼女は光にも影にもならなかった。
だから、犬のお墓を掘り起こしてプレゼントしたのだが、どうやらお気に召さなかったらしく闇に染まってしまった。
だから、彼女を両親と犬と同じ場所に連れてきてあげたんだ。
暗くて冷たい土の下に。
「ごめんね。光と影は一緒になれるけど、闇とは一緒になれないんだ」
そしてまた一から探す。
光輝く存在を。
そして今度こそ、自分と同じ影にする。
《完》
明るく笑う彼女の笑顔は眩しくて、いつも離れた場所から眺めていることしかできない。
こんなに明るい人に近づいたら自分は消えてしまいそうで、こうしてこの家の前を通ると立ち止まり瞳に映すのだ。
大きな家の広い庭で犬と遊ぶ、名前も知らない彼女の姿を。
でも、それだけで幸せなんだ。
ただその笑顔が見られるだけで。
そして翌日もその家の前で立ち止まると、一瞬だったが目が合い、鼓動が跳ね上がる。
でも彼女は直ぐに犬へと視線を戻すと、何故か家の中へ犬と一緒に入ってしまう。
「仕方ないよね。光は僕の存在に気づかないんだから」
彼女が光なら自分は影。
光が眩しくて、影の存在には気づけないんだ。
そしてその次の日も、また次の日も、彼女という光を見つけてから毎日その家に訪れた。
でもそんなある日、彼女が庭に出てこなくなった。
それから数日後、彼女は庭で泣いていた。
いつも側にいた犬の姿はなく、どうやら亡くなってしまったようだ。
彼女の光は1つ消えてしまったようだが、自分にはまだ光がある。
そんなことを考えていると、また彼女と目が合った。
だが、彼女は涙を流しながら家へと駆け込んでしまう。
「泣いてる姿なんて、見られたくないよね。僕も、キミが泣いてる姿は見たくないよ」
その次の日、初めて彼女に声をかけることを決意した。
何時も家で一人だった彼女の大切な光が消えてしまったのだ。
きっと喜んでくれるだろうと、プレゼントを手に彼女に声をかけた。
「キミに渡したいものがあるんだ」
初めて踏み込む庭。
そして、間近で見る彼女の姿。
背に隠していた贈り物を彼女の前に差し出すと、彼女は喜んでくれた。
「泣くほど嬉しいんだね。よかった」
ようやく彼女に自分の存在を知ってもらえたことに笑みを浮かべる。
でも彼女は、そのまま泣き崩れてしまう。
「いやああッ!!」
「ほら立って。そんなところに座ってたら洋服が汚れちゃうよ」
「イヤッ、近寄らないで……」
何故か嫌がる彼女に首を傾げる。
すると彼女は、プレゼントを奪うとこちらを睨んだ。
「この、人殺しッ!!」
そう叫ぶ彼女には、もう光はなかった。
光がなくなって、自分と同じになったのだ。
でも、彼女は影じゃない。
何故なら、彼女は影よりも暗い闇になってしまったのだから。
「はぁ……。やっぱり彼女も違った。次の光を見つけなきゃ」
折角消してあげた彼女の両親。
でも、彼女は影にはならなかった。
それどころか眩しい光をまた輝かせたのだ。
でも、最後の光の犬が死んでしまった。
それでも彼女は光にも影にもならなかった。
だから、犬のお墓を掘り起こしてプレゼントしたのだが、どうやらお気に召さなかったらしく闇に染まってしまった。
だから、彼女を両親と犬と同じ場所に連れてきてあげたんだ。
暗くて冷たい土の下に。
「ごめんね。光と影は一緒になれるけど、闇とは一緒になれないんだ」
そしてまた一から探す。
光輝く存在を。
そして今度こそ、自分と同じ影にする。
《完》
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ウインタータイム ~恋い焦がれて、その後~
さとう涼
恋愛
カレに愛されている間だけ、
自分が特別な存在だと錯覚できる……
◇◇◇
『恋い焦がれて』の4年後のお話(短編)です。
主人公は大学生→社会人となりました!
※先に『恋い焦がれて』をお読みください。
※1話目から『恋い焦がれて』のネタバレになっておりますのでご注意ください!
※女性視点・男性視点の交互に話が進みます
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる