16 / 101
地味子とウルフ
しおりを挟む
やって来た転校生は、綺麗な白銀の髪に青い瞳をしている帰国子女。
その男の名は、大上 ウルフ。
クールな雰囲気とその人目を惹く美しさに転校初日から女子達が騒ぎ出す。
授業が終わる度にウルフくんの回りに女子達が集まり声をかけるが「煩い」と静かに言われた言葉に女子達は離れていく。
そんな様子を全て見ていた私も、ウルフくんに惹かれている女子の一人だ。
名前の通り狼のような見た目と雰囲気。
カッコイイのだが、それ以上に美しいと感じさせる。
だが、自分は他の女子達のように声をかけることが出来ない。
「ねぇ、地味子。アンタさっきからウルフくんの事見てるよね」
「えー、マジ? 地味子なんかをウルフくんが相手にするわけないじゃん」
ケラケラと笑う二人の女子。
二人の言う通り、自分なんか相手にされないとわかっている。
だから声をかけることが出来ないのだ。
自分は地味な女。
皆は面白がり一人が地味子と呼んだ。
そこから地味子というあだ名で皆から呼ばれるようになった。
でもいい。
こうしてウルフくんを見ていられるだけで、心が癒されるのを感じるのだから。
その日の下校時間。
一人帰路を歩いていると、白銀の髪を揺らしながら前を歩く人を見掛け、直ぐにウルフくんだと気付く。
自分と帰る方向が同じなんだと思いながら距離を取りつつ歩いていると、ウルフくんは立ち止まり振り返る。
「何でついてくるわけ」
声をかけられ周りをキョロキョロとしていると、ウルフくんは私の目の前まで来て険しい表情を浮かべ、アンタに言ってんだけどと言う。
ついてきた訳ではなく自分も帰る方向が同じだということを慌てて説明すると「ならこそこそ俺の後ろを歩く必要ないだろ」と言い、ウルフくんは再び歩き出す。
地味な自分は人より一歩下がってしまう。
だから、その背を見詰めることはできても並ぶことはできない。
自分には眩しすぎる存在なら尚更だ。
顔を伏せ立ち止まったままでいると、自分の前にもう一つ影が現れ顔を上げる。
「いつまでそうしてるきだよ。帰る方向が同じなら行くぞ」
静かにそう言ったウルフくんの言葉は温かく、心に一滴の雫が落ちると、先程までの落ち込んだ気持ちが無くなるのを感じる。
歩き出すのを待っていてくれているウルフくんに、私は柔らかな笑みを浮かべ頷くと、一緒に帰路を歩く。
その翌日。
私とウルフくんが一緒に帰ったことがすでに皆に知られており、私は女子達に囲まれていた。
「地味子のくせにウルフくんと帰るなんて生意気」
「鏡でも見たら?」
悪口の数々を浴びせられた後教室へ戻ると、私は席につき視線を落とした。
そんなとき声が掛けられ、その声音で直ぐにウルフくんだと気付くが、顔を伏せたまま静かに「放っておいて」と言う。
すると、何時も私の事をからかっている二人の女子がやって来て「地味子なんて相手にしないで一緒に話そうよ」とウルフくんを誘う。
「俺は、地味子なんてバカにしてる女と話すことなんない。それにお前も、いつまでそうして顔を伏せてる気だよ」
「放っておいてっていってるでしょ」
これ以上女子達に虐められるのが嫌で冷たくすると、ウルフくんは私の腕を掴み立ち上がらせた。
「私に構わないで!」
「それは本当にお前の本心なのか? 今怒ったみたいに、お前をバカにしてる奴等にも言い返せよ」
簡単に言ってくれるが、そんなこと出来るはすがない。
出来ていれば今私はこんな気持ちになっていないのだから。
本当は地味子なんて呼ばれたくない。
でも、鏡で見る自分は本当に地味で、周りがそう言うのも当たり前だと思った。
私はは静かに「もう構わないで」と言うと席につく。
下校時間。
あれからウルフくんが声をかけてくることはなかった。
これで女子達から目をつけられることもないだろうと安堵していると、帰り道に同じクラスの女子二人が私の前に現れた。
「ほんと、アンタムカつくんだよね」
「アンタのせいで私達が悪者みたいになったじゃない」
結局自分はこうなるのだ。
地味な自分は怒りの的にされるのだと思ったとき「事実だろ」という言葉が背後から聞こえ振り返ると、そこにはウルフくんの姿があった。
ウルフくんは私の横に立つと、私が怒らない分、言い返せない分、その言葉を全て女子達にぶつける。
「地味子なんて見た目で判断するお前達は、俺から見たらブスだ」とまで言うウルフくんの言葉に、言い返す言葉がない二人は去っていった。
「私、ウルフくんに冷たくしたのに、なんでこんな地味な奴を助けてくれるの……」
私の言葉にウルフくんは「お前が自分を地味だって思うからあいつらもつけあがるんだ」と言う。
自分が地味なのは事実だからと言えば、ウルフくんは「そんなことねぇだろ」と口にする。
少なくても、バカにしてるあいつらよりお前のが何倍もいいと言われ、私の鼓動が音を立てる。
ウルフくんは、自分も見た目で嫌な思いをしたことがあると話始めた。
綺麗な白銀の髪に纏うクールな雰囲気。
そんな見た目はどこにいても注目されたが、周りが見ているのは外見だけだでウルフくん自身を見ようとした人はいなかった。
そんな自分と私を重ねていたらしく、その話を聞いた私は、どんなに綺麗な人でも悩みがあるのだと知り、地味だからと納得し受け入れていた自分が嫌になる。
その翌日。
教室がざわつくこととなった。
地味子と言われていた私は眼鏡をやめコンタクトにしたのだが、その素顔は地味などとは呼べないほどに可愛かった。
そんな私に「やっぱり地味じゃねぇじゃん」というウルフくんの言葉に少し恥ずかしさを感じながらも、ありがとうと笑みを浮かべた。
《完》
その男の名は、大上 ウルフ。
クールな雰囲気とその人目を惹く美しさに転校初日から女子達が騒ぎ出す。
授業が終わる度にウルフくんの回りに女子達が集まり声をかけるが「煩い」と静かに言われた言葉に女子達は離れていく。
そんな様子を全て見ていた私も、ウルフくんに惹かれている女子の一人だ。
名前の通り狼のような見た目と雰囲気。
カッコイイのだが、それ以上に美しいと感じさせる。
だが、自分は他の女子達のように声をかけることが出来ない。
「ねぇ、地味子。アンタさっきからウルフくんの事見てるよね」
「えー、マジ? 地味子なんかをウルフくんが相手にするわけないじゃん」
ケラケラと笑う二人の女子。
二人の言う通り、自分なんか相手にされないとわかっている。
だから声をかけることが出来ないのだ。
自分は地味な女。
皆は面白がり一人が地味子と呼んだ。
そこから地味子というあだ名で皆から呼ばれるようになった。
でもいい。
こうしてウルフくんを見ていられるだけで、心が癒されるのを感じるのだから。
その日の下校時間。
一人帰路を歩いていると、白銀の髪を揺らしながら前を歩く人を見掛け、直ぐにウルフくんだと気付く。
自分と帰る方向が同じなんだと思いながら距離を取りつつ歩いていると、ウルフくんは立ち止まり振り返る。
「何でついてくるわけ」
声をかけられ周りをキョロキョロとしていると、ウルフくんは私の目の前まで来て険しい表情を浮かべ、アンタに言ってんだけどと言う。
ついてきた訳ではなく自分も帰る方向が同じだということを慌てて説明すると「ならこそこそ俺の後ろを歩く必要ないだろ」と言い、ウルフくんは再び歩き出す。
地味な自分は人より一歩下がってしまう。
だから、その背を見詰めることはできても並ぶことはできない。
自分には眩しすぎる存在なら尚更だ。
顔を伏せ立ち止まったままでいると、自分の前にもう一つ影が現れ顔を上げる。
「いつまでそうしてるきだよ。帰る方向が同じなら行くぞ」
静かにそう言ったウルフくんの言葉は温かく、心に一滴の雫が落ちると、先程までの落ち込んだ気持ちが無くなるのを感じる。
歩き出すのを待っていてくれているウルフくんに、私は柔らかな笑みを浮かべ頷くと、一緒に帰路を歩く。
その翌日。
私とウルフくんが一緒に帰ったことがすでに皆に知られており、私は女子達に囲まれていた。
「地味子のくせにウルフくんと帰るなんて生意気」
「鏡でも見たら?」
悪口の数々を浴びせられた後教室へ戻ると、私は席につき視線を落とした。
そんなとき声が掛けられ、その声音で直ぐにウルフくんだと気付くが、顔を伏せたまま静かに「放っておいて」と言う。
すると、何時も私の事をからかっている二人の女子がやって来て「地味子なんて相手にしないで一緒に話そうよ」とウルフくんを誘う。
「俺は、地味子なんてバカにしてる女と話すことなんない。それにお前も、いつまでそうして顔を伏せてる気だよ」
「放っておいてっていってるでしょ」
これ以上女子達に虐められるのが嫌で冷たくすると、ウルフくんは私の腕を掴み立ち上がらせた。
「私に構わないで!」
「それは本当にお前の本心なのか? 今怒ったみたいに、お前をバカにしてる奴等にも言い返せよ」
簡単に言ってくれるが、そんなこと出来るはすがない。
出来ていれば今私はこんな気持ちになっていないのだから。
本当は地味子なんて呼ばれたくない。
でも、鏡で見る自分は本当に地味で、周りがそう言うのも当たり前だと思った。
私はは静かに「もう構わないで」と言うと席につく。
下校時間。
あれからウルフくんが声をかけてくることはなかった。
これで女子達から目をつけられることもないだろうと安堵していると、帰り道に同じクラスの女子二人が私の前に現れた。
「ほんと、アンタムカつくんだよね」
「アンタのせいで私達が悪者みたいになったじゃない」
結局自分はこうなるのだ。
地味な自分は怒りの的にされるのだと思ったとき「事実だろ」という言葉が背後から聞こえ振り返ると、そこにはウルフくんの姿があった。
ウルフくんは私の横に立つと、私が怒らない分、言い返せない分、その言葉を全て女子達にぶつける。
「地味子なんて見た目で判断するお前達は、俺から見たらブスだ」とまで言うウルフくんの言葉に、言い返す言葉がない二人は去っていった。
「私、ウルフくんに冷たくしたのに、なんでこんな地味な奴を助けてくれるの……」
私の言葉にウルフくんは「お前が自分を地味だって思うからあいつらもつけあがるんだ」と言う。
自分が地味なのは事実だからと言えば、ウルフくんは「そんなことねぇだろ」と口にする。
少なくても、バカにしてるあいつらよりお前のが何倍もいいと言われ、私の鼓動が音を立てる。
ウルフくんは、自分も見た目で嫌な思いをしたことがあると話始めた。
綺麗な白銀の髪に纏うクールな雰囲気。
そんな見た目はどこにいても注目されたが、周りが見ているのは外見だけだでウルフくん自身を見ようとした人はいなかった。
そんな自分と私を重ねていたらしく、その話を聞いた私は、どんなに綺麗な人でも悩みがあるのだと知り、地味だからと納得し受け入れていた自分が嫌になる。
その翌日。
教室がざわつくこととなった。
地味子と言われていた私は眼鏡をやめコンタクトにしたのだが、その素顔は地味などとは呼べないほどに可愛かった。
そんな私に「やっぱり地味じゃねぇじゃん」というウルフくんの言葉に少し恥ずかしさを感じながらも、ありがとうと笑みを浮かべた。
《完》
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ウインタータイム ~恋い焦がれて、その後~
さとう涼
恋愛
カレに愛されている間だけ、
自分が特別な存在だと錯覚できる……
◇◇◇
『恋い焦がれて』の4年後のお話(短編)です。
主人公は大学生→社会人となりました!
※先に『恋い焦がれて』をお読みください。
※1話目から『恋い焦がれて』のネタバレになっておりますのでご注意ください!
※女性視点・男性視点の交互に話が進みます
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる