18 / 101
温かい冬/テーマ:マフラー ※別サイトにて受賞
しおりを挟む
仕事でお偉いさんの元へ行くことになり、今日は先輩と一緒にとある会社に来ていた。
終わった頃には外が暗くなっており、寒さで吐く息が白い。
このまま家へ帰っていいことになっているため、途中まで帰りが一緒の先輩と並んで歩く。
「お前はクリスマス、予定あるのか」
「先輩、それって嫌味ですか。私にそんな相手いないこと知ってるくせに」
ムッとする私の瞳には、ニシシと笑みを浮かべる先輩が映る。
もう直ぐクリスマスだというのに、彼氏がいない私はいつも一人寂しく過ごすわけだが、私とは真逆に先輩はモテるため今年もクリスマスは忙しいに違いない。
「先輩の女性関係は興味ないですが、このままだと痛い目見ますよ」
「クリスマスが血に染まるってか? ありそうだよな」
何人もの女性と付き合う先輩。
そんな相手の女性は皆そのことを知っていて付き合っている。
中には自分だけを見てほしいと言い出す人もおり、そういう女性とは関係を切ってしまうのが先輩だ。
だが不思議なことに、関係を切られた女性は全く恨んでいないのだ。
それどころか先輩と別れたあと、新しい彼氏を作って幸せになっている。
私は冷たくなった手に息をかけ温めていると、突然首元が温かくなる。
ふと見てみると、私の首には先輩のマフラーが巻かれていた。
「これで暖かいだろ」
「私は寒くないですから、先輩が巻いてください」
こういうさりげない優しさに女は落ちてしまうのかもしれないが、私には効かない。
マフラーを突き返そうとすると、鼻先をそんな真っ赤にしてよく言うよな、と先輩は笑う。
後輩に風邪なんて引かれたら俺の責任だからなと言われてしまいし、私はマフラーをこのまま借りることにする。
先輩から借りたマフラーは温かく、幸せな気持ちになる。
「お! 自販機発見。なんか温かいもんでも買ってきてやるから待ってろよ」
そう言って手渡されたのはホット珈琲。
二人で近くのベンチに座り飲む珈琲は、体の中から温めてくれる。
先輩の行動一つ一つが思いやりと優しさに溢れていて、モテるのもわかる。
でも、それが私には効かないのは、すでに私も先輩に恋をしてしまっているからだ。
空を仰ぐと、無数の星々が輝いている。
寒いはずなのに、先輩と一緒にいると温かい。
それは珈琲のせいなのかマフラーのせいなのか、それとも別の何かなのか。
「よし、帰るか」
「そうですね」
先輩のマフラーをキュッと握り、私は口元を緩める。
こんなに温かい冬は初めてだ。
《完》
終わった頃には外が暗くなっており、寒さで吐く息が白い。
このまま家へ帰っていいことになっているため、途中まで帰りが一緒の先輩と並んで歩く。
「お前はクリスマス、予定あるのか」
「先輩、それって嫌味ですか。私にそんな相手いないこと知ってるくせに」
ムッとする私の瞳には、ニシシと笑みを浮かべる先輩が映る。
もう直ぐクリスマスだというのに、彼氏がいない私はいつも一人寂しく過ごすわけだが、私とは真逆に先輩はモテるため今年もクリスマスは忙しいに違いない。
「先輩の女性関係は興味ないですが、このままだと痛い目見ますよ」
「クリスマスが血に染まるってか? ありそうだよな」
何人もの女性と付き合う先輩。
そんな相手の女性は皆そのことを知っていて付き合っている。
中には自分だけを見てほしいと言い出す人もおり、そういう女性とは関係を切ってしまうのが先輩だ。
だが不思議なことに、関係を切られた女性は全く恨んでいないのだ。
それどころか先輩と別れたあと、新しい彼氏を作って幸せになっている。
私は冷たくなった手に息をかけ温めていると、突然首元が温かくなる。
ふと見てみると、私の首には先輩のマフラーが巻かれていた。
「これで暖かいだろ」
「私は寒くないですから、先輩が巻いてください」
こういうさりげない優しさに女は落ちてしまうのかもしれないが、私には効かない。
マフラーを突き返そうとすると、鼻先をそんな真っ赤にしてよく言うよな、と先輩は笑う。
後輩に風邪なんて引かれたら俺の責任だからなと言われてしまいし、私はマフラーをこのまま借りることにする。
先輩から借りたマフラーは温かく、幸せな気持ちになる。
「お! 自販機発見。なんか温かいもんでも買ってきてやるから待ってろよ」
そう言って手渡されたのはホット珈琲。
二人で近くのベンチに座り飲む珈琲は、体の中から温めてくれる。
先輩の行動一つ一つが思いやりと優しさに溢れていて、モテるのもわかる。
でも、それが私には効かないのは、すでに私も先輩に恋をしてしまっているからだ。
空を仰ぐと、無数の星々が輝いている。
寒いはずなのに、先輩と一緒にいると温かい。
それは珈琲のせいなのかマフラーのせいなのか、それとも別の何かなのか。
「よし、帰るか」
「そうですね」
先輩のマフラーをキュッと握り、私は口元を緩める。
こんなに温かい冬は初めてだ。
《完》
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ウインタータイム ~恋い焦がれて、その後~
さとう涼
恋愛
カレに愛されている間だけ、
自分が特別な存在だと錯覚できる……
◇◇◇
『恋い焦がれて』の4年後のお話(短編)です。
主人公は大学生→社会人となりました!
※先に『恋い焦がれて』をお読みください。
※1話目から『恋い焦がれて』のネタバレになっておりますのでご注意ください!
※女性視点・男性視点の交互に話が進みます
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる