1話完結のSS集

月夜

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音色を奏でて/テーマ:やまない雨

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 今日は朝から雨。
 仕事も休みだからお家でゆっくり過ごせばいいし、普段の休みもそんな感じだ。

 でも、外に出なくてもやはり雨が降っていると憂鬱な気分になる。
 雨だって降らなきゃ農家の人達が困るのもわかってはいるが、こうも雨がザーザー降っていると、音が気になりゆっくりどころではない。

 ザーザーどころかすでにバケツをひっくり返し続けているような土砂降り。

 床に寝転がり瞼を閉じると、やはり雨の音が煩い。
 ちょっとした雨音なら心地よくも思えるが、ここまで降ると心地良いどころか騒音だ。

 仕方ないと取り出したのは、音楽プレーヤーとイヤホン。
 これさえあれば雨の音など関係ない。



「嘘でしょ……」



 まさかのイヤホンが壊れていることが発覚。
 こうなったらスマホで聞こうとすると、スマホ用のイヤホンは行方不明。



「一体なんの恨みがあるのよ」



 これではこの騒音がしのげない。
 他に何かいい方法はないかと部屋の中を見回すと、読もうと思ってそのままになっていた小説を発見。
 本に集中してしまえば、雨の音など聞こえなくなると思い早速表紙を開く。

 最初は気になっていた雨の音もいつの間にか耳に入らなくなり、私は本の世界に入り込んでいた。

 だがそのとき。
 突然ゴロゴロッという音が響いたかと思うと、ピカッと外が光る。
 近くで雷でも落ちたんじゃないかというほどの凄まじい音に、一気に現実へと引き戻されてしまう。



「折角本の世界に入ってたのに」



 今も鳴り響く雷にやまない雨。
 これでは集中出来ないと思い本を閉じる。

 これ以上することもなく、どうしたものかと考えているとインターホンが鳴る。
 一体こんな天気に誰だと思いながらドアスコープを覗く。

 にこやかに笑みを浮かべながら手を振る彼女を見て、私はゲッと漏れそうな言葉を心に留めて鍵を開ける。



「やっほー! 遊びに来たよ」

「こんな天気の中遊びに来る人はアンタくらいよ」



 呆れながら言うも、彼女を部屋の中へと上げる。

 彼女の名は真樹まき
 私と同じ職場で働く同期であり、何だかんだ友達という仲なのだが、彼女は雨女であり、一緒にいる人に何故か不幸をもたらすという人種。

 私はすでに彼女のことを人だと認識していいものか悩んでいたりする。

 挙句に彼女はかなり変わっている。
 少なくとも、こんな土砂降りで雷も鳴ってる中、傘一本差して遊びに来る人物を私は彼女しか知らない。



「で、遊びに来たって何をするわけ?」

「フッフッフッ。これだよ」



 そう言いながら目の前に掲げられたのはトランプ。
 わかってはいたがやはり彼女は阿呆だ。



「あのさ、そのトランプびしょ濡れだけど」

「しまった! 傘さしたとき鞄の方だけ傘が足りてなかったみたい。そういうのあるよね」



 ねーよ、と心の中で突っ込む。
 一つの傘に二人入って片方の肩がっていうならわからなくもないが、何故一人で傘さしてそうなる。
 そもそも傘が足りてなかったとしても鞄の方に傾けると思うんだが。

 突っ込みたいことは山のようにあるが、これでトランプはダメになった。
 適当に珈琲でも飲ませて帰らせようと、淹れた珈琲を彼女の前に置くと、テーブルに置かれていた先程のトランプが完全に乾いていた。



「フッフッフッ。こんなこともあろうかと、袋に入った未開封も持ってきていましたー」



 なら最初から出せや、とか。
 こんなこともあろうかと思ってたなら何故鞄の方に傘を傾けなかったと突っ込みたいが、ここもグッと我慢。


 結局トランプをするはめになり、何故か彼女は二人しかいないのに大富豪をやろうと言い出した。

 取り敢えず、適当に付き合って帰らせようと思っていたので、早速先ずはカードを配ろうと彼女がしたとき、電気が消えた。

 どうやら停電らしいが。
 これは彼女がバラまく周りへの不幸の一部だろう。
 そしてこの不幸のムカつくところは。



「ほらほら。スマホのライトを顔の下から当てると怖いでしょ」



 本人はとっても楽しんでるということ。
 いくら周りが不幸なめにあい同じ状況に彼女もいたとしても、彼女自身はそれが不幸ではない。
 だから、彼女というと一緒にいる人だけが不幸なめにあう。



「これじゃあトランプもできないし、帰ったほうがいいんじゃない」

「あ、大丈夫。ジャジャーン! 光るトランプも持ってきてました」



 無駄に準備がいいのも腹が立つが、何故私は彼女と二人でスマホの明かりとトランプの灯りで大富豪をしているのか。

 だが、たまにはこういう日があってもいいのかもしれない。
 そう思ったのが数時間前。


 そして現在夜。
 お泊りセットまで準備していた彼女は私の家で泊まることとなった。

 それも、お泊りセットは袋に入れて鞄に入れるという二重だったため濡れておらず、どこまでも変なところで準備がよく、周りの人を不幸なめにあわせる彼女。

 今も降り続ける雨は、もしかしたら彼女が雨女だからなんじゃないかという考えが過るが、これ以上は考えることをやめ眠りにつく。

 振り続けている雨だが、今は少し落ち着き。
 私の耳には、心地のいい雨音が奏でる音色が聞こえ、私の心をポツポツと癒やす。


《完》
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