1話完結のSS集

月夜

文字の大きさ
82 / 101

ゴロ/テーマ:猫

しおりを挟む
 猫は長く生きると、化け猫になると聞いたことがある。
 そんなのただの作り話で、昔の人が考えたものなんて思っていたのに、私は偶然にも見てしまった。


 それは、夏休みのこと。
 お盆ということで、田舎の祖父母の家に家族で訪れていた。
 正直、田舎って何もないし退屈で、何よりアイツがいるから私は正直来たくなかった。

 着いて家の中に入れば、私をギロリと睨むアイツがいる。
 真っ黒で、目が鋭くて、祖父母や私の両親には擦り寄るのに、私にだけ何故か近づくどころか少し離れた場所から睨むアイツは黒猫のゴロ。
 毎年来てるけど、コイツとだけは仲良くなれない。

 私が小さな頃からいたらしいゴロは、人の年齢からしたら長寿。
 そんなゴロと、私は記憶がある頃から嫌っているのを覚えている。
 まるで人を選んで甘えて、私はこの中で格下だと言われているみたいでイラッとする。



「お墓参りに行くけど、本当にお留守番してるの?」

「今年はいいが、来年は行くんだぞ」



 両親と祖母がお墓参りに出かけ、私は畳の上でゴロンと仰向けに横になり天井を見つめる。
 何もなくてつまらないけど、こんな暑い中お墓参りに何て行きたくない。

 鞄から音楽プレイヤーを取り出し、イヤホンを耳につける。
 好きな音楽を流しながら瞼を閉じ、一体どのくらい眠っていたのか。

 目を覚した私は横を向いて眠っていて、ボンヤリとする頭で目の前の光景を見ていた。
 ゴロの尻尾が二本と、二本足で立っている姿に「ゴロって立てたんだ」なんて呑気に思っていると、何やら声が聞こえる。
 両親達が帰ってきたんだろうかと思いながら、ボーッとした脳がハッキリとしてきた。



「昔から気に入らん小娘だったが、今年も来やがったか」



 聞き覚えのない声は、両親でも祖父母でもない。
 一体誰がと思たとき、私は自分が見ている現実に息を呑む。

 尻尾が二本、そして二本足で立ち続けているゴロ。
 明らかに可笑しい。
 確かに、二本足で立ち上がる猫はテレビでも見たことはあるけど、それとはどこか違っている。

 そのとき、振り返ったゴロと目が合い、私はドキッと心臓を高鳴らせ、ゴロは目を見開いた。



「見られちまったか。まあいい、お前には沢山言ってやりたい事があったからな」

「ゴロが……喋ってる」



 状況が理解できていない私を置いて、ゴロは淡々と話し出す。
 まるでお年寄りが若者に説教するみたいに「誰もいないからと寝転がるな」だとか「墓参りは毎年行け」だとか、何か聞いててイライラしてくる。

 私は起き上がると「何で猫にそんなこと言われなきゃいけないわけ」と、ムッとした表情になる。
 いきなり喋りだしたかと思ったらお説教。
 コイツは言葉が話せてもやっぱり仲良くなれない猫だ。



「年寄りの言う事は素直に聞くもんだ」

「誰が猫の言う事なんて聞くのよ」

「小さな頃から見てきたってのに、生意気な小娘だな」



 何が見てきたんだか。
 睨み続けてきたので間違いじゃないのかと突っ込みたくなる。
 私には一度も懐いたことなんてないくせに、飼われてる猫が生意気だ。



「てか、何でアンタ話せるわけ」

「今更そこか。お前の頭が心配になるな」



 イチイチ腹が立つ猫だ。
 話さない状態でもイラッとするのに、話せる今は更に私をイライラさせる。

 ゴロはやれやれといった素振りを見せると、自分が化け猫になったことを話し出す。
 猫は、決められた年月生きると化け猫となり、二足で歩いたり、人の言葉が話せるようになったりする。
 化け猫か、そうでないかの見分け方は尻尾。
 二つに分かれているのは化け猫の印。

 普段化け猫は、普通の猫と変わらず生活をする。
 だが、お盆のときだけその姿を表すことが許されている。
 ただし、見せることができる相手は一人と決められていた。



「残念だったね。折角の一人が私になっちゃって」

「いや。ワシが話したかったのは小娘、お前だから丁度よかった」



 世話をしている祖父母のどちらかと話したかったんじゃないかと思って嫌味を言ったんだけど、ゴロが私と話したかったとはどういうことなのか。
 さっきの口煩いことをただ言いたかったのか、それとも私が嫌いだということを直接言うつもりなのか。

 そんなことを考えていた私の耳に聞こえたのは「ありがとう」の一言で、その言葉を聞いたあと目を覚ました私は、畳の上で眠っていた。

 部屋の中をキョロキョロとすると、部屋の隅でゴロが丸まり眠っている。
 その尻尾は一本で、さっきのは夢だったのかと不思議に思いながら「ゴロ、アンタ話せるの」と声をかけるがやはり返事はなく、夢だったんだと何だかホッとする。


 しばらくして両親達が帰ってくると、お婆ちゃんが隅で丸々頃な近づき触れる。
 お婆ちゃんは何度もゴロを撫で「良く生きたね」と一言漏らしす。
 そう、ゴロは亡くなっていた。

 その日、私はお婆ちゃんからある話を聞かされた。
 ゴロは、私がまだ小さな頃に私な見つけた猫なんだと。
 まだ赤ん坊だった私は、お婆ちゃんにおんぶをされて散歩をしていた。

 その途中、背中で私が何かを訴えだし、どうしたんだろうかとお婆ちゃんが顔を向けると、私の小さな手がドブの溝を指差しております、そこには子猫がいた。
 弱っていた子猫、それがゴロ。
 お婆ちゃんはゴロを飼うことに決めた。
 それから毎年私が来ると、ゴロは離れたところからジッと私を見ていたという。
                  
 お婆ちゃんが言うには、ゴロは自分を助けてくれた私をジッと見守っていたんじゃないかと言っていた。

 その時、ふと夢で言われたごろの言葉を思い出し、私の頬には一筋の涙が伝う。
 この涙の意味はわからない。
 ただ、ゴロはやっぱり化け猫になっていたんじゃないだろうかと思った。


《完》
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

清掃員と僕の密やかな情状

MisakiNonagase
恋愛
都心のオフィスビルで働く会社員の26歳・高城蓮(たかぎれん)。彼の無機質な日常に唯一の彩りを与えていたのは、夕方から現れる70歳の清掃員・山科和子だった。 青い作業服に身を包み、黙々と床を磨く彼女を、蓮は「気さくなおばあちゃん」だと思っていた。あの日、立ち飲み屋で私服姿の彼女と再会するまでは――。 肉じゃがの甘い湯気、溶けゆく氷の音、そして重ねた肌の温もり。 44歳の年齢差を超え、孤独を分かち合った二人が辿り着いた「愛の形」とは。これは、一人の青年が境界線の向こう側で教わった、残酷なまでに美しい人生の記録。

OLサラリーマン

廣瀬純七
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...