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1吸血 天使か悪魔かバンパイア

2 天使か悪魔かバンパイア

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「どうやら信じていただけたようですね。お仲間に出会えて嬉しく思います」



 先程から男は、私をバンパイアだとか仲間だとか言っており、私は人間だと否定する。

 すると男は鼻をヒクヒクさせながら私の周りを嗅ぎ始めると、顎に手をあて考える仕草をする。



「不思議ですね。先程までは同族の香りがしていたのですが、今は人の美味しそうな血の香りしかしない」

「だから人間だってば。つーか美味しそうな血の香りとか言うな」



 訳のわからないことを言っている男にぷんすこと怒っていると、伸ばされた手が腰へと回された。
 私の体は男へと引き寄せられ、今も血が滲んでいる首筋に男は舌を這わせ、その赤い液体を舐め取る。



「やはり美味しい。ですが、先程飲んだ時とは味が違いますね」

「いいから離れなさいよッ!!」



 男の体を思いきり突き飛ばし睨み付けると「そんな怖い顔しないでくださいよ」と男は言う。
 いったい誰のせいだと思っているのか。

 人間だとわかったならさっさと出て行くように伝えると「私は同族のプリンセスを探さなければならないので、これで失礼させていただきますよ」と、男は2階だというのにベランダから飛び降りた。

 私は慌てて下を覗き込むが、すでに男の姿はない。



「いったいなんだったんだろう」



 こんな話を誰かにしたところで信じてもらえるはずもないだろうなと思いながら戸締まりをすると、まるで何事もなかったかのように眠りにつく。


 翌日土曜日。
 学校もお休みのため、家でだらだらと過ごしていると、ふと昨夜のことを思い出す。

 バンパイアなんているはずがない。
 全て夢だったんじゃないかとさえ思えてしまうが、今も首筋に残る牙の跡は、その考えを否定しする。



「はぁ……。よしっ! 考えるのは止め止め、折角の休みなんだしゆっくり過ごさなきゃ」

「何を考えていたんですか?」



 背後から聞こえた声にバッと振り返ると、そこには昨夜の男の姿。

 何でここにいるのか、そもそもどうやって入ったのか聞くと「2階の窓が空いてましたので、そこからお邪魔しました。ちなみに、昨夜もそこから」と、ムカつくくらいに柔らかな笑みが向けられる。

 暑いからと窓を開けていた不用心な自分に後悔するが、まさか2階から侵入されるなんて、それもバンパイアになんて予想できるはずがない。

 それよりも、今は他に気になることがある。
 この男が何故ここに、私の前に現れたか。
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