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昔も今も/テーマ:ポケットの中
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幼かった頃。
ジッと見詰めるポケットから、パッと飴が出てきて、私は飛び跳ねて「すごいすごい」と喜んだ。
驚くというより、飴が出てきた事が不思議なのと、ワクワクが私の中に広がっていたんだと思う。
お兄さんはその飴を、今度は手の中から消してしまい、私のポケットを指差し「見てごらん」と言った。
小さな手を突っ込むと、先程までお兄さんの手にあった飴が私のポケットから出てきて「おにいさんは、まほうつかいなんだね」とはしゃぐ。
「魔法使いなんて言われたの初めてだよ。可愛いお嬢さんにその飴はプレゼント」
「わー! ありがとう」
魔法使いのお兄さんから貰った飴は、しばらく食べずに大切にしてたんだけど、お母さんがポケットに入れたままの飴に気づかず洗濯をしてしまい、捨てられてしまったときは大泣きだった。
お兄さんとはあの日以来会えることはなかったから、私にとっては大切な飴だった。
そんな私も成長して社会人になり、独り暮らしをして生活してるんだけど、テレビをつけたらあのときのお兄さんが映ってるんだからビックリだ。
今ではあれがマジックだったって知ってるけど、テレビに映るお兄さんは昔より老けていて、それでも有名なマジシャンになれたんだと嬉しいと同時に懐かしくなる。
「では、最後のマジックをお見せします」
お兄さんはスタジオの観客席から小さな一人の女の子に近づき、あのとき私にしてくれたマジックをやってみせた。
先程からやっていた派手なマジックとは違い、子供騙しのような小さなマジックだったけど、その瞳がとても優しくて口元が自然と緩む。
「ありがとうございました。何故最後のマジックに先程のを選ばれたのですか」
「私がまだ無名の頃、小さな子供があのマジックを見て言ってくれたんですよ『まほうつかいなんだね』って」
その言葉を聞いて、私のことだってすぐに気づいた。
今はマジックだってこともそのタネも知ってるけど、テレビに映ったあの子供のように、私もあの頃は純粋に不思議で凄いと思った。
ポケットの中の飴はもう無いけれど。
今でもお兄さんは私だけじゃなく、子供たちの魔法使い。
《完》
ジッと見詰めるポケットから、パッと飴が出てきて、私は飛び跳ねて「すごいすごい」と喜んだ。
驚くというより、飴が出てきた事が不思議なのと、ワクワクが私の中に広がっていたんだと思う。
お兄さんはその飴を、今度は手の中から消してしまい、私のポケットを指差し「見てごらん」と言った。
小さな手を突っ込むと、先程までお兄さんの手にあった飴が私のポケットから出てきて「おにいさんは、まほうつかいなんだね」とはしゃぐ。
「魔法使いなんて言われたの初めてだよ。可愛いお嬢さんにその飴はプレゼント」
「わー! ありがとう」
魔法使いのお兄さんから貰った飴は、しばらく食べずに大切にしてたんだけど、お母さんがポケットに入れたままの飴に気づかず洗濯をしてしまい、捨てられてしまったときは大泣きだった。
お兄さんとはあの日以来会えることはなかったから、私にとっては大切な飴だった。
そんな私も成長して社会人になり、独り暮らしをして生活してるんだけど、テレビをつけたらあのときのお兄さんが映ってるんだからビックリだ。
今ではあれがマジックだったって知ってるけど、テレビに映るお兄さんは昔より老けていて、それでも有名なマジシャンになれたんだと嬉しいと同時に懐かしくなる。
「では、最後のマジックをお見せします」
お兄さんはスタジオの観客席から小さな一人の女の子に近づき、あのとき私にしてくれたマジックをやってみせた。
先程からやっていた派手なマジックとは違い、子供騙しのような小さなマジックだったけど、その瞳がとても優しくて口元が自然と緩む。
「ありがとうございました。何故最後のマジックに先程のを選ばれたのですか」
「私がまだ無名の頃、小さな子供があのマジックを見て言ってくれたんですよ『まほうつかいなんだね』って」
その言葉を聞いて、私のことだってすぐに気づいた。
今はマジックだってこともそのタネも知ってるけど、テレビに映ったあの子供のように、私もあの頃は純粋に不思議で凄いと思った。
ポケットの中の飴はもう無いけれど。
今でもお兄さんは私だけじゃなく、子供たちの魔法使い。
《完》
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